テスト
最近、よく電気屋に通っていた。
もともと電化製品が好きというか、ミーハーというか。それに、通販での買い物も頻繁にしている。
それにしてもここ数日は毎日のように電気屋に向かっていた。わざわざ妖魔界まで。セールなんて、この時期はやっていなかった。
「ただいまでうぃす」
窓を通り抜けて帰ってきたウィスパーは、いつも通りの呑気な声で帰宅を知らせた。
漫画を読んでいたケータは、横目で白い姿を確認して「おかえり」、すぐに視線を漫画に戻した。
「あの〜、ケータきゅん」
「今いいとこ」
「うぃすぅ…」
しょげたウィスパーは、わかりやすい。
寂しげな背中をケータに向けて、そのままじっとしていた。
ケータが漫画を読み終わって、うーんと伸びをする。そろそろ夕飯の時間だ。やることもないしーー宿題は後回しーー1階に下りてテレビでも見ようかと時計を見ながら考える。なにか、おもしろい番組はあっただろうか。
「ケータきゅん」
バッと勢いよく振り向いた妖怪執事。なんだなんだと目を合わせれば、片手を背中に突っ込んで、何か見せようとしているところ。
またへんなものでも買ったのか。
「妖魔界で、今人気のやつなんですけど…」
「ん?」
慎重に取り出されたのは、ダンボール。そのパッケージはやけにビビットな色で主張されていた。
なんとなく、見たことがある気がする。
たぶん、そう。以前ウィスパーと、妖チューブで見たことある広告だ。
「あっ!!」
大声をあげて、ウィスパーに詰め寄った。
ケータに箱を雑に扱われたくないウィスパーは、少しだけ避けるように腕を動かす。
そうしながら、にししと笑った。
「新しく出たゲーム。買っちゃいました」
「ほんと!?」
「ほんとですよ〜! 噂で数台限定で安くなると聞いてここ毎日チェックしてたんですから!」
だから、頻繁に行っていたのか。
学校帰り、昼寝してる途中。主人を置いて、どこに行ってるのかと思ってた。
いつも行くときはお土産を買ってきてくれたのに、手ぶらで帰ってくる執事を見ては、尻尾を抓りたくなった。
「わぁ……!」
カーペットの上に置かれたダンボールの前に正座して、目をかがやかせる。
ウィスパーは、ちらりとその顔を伺う。
よかった。これで、しばらくケータひとりでゲームに夢中になることはないだろう。
「言っときますけど、ポテチ食べながらコントローラー握らないでくださいね!」
「はいはい」
一緒に遊ぼう。
そう言えるまで時間がかかったのは、ご主人様とそこ執事だからかもしれない。