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    七夕 他七夕妖怪ウォッチが消えた日(映画より)色あせることのない青であれ お題botより向き合うということ。あなたに優しい明日でありますように お題botより・バスターズ要素あり生きていたいと言ってください お題botよりあなたが好きだと言えない代わりに お題botより君が僕を呼ぶ甘美な瞬間 お題botより七夕


    「にゃ…けーた?」

    大きな欠伸をして呟いた。
    5年2組の教室。一番前の席の窓際でジバニャンは寝ていた。

    教室には誰もいない。まだ授業中では?
    すると後ろから「起きましたか」と声をかけられた。

    「皆さんとお外にいきましたよ。短冊を飾りに行くそうでうぃす。」
    白いのが窓をすりぬけてきた。

    「にゃにゃ!おれっちはチョコボー100箱…いやニャーKBのツアー最前列…」
    「ワタクシは有能でござーますのでお願い事なんてしなくても〜〜」
    それぞれ好きなことをブツブツ言いながらケータのもとへ寄る二匹の妖怪。ちょうどケータが短冊を終わったとこだった。
    クマとカンチと話をしている。
    「ケータくんのお願い事見る前に飾られちゃいましたでうぃす…」
    そんなとこまで見なくてもいいだろうに、とジバニャンがため息をついているとフミカがケータたちの側に来た。
    「みんな何て書いたのー?」
    フミカが手を伸ばす。「あ!」と高らかな声が聞こえた。
    ケータの短冊だ。


    『ずっとみんなのそばにいれますように。』

    フミカがケータの願い事を音読する。
    「なんだよケータ!まだ卒業じゃねえのにそんなこと書いてさ!」
    「それに中学も一緒だよ〜。クラスは離れるかもだけどさ。意外と寂しがり屋だね、ケータ」
    クマとカンチに茶化され慌てるケータ。
    「ま、まあね!」
    そしてケータは言い訳を続ける。
    「いや〜昨日お母さんが見てたドラマでお別れのシーンがあってさ!なんか、書いちゃったんだよね〜」
    フミカは、あははと笑うケータをチラリと見てまた短冊に目線を落とす。
    「でも、とっても素敵な願い事だよ。」
    ケータが驚いた表情でフミカを見た。
    「今みんなとこうしていられるのが当たり前じゃないもんね?普通の事が突然普通じゃなくなったりするもの。叶うといいね!ケータくん!」
    クマとカンチも少し固まった表情をしたが、そうだねと笑い合った。そしてお互いのお願い事の話へと発展していった。

    担任の先生の「教室に戻るぞ」のかけ声でゾロゾロと生徒たちが歩き出す。
    途中でケータが振り返って手招きする。
    ウィスパーは「どうしましたか」と寄り添った。

    ケータの目線が少し下だ。
    細い睫毛がよく見える。
    目線が合うことなく、ケータの口が動く瞬間を見つめていた。

    「おれの願い事、叶えてよね。」

    すぐにクラスメイトのもとへ合流するケータ。
    その姿を放心状態で見つめる二匹。先に動いたのは妖怪執事。
    「ワタクシ、短冊に書く願い事決まったでうぃす。」
    「おれっちも決まったにゃーん。ウィスパー、これ、付けてくれにゃん。」

    ふわりと高く飛んで、2枚の短冊を笹の一番上に飾り、見つめた。

    「願い事、叶えてみせますね、ケータくん。」


    小さく呟いたそれは猫には聞こえたが、何も返事はしなかった。
    二匹は昨夜、ケータがそんなドラマを見てないことを知っている。


    『ずっとケータくんの側に居れますように。』

    『ずっとけーたの友達でいれますように』

    君がそんな不安をもたないように。



    妖怪ウォッチが消えた日(映画より)


    なんで無視されるのかと思った。
    「ワタクシ昨日何かしました…??」と猫に相談すると、見えていない、聞こえていないようだと。
    とにかく調べようと学校へ行く主人の背中を見送りそれぞれ散った。

    どうして突然こうなるのか。
    ワタクシの居場所はあの人の隣しかないのに。

    なんで、なんで、なんで。

    出来事への怒りと、簡単に忘れてしまった主人への不満が湧き上がる一方で調べ物は何も出来ず。
    ふらふらと主人の元へ。

    なんであいつが見えてワタクシが見えないんですか?
    なんで?あ、思い出した。

    ちょっと拗ねたワタクシはすぐに主人の呼びかけに応えられず。
    しかし、「まあいっか」と言われてしまい、つい。

    思い出してくれてありがとう。
    ただただ嬉しかった。
    すぐに呼んでくれて嬉しかった。

    ワタクシを忘れて半日過ごしてしまったあなたへ、ワタクシはとても文句が言いたい。
    でもあなたを前にして出てくるのは、そんなんじゃない。もっと話そう。もっと交わそう。もっともっと。

    本当に忘れる前に。



    就寝間際の少年に執事はひとつ質問をした。

    「朝目が覚めて、私達が居なくなってたらどうしますか?」と。
    少年の足元で丸まっていた猫は驚いた目でこちらを見る。
    肝心の少年は…変わらず眠たそうな目で執事をじっと見つめて、考えているのか考えていないのか、口を開いたのは数秒後。

    「何言ってんの?そんなのあり得ないでしょ。」
    と言い放ち、「寝るよ、おやすみ」と布団をかぶる。
    執事は呆気にとられながらもさっさと寝てしまった少年の髪を優しく撫でる。
    いつでも側にいるのが当然だなんて思わないでくださいよ。
    先日過去を改竄されて記憶がなくなったのを忘れたのか。

    記憶を取り戻しすぐに執事を呼んだ瞬間を思い出す。
    (あの時も、私なら側にいると思ってくれたんですよね…。)
    白い丸い手は髪から耳元へ。
    そっと囁いてみる。

    もう眠りに入っていますように。
    まだ眠りにつく前でありますように。

    反応はなかった。

    寝たか。寝てしまっていたか。
    安心か不安か、どちらがこの心を占めているのか分からないまま、さあ私も寝ようかとそっと離れた。

    ーーー。

    執事はバッと振り返り少年を見る。が、体勢も何も変わらない。
    期待しすぎかと自分の浅ましさに肩を落とし就寝する位置につく。


    猫は見ていた。

    「いつもいるじゃん。」

    少年はそう言った。猫の耳で確かに拾った。
    自分の存在に不安を持ち過ぎるこの執事はたった11才に何を求めているんだ。

    執事になりましょうなんて。
    随分といい言い訳を見つけたな。と猫はほくそ笑み、眠りについた。

    執事が主人の側にいるのは当然だ。
    それ以外何がある。


    色あせることのない青であれ お題botより



    とても暑い夏の日だった。

    太陽の光が強くて、虫たちが元気いっぱいで、遠くに入道雲も見えていて、夏らしい夏の日だった。

    夏休みだった。
    眩しい夏休みだった。
    たった一度の、1回だけの。
    特別な夏休みだった。

    ねぇ、なんで夏を選んだの?

    出会うなら、春がよくない?

    春は出会いの季節でしょ?


    ほんとはもっともっと夏休みに閉じ込めたかったんじゃないの。
    オレ、全然気付いてなかったよ。
    なんでおかしいと思いませんか?なんて言っちゃったの。
    気付かなければ良かったのに。

    気付かなければ一緒に居られたのに。


    ありがとう。ありがとう。ありがとう。
    でもごめん、一緒に居たいよ。

    ねぇ、なんで夏を選んだの?
    夏休みに閉じ込めたかったからじゃないの?

    出会うなら、春がよくない?
    お別れに桜を咲かすくらいなのに?

    春は出会いの季節でしょ?
    妖怪には季節関係ないのかな?

    とても暑い夏の日。
    君に出会った日の空。
    白いカラダによく映えた、青。
    今もまだ覚えているよ。


    向き合うということ。



    少年は執事に辛辣な対応をしてしまいがちだった。
    執事は分かってはいるけども、積もり積もってくると定期的に病んでしまうことがあった。

    同居人の猫は戦闘も出来るし、蝙蝠は影の実力者だし。
    ワタクシは…と考え込んで。
    考えれば考えるほど自分の存在に落ち込んで。


    ある日、涙をボロボロ流しながら、一晩、明かしてしまった。


    (そろそろケータくんが起きる頃ですね)

    フラフラと部屋に戻り、少年の寝顔を見ながら、
    謝って謝って謝って、
    一緒に居させてください、と、心の中で懇願した。

    「うぃすぱー?」
    と、少年が起きてしまう。

    慌てて、「すみません起こしてしまいましたか?」と言えば、「隣にいないからどこ行ったのかと思った」
    と、むにゃむにゃ言いながらまた寝てしまった。

    また寝てしまったことを確認した執事。
    それだけで救われてしまう。

    執事も怒るときは怒るし、拗ねるし、泣くし、一見存分に感情を発揮してるように見える。
    だが、妖怪といえど、人間と同じ感情は持っているのだ。
    溜まるものは溜まる。
    人知れずそうやって泣いて、発散して。
    そして人知れず、救われている。

    このかけがえのない少年に。




    あなたに優しい明日でありますように お題botより・バスターズ要素あり



    クローゼットの外からパチンと明かりを消す音が聞こえた。
    時計を見れば21時ぴったり。
    今日は随分いい子なのだなと、同時に何かあったのかなと、そっとクローゼットの扉を開ける。
    部屋には布団にくるまる少年だけで、執事と猫の姿をはない。
    そうか、あの二人は出動命令がきてたなと思い出す。

    執事は不機嫌になっていた。
    「ワタクシの本業はけーたきゅんの執事でしてね!!」と大声で訴えていたな。主人は「別に居なくてもいいよ」と突っぱねたが、実際は寂しいのだろう。
    一向に寝息が聞こえない。
    「ケータさん…眠れませんか?」
    いつもより静かな部屋に響いた自分の声に震えながら問いかけた。

    「うーん、最近寝るの遅かったからかなあ。眠くないや。」
    ゆっくり上半身を起こしながら返事をしてくれる部屋の主。へらりと笑っていたが、それが余計に寂しさを訴えられてる気がした。
    「…今日は私が何かお話しましょうか。眠くなるまで、お付き合いしますよ。」

    お話と言っても、執事がいつもより落ち着いたトーンで今日を振り返るだけなのだが。
    「え〜ヒキコウモリ、オレいつもアレで寝てると思ってたの?」
    少年の顔が少し照れているのは暗くても分かる。
    「思ってます…。」と告げて、「ゆっくり話されると眠くなりますよね」とフォローする。
    別に子供扱いしてるわけではないよと。
    別に、執事の声に安心してるんだね。と、自覚させたいわけでもないよと。

    そのまま執事と猫の噂をした。
    20分程で少年は眠りについた。
    私でも執事の代わりは務まった。
    私でもこの子になら自分からお話できる。
    そんな喜びを得て静かにクローゼットを閉めた。

    それでも少年にとって、私では役不足なのだ。
    はやく、はやく帰ってきてあげて。
    そして明日はいつもより優しくお話してあげて。

    私の声が、今日のこの子に届いた最後の音なら嬉しいなと思いながら。


    生きていたいと言ってください お題botより



    夢を見た。

    キンギンの所為で思い出した三成様との出会いから別れ。
    妖怪だから生き死にはもはや関係ないのだが、あの絶望の後、よく今まで生きてきたなと、ふと。

    あのあと、どうしたんだっけ。
    どうしてシッタカブリの自分が、封印されていたのは190年なんて数字、覚えているんだろうか。

    シッタカブリの事は言えなかった。
    言うつもりもなかった。
    いつかは話せたらいいなあとは微かに思っていた。

    なぜ自分がこんな事聞いたのか、その時の自分何かあったかな?
    そんなことさえ思い出せない。


    「ご両親が亡くなられて、その犯人が死にたいと言ってきたら、どうしますか?」
    「………え?」

    そりゃそうですね。当たり前の反応が返ってきた。
    そしてその次に返ってきたのが、
    「サスペンスでも見たの?」

    おやおや、サスペンスがどういう内容かご存知のようで。
    では、尚更。

    そうですよ、と。
    ちょっと気になってしまいまして、と。
    ご両親殺されちゃって、犯人は警察とあなたに追い詰められて。
    いつも出てくる崖っぷちで、犯人があなたに言うのです。
    「死にたい」と。

    どうしますか?

    「……。」
    考えていてくれてるのか興味がないのか曖昧な顔をし、唇が開く。

    「なんで死にたいの?」
    「犯人にとってご両親はとても大切な友達でした。それはとてもとても。…その人がいない世界なんて、居ても意味がないと思ったんですよ。」
    「……?」

    想像と違う答えをしてしまったから、なぜ殺したのか聞かれるかと思いきや、頭にハテナマークを浮かべてしまいました。

    「わかんないや。」
    投げ出されてしまった。
    さすがにこの子には早い問いだったか。
    私は、私は何をこの子に求めたんだろうか。
    「ですよね。変なこと聞いて申し訳ありませんでうぃす」
    もうこの話は終わろう、空気が暗くなるなと、別の話題にしようと口を開いた矢先、

    「生きたいって言ってよ」

    「…え?」

    伏せられた顔。表情が良くわからない。
    「そんな勝手、嫌だよ。」
    少し声が震えたまま尋ねた。
    「…犯人を許すんですか?」
    顔を上げ、私の目をしっかりと捉えてくる。
    「許さないと思う。だから、うーん。なんか、死なれたら犯人の勝ちみたいじゃん。」

    そのときの目はとても力強くて。
    そのときの言葉はとても記憶を刺してきて痛くて。

    「…生きたいと言えるようになるといいですね、犯人。」
    さ!と両手で軽やかな音を鳴らし、話と空気を無理矢理変えた。
    あまり気にしなかったようで、そのまま別の話に乗っかり、夕食だと声がかかり、ダイニングへ向かった。

    ああ、三成様だけでなく、私も、負け戦でしたか。

    泣きたいなあ。
    今すぐ、大声を出して泣きたい。
    己の後悔と、呪われた能力と、
    負けて良かったと思ってしまった己の情けなさと。

    負けたから、出会えたんだ。
    かけがえのない、この小さな主と。

    生きたいって言ってよ。

    封印されたとき、死にたいと喚いてた気がする。

    生きたいって言ってよ。

    彼が死ぬならば。
    私の所為ならば尚更。

    生きたいって言ってよ。

    誰が私にくれた願いだろう。
    ふと、家族と仲良く夕食をとる主を見た。

    あなたがくれた願いだといいのに。

    ねえ、三成様。



    あなたが好きだと言えない代わりに お題botより



    「おれとずっと前に出会ってた?」

    なんの前触れもなく聞いてきた。
    いえ、ガシャから出して頂いたときが、初めての出会いですよと返した途端、嘘だと表情を曇らせた。

    もし私が本当に嘘をついてたら、どうしますか?
    何故嘘をついたのか、何故こんな形で出会ったのか、知りたくありませんか。


    私は、

    私は、私がどんなにあなたに執着しているか知られなくない。

    好きだと言えない代わりに
    永久に側に居る方法を実行するだけだ。




    「おれとずっと前に出会ってた?」

    なんの前触れもなく聞いてみた。
    きっかけとかは別にない。
    ただそんな気がしただけ、の、割に、妙な確信があった。

    もしおれが何もかも覚えていたらどうするの?
    なんで騙されたふりしてたのか、なんでこんな形でまた出会ったのか、知りたくないの?


    おれは、

    おれは、おれがどんなに君に依存しているか知られなくない。

    好きだと言えない代わりに
    永久に側に居れるように、おれらしく在るだけ。



    君が僕を呼ぶ甘美な瞬間 お題botより


    おれはいつ、君に名乗っただろう。



    あなたはいつ、私の名前を呼ばなくなるだろう。






    鈴虫が鳴いている。
    両親に少し見に行きたいと言えば、晩御飯前に家を出た。
    お父さんと歩く夜の一歩手前の散歩。
    静かな風音と虫の声、そして2人の足音と親子の会話がやけに大きく響く、住宅街のただの道。
    「こないだ会った人と一緒に働いてるんだよね?」
    会話は先日の遊園地での出来事。
    サンデーパパに取り憑かれた大人たちを見て、大人も大変だなあと他人事のように思い、それよりも父親と共に働く人たちに興味を持った。
    小学校という世界でしか人間関係を確立させていない少年にとっては、未知の世界。
    「せっかくだし、家族同士で挨拶しとけば良かったな!」
    お母さんが「挨拶したほうがいいかしら」と言ってたよと言えば、
    「紹介すれば良かったなあ。」
    と、目を細めて頭をわしわしっと少々乱暴に掻き乱され、
    「自慢の息子ですって、会わせたかったよ。」
    なんて言うもんだから、嬉しくて右手でぐしゃぐしゃになった頭部を抑えながらえへへと笑った。
    「次会ったら挨拶するよ!…いつも父がお世話になっております?」
    ドラマで見たセリフを言えば「勘弁してくれよ」と笑い声が鈴虫の声より大きく届く。
    「名前を名乗るところからかな!初めましてって言って…」
    そこから大人の苦労話に発展していった。
    おれは途中から鈴虫の声だけ聞いていた。

    小さな公園の草むらに入る。とはいっても綺麗に整備されている。
    お父さんは近所の犬の散歩をしてる人と話し込んでしまった。

    「ねぇ、ウィスパー」
    堂々と執事を呼ぶ。
    「どうしました?ケータくん、鈴虫捕まえる気ですか?」
    名前を呼べばすぐに側に来てくれる。

    鈴虫の声がする。
    父たちの会話なんて、聞こえない。

    「ねえ、おれ、さ」

    いつ、おれの名前を教えたっけ?

    名乗った覚えなどない。
    気づいたら呼ばれていた。
    君に。


    不祥事案件の時。だけでなく、まだ知らない用語、小学生らしい疑問、彼らしい質問、ただ、なんとなく。
    1日何度でも呼んでくれる、あなたが私はとても大切で。
    私がパッドを見ないとほとんどの投げ掛けには答えられないのを知っているのに、何故そんなに聞いてくれるのでしょう。

    名前を呼ばれることは、どんな言葉よりも側に居ていいと実感させてくれる。
    だから応えたい。
    名前を呼ばれた時。
    そのあとだって。なんだって。
    パッドを使おうが、どんな手使おうが。あなたに応えたい。

    あなたにすべてを応えたい。
    でもそんな勇気、私には、ありません。

    私には鈴虫の声すら聞こえなかった。
    この子の言葉だけが脳内に木霊した。

    「ねえ、おれ、さ、いつ、名前教えたっけ?」

    なんて答えればいいか分からなかった。
    それを正直に答えたあと、私は変わらずあなたの側にいれますか?

    とても長い時間に感じた沈黙。
    彼は表情を変えぬまま、再び口を開く。
    私は耳を塞ぎたい。
    なにも言わないで。聞かないで。

    「言ってないよね…。

    初めましてって。」


    ん?

    10周くらい脳内を回る、回す。そしてようやく先程の父との会話かと思い至る。すると、なんとも言えぬ安堵感と焦燥感が全身を一気に駆け巡る。
    ゆっくり、落ち着け、と自分に言い聞かせながら私はやっとこさ彼に応える。
    「言われてませんが、、あの私の登場でそんな冷静な発言されてもねえ」
    「あ!あの時の100円!」
    と全く違う方向に会話が進み、そのままこの散歩の目的である鈴虫の話になり、少年は父親の苦労話に再び付き合わされる。
    ちらりと私を見上げ、口パクで妖怪のせいじゃないのと訴えてきたが、残念ハズレ。ため息をつき、帰路につく。
    私もどことなく、ため息をついた。


    私はあなたの側に居たい。
    ずっとずっと。
    その声は私を満たす。
    その声で私を呼んで。

    私はあの時、すぐに名乗った。
    私の全てをあなたに投げた。
    さあ、受け取れ。
    そして使え。
    何度も何度も。
    あなたに縛られることを望んだのは私なのですから。


    ずっとそうして。お願いだから。




    ふと気付いた投げ掛けに、戸惑いの表情を見せた君。
    ずっと一緒にいるんだから、すぐ分かるよ。

    出会う前から知ってましたよ。なんて、夢みたいなこと。
    早く伝えてほしい。待ってるんだ、君が一歩踏み出すのを。

    大人は苦労が絶えないらしい。
    君も、そうなのかな。そうなんだろうな。


    それまでおれは何度も呼ぼう。
    どんな些細な事も、全て君を呼ぶ口実にしよう。
    だからおれはどんなことにも立ち向かえる。君に応えたいのはおれの方だ。
    それこそ、そうだ。
    出会う前から。
    呼ばれた時から。

    おれが君に名乗るときは、
    君がおれと消える時だけだよ。
    Link Message Mute
    2018/12/30 22:04:10

    七夕 他

    ウィスケー短文まとめです。

    2015.11.4
    ピクシブ投稿分でした。
    閲覧・評価ありがとうございました。

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    • ハッピーエンド2017.4.2に
      ピクシブに投稿したウィスケーです。

      閲覧・評価ありがとうございました。
    • テスト
    • 混沌ビィザー 他ウィスケー短文まとめです。

      2016.3.7
      ピクシブ掲載分でした。
      閲覧・評価ありがとうございました。
    • 無題2018.4.15
      ピクシブに掲載していたウィスケーです。

      閲覧・評価ありがとうございました。
    • 愛されることができないみたいだ2016.12.10
      ピクシブに投稿したウィスケーです。

      閲覧・評価ありがとうございました。
    • テストテストだよ〜
    • アニメ放送6周年目おめでとう!
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