閉じ込めた、内緒の「お前は……妖怪の類いなんじゃないのか?」
私は初めて、直接的に"妖怪"と言われました。
潜在的に私を"妖怪"と考える人は少なくありませんでした。
しかし、彼は私に面と向かって"妖怪"と言いました。
私はすぐに彼に言い返すことができず、ただ黙っていることしかできませんでした。
ですが……
「"妖怪"ですか……」
私はあれからずっと考えていました。
自分が気づいていないだけで、実は自分は本当に"妖怪"なのではないかと。
ですが、彼も彼で言葉を選んでいたのかもしれません。
言おうと思えば、"怪物"とも"化け物"とも言えたはずですから、"妖怪"という表現は彼なりに考えた結果なのかもしれません。
しかし、どう言われたにしろ"人ならざる者"と扱われているのは確かですが……
年齢や素性はおろか性別まで不詳、神出鬼没……
確かにこれでは"妖怪"と言われてもおかしくないのかもしれません。
「私は"妖怪"なのでしょうか……"普通の人間"なのでしょうか……」
考えれば考えるほど思考はループしていき、逆に答えにたどり着けない気がしてきます。
私に頼れる人はいません。財力で困ってはいないんですけどね……
ですから、私1人で結論を出すしかないのです……
仮に頼れる人がいたとしても、最終的には私が結論を出さなければいけないのは確かなのですが……
"妖怪"だと認めるなら、恐れられ続けはしますが今後"妖怪"と言われても傷つくことはないでしょう。
あくまで"普通の人間"と主張するなら、初めて会う人は大丈夫でも今後私を"妖怪"と認識した時には急に私を避けるようになるでしょう。
どちらにしてもメリット・デメリットはあります。何事もそうなのかもしれないですが……
ですが、どちらにしても私には1つ、願うことがあります。
それは……
「"普通の人間"でも"妖怪"でもいい、誰にも恐れられることなく生きたい……!」
その願いは誰も聞いてはいないのですが、つい大きな声で言ってしまいました。
"普通の人間"としても"妖怪"としても、私は常に恐れられながら生きてきました。
ですが、願わくは私は誰からも恐れられず生きていきたいです。
高望みするなら"普通の人間"として扱われたいですが、それはきっと過ぎた願いなのだと思います。
事実、自分でも"普通の人間"なのか"妖怪"なのかわかっていないところもありますし……
恐らく今後も私は恐れられながら生きていくことになるのでしょう。
ですが、私はそれに負けることなく、あくまで"誰にも恐れられることのない"世界を望みます。