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    3「Saviour」 俺はセリーナを匿うように部屋に上げる。
     ニュースなんて見るたちじゃないのでよくわからないが、”アンデッド”にしろ”死神”にしろ自らの生首を抱えた首なし女なんて見つかったらやばいということは直感的にわかった。


    「……資産と”魔力”だけはある家ですから、若くして亡くなった私を”なるべく生前の姿に近い形で”復活させようとして”不完全に蘇った”、それが私です」
     セリーナから15分に渡る身の上話を聞いた。
     話を要約すると、「彼女は2年前に死んだが、夭逝したことを受け入れられない両親が蘇生魔術に手を出して復活した、しかし完全に復活するために魔力がわずかに足りず、首が外れる”デュラハン”としての復活となった。このまま故郷にいても彼女に辛い思いをさせてしまいかねない、そう考えてアンデッドといった”存在”に偏見が少なそうで、家への協力者がいる日本に単身やって来た」ということらしい。長い。
     協力者も同様に名家と呼ばれるところらしいが、名前を聞いてもわからなかった。箱入り娘でもないのに世間知らずか。
    「でも、結局首が外れた時の――さん以外の皆さんの反応を見る限り、やっぱり偏見がすごかったですね……どこに行ったってこうなることはある程度覚悟してましたけど」
    「まあ……”モンスター娘”って言ってこういう”人ならざる者”に心がときめく人もいないわけじゃないんだけどな、どうしても少数派だと思うよ」
     更に言うと”モンスター娘”の中でも、デュラハンは首が外れる以外普通の人間と変わらないしな……上半身だけ美女で下半身が蛇とか魚とか蜘蛛とか馬とか、あるいはサキュバスとかが人気でデュラハン萌えはあまり聞いたことがないぞ……
     しかし、セリーナはアンデッドにありそうな極端に肌に血の気がないなんてことはなく、首が乗っていれば本当に普通の人間と見分けがつかない。
     そんな彼女は、首のない身体の膝の上に自らの生首を乗せていた。
     先にセリーナが座った時に身体側の首の断面が見えたが、最初からそこに首がなかったかのように肌色があるだけだった。
     身体側の首の断面を見つめていると「首側も見ます? 身体と同じですよ」と、首側の断面も見せてくれた。
     そちらも、まるで最初から首だけがあったかのように、肌色があるだけだった。
     ……これ、首が外れた状態で首から何か食べたらどうなるんだろう?
    「でも、――さんは優しいですね。アンデッドの私をこうも受け入れてくれる……あの時驚かなかったのもあなたが唯一ですし、こうして部屋にまで上げてくれている」
    「何を……あの時は単純に転校生が来たって俺には関係ないと思ったし、首が外れようが俺と関わることはないと思ったからだ。部屋に上げたのもセリーナのこの姿を見られたら俺とセリーナにとって不幸な結果になると考えた。それ以上もそれ以下もないよ」
     俺はぶっきらぼうにそう返す。正直アンデッドだろうと死神だろうと、セリーナが俺に関わったことで不幸になってほしくはない。
     そうだ。俺と関わりたくないと考えるのは、俺と関わると不幸になると思われているからだ。
     だから、セリーナにも……
    「いや! あなたは優しい方ではないですか! アンデッドである私を自然に受け入れている……それだけでも私にとってあなたは救世主です! それだけはどうか自信を持っていただけませんか!」
     セリーナは強く主張した。俺が……救世主?
    「救世主って……俺はそんな高尚な存在じゃない。多分、俺と関わると不幸になるぞ? いいのか? 俺みたいなのを救世主とか言って?」
    「どうしてそんなに自分を卑下するんです!? あなたは私の救世主です! お願いですから……自信を持ってください……」
     セリーナが目を伏せる。だが、俺はここでセリーナに信頼されてはならない。これはセリーナのためだ。
    「それとも……あなたも皆さんと同じで私のことを……」
     やばい。セリーナが泣きかけてる。いくら他人と関わりあいになりたくないとは言っても、他人を泣かせたくはない。
    「あーわかったわかった! 俺はセリーナの救世主だ! 俺が救ってやる! だが……俺のせいで不幸になっても文句は言うなよ!?」
    「そうですよ……それですよ……ですからどうか……素直になってくれませんか?」
     セリーナの顔が明るくなる。そしてセリーナは首を元の位置に戻す。
     首の辺りを見ると、首に切れ目はない。本当に普通の人間と見分けがつかないじゃないか……
    「あれ……首に何か着けないのか?」
    「ええ……でも、歩いたり走ったりという程度なら大丈夫なんですけどちょっとでも衝撃が加わると外れちゃうんですよね……今日は怪しまれないように何も着けなかったのが裏目に出ちゃいましたけど」
     そうなのか。
    「私の部屋……――さんの隣ですから。いつでも来ていいですよ、あなたなら信頼できますから」
     そう言ってセリーナは俺の部屋を後にする。
     セリーナは不思議な存在だ。
     でも……デュラハンじゃなかったら絶対みんな惹かれてるんだろうけどな。
    水川青天 Link Message Mute
    2019/04/25 19:25:52

    3「Saviour」

    #オリジナル #創作 #R15 #恋愛 #現代 ##現代に生きるデュラハンちゃんは他人の死を予言しない

    人外ヒロイン3話。
    セリーナちゃんの身の上話です。

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