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    8「Sleepover」 セリーナと付き合うことが決まったその日の帰り道。
     セリーナは首を元に戻している。血色も普通の人間と変わらないし、この状態では普通の人間と見分けがつかない。
     ただ、細い身体の割に胸だけは大きく膨らんでいるので、そういう意味では周囲の視線を集めていた。
     最初はその視線に気づいていなかったが、その視線に気づくや否や急に腕を掴みだして、大きな胸を押しつけてくる。
     いや……その行動って完全にバカップルだろ! どこでそんな知識得たんだよ!
     ……とまあ、こんな感じでアパートに帰ってきたが、部屋に入ろうとした途端セリーナが。
    「あの……今日……私の部屋に泊まっていきませんか?」
     ちょっと待て! いくら部屋が隣同士とはいっても付き合ってすぐ相手を部屋に連れ込むとかマジかこの娘! ……あっ! ”マジかこの娘”って昨日も言ったぞ!
    「ちょっ……いいのかよ! いろいろと段階を急に進めすぎだろ!」
     あまりの出来事に声を荒げてしまったのか、セリーナが涙目になりはじめた。
     やばい! ちょっと言い過ぎた!
    「わーすまんすまん! わかった! 今日はセリーナの部屋に泊まろう! だが明日も学校だからな、明日の準備を持ってくるから待ってろ!」
     その一言を聞くとセリーナの顔は笑顔に変わっていた。めんどくせー!



     セリーナの部屋。
     俺の部屋同様、部屋には最低限のものしか置いてない。
     違いがあるとすれば、置いてあるものが男性的か女性的かというぐらいしかない。
     部屋に入るや否やセリーナは自分の首を外す。
    「デュラハンだからですかね……首を外してる方が楽なんですよ、身体が軽くなった気がするっていうか……あっ、身体の感覚は首にも行きますから性的なことしちゃダメですからね」
     とか言いつつやってほしそうな顔をしてるのは気のせいか。……いややらないからな! やるとしても俺は語らないからな!
     首をちゃぶ台の上に置き、首のない身体はベッドへ向かう。
     そのまま横になって寝たみたいだ。首がないから寝息は立てられず、本当に寝ているのかどうかわからない。
     一方で首は起きたままだ。ちゃぶ台の上に首だけ置かれている状態……時代が時代なら晒し首だし、今なら……海外で何か生首が植木鉢に植えられてるゲームがあった気がするけどリアルにそれをやってる気分だ……
    「首と身体って……別々に寝れるのか……?」
    「ええ、今日は汚らしい男4人組に絡まれたでしょう? ですから身体が疲れてるので夕飯の時まで寝かせておこうかと。でも、首の方は疲れてないのでこうしてあなたと話すことならできます」
     デュラハンの生態は複雑なようだ……
    「自分はデュラハンであることを隠して……精神的に疲れないのか?」
    「ええ、確かにその点はちょっと疲れますね……ですけど、デュラハンになってみて便利になったこともあるので、絶望ばかりではありませんよ」
     現状デュラハンのような”人外”と呼ばれる存在が世間からどう見られているかはわからない。
     だが、セリーナが今日不良4人組に絡まれてはじめてデュラハンと明かし、普段はデュラハンであることを隠していることから察するに、現状”人外”という存在は認知されていないのかもしれない。
     だが、転校してきてすぐ首が外れ騒ぎになったにも関わらず、先生は落ち着いていたことを考えると、行政とか上の方はすでに”人外”の存在を認知し、何か手は打っているのだろう。恐らく、1つの存在として保護する方向で。
     しかし、セリーナの話を聞いていると、”デュラハン”という存在は蘇生魔術により蘇った元人間で、セリーナの場合は中途半端に蘇生してしまったせいで”デュラハン”という存在になってしまったようだ。
     だが……蘇生魔術って時々禁忌の魔術として取り上げられることがあったな……だとしたら、セリーナは大丈夫なのか?
     もしかしたら、”セリーナ・ネルソン”という名前は、蘇生された存在ということを隠すために与えられた偽名かもしれない。
     普通にありそうな名前なので、偽名か、本名かはわからない。
    「――さん? どうしたんですか?」
     しまった! 考え事をしてて黙ってしまっていた!
    「すまん……考え事をしていた。ほら、セリーナって蘇生された元人間だろ? 追われる存在だとしたら俺は大丈夫かなって思ったりもした……」
    「ああ、それは大丈夫です。蘇生魔術は特に禁止されてるわけじゃないですし、よくある不老不死伝説も、実際は死ぬ度に蘇生してもらって結果的に不老不死になったって話もあるぐらいですよ」
     何かしれっと夢を壊すような話があった気がするが気にしないでおこう……あっ! もう午後7時だ!
    「あっ……夕飯の時間ですね。……あっ、身体が起きてきました」
     首のない身体が起き上がってくる。目をこするような手の動きだが、首がないのでこする目もない。
    「身体が今日の夕飯を作りますから待っててくださいね、今日は――さんの分もあります」
     えっ。身体が料理を作る? 首がないのに? 見るための目もないのに?
    「身体だけで大丈夫なのか? 見なくて大丈夫か?」
    「大丈夫ですよ、身体に何が見えてるかは感覚でわかりますから」
     身体は首がないにも関わらず、慣れた手つきで包丁を扱い、カセットコンロで具材を火にかける。
     20分後。
    「できたみたいですね」
     俺はセリーナの生首を持って台所近くのテーブルに向かう。できた料理は……
    「肉じゃがです……恋人に出す料理の定番かなと」
     その肉じゃがは、首がなくて身体の感覚だけで身体を動かして作ったものであるにも関わらず、かなりおいしかった。
     セリーナはおいしそうに肉じゃがを食べる俺を見て、嬉しそうな顔をしていた。
     その後、風呂に入って、寝る時間になった。
     セリーナは外した首をふわふわの籠の中に置き、そのまま寝息を立てて寝てしまった。
     俺は自分用の布団がないか探したが、ない。
     身体が俺の手を引っ張り、同じベッドで寝ようとする。
     おい! まさかそれで既成事実を作って……だが身体が俺の手を引っ張る力が強く、振り払おうとすると身体が悲しそうな素振りを見せたので、結局俺が折れて身体と同じベッドで寝ることにした。
     ……1つだけ言っておこう。
     身体に胸を押しつけられることはあったけど、”そういうこと”は一切起こってないぞ! 本当だ!
    水川青天 Link Message Mute
    2019/05/19 18:44:10

    8「Sleepover」

    #創作 #オリジナル #恋愛 #現代 #R15 ##現代に生きるデュラハンちゃんは他人の死を予言しない

    全力でR18になりそうな展開を回避していくスタイル。

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