5「Reborn」 俺はセリーナの突然の告白に戸惑っていた。
首が外れるけど美少女。席が隣。自分に好意を持っている。隣人。現時点で付き合うことを狙っている人はいない。
ここまでの好条件を目の前にしても、会って2日の相手を恋人にするということを、俺のどこかにあるプライドが許さなかった。
でも、思い返してみれば、このようなプライドが邪魔をして、俺はずっと1人ぼっちだった。そうかもしれない。
――あいつ怖くね? 話しかけても無言だし、呼んでんの聞こえてんのかな?
――この人すごく怖そうだから話しかけないほうがいいよ、絶対ろくな目に合わないから!
――ひっ……ごめんなさい!! お願いですから何も取らないでください!!
ああ。思い返してみれば、初めて友達になってくれようとしているの、セリーナじゃないか。
思い返してみれば、”怖い”とか、”近寄りがたい”と思われて、なら俺は誰とも接さないって、ちっぽけなプライドで他人を避けてきたじゃないか。
そう思うと、会って2日でいきなり告白してくるような無鉄砲さはあるけど、セリーナと付き合えば、もしかしたら何かが変わるかもしれない。
セリーナが告白してくれたことで、俺は、生まれ変われるかもしれない。
今日はセリーナと一緒に帰って、そして隣に住んでいる。
だから、告白の返事は、今やることもできるはずだ。
だが、やはり、人の性か、やはり告白にOKを出すのは恥ずかしい。
何を迷っている。俺は生まれ変わるんじゃないのか。生まれ変われるのは、今しかないんじゃないか。恥ずかしがってどうする。
「はぁー……」
俺は大きなため息をつく。
その後、3分ほどぼーっとしていただろうか、結局今から告白しようという気になれず、スマートフォンを取り出すと、いつもやっている音ゲーアプリを起動した。
……
「よっしハードクリア! 縦連め……苦労させやがって……」
粘着の末、ようやく目標の曲をクリアする。
曲の作曲者によく出てくる縦連打に苦しめられ、ずっとクリアできないでいた曲だ。
そして、目標の曲をクリアした途端、どっと疲れが押し寄せ、そのまま眠ってしまったようだ。
……
……何だ? こんな時間に何を……
突然鳴った呼び鈴。しかも呼び鈴を連打しているようだ。
眠い目をこすり、俺は突然の来客に対応しようとする。
開けてみると、焦燥した顔のセリーナ。
「ちょっと何してるんですか! もう8時半ですよ!!」
えっ……と思い携帯を確認すると、彼女の言葉通り午前8時30分。
まずい……寝坊してしまった! もう朝食をとっている暇はない!!
さっさと着替えて今日の準備をしなければ……!!
俺は素早く歯磨きをし、制服に着替え、忘れ物がないかチェックし、セリーナの前に現れる。
「行きますよ! でも……急いだら首が落ちて多分騒ぎになっちゃいますから、あまり走らないでくださいね!」
俺はセリーナと共に登校することにした。セリーナにとっては3日目となる登校だ。
だが、今日の登校への道が、とてつもなく険しいものになろうとは、俺もセリーナも、予想していなかった……。