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GALLERIA[ギャレリア]は創作活動を支援する豊富な機能を揃えた創作SNSです。

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    あぁ、書きまつがい 裏の世界にもITの波は確実に押し寄せてきて、SNSを使ってリアルタイムで情報を売る情報屋が出てきた。一瞬の判断が、生死を分けるこの世界。先に情報を手に入れたものが有利なのは、間違いのない事実だった。
     俺もいくつか懇意にしている情報屋がいる。しかし、そのうちの何人かはSNSのみの営業にしてしまい、表向きの営業を畳んじまった。仕事に関係なく、実際に顔を合わせて話すことも楽しみにしていた俺にとっては、残念な限りだった。

     もともと、俺は新しいメカが大好きだ。ナンパのネタにも使えそうだし、「そろそろ俺もスマホが欲しいなぁ……」と思い始めていた矢先、俺は突然教授に呼び出された。
    『ほれ。そろそろ来るかと思っての、お前の分を用意しておいたぞい』
     教授が示した机の上に置かれていたのは、二台のスマートフォンだった。「なぜ二台?」と思っていたら、一台は香の分だそうだ。
     盗聴ガード、電波ステルス、遠隔操作でのデータ完全消去……俺が求めていた機能は、教授の改造のおかげで全て搭載されていた。
     しかも、教授は裏の世界の人間が連絡を取りやすいよう、外部から完全に独立した新たなSNSまで立ち上げてくれた。これなら、仲間と安心して連絡が取れる。

     家に帰ってから、さっそく香にもスマホを渡した。香はしばらく本体を裏返してみたり、画面を覗き込んだりしていた。機械の類が苦手な香には、ちょっと高級なおもちゃになってしまったようで、そもそも何ができるのか、何に使えるのかもわかっちゃいないようだった。

     香は「何はともあれ、まずはケース」と言うので、駅前の家電量販店に連れて行ってやった。
     悪いが、仕事柄、本体は丁寧に扱ってやれない。壊れても困るので、俺は金属フレーム付きの頑丈なやつを選んだ。
     香は花柄やキャラもののケースを探していたようだ。俺が、「もうそんなものが似合う歳でもないから、ちゃらちゃらしたしたやつは止めておけ」と言ったら、香は特大のハンマーを俺の脳天に食らわせた後、俺と同じケースを選んでいた。色は俺が最初に選んでいた赤がいいと言ったので、俺は赤を香に譲ってやって、二番手候補だった青にした。
     レジで会計をしていたら、「お揃いのケースでお似合いですね」と店員の姉ちゃんに微笑まれ、二人してちょっと恥ずかしくなったのは、内緒の話だ。

     改めて家に戻り、ケースを装着してから、香に使い方をレクチャーした。電源の入れ方、電話の掛け方、SNSの使い方……。リビングのソファで肩を怒らせて、画面を睨みつけ、指先を震わせながら、香がスマホを操作している様は、傍から見ていて実に面白かった。
     コーヒーを飲みながら、練習がてら、SNSを使って俺へメールを送信させてみることにした。『SNS始めました』と俺に送るよう、香へ指示をしたら、これがとんでもないことになった。
     香は『SNS』と間違えて『SEX』と打ち込み、消そうとした。だが、慌てた香は、操作を間違えて、そのまま俺に送信しちまいやがった。腹を抱えて笑う俺の横で、香はスマホを両手で握りしめたまま、真っ赤に茹で上がっていた。
     香には、そのまま続きを入力するよう促し、俺は自分のスマホの待受画面を眺めながら待っていた。しばらく待っていたら、「あっ!」と言う香の小さな叫び声とともに、俺のスマホの着信音が鳴った。香は焦った顔をして、「見るな!」と叫びながら、俺のスマホを取り上げようとした。そんな香を難なく躱しながら通知を開いてみたら……。『はめました』の文字があった。どうやら『はじめました』と間違えたようだ。
    「やだやだ! すぐに消して!」
     まるでもっこりのときのように、全身を真っ赤に染めながら、香は俺の膝に乗ってまで、俺からスマホを取り上げようとした。俺にぎゅうぎゅうと柔らかな胸が押し当てられていて、思わず俺の顔が緩んでしまったが、香は俺の様子を全く気にしていなかった。
     香は何をそんなに慌てているのだろうと思い、香の届かないところまで腕を伸ばし、画面を再度確認してみると……。
    「ん……?」
     俺は、あることに気がついた。香のメールボックスにには、『SEX』『はめました』の文字が並んでいる。これだけ見ると、とんでもねぇメールだな。
    「ねぇ! 本当に消してってば!」
     香は尚も俺の上に座り、身体を密着させて、俺からスマホを奪おうとしていた。……ちょっと、いたずらをしてやるかな。
     俺は空いていた腕で、香の腰を抱いてやった。
    「あ! こら……!」
     香は今更ながらに、自分自身が置かれている状況に気がついたらしく、あたふたと俺の腕の中から逃げ出そうとしていた。無駄だ。もう逃しはしねぇよ。
    「誰とハメたんだよ、お前。俺の知らない間に」
    「……ちょっと打ち間違えただけよ! 離しなさいよ!」
     俺は香の身体を抱いたまま、自分のスマホをガラステーブルの上に置いた。
    「ちょっとの間違いか? 昨日だって、この時間はここでもっこり一発ヤって、その後も夜中まで散々ヤったよなぁ? それでも足りねぇってか……?」
    「な……!」
     ついでにびっくりしたまま、落としそうになっていた香のスマホを取り上げ、俺はそのスマホを飲みかけのコーヒーが残ったマグカップへ立て掛けてやった。
    「心の声が、指先を通して、つい文字に出ちまったんじゃねぇの……?」
    「違っ……! あんたと一緒に、しないで……!」
     キスしようとしたら、香は両手で俺の顔を押し返してきて、拒絶しやがった。仕方がないから、俺は香の両手をそれぞれ盗って、ソファの座面へ押し倒してやった。香は観念したのか、それ以上の抵抗は、もうしなかった。
    「……あと、知ってるか?」
    「何を……?」
    「スマホはなぁ……。動画が撮影できるんだぜ」
     俺は意味ありげに、マグカップへ立て掛けてあった香のスマホへ、視線を投げた。香はわずかに頭を上げて、俺の視線を先を確認した。
     香のスマホには、ソファの上で重なっている俺たちの姿が映し出されていた。
    「まさか……⁉」
     香は、今この場で起ころうとしていることに思い当たったらしく、俺の股間へ膝蹴りを食らわそうとした。俺は素早く体をスライドさせて、香の腰に馬乗りになってやった。俺の後ろで、香がバタバタと脚を振っているが、俺には届かない。これでもう、俺の勝利は決定づけられた。
    「もちろん、丸見えの完全無修正だ」
    「……変態! もっこりスケベ! いい加減に……!」
    「スマホの授業料にしては、安いもんだろ?」
     喚く香の唇を、唇で塞いで黙らせる。怒りの言葉も吐息も、全部俺が呑み込んでやったら、香はそっと、俺の首へ腕を回してくれた。

     それからと言うもの……。
     香は相変わらず、フリック入力に戸惑っていたようで、スマホを使い始めてからしばらくは、かなり痛々しく、笑える誤変換メールを俺に寄越してくれていた。
     ある日、絵梨子さんとの呑みに出掛けていた香へ、迎えの時間を訪ねたところ、『また後で変身するね』と返ってきた。またモデルの代役でもやらされ、似合わねぇ服でも着させられてんのかと思ったが、しばらくして『二十二時に、西新宿のサンライズホテルまでお願い!』とメッセージが来た。前後関係がよくわからず、ゆっくり読み返してみれば、『変身』は『返信』の誤変換だとわかった。全く、ややこしいな……。
     それから、こんなこともあった。依頼人とキャッツで待ち合わせていたときのことだ。用事があった俺は、香と別行動でキャッツへ向かった。香はもうとっくに到着しているかと思ったが、キャッツには香の姿はなかった。俺は、既に来店していた依頼人と思しき美女へ声をかけ、トイレに行くフリをしてスマホを確認した。香からのメッセージがあったが、そこには『ごめん! あと五年ぐらい遅れる!』と書いてあった。「……おいおい。そりゃあまた、盛大な遅刻だな」と心の中で呟いて、俺は席に戻った。
     恐らく、五分後に到着の誤変換。と言うことは、五分以内に依頼人を口説けば、お持ち帰りも可能ってワケだ。俺は香の到着前に店を出ようと、あの手この手で口説いてみたが、結果は見事に惨敗。依頼人からビンタを頂いたところに、ちょうど香が到着をして、さらにハンマーを喰らわされるという散々な結果だった。
     あと、この間は誤変換メールのせいで散々な目に遭った。香が出かけてしばらくしてから、ヘンなメールが届いたんだ。
    『この間、獠に送ってもらった写真、間違って消しちゃった。股撮って送ってくれる?』
     送ったものは確か、歌舞伎町の花屋で見つけたプリザーブドフラワーの写真だった。それなのに、随分と変な物を見たがるもんだと思いつつ、恥ずかしながら俺は、ズボンとトランクスを脱いで、股の写真を撮って送ってやった。
     ほどなくして、まるで怪獣でも歩いてんのかと勘違いする程の足音を鳴らしながら、香が返ってきた。無言で俺の部屋のドアを蹴り開けると、ベッドで惰眠を貪っていた俺を布団ごと縛り上げ、そのまま俺の部屋の窓から俺を投げ捨てやがった。いつもよりロープが長すぎて、地面に激突したが、絶対あれはわざとだったに違いない。
    『ヘンなもん送りつけんな! このバカーッ‼』
     窓からそう叫ばれたが、俺はどうしても納得がいかなかった。送れって言ったのは香だったのに、こんな仕打ちを受けるのはおかしいだろ?

     ちなみに、香は気付いちゃいないが、俺は香のスマホにとあるアプリを入れてやった。いわゆる「スパイアプリ」ってやつだが、香の居場所も見ているサイトもぜーんぶ俺のスマホで見られるようになっている。香がときどき、もっこり動画のサイトを見ていることも知っているが、動画の内容はいわゆる「How toモノ」ばかりだ。動画を見ていた夜は、その成果が披露されることも多く、俺の密かな楽しみとなっている。機種変更をしても、俺がその都度設定をするから、当分バレそうにないしな。香が機械音痴でよかったぜ。

                            了
    かほる(輝海) Link Message Mute
    2020/03/29 10:01:49

    あぁ、書きまつがい

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    シティーハンター
    冴羽獠×槇村香
    原作以上の関係

    ★このお話はもちろんフィクションで、ホテルの名前は実在しません。

    エアコミ開催記念の短編です。

    #シティーハンター #cityhunter #冴羽獠 #槇村香 #小説 #掌編 ##CH

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