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    アオはなんでも知っている(隊長限定) サタケ隊長の下についてよかったと俺が最初に思った点が、基本的に穏やかに接してくれるというところだった。隊長以前の上官は、俺が運に恵まれないせいか、気に入らないことがあると怒鳴るタイプが多く、俺でもそいつでもどっちでもいいから異動の辞令が下りてくれねえかな〜と思いながら仕事をしていた。それが態度に出るのか、上官からの当たりも強くなる。負の連鎖に陥っていた。俺にとって隊長はそれを断ち切ったくれただけでもありがたい上官だった。
     だが、あの人の部下を拝命して一ヶ月後、その認識が一部反転した。
     隊長は感情……本心を読み取りづらい。部下がやらかしても冷静かつ的確に対処をし、面倒な上官にも穏やかに接する男だ。仕事を回すためなら感情の表出をほぼ完璧にコントロールしてしまう。とくに上層部との折衝時はそうだ。正直すごい。だが今度は本音のありかを探って疑心暗鬼になってしまい、どうしたものかと悩むこととなった。
     そんな自分とは裏腹に、一年前に特殊機甲群に抜擢されたアオ・イサミは、危機察知能力も高い上、隊長の本音を一発で見つけ出してしまう。それには贅沢だが同じ悩みを抱いていた俺以外の隊長の部下たちも舌を巻いた。
    「退屈ですか?」
     小声で囁く声が端の方から聞こえた。今は特殊機甲群全体の飲み会が始まったところであった。座敷の高座で郡長が開始の挨拶をしているが、既に三分は経っているが終わる気配がない。優秀だし人格もマトモだが、こういう挨拶が長いのが欠点だ。正直誰か指摘した方がいいと思う。
     みんなが引きつった笑顔でありがたく拝聴する中でも、隊長はいつもの穏やかな微笑みでグラスを掲げていた。
    「馬鹿。はっきり言い過ぎだ」
    「否定はしないんすね」
     アオはちょっとだけ笑った。一+一=二みたいな当然な顔で。
     なんでわかるんだよ。今の隊長このスピーチが感動的な話みたいな顔で聞いてるじゃん。退屈してるようには全く見えん。
     アオやばいなと思っているうちに、ようやく乾杯の音頭をとってくれた。隣のクルミザワがグラスを合わせてきた。
    「かんぱ〜い! いやあ今日の郡長の挨拶超長かったっすね! 先輩が集めている昔の雑誌の話の方が面白いっす」
    「俺の話は有意義極まりないだろ。特に集めている戦前の少年少女向け雑誌は当時の読者が何に憧れたとかわかって面白」
    「うん、そうデスネ、面白いデスネ」
     お前、本当にそう思ってないだろ。そう言ってやろうかと思ったが、今は特殊機甲群全体の飲み会だ。中隊のだったらまだしも、全体での言い合いはやりにくい。
    「そういえばさ、お前、サタケ隊長がさっきまで退屈してたの、わかった?」
     しくじった。話題変えるにしてもこれはなかった。でも、クルミザワはそんなこと気にしてなさそうだ。
    「わかるわけないっしょ」
    「だよなあ」
     空気が読めるクルミザワも読めないのだ。あのときの隊長は完全に本心を隠していた。
    「あのときさあ、アオのヤツ、退屈ですか? って隊長に聞いてた。隊長も否定してないから、多分本心はそうだったんだと思う。アオすげえよな」
    「なんかアオは隊長に関することはすごい鼻が利く気がする」
    「どういうことだ」
    「今日の午前中の内勤のとき、十時位に腹減ってます? って聞いてたんスよ」
    「その時隊長普通の顔してたよな」
    「そしたら朝あまり食べれてないって隊長言ってて」
     一瞬周りの音が聞こえなくなったような気がした。なんでそんなことがわかるんだよアオ・イサミ三等陸尉。怖いわ。
     思わずアオの方に顔が向いた。いつも通り隊長の横で居酒屋飯を端から食べていく。若いんだからたくさん食って筋肉を育てろよ。
     隣の隊長は仕事中と変わらない穏やかな顔で酒を煽っていた。水のように飲んでいて、肝臓どうなってるんだよと思う。酒の強さは特機群で五本の指に入ると思う。比べたことないけど。
    「隊長、具合悪そうっすね」
     今なんて言ったアオ。隊長、酒を水みたいに飲むタイプだぞ。そんなことあるかよ。隣のクルミザワも間抜けな顔で隊長たちをみていた。
    「ん? そんなことないぞ」
     ほら隊長だってそう言ってるじゃねえか。
    「でも今日、隊長朝飯食えてないって……」
    「大丈夫だって、ほら……」
     そう言いながら隊長はグラスをつかんだが、その手からずるり、と滑り落ちた。幸いアオが受け止めたが、それがなければどうなっていたか。
    「だから言ったじゃないスか。そろそろお水かお茶にしましょ」
    「今はたまたまだ、たまたまなんだよ」
     隊長は往生際悪く酒のグラスを掴もうとする。アオは万が一グラスを落としても大丈夫なように手をグラスの下に添えてる。
     アオ、がんばれ。でもなんでお前隊長のことそんなにわかるの? 一心同体か。
     今度その秘密を探ろうかと思いつつ飲み干した酒は、氷が溶けきって薄くなっていた。

    End.


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    以下、ダイダラ2〜4の設定

    ウメハラ:副隊長、一尉。30歳。ダイダラ2。ダイダラ中隊唯一の妻帯者。面倒見のいい性格で豪放磊落。だが、危機管理はかなりできる。TSは狙撃など遠距離支援が得意で、基本を抑えた運用ができる。妻は同じ自衛官で単身赴任。

    ミドリカワ:二尉。27歳。ダイダラ3。基本的には理知的で優しいが、趣味のことになると見境なく語り出すのが玉に瑕。そのせいか恋人と長続きしないのを気にしている。美形。TSは中距離支援を主としているが、白兵戦も得意。剣道の有段者。

    クルミザワ:二尉。25歳。ダイダラ4。わんぱくさを残して大人になったような人だが、要所では年相応に振る舞える。TSは近接戦、特に白兵戦が得意。
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    2024/07/03 21:37:50

    アオはなんでも知っている(隊長限定)

    ##表 #bbb #サタイサ #ダイダラ中隊

    https://x.com/yuritano_fuu/status/1791824090774515807 これを元に書きました。
    サタの表に出ない本心もわかるイサの話。

    ※捏造ダイダラ3、4が出ます。
    2ページ目に当方のダイダラ2〜4の設定あり。

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    パスは小説の最後にあります。

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