Open your eyes.「またゴミを出しっぱなしにして……」
霧見のこめかみに青筋が浮かび上がる。
ソファでひっくり返っている探偵の側には複数の空き缶。狭い事務所にはアルコールの臭気が漂っており、一目でどういう状況か理解出来た。
「(『缶は洗って潰してゴミ箱に』っていつも言ってんだろこの野郎……!)」
マヌケ面を晒して寝ている男を叩き起こすべく、大股でソファに歩み寄る。
「おい、起きろ馬鹿探偵」
揺り動かすと影山はムニャムニャと寝言を呟きながら寝返りを打つ。一発張り手でもかましてやろうかと考えていた丁度その時、長い前髪が頬を滑り、閉じた左目が露わになった。思わず霧見の手が止まる。
変色し、赤剥けた皮膚。”あの事件“で負った火傷痕。ずっと見てきた筈なのに、目が釘付けになる。暗い部屋で虚に笑う男の姿がフラッシュバックする。泣いても祈っても戻って来ない無力感。絶望に苛まれた日々。次こそはと何度も腕に針を突き立てて、そして____
「みっちゃん?」
ふと、目が合う。眩しそうに瞼をショボつかせる影山を見て、霧見は自分が何時にいるのかを思い出した。
「おはよー」
「……“おはよう”じゃないこの馬鹿!」
呑気に欠伸をする影山の頭をはたく。
「職場で酒飲んで寝落ちとか、ダメな大人の見本市か!? 客が来たらどうすんだ!」
霧見はブツブツと小言を呟きながら素早く空き缶を回収した。
「痛いよおかん……」
「こんなデカいおっさんを産んだ覚えはない!!」
血圧を上昇させながら流しに向かい、乱暴に蛇口を捻る
「さっさと顔洗え探偵」
「はいはい」
「はいは一回!」
「はーい」
「短く! 小学生か!?」
神経質な助手とズボラな探偵はいつも通り騒いでいる。
探偵事務所は今日も概ね平和だった。