イラストを魅せる。護る。究極のイラストSNS。

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    しおり
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    しおり
    お巡りさん新人達に会う2注意!
    ・影屋敷原作沿い夢小説
    (今は原作前を連載中です!エミリコたちとの絡みが終わったら原作沿いです)
    ・原作に出てくる、単語や言葉などのネタバレが含まれます。
    ・オールキャラ登場予定でキャラ崩壊注意です
    ・主人公は男性です。兄弟愛含む微恋愛要素あります
    ・星つき、新人、マリーローズ様ローズマリー寄りです。


    今回の注意事項
    ベルたちに手錠をかけてます🙇‍♂️
    ベル好きさんたちごめんなさい。
    このお話ではまだ双子は悪い子です。ちゃんと本誌通りにいい子になる予定です!!
    触れ合いを生き人形じゃないのにシャドーにしちゃってます。
    ルイーズ様編は注意!



    登場予定の新人は
    パトリック様、リッキー
    ルイーズ様、ルウです。
    ちょい、シャーリー様の部屋にも行きます。



    主人公
    暁 やしお
    26歳
    お巡りさん
    甘いものが大好きな警察官。
    弱いものいじめをする輩が大っ嫌い、みんなに優しいシャドー、人形になって欲しい。シャドーハウス の掟に疑問を抱いてる。
    一部からは行き遅れって噂されてる。
    意外とナイーブ。



    そんなこんなでエドワードから与えられた任務は3回目を迎える。
    ジョンと同じ新人の男の子シャドー。
    パトリック・シャドーと生き人形・リッキー。
    ジョンの様にやしおが来たかと思って大慌てで出てくる様な素振りもなく優雅に出迎えてくれた落ち着いたシャドーの様だった。しかし、横柄な態度が少し気になる。これでは友達は出来るのか?

    生き人形の方は優秀のようだ。
    リッキーは紅茶を出した後にパトリックの顔に専念する。リッキーは強気で自信のありそうな顔を作るのだが、パトリックって本当にこんな顔をするのか?とややシャドーハウスの掟に反しそうな疑問を持っていた。

    「アカツキは生き人形なのに主人と離れて子供たちの塔で仕事をしてるってことか」
    「まぁ、そんなことだな」

    本当は主人なんていないし自分は遠い未来から来た人間。でもそんなことを言っても信じてもらえないしここでの立場は危うくなるかもしれない。忘れていたがいつか帰れる時のためにここで働いていたのであった。多忙すぎて忘れることがある気をつけよう

    「それは、その、つまり……」

    パトリックが言葉に詰まり口をモゴモゴしだした。それをリッキーが颯爽とパトリックに助け舟を出す。そしてこそこそ話をするかの様にゴニョゴニョと言い出した。

    そしてやっと口を開いた。

    「主人のそばに居られないような出来損ない」

    やしおはその場で殺到しそうになった。
    何故そうなるのだ、確かに主人はそばにいない。いや彼に主人は存在しない。
    やしおは頭を抱えた後にパトリックとリッキーの肩をすごい力で掴む。

    「ひっ!!!」
    パトリックから小さな悲鳴が漏れる。
    「あ、パトリック様になんてことを!行き遅れ!お前の悪い噂は他の生き人形たちから聞いてるからな!!」

    彼の口からの他の生き人形、行き遅れという言葉が出てきたということはもう既に朝掃除に参加してるということか?とやしおは思う。
    いや、でも見かけたことはない。
    あぁ、そうか、最近ベルがラムのことをいじめるから庇いつつ掃除をしてるから他の班に行けてなかったのだ。あ、ひょっとするとこの子はダグラスたちの生き人形の班か?
    やしおは悶々と考えつつパトリックとリッキーが逃げない様にする。

    「あーのーな」
    そして2人のセットした髪の毛をわしゃわしゃとかき撫でる。

    「大人になるとずっと一緒ってわけにいかねぇの!!!俺だって主人と一緒にいたい!!でもなぁ、離れなければならない大人の事情ってもんがあるの!お前たちは今は生まれたてでこの部屋と子供たちの塔にしか世界はないかもしれないけど世界は想像してる以上に広いの!!そう簡単に役立たずとか言われて困るな!」

    これでも精一杯オブラートに包んで注意をしてる。しかし、顔が怖いのでリッキーは冷や汗を流しパトリックからはとても薄い煤が出てくる。
    意外と臆病で繊細の様である。そして
    「ご、ごめんなさい」と謝罪の口調を口にできたということは素直なところもある。リッキーも汗を流しながら深々と頭を下げる。

    「分かればよろしい」

    やしおは一度怒っても根に持たないタチなので快くパトリックとリッキーのことを許す。
    今回はあちら側に失言があったので表現は正しい。

    「でもな、あまり失礼な言い方をしてると友達とかできないぞ?」
    「と、友達?!いらないそんなもの!![[rb:俺> パトリック]]は星つきになるシャドーだ!友達なんて欲するやつはシャドーハウスのお荷物だ!捨ててやる。」
    「そんなこと言うもんじゃないぞ」

    パトリックに5名の同期がいることをこれは教えてもいい事項なのか分からない。
    ただ、まだ部屋の外にも出てない世間知らずの坊ちゃんシャドーにこのことを伝えてもジョンやシャーリーやまだ見ぬ2人が悪く言われるかもしれない。自分のことは言われてもいいけど他のシャドーのことを言われたら気分が悪い。

    「なぁ、パトリック、リッキー。友達はいいもんだぞ。特に同期は友達になりやすいし一生もんになるかもしれない」

    やしおは気持ちを切り替えて努めて明るい口調で友の良さを2人に説く。人形の自分が話しかけられるなんて思わなかったリッキーは顔を解いて少し驚いた顔をしていた。

    「おい、顔に話しかけるな」
    「え、だって俺はリッキーとも話してみたい。
    パトリックの顔だろ?話したら知的で面白いはず」

    なんてヨイショすればリッキーは驚いた顔からドヤ顔になる。

    「アカツキ様がそこまで言うなら…」

    こいつら、嫌味とかやっかみなんか言うけど本当はいい子達なんだろうなって思う。

    「ありがとう、リッキー。面倒かけて悪いな」

    やしおはとても優しい顔で微笑む作り笑顔ではなく本当の笑顔であった。そして話を戻す。

    「ここで生きていくのであれば味方は必要だと思うぞ?ここは少し特殊かもしれないって俺は思うんだ」
    「でも、パトリックたちにはいらない。[[rb:俺> パトリック]]が星つきになるための踏み台にしてやる、そんな奴らゴミ同然だ」
    「パトリック様が選別したゴミは俺がちゃんと綺麗に片付けますよ」
    「さすがリッキー」

    キャイキャイと鏡合わせで座って盛り上がるパトリキにやしおはまた頭を抱える。素直だけど素直すぎて案外手強い組かもしれない。みんな踏み台じゃないし、粗大ゴミじゃないよ、どう説明すれば分かってくれるのか。

    「踏み台にしちゃいけないし、ゴミじゃないんだよ、もーー」

    だんだんと頭が痛くなってきた。
    自分の職場にパトリキの様なやつは確かにいた。
    同期でマジで嫌なやつだ。人の粗を探し、見つけると上に報告して蹴落とすやつ。やしおはそんなやつが死ぬほど嫌い。絶対にそんなことしなかった、踏み台にされたやつを庇うほどの正義感を持ち合わせてるのだがそのせいで上からはあまり好かれてなかった。
    しかしパトリキはまだ子供なので改善する余地はある。
    子供のうちからしっかり教育しておいた方がいい。じゃないと大人になってから腐るかもしれない。見捨てるわけにいかない。

    「いいか!!!パトリック!リッキー!よぉく聞け!!」

    黙りを続けていたやしおはいきなり大きな声を出す。するとまたパトリックとリッキーの体がびくついた。

    「他のシャドーや生き人形に酷いことをしてるな!!いつか因果応報で悪いことが起きるぞ!!それでもいいなら踏み台にするなり、ゴミと見做して捨てるなり好きにしろ!!!」
    「い、いんが、おうほー?」
    「なんだよその言葉…聞いたこともない!アカツキ様、デタラメ言わないでくださいよ!!」

    因果応報とは仏教用語のとして容易られており
    善因には善い行いが、悪因には悪い行いが返ってくると言う教えである。
    仏教を信仰してる国に住んでるのであれば一度聞いたことがあるはず。
    シャドーハウスにそれに似た言葉は伝わってるのだろうか。いや絶対に伝わってない。

    「因果応報の法則って言ってな、絶対にそう言うことはあるの!!遅かれ少なかれ回ってくるの!!お前たち横柄な態度をしてるとな!くるからな!おっそろしい者が!!」

    多分今のパトリキに何を言っても通じないと思う。案の定パトリックには不快感を表すさすが少量出てるしリッキーは顔を真っ赤にして怒ってる。

    「そんな恐ろしいものなんて来ません!俺がパトリック様をお守りします!!デタラメ言うな!この行き遅れ!嘘つきが!!!部屋から出ていけ!」
    「リッキー、意味わかってんのか?」

    行き遅れと言うのは結婚が遅れてることを指す。
    生まれたての生き人形がそれを知ってるとは思えない。婚約のことも知識があるとは思えない。

    「知らん!!!」
    「いいか言葉を使うときは意味を調べてから使え!」
    「いいから出ていけ!パトリック様が怖がってる!」

    半ば押し出される形でパトリックとリッキーの部屋から出されてしまった。

    「二度と来るな!」

    パトリックが薄い煤を出しながら叫ぶ。

    「いや明日も来るからな!!」

    やしおも負けじと大声で言った。
    3回目の部屋はシャーリー・ラム組に続いて波乱万丈だが前の組よりも書くことがいっぱいは細く微笑んだ。ただし、パトリック・リッキーを落とす様なことは書かない。

    「まずは一、二枚執筆だな〜!!!」

    やる気に満ちた状態で自分の部屋に帰り机に座る。さて、いざやろうかと羽ペンを持つ。しなひリズム良くノックの音が響いた。
    何だよとやしおは首をすくめて「どうぞ」と扉を開けて出迎えると立っているのはお世話係のスザンナとその生き人形のスージー。

    「アカツキ様、お仕事ちゃんとしてる?」
    「訪問が終わってさっき帰ってきて一、ニ枚書こうとしてるところだよ」
    「そう、仕事が捗る様に珈琲を淹れてあげるわ」
    「できれば紅茶にしてくれ」
    「だめよ、砂糖入れてあげるから飲みなさい!本当は苦い方がいいのよ。ありがたい飲み物なのに
    バーバラがカンカンだったわよ」

    ここに監視員兼お守り役として赴任してきた時からスザンナは世話を焼いてくれてる。
    スマホ目当てでくるオリバーとオリーとは違う押しかけ女房的なやつだ。
    やしおの部屋の掃除や、食事を運んできたりしてくれるのは顔の見えない人形がやってくれるけど
    細々とした世話はスザンナとスージーがやってくれる。医療班の仕事や星つきの仕事で忙しいはずなのに…やしおは本当に感謝していた。

    「なんか毎日悪いなぁ、ちゃんと休んでるのか?」
    「ンフフ、心配はご無用よ。アカツキ様は自分の心配をしたら?大人たちの塔から下された任務の他に自分で仕事を増やしてるんだもの」

    勝手に増やした仕事というのは生き人形たちの朝の大掃除くらいだ。

    「だってあいつらだって大変だよ」

    スザンナの横についてるスージーを見つめる。
    スージーはスザンナの表情に専念してる。ここにいる歴が長いのかどの生き人形たちよりもスムーズだ。視線には気がついてる様だが態度には出さない。

    「生き人形に気持ちなんてないのよ?、全くおかしな事を言って…」

    怒るような口調というよりも子供を嗜める様な感じで言われる。バーバラは叱る様な口調で言ってくるが。スザンナから煤は出てないから不快には思ってないはず。

    「悪りぃ、ついつい…」
    「それよりもほら手を動かすのよ!!ジョン・ショーン組よりは書かなきゃいけないんだから!その二倍よ!」

    パンパンと手を叩きやしおに集中する様に促す。スージーが砂糖とミルク増し増しのコーヒーを淹れてくれて持ってきてくれる。

    「アカツキ様、どうぞ」

    顔をやめてやしおに話しかけてくる。
    因みに星つきの生き人形たちと話す機会はバーバラたちと比べたら少ない。まぁその中で一番多いのはオリーとバーバラが煤をたくさん出して会話不能になって寝込んでる時にバービー。その他の2人は話す回数は少ない。

    「ありがとう、スージー」

    やしおが笑いかければスージーもニコリと優雅に微笑む。スザンナにも顔があったらこんなふうに笑うのだろうかと思う。

    受け取った珈琲を一口飲む。
    スザンナはジョン・ショーン組の資料を見てクスクスと笑っていた。

    「何笑ってんだよ?、なんかおかしな間違いでもあったのか?」

    執筆を止めて簡易されてるソファに座ってるスザンナに近づき資料を覗く。スザンナはトントンと緑色の貴婦人がつけるような綺麗な手袋でとある項目を指さした。

    「恋をしてる、てジョンが言ったの?」
    「うん、詳しいことは知らないけど」

    全て知ってるけど嘘をついた。
    お披露目が終わってないシャドーは外に出てはいけない決まりなのだから、ジョンはその決まりを破ったということになる。
    深く追及されるか?あれこれジョンへのフォローを考えながら返答を待つ。

    「可愛いわねぇ〜」

    めちゃくちゃ意外な答えだった。

    「え、意外。怒って追求してくると思ったのに」
    「恋は自由だと思うわよ、どうせ本の中に出てくる何かに恋でもしたのよ。ジョンって子は」

    恋は自由か。ほう、スザンナはやしおと同じような考えを持ってるようだ。

    「スザンナは好きな奴いるのか?」

    単刀直入、ドストレートな質問。
    この男は恋バナが好きである。
    スザンナは投げかけられた質問に固まってる。
    困った質問をしたやしおは目を輝かせて返答を待ってる。

    「れ、レディの恋路を聞くなんて失礼よっ!」

    スザンナからは大量の煤が出てきてスージーはムスッとした顔を作る。

    「アカツキ様から教えなさい!」
    「大人に興味を持っちゃいけないじゃなかった?」とさらっと言い返せばスザンナの口から恐ろしい言葉が出てきた。「[[rb:私> スザンナ]]たちはあなたのこと大人じゃなくって大きな子供だと思ってるから」とハッキリとした口調。

    「大人達の塔から派遣されたんですけど」
    「んー、なんか違うのよね?なんだろ?雰囲気?迫力がない?覇気がない?わがままだし!!あの方たちはアカツキ様みたいなことしないわよ!」

    あ、比べられた。
    確かにエドワードやトマスや顔を思い出したくもない三階の住人のような気高い雰囲気はない。
    悪く言えば子供っぽい、良く言えば親しみやすいここの前例のない大人だった。

    「覇気がないっいうけどさ、あいつら近寄り難いしさ」
    「だから言ってるのよ、本来なら簡単に口に出しちゃいけないの!!親しみやすいだなんて言語道断よ!」
    「今口に出してるし、タメ口…敬語」
    「アカツキ様が悪いのよ」
    「理不尽」

    ピシャリと吐かれてやしおは肩を落とす。
    そんなに、迫力ないか?顔が怖いのに?雰囲気に覇気がないか。ちょっと落ち込むのであった。
    そんなやしおをみてスザンナは「何落ち込んでるのよ」と優しく背中をさすってくれた。
    ほぼ、スザンナが原因であるが。
    やしおはまた報告書を書き始めたのでスザンナはその大きくて逞しい背中でスージーと好き勝手しつつ覗いてきた。

    「友達が必要ってあなたね…またバーバラに怒られるわよ」

    書いた行を見てスザンナはダメ出しをする。

    「いーだろ!俺が感じたことなんだから!」

    やしおは自分が罵倒されたことを省いてスザンナにパトリキとあった出来事について話す。

    「あら、優秀な子ね!将来有望よ!」

    怒るところが逆に賞賛してる。
    やしおは肩を落とした。

    「野心と向上心がある子はね伸びるわよ」
    めちゃくちゃ感心するスザンナ「
    「それはあるのは大したもんだと思う、でもな友情も大切だろ?」と内心たじたじしながらやしおはとうと
    「そういう子って長くはいないのよね」と恐ろしい返答が返ってくるので目眩を覚えた。
    やっぱりここの屋敷は普通じゃない。
    いや顔のない存在がいるので普通じゃないのだが…
    やしおは机の上にあった警官帽子を無意識のうちに撫でた。


    スザンナね思ったんだけどアカツキ様って甘いわよね?よく言われない?」

    子供達にだけは甘いだけで大人には厳しい。
    少し、侵害だと思う。

    「まぁ、私はそこは良いところだと思うわよ!」

    褒めたいのか貶したいのかわからない。
    やしおははっ〜とため息をついた。やしおの
    半年分の幸せはとっくに逃げてるだろう。

    「ありがとうよ」

    お礼を言ってスザンナとスージーの頭を優しく撫でた。
    野心家で蹴落とすことできる奴が生き残れる世界なんて、でも、大人になった時は時には味方も必要だから頭の中でゴチャゴチャやしおは考える。
    本当にここは自分の考えと他人の考えが極端に違うから驚くことだらけで疲労する。
    執筆中だった手を止めてグデーと机に突っ伏す。
    書くことはいっぱいあるのに言葉にすることができなかった。

    「アカツキ様、余計なことは考えちゃいけないわよ。ここの事を考えてればいいの。簡単よ、だんだんと不安は無くなるんだから」

    まるで母親が幼い子供に諭すような優しい猫撫で声で言いながらスザンナはやしおの背中を優しく撫でていた。
    余計な事を考えるなって言われても考えてしまう。
    子供達の塔の全員の将来とかお呼ばれされた時に性根がみっちりと腐った別棟でやっていけるかどうか。これはきっとここでは余計な事なのだろうけど。お守り役なんだしあいつらの将来を心配してもいいだろ?

    そしてこれからお披露目で成人するか、しないか
    否、決まる五対。

    「とりあえずパトリックとリッキーには明日謝ろう」

    励ますように自分の体をさすさすしてくれてるスザンナには聞こえないように呟いた。

    ********

    「ベーールー!!!!!!」

    朝掃除の後にパトリックの部屋を再度訪問する予定であった。しかしやしおの怒号が子供達の塔中に響き渡る。
    やしおの足元で泣きじゃくってるのはラム。
    その周りには集めた煤が散乱していた。
    こんなことここの班を手伝い始めてから日常茶飯事だが流石に今日は怒ってしまった。
    やしおに怒鳴られてる双子のベルは澄ました顔をしていた。
    響いてないようで、二つに結ぶ綺麗な髪の毛をふわふわと撫でていた。

    「双子、おまいら…それが怒られてる時に聞く態度か?」
    「私たちは悪くないわよ、ね?」
    「そうよ、転んで煤をぶちまけたこの子が悪いわ。何度目よ?うんざり」

    双子がラムを箒か何かでつまづかせて転ばせたのだ。やしおはその一部始終を抑えていたから今日は怒鳴った。野次馬的生き人形達はオロオロしたり、面白いものを見たかのようち修羅場をくすくす笑ったりしてる。一番笑ってるのはタグ班でダグラス達の生き人形だ。
    笑ってるタグ達をやしおはおもいっきり睨みつける。

    「ラムが進んで転んだわけじゃなくって…お前達が転ばせたんだよな?俺見てたんだけど…」
    務めて優しい声でやしおは双子に伝えた。顔は笑顔だが怒りの四つ角ができてる。
    「嘘つきはダメだぞ?」
    「嘘なんかついてないわよ、アカツキ様はお掃除が好きなんでしょ?やっておいてね」

    憎たらしい澄ました顔をして心もない事を言うベルにやしおは怒りが頂点に達する。

    「分かった、お前達はもう、掃除をしなくていいよ?」

    めちゃくちゃ優しい笑顔だった。逆に周りの生き人形達が違和感を感じるくらいに不自然な笑顔。
    流石のベル達も憎たらしい澄ました顔を止めてやしおを訝しげに見る。
    その瞬間だった、四つの手にガチャリと無機質な音が響く。
    四つの目は大きく見開いた。
    信じられないといったような顔をしてやしおを見つめる。

    「ちょっと何よこれ?!」
    「外して!外してよ!」

    ベルの顔が一気に恐怖で引き攣る。
    ダグたちは自分の主人がされた事を思い出して顔色を真っ青にさせて涙目になった。

    「掃除しないんだったら両手使わないよなぁ」

    やしおは掃除用のモップを手に取ると拭き拭きと
    煤を取り除く。
    始終双子は喚いていた、やしおへの暴言がほとんどだ。
    ラムとマギーはチラチラと双子を見ながら同じように巻き散らかした煤を掃除をしていた。

    「ひゅー!!!!やしお!!かっこいい!!!」

    ミアは双子のことが嫌いなのか遠くの方からやしおに向かって黄色い声援を送ってくれた。
    それをローズマリーに嗜められてる。

    「もういいわ、バービーに言いつけてやる!」
    「あんたなんか、バービー達に処分されちゃえばいいのよ!!」

    双子はそう捨て台詞を吐くと手錠をつけられたままバービー達のところに行ってしまった。べつにあの四対に怒られても痛くも痒くもない。

    「やしお…大変なことになっちゃったね…あの2人ね星つきたちのお気に入りなの。特に、スージーの…」

    マギーがオドオドした様子でやしおに伝える。
    屁にも傷にもならない情報だった。

    「へー!でもなぁ、贔屓してる方が悪いよな。お巡りさんさ、そういうの一番嫌いなんだよなぁ、大丈夫なんか言われたら贔屓してる方が悪いって言い返すから」

    やしおも存外大人気ない男である。
    だいたいバービー達は子供達の塔のトップなのにいじめを見なかったことにしていていいわけがない。

    「また、蹴り入れられちゃうよ」
    「あんなの痛いうちに入らないよ、もっと痛いのを食らったことがある」

    笑い飛ばしながら言えばマギーや他の生き人形達の少し顔色を真っ青にさせる。やしおの本業は警察官なので怪我や暴力なんて日常茶飯事である。

    「んと、俺が食らった中で一番やばかったのは爪を…」

    聞いただけで総毛立つほどの痛々しい話を語り出そうとするもんだから「やめて!やめて!」「さあ、掃除の続きー!!」「余計な事を考えるな、余計な事を」生き人形達は必死に止めに入る。野次馬達も含んでみんなでやしおの話を遮った。
    その中にリッキーもいた、やしおとパチリと目線が合うと気まずそうに目を逸らした。

    こうして、なんとか掃除が終わった。
    掃除が終わった頃に嘘泣きをしながら双子はバービーとスージーに連れられてやってきた。

    「ちょっとアカツキ様!!!、ベルに何で、てじょーなんかつけたの!!怖がってるじゃない!外してあげなさい!!」

    顔を覆い隠して肩を震わせるベル。頬をよーく見ると涙の跡なんてない。
    絶対に嘘泣きだ

    「嫌だ!まぁ、ラムにちゃんと謝るなら外してやってもいい」
    「この、生き遅れ…貴様のやることでバーバラ様に迷惑がかかるんだ!」

    バービーが威嚇のように壁をドンッと拳で殴る。そんなことで怯むやしおではない。
    「は?バーバラに迷惑なんてかかってねぇだろ?」と吐き捨てるように言ってバービーをガン無視する。
    「バーバラ様を侮辱するのか?!聞け!!行き遅れ!」ビービーと喚くバービーの頭を押さえつける。そしてベルたちを優しくさするスージーとさすられてるベル達を見る。その目は怖かった。


    「だから、ラムに意地悪した事を謝るんなら外すよ?、謝る気ないよな?ベル?」

    やしおが少し怖い口調で言えば肩を大袈裟に揺らして嘘泣きをしてる双子のベルはビクッと肩を震わせる。

    「おい、バービー、スージー、ちょうどよかったわお前達に話しておきたいことがあったんだ。特にスージーな。お気に入りを囲うのはいいぞ。本人の自由だ。でもな他の子をいじめて掃除をサボるような奴を班長にするのはどうかと思うぞ」

    本人がいるのにオブラートに包まず真っ向にやしおは伝えた。すると流石の双子も嘘泣きをやめて心底ショックを受けたような顔をした。

    「ちょっと…」
    「班長にするんなら、心優しくて他者を思いやれる奴にしないとな。まぁ、ここは踏み台にしなければやっていけない場所なんだろうけどそんなことをしても新人育たないし、楽しくないよ」

    どうせ、伝わないと思ってる。伝えるのも自分のエゴ。でも伝えたい大切な事だ。
    スージーは俯いて何も言わない。双子達はワナワナと体を震わせていた。
    バービーなんて怒りで顔を般若にさせていた。

    「今回は俺が悪かったよ。女の子に増しては子供に手錠なんてつけるべきではなかった」

    じゃあダグラス達には良かったのか?それを疑問に思ったらキリがない。
    やしおは優しく鍵で双子の手錠を外してあげた。
    そして、怪我はないか確認しようとするがその手を振り払われた。

    「あぁ、ベル!!」

    双子はウサギが狼から逃げるように凄い勢いで逃げ出す。

    「嫌われた」とやしおが呟けば
    「当たり前よ!!!?最低よ!女の子にてじょーをつけるなんて!!アカツキ様がそんな大人だなんて思わなかったわ!」

    スージーにぷいっとそっぽをむかれてしまった。
    別に嫌われてもいいが、弁解の余地はこちらにある。

    「あれはな」
    「言い訳なんて聞きたくない!!いい事?!ベル達にちゃんと謝りなさいね!!」

    謝るべきなのはベル達である。
    やしおにではなくってラムにだが
    スージーは相当ベル達がお気に入りのようだ。
    やしおはラムの方を見る。遠くの方で人差し指に付けてる指輪を見て震えてる。
    やしおの拳は震えていた。
    スージーはプリプリと怒ってその場を立ち去ってしまった。
    バービーはやしおのしたで大暴れをしてる。
    存在に忘れていたので手を離せばキリッとつねってくる。

    「いで、いででででで……」
    「貴様は勝手なことばかり、その行動こそがバーバラ様の迷惑に繋がるって分からんのか!」
    「双子に説教したくらいで大袈裟だな!!」
    「星つきの品格と威厳が見られるのだ!!!」
    「お前達の威厳は無限に有るからそう簡単になくならない。寧ろ怖いって言われてるから、よっ!独裁政治」

    やしおが図星をつけばいつもだとツンと澄まして怖い顔をしてるバービーでも怒りで顔色が変わる。

    「処分してやる!!!!」

    持っていたベルをチリンチリンと鳴らし、ものすごい勢いでやしおを追いかけ回す。当のやしおは飄々とした様子で逃げまくる。 

    「きゃー!!バービー怖ーい!!!バーバラはそんな野蛮じゃなーい」

    煽りに煽って逃げまくる。
    遠くの方でベンとオリーが追いかけっこをする大きな子供とバービーを見つける。
    ちなみにこれはいつもの光景になりつつある。

    「またやってる……」
    「やしおには困ったものだ」

    ベンとオリーは呆れ果てた顔をして大きな子供基、やしおを見つめた。


    そんなこんなで大掃除が終わり、まだ会えてないシャーリーに扉越しで話しかけてみたり、シャドー達のお茶会に参加したりしたせいで、パトリック・リッキーの部屋に行くのが大幅に遅れた。
    夕飯前だし開けてくれるかどうか定かではないがノックをしてみると。
    その音に反応してドタバタと何やら慌てていた。
    リッキーが落ち着かせる声が聞こえてくる。
    そして、数秒後に扉が開いた。

    「よ、よくお越しくださいまし、た」

    心臓が飛び出るんじゃないかってくらいにカチコチになっているパトリックに驚いた。
    初日は敬語なんて使ってなかったのに

    「だ、どうした?!」
    「ささ、どうぞお入りください!!」

    リッキーが隙間から飛び出してきてやしおの背中を押す。
    え、何事?!
    状況が飲み込めずにパトリキに拉致られる形でやしおは部屋の中に入れられる。
    そして、今までにないくらいに丁重にもてなされた。

    一体どうした?!昨日と今日の間でその心変わりは何?

    「昨日は本当に申し訳ございませんでした!!」

    テーブルに頭をぶつけるんじゃないかってくらいに勢いよくパトリックとリッキーが頭を下げる。この時代の貴族が謝るなんた前代未聞のことだ。
    やしおはパトリックとラッキーが頭を打たないように手を出してガードする。


    「どうした?どうした?どうした?」

    あんまりなことだったのでやしおからは驚きの声が漏れた。努めて優しい声で聞く。

    「アカツキ様が、ここのお守り役として大役を任されてきてしかもすごく優しくて立派な方だってリッキーが班長から聞いてきたらしい…そしてその今朝の勇姿も」

    要するに昨日変な大人の男が訪問したきたと言ったらやしおであることを教えてもらって、しかも優しくて、すごく偉い方だと教えてもらったらしい。お披露目前の抜き打ちってことになって噂が広まってるらしい。女の子生き人形に手錠した話が広まってんのかよとやしおはゾッとする。そして自分の悪い癖を改めようと思った。

    (ビリー、そこまで褒めなくってもいいのに)

    「同期がいるんですけど、そいつに班の面汚しって言われました…」

    リッキーは怒りでわなわなと震えていた。
    そんな大袈裟なとやしおは思う。

    「ショーン、一緒の班なのか!会いたかったなー。というか良かったな!!あいついい子だぞ!」とショーンを褒めればリッキーはぷいっとそっぽを向いてしまった。

    あ、あれだ、あんまり仲がよろしくないようだ。

    「でもよ、同年代の同期が一緒だから…」

    リッキーは目を合わせずに首を横に振る。どうやら根本的に合わないようだ…なんてこった。
    パトリックからも煤が少し出てる。昨日と今日でなんとなく分かったことパトリックは煤量が少ないってことだ。

    「とりま、仲良くしろよ。あんまり好きじゃなくっても大人になるとそういうやつともやっていかなきゃいけなくなるんだ…」

    遠い目をしてやしおが語ればパトリックはさらに煤を出しリッキーは顔を歪める。

    「もう、あと何十年も先の話だけどな…」

    やしおは現実に戻りパトリックとリッキーに伝えれば
    「あの……」とパトリックはやしおの顔色を伺うように見る。

    「昨日のは俺も悪かったよ。考えを押し付けすぎた。大事だよそう言う意気込み。だから不問にするから安心しろ」

    パトリックからの煤は出なくなりリッキーも安心した顔をする。意外と繊細なんだなとやしおは2人を見て思った。
    ちなみにやしおは警察官の服を着て帽子を被ってる。パトリックはそれをじっーと見つめていた。
    それに気がつき、人差し指で警察官帽子を指差し「これか?」と聞く。
    パトリックは急に狼狽え始めて
    「べ、べつに!!なんだよ、急に!」と目線を逸らした。
    リッキーはすごくダサいと言いたそうな顔をしていた。
    シャドーと人形の好みって意外と違うのかな?

    徐に帽子を外しパトリックに見せる。

    「これはな、俺が正義のヒーローって証だ。警察官という職についてる」
    「正義のヒーロー?」

    表情こそは分からないが雰囲気からして興味津々。

    「そうだなぁ、悪を挫き、弱気を助ける。ただ時には悪をも助ける,俺の誇りだよ。この仕事は…」

    憂いを帯びた表情で語る。
    元の時代に戻れるの分からない。
    ただ戻れたとしてもこの職にはきっとつけない。
    パトリックは集中して聞いてるのか喋らない。
    しかし、その数秒後に
    「……かっ…かっこいい!!」と黄色い声が聞こえた。
    アレかな?一部の男子には需要があるのかな。

    「被ってみるか?」
    「被りたい!!!!」


    パトリックは体をワナワナと振るわせいた。
    テンションが上がってるらしい。
    そんな彼にひょいと自分の帽子を被らせる。
    やはり顔が真っ黒だから分からないが…彼の顔のリッキーに被せたらどうだろうか。
    でも、今取り上げたらパトリックは落ち込むだろうし、とあのリッキーは嫌な顔をしている。

    「どうだ?リッキー」
    「す、すごくお似合いですよ!装飾がパトリック様の黒にお似合いです!」


    鏡の前でパトリックはリッキーとあーだこーだ言いながらポーズを取っていた。
    どれも、顔を隠す厨二病のようなポーズばかりで吹き出してしまう。

    「……お前たち、この帽子を被ったあとのポーズがあるんだよ」
    「パトリック様に相応しいものなのか?」

    は○ぽたのま○ふぉいみたいな風貌をしながら自分の主人のことをリッキーは考えていた。

    「俺はかっこいいと思ってるぞ」
    「…どうだが」


    さっきまで可愛いって思ったのに、前言撤回こいつは筋金入りの生意気野郎だ。繊細な癖に。

    「とりあえずやってみろ!!!こうするんだ!」

    ビシッと敬礼をして見せれば…どんなに怖い顔でもサマになる。寧ろとても威厳がありカッコよくなった。パトリックとリッキーは「おおっ」と憧望に満ちた声を出す。

    「こうか?」

    パトリックがやしおと同じように敬礼をする。ラッキーも見様見真似で主人の真似をしてみせる。

    「もうちょっと指先と背筋を伸ばせ!そうそう!お前ら、かっこいいぞ!敬礼っ!!」

    見様見真似だったのでやしおがやり方を教えれば様になる。

    「かっこいいぞ!!」
    「そうか、カッコいいか?[[rb:パトリック> 俺]]の[[rb:顔> リッキー]]がカッコいいからな。性格も最高なんだ」
    「そうだな!!お前たち相性抜群だな!」

    すると2人は当然と言ったような態度を取るが雰囲気はとても嬉しそうだった。
    見る限りそうだと思った。
    パトリックはリッキーのこと信頼してるし、リッキーはパトリックのことを常に考えて敬ってる。
    そしてある意味似たもの同士だ。
    きゃっきゃっとパトリックがリッキーに警官帽子を被らせる。彼もだんだん気に入ってきたようでかっこよく敬礼を決めていた。
    そんなに喜んでくれるのなら警察官手帳を持ってくるかと思いながら和んでいた。

    こうして楽しい時間はあっという間に過ぎた。

    「…もう会えないのかもっと話を聞きたかったのに…」

    しょんぼりと肩を落とす。
    シャドーたちは特に新人は寂しがり屋な奴が多いのかもしれない
    ジョンも寂しがってたのを思い出す。

    「お披露目さえ終わればいろんなシャドーとも俺とも会えるよ。ほら、他のシャドーたちの面談が終わったらまた遊びにくるから」
    「本当か?」
    「パトリック様のところ1番にお願いするぞ!!!」

    主人の言葉を遮りリッキーがやしおの前に立ちはだかる。なんだ、リッキー…お前も寂しいのか。
    ショーンと仲悪いもんな可愛い奴。
    しかし、違う様子だった。
    リッキーの目は敵意でギラギラと輝いていた。
    アレだ、主人を取られたと思ってるのだ。
    あれぇ、仲良くなれたと思ったのに…

    「うん、わかった」

    取り敢えずいつ会えるかどうかは未定だが必ずその扉を叩くと約束してやしおはパトリックの部屋を去った。

    とっぷりと日が暮れており夕日が窓から差し込んでいた。

    (部屋に帰る前に、シャーリーに声をかけていこう)

    早足で女性シャドーの居住区に向かう。
    そして、シャーリーの部屋の前につくと「こんばんわ!ラム、シャーリー!!」とやしおは声を元気よく声をかける。
    最近続けてる一つの習慣だ。
    鍵を開けてもらえないなら扉越しで挨拶だ。
    シャーリーとラムからは反応が貰えないが。
    続けて行けば何か変化があるだろう。

    (うん、今日も反応なし)

    若干傷つきながらシャーリーの部屋の前を後にした。
    パトリキの部屋訪問は終わりを告げた。


    やしおはショックを受けていた。
    それを、星つき達が心配した眼差しを向けて見つめていた。
    現在、ルイーズとルウの部屋の一日目の訪問注の出来事だった。簡単に部屋に上げてくれたがすごくまじまじと見られた。

    「うわぁ!ブサイクな顔!![[rb:私> ルイーズ]]こんな人形にあったの初めて、格好もダサい」

    ルイーズ・シャドーは顔のルウと共にやしおの体をベッタベッタと触りまくる。

    「顔、怖い」
    「ね?、どうしてこんな作られ方をしちゃったの?、まるで絵本の中に出てくる悪い盗賊か魔法使いみたい!」

    ブサイク、顔が怖い、絵本の中の悪役、散々な言われようである。最初は笑っていた彼も口からはショックの固まり.所謂魂みたいなものが飛び出す。

    「あれぇ、さっきまで動いてたのに壊れちゃったのかしら?」
    「大人だから古いのかも、脂刺すところあるはずです」

    ツンツンとしなやかな黒い手がやしおの脇腹を突き、ルウがひょいっと服をあげようとする。

    「ちょっと待て!」

    やしおはルイーズの手を掴み、ルウの手を優しく振り払うとすると悲鳴が上がる。

    「きゃあ!!動いたわ!動いたわ!きっと暴走したのよ!!」

    キャーキャーと絶叫をあげてルウの後ろに隠れる。ルウは表情こそ変えないものの主人を守るように仁王立ちをしていた。

    (お面を被ってるみたいだなぁ)

    やしおは仁王立つ生き人形を見ながら思っていた。

    「そんなことよりも!あのな、ルイーズ!!こら!出てこい!」

    ルウを軸にして成人男性と少女シャドーハウスはくるくると追いかけっこをする。ルイーズは遊んでないのに楽しげな声をあげている。

    「遊んでるんじゃないの!」
    「来ないで!ブサイク!」
    「他人を簡単にブスブス言うな!!!取り返しのつかないこともあるんだぞ!」

    やしおは人よりも長い腕を活かしてルイーズを捕まえようとするが彼女も中々すばしっこく捕まらない。もうちょっと伸ばせば服を掴めるのだがシャドーは服が命なので破れたりしたら大変。なので簡単には捕まえることができなかった。
    もはや情報収集どころではなかった。

    ルイーズはダッサダッサブサイクさんとお話しするのは嫌よ!!ちゃんとおしゃれにしてきてちょうだい!!!.ね?ルウもそう思うでしょう?」

    「おっしゃる通りです」
    ルウは美しく整った顔を歪めてコクリとうなづいた。ルイーズの表情を代弁してるのだろう。

    パリンッ!やしおの心の中の硝子が粉々に破れたような音がした。こうして一日目はルイーズは無茶苦茶はっきりものを言うシャドーで悪意がありという情報しか仕入れることができずに撃沈する。ショックが大きかったのかその日やしおは部屋に閉じこもって星つき達を大いに心配させた。

    ………………

    「やしお、んぐ、ふふっ、だ、大丈夫か?」
    そして次の日の2日目。
    事の顛末を聞いたオリバーは笑いを堪えるように様子を窺ってくる。もう既に堪えきれてないし顔をして主人になりきってるオリーは必死に笑いを抑えてる。
    ベンとベンジャミンなんか机に突っ伏してクスクスと控えめに笑ってる。

    女性シャドー達は自業自得だとルイーズの意見に賛同していた。しかし、顔は笑いを必死に堪えてるような表情をしていた。

    「あ、オリバー、ベンジャミン、し、失礼ですよ、フフフフ…」
    「だから、あれほど、身だしなみに注意しなさいと…ンフ…」

    余程ルイーズの容赦のない物言いが面白かったのだろう。バーバラあたりならルイーズに厳しく言っておきますって言ってくれるかなって期待していたやしおはあんまりな結果に死んだ魚のような目をした。

    「…….笑いたきゃ笑えよ」

    ククク…クスクス、ぷふ、四対からは笑いが溢れでる。

    「笑えよ!!」

    やしおの死んだ魚のような目が近づき舐めるように四対を見れば遂にはみんな我慢ができずに笑い声を上げた。

    「貴族だろ?声あげて笑っちゃいけない!!」
    「だ、だって、ねぇ、ンフフ」
    「ははは、いつか他の誰かに言われるだろうとおもってたけど、こんな早くに、しかも怖いもの知らずなシャドーだ」
    「え、じゃあ?お前達も思ってたの?」

    今更ショックを受けてれば、「何度も言いましたよ。その格好ダサいって」とバーバラに言われてしまう。

    バリーーンと残っていた心のガラスが破れてやしおは本格的に落ち込んでしまった。

    「おいおい、やしお…そんなに落ち込むなよ、[[rb:僕> オリバー]]達が何とかしてやるから」


    散々笑っていたバーバラ達であったがやしおの落ち込み具合を見て心配になったらしい。四対は生き人形たちを含めてこそこそと何かを相談している。そして不気味なニコニコ笑顔をしながら近づいてきた。スザンナは大きな背中を優しく摩る。

    「どうせならルイーズが惚れるくらいにかっこよくなりましょう!」
    ベンジャミンも手伝ってやる」
    「そうですね、アカツキ様がブサイクでダサかったら星つきの品格も下がりますからね。あなたには相応しくなってもらわないと」

    スージーがウィンクをし、スザンナと共にどこかに消えていった。バーバラとバービーも会議室を急足で出ていく。ルイーズが惚れるくらいか?やしおは考え込む,

    「まあまあ、オリバーたちに任せておけばいいって」
    「おい何する気だよ?」
    「まぁ、そんなに固くなるなよ」

    そうしてるとスザンナとバーバラが戻ってくる。手には顔用の化粧道具。
    いつも怖い顔をしてるバービーニコリとほくそ笑む。その目はこれまでの鬱憤を晴らすかのようにざまあみろと書かれていた。

    「おい、嫌だぞ!!やめろー!!!」
    「ベンジャミン、拘束して!」
    「無駄な抵抗はやめなさい!!」
    「痛くないぞ〜」
    「ぎゃー!!!!!」

    やしおの断末魔が響き渡る。
    それから一刻後
    星つき達は生まれてきて十数年で一番びっくりな出来事に遭遇していた。

    言葉もなしに目の前の見慣れた男、暁やしおを見つめる。

    「気が済んだか?」

    そこにいるのはいつもの悪人面のやしおではなく
    何故か艶やかになった白髪の髪によく晴れ渡った空色の瞳に丹精に作り込まれた顔。
    やしおは男なので下地とファンデーションを塗っただけである。そして、綺麗に髪の毛をオールバックに纏めただけである。
    それなのに、なぜあの悪人面が消えて見違えるような美男子になるのか。

    スザンナはうっとりとやしおの顔を見つめる。
    スージーなんて頬を赤くしていた。
    バーバラとバービーは信じられないような面持ちで見つめてくる。
    ベンジャミンとオリバーからは煤が出ていた。

    「おい、何故煤を出す」と流石のやしおもツッコミを入れた。

    「あ、アカツキ様。鏡をどうぞ?」

    バーバラが言ってバービーが青色の薔薇が描かれた鏡を差し出す。
    やしおは自分の顔を見る。

    「あー、懐かしい顔だな。社会の荒波と悪人達と関わってた事ですげー顔怖くなったんだなぁ、あと甘いもの食べまくったからなぁ」

    恐怖ととんでもない発言をする。
    星つき達は聞いたこともない言葉に何故か嫌な予感がして互いに顔を見合わせた。
    彼の顔の怖さは所謂ストレスと疲れと糖の取りすぎ…多分。

    「ってことで、行ってくるわ!ありがとうな」

    四対にお礼を言って会議室を出ようとする。
    すると「あ、待って…」スザンナは止めようとしたがやしおは気が付かずに早足で会議室から出ていってしまった。
    止めようとした緑色の上等な手袋をした手が掴むところをなくして空を切る。

    スザンナから煤がもくもくと出てきた。

    「…なんか今のやしおを他のシャドーに見られたくないわ」

    まあ、ルイーズの部屋に行く前に他のシャドー達に会って男子には嫉妬されて女子には黄色い歓声を上げられることになる。
    後にバーバラはやしおの行動報告書に「食生活や化粧をしたら美男子になる」と書くことになる。

    「とりあえずやしおには甘いもの規制させましょう」とバーバラの一声にベンジャミン達はうなづくのであった。



    こうして、またやしおはルイーズの部屋の扉をトントン叩く。

    「やっと来たのね!ルイーズ…まち…」

    ルウが扉を開けてルイーズがその後ろからひょっこりと現れる。そして美男子になったやしおを見て突然ルウを引っ張り部屋の中に引っ込む。扉は音を立ててしまったと思ったらやしおがしっかりと太い筋肉質な腕で閉まらないように挟んだ。

    「はぁ?!ちょっと!」
    「数秒待って!!、レディのお化粧してる姿を見るなんて失礼よ!」

    レディだなんて、生まれた?ばかりのくせに…と言うか子供のくせに。そのツッコミをしたら無下だと言うか怒られそうなので我慢する。
    やしおは律儀に扉の前で待つ。数分後に、また扉が開き中に通される。

    ルウはばっちり化粧をしてニコニコと微笑んでいた。

    「ダッサ、ダッサブサイクだったのに、随分といい顔になったんじゃないの!カッコいいわ!まるで絵本の中の王子様みたいね!!ねぇ、[[rb:私> ルイーズ]もお姫様見たいでしょ?」

    黄色いワンピースを優雅に広げてお姫様みたいな挨拶をするルイーズ。
    ルウも主人に習ってポーズと表情を作る。
    その姿は可憐でガーベラのようだった。
    確かにお姫様みたいだ。というか貴族ならお姫様なのでは?

    「あぁ、お姫様みたいだよ。素敵だ」やしおは素直に褒める。

    「当然よ![[rb:私> ルイーズ]]はきっとどのシャドーの中でも美しくて素晴らしいのよ!顔も一番美人なんだから!」

    ルイーズは自分大好きなナルシストか。とやしおは評価の中にそう書くと決めた。
    彼女レベルまで来れば逆に微笑ましいし嫌な気持ちにならない。

    「ねぇ、やしおは皆に会ったことあるんでしょ?
    どう?やっぱりルイーズの方が美人でしょ?」
    「うん、まぁな…」

    それは個人の好みの問題なのだが、当たり障りのない返事をおいた。ここの屋敷の生き人形達はみんな見目麗しいやしおは思っていた。
    きっと、容姿に差がないように作られてるのだ。

    「まあ、いいや!やしお!暇だから!王子様とお姫様ごっこしよう!!!」
    「何だよその遊び」
    「[[rb:私> ルイーズ]]がお姫様でやしおが王子様なの!」
    「具体的な遊び方を」
    「やしおが[[rb:私> ルイーズ]]をお姫様扱いしてくれたらいいのよ!だって今のやしおは王子様みたいでかっこいいんだもん」

    ぎゅうっとルイーズはやしおの腕に抱きつき。ルウも同じように可愛らしい表情を作りやしおに抱きつく。
    ツッコミどころ満載だし、ツッコミを入れたかったが2人は離してくれない
    王子様なんて柄じゃないから凄く、凄く、断りたかった。
    それなのに、何故か勝手に体が動いたそして今までやりたくなかった気持ちだったのに急にルイーズの言うことを聞きたくなった。

    「わかった、ちょっとだけだぞ?」

    結局ちょっとだけのはずだったのに…
    長い時間ルイーズとルウと遊んでしまった。
    散々ルイーズをお姫様扱いしただけの時間だった。気がついたらルイーズの就寝の時間になってしまっていた。ルイーズはキャーキャーと騒がしくしながらやしおがいるのにもかかわらずネグリジェに着替えている。

    たっぷり夜がふけた窓を見て絶句する。
    (な、何でこんなことに…)


    「おやすみなさい、ルイーズ様」

    寝る支度ができたルイーズにルウが触れ合いおやすみのキスをしている。触れ合いお休みのキスを見るのが初めてだった。
    触れ合いのことも書かなきゃいけないのだろうか。しかし、ジョンショーン、パトリキの触れ合いは確認できてない。やしおが報告書の内容を悩んでるとルイーズがちょこちょことネグリジェをひらひらさせて近づいてきた。

    「やしおも!、[[rb:私> ルイーズ]]にお休みのキスをして!」

    驚愕のお願いにやしおは思わず間抜けな顔をする。

    「はぁ?!」
    「やしおも生き人形でしょ?じゃあ!おやすみのキスしなきゃ!カッコよくなってきてくれたから特別に[[rb:私>ルイーズ ]]におやすみのキスすること許してあげるわ!」

    何とまあめちゃくちゃな理由

    いやいや、いくらシャドーといえどルイーズは未成年の少女なわけで。やしおは成人男性で職業は警察官なので。
    触れ合いをしたら犯罪になるわけで。
    懲戒免職じゃ済まされないわけで、刑務所行きになるわけで。

    「ねー!!![[rb:私> ルイーズ]]はもう眠いんだけど!やってよー!ねーー!!」

    当のルイーズはやしおの葛藤なんか知らずにズイズイと真っ黒い顔を近づけてくるので顔を背けて必死に抵抗をしていた。

    「ルイーズ!大人の俺が、もしくは成人男性が触れ合いをするのはいけないことなんだ、犯罪なんだよ」

    何故か顔をルイーズの方に向けちゃいけないような気がしてやしおは目線を合わせないようにしながら説明する。
    しかし、ルイーズは不満そうでブーブーと文句を言ってる。

    「そんな話聞いたことない!!いいからしてよ!!!!、やしおのことお部屋に返さないからね!」
    「ダメだって!!!」

    両者の攻防戦が繰り広げられて、結局負けたのはやしお。何故かまたルイーズの言うことを聞かなきゃいけない気分になったのだ。
    それはまるで絶対王政のよう。
    口は多分未来の彼氏や夫となるシャドーのためにとっておいて親愛の証と言われるおでこにちゅっと優しくキスをする。

    やっとルイーズは満足したのか解放してくれた。
    ジョンショーン、シャーリーラム、パトリキの中で一番疲れる組だったかもしれない。
    ルイーズがたくさん喋るせいでルウとは一言も喋れない。そして何故か口の中がじゃりじゃりしてヒリヒリした。
    ふらふらとした足取りで星つきの居住区につき自分の部屋に入れば

    「遅かったじゃない」
    「訪問が終わったら研究班でスマほぉを使った実験の付き合いをしてくれる約束だっただろう!!」

    スザンナとオリバーが煤をたくさん出して不服そうに待っていた。やしおの部屋は2人の煤で黒く汚れていた。

    「人の部屋を汚すなよ、勝手に入るなよ…」

    やしおはネクタイを緩めて着ていた上着を脱ぐ。
    ぐったりとした様子にスザンナは「大丈夫?」と声をかけてくる。

    「大丈夫なんなけどさ…最近の年頃のシャドーって特に女の子ってみんなあんな感じなのかな?」
    「はぁ?」

    スザンナとオリバーは訝しげにやしおを見る。

    遠い目をしてルイーズを思い出す。別れ際にまた来てねと案の定言われたが、しばらく来れないと伝えたらすごい拗ねられたことを思い出す。
    新人たちはみんな可愛いが一癖二癖強いので最後の一体であるケイトとエミリコが不安になった。

    「やしお、口周りになんかついてるぞ?…って煤?何したんだよ、誰の煤?」
    「あぁ…ルイーズの[[rb:触れ合い> おやすみのキス]]を強要された…はぁ、未成年にしちまったよ。何で強く断らなかった俺…」

    疲れ切った声でスザンナとオリバーに伝える。この二体なら平気かと思った。

    「何ですって…」

    しかし、意外な反応が返ってきた。
    今までにないくらいの量の煤を出すスザンナ。
    バーバラよりはないが明らかに煤が多い。

    「お、おい?!スザンナ?!どうしたんだよ!
    何で怒ってるんだ?!」

    オリバーの言葉によりやしおは怒ってることを把握する。顔をしてるスージーを見ると鬼の形相でやしおを睨んでいた。
    オリバーも恐怖の煤を出しやしおにくっついてきたのでやしおはオリバーとオリーを抱きしめた。

    「ふぅん、若い方が好きなのね?しかも生まれたばかりの子?ふぅん、その子にお世話してもらったら?![[rb:スザンナ> 私]]はもう知らないから!!アカツキ様のおばか!!」

    一頻り怒鳴ったあとスザンナはスージーを連れて大量の煤を出しカツカツと乱暴にヒールを鳴らして大きな音を立てて部屋からいなくなった。

    「え?なに?何事?」
    「やしお」

    唖然とするやしおにオリバーは重々しく口を開く。

    「お前やっぱりダサいままの方がいいな!あと、
    乙女心をと言うものを勉強した方がいいぞ」
    「?!」

    は?へ?
    スザンナが怒りだした状況が掴めない上に
    1番に言われたくないやつに助言されてしまったやしおはこの日落ち込んだと言う。


    続く。

    次回やっと「ケイト様とエミリコ」が登場します
    ルイーズ様って御伽噺とか、お姫様とか王子様が出てくる話とか好きそー(言い訳)
    26Id4jdu Link Message Mute
    2021/04/22 22:09:48

    お巡りさん新人達に会う2

    #シャドーハウス
    #オリキャラ #夢小説

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