イラストを魅せる。護る。究極のイラストSNS。

GALLERIA[ギャレリア]は創作活動を支援する豊富な機能を揃えた創作SNSです。

  • 1 / 1
    しおり
    1 / 1
    しおり
    第三者いわく 人は言う。
     随分と正反対の二人がくっついたものだ、と。

     それは、文化祭が終わって、すぐのことだった。
     もとより、クラスの中心だった通形経由で知り合ったかなんだかで、話しているところを見かけたことは多々あったけれど。ふたりきりで仲良く肩を並べて歩く姿に、我がクラスはもちろん。隣のクラスにだって衝撃が走った。
     世間一般の高校生よりも、ありとあらゆる方面で刺激が多いと言われるのが、我らが雄英高校ヒーロー科。そうは言っても、多感な年頃なのは、きっとみんな世間一般の高校生となんら変わりやしないわけで。なかでも、もっぱら他人の恋愛沙汰に関する話題は、それこそ瞬く間に2クラスの小さな世界を駆けまわって。次の日にはもう、ヒーロー科二年全土に知れ渡るほどだった。
     ねぇねぇ。天喰と付き合ったって、ほんと? そう、彼女にはじめに聞いたのは誰だったか。
     確か、彼女のひとつ前の席の住人だ。
     すぐ傍で交わされたそんな言の葉に、そっと耳をそばだてる。
     問われた当人と言えば、少しだけ躊躇うように息を潜めて。そうしてゆっくりと頷きながら肯定した返答を、きっと、教室に居たみんなが聞いていた。
     ちらり。なんとなしに傍らを窺う。
     細めた視界に飛び込んできたのは、ほんのりと桃色に染まった頬に、柔らかな笑み。
     付け加えるなら、そりゃもう可愛い笑顔だったとでも言っておこう。
     いつも天真爛漫にふるまっているからか、その反応はなんとも言い難いギャップに満ちていて。男子のみならず。数名の女子が心臓を抑えて、机に伏していた。
     何を隠そう。自分もそのひとり。仕方がない。ほんのりとその白い肌を上気させて、小さく頷くその姿は、愛らしいと評する他がないのだから。
     とにも、かくにも。かくして、1日足らずの噂話は実態を持ち。二人の仲は二年ヒーロー科に属する生徒にとって、周知の事実と相成ったというワケだ。

    ――ワケ、なんだけども。

    「はぁーあ」
     頬杖をつき、大仰なため息をひとつ吐き出す。
     ぱちくり。空色の大きな瞳が瞬いて、首を傾いだ拍子に、色素の薄い髪が頬に流れた。
     うん。相変わらず可愛い。来年こそは文化祭の花形でもあるミスコンに出てくれないかなぁ。と、望みの薄い願望を抱かずにはいられない。
     まぁ、二つ返事で断られるのは目に見えてるから、近づいたらダメ元で一回提案するだけに留めておこうと思うけど。
    「どうかした?」
     尋ね、問われ。じっとその空色の目を見つめる。
     澄んだ青い、青い。空の色。
     ひとつ。ふたつ。みっつ。恨めしいほど長い睫毛が閉じて、開くのを眺めて。また一度、大きなため息を吐き出した。
    「うー……」
     頬を膨らませ、ずるずると腕を伝うように頬杖を崩す。
     大きな窓から射し込む太陽の光に暖められた机が、近づく冬に冷えた額を暖めて心地よい。
     緩慢に瞬く。ほんの少しぼやけた視界に、ひらりと細い指が舞って。なになに、どうしたの。なんて、隣のクラスの有名人を思わせる声が降り落ちた。
     一度、硬く目蓋を閉ざす。くるりと机に額をつけたまま、顔を伏せて。大きく頬を膨らませた。
     閉じた目蓋裏に、人影が浮かび上がる。
     ついで、聞こえてくるセリフは、ここ数日で聞き飽きるほど耳にしたもの。
    「べっつになにも」
     細く、長く息を吹く。
     肺を空っぽにして、形容しがたい感情まで吐き擦れられれば良かったけれど。それはどうにもうまくいかなかった。

    『なんつーか、正反対のだよな。あのカップル』

     あの日から、何度その言葉を耳にしたことだろう。
     もう、いっそ耳にタコでもできそうなくらいだ。
     きっと、当人たちに侮蔑の意識はない。
     ただ、事実を口にしているだけのつもり。きっと、そう。
     お似合いだとか、そうじゃないとか。周囲が評するものではないことを、当人の預かり知らぬところでそっと囁き合う。
     まったく。ヒーロー志望が聞いて呆れる。
     でも、ちゃんとわかってる。
     何も知らないくせに。なんて言えるのは、自分が知っている側だからだ。
     何も知らない人は、ただ、知らないだけ。それだけのこと。それだけのこと、なんだけど。
    「納得はいかないんだよねぇ」
    「だから、さっきからなんの話?」
     のっそり。伏せた身体を起こす。
     相変わらず、その愛らしい顔には、いくつもの疑問符が浮かんでいて。行き場のない感情を吐き出すみたいに、指先でその額をはじいた。
     わ、と小さく悲鳴があがる。間髪入れずに膨らむ頬には、肩を竦めて舌を出した。
    「まぁまとめるなら、知らない人は、わからないよねぇって話だよ」
     忙しなく瞬く瞳に笑みを浮かべる。
     知らないんだから、仕方ない。そう済ませる世界もなんだか違う気がするけれど。でも、こればっかりは、他のみんなは、知りようもないんだから。こちらが一歩。身を引いて達観視した方がよっぽどラクだ。
     だって、私は知っている。
     この子がどれだけ、彼のことが好きなのか。
     あのふたりがひそやかに育んだ恋が、どれほど暖かなものなのか。
     ポジティブな彼女と。ネガティブな彼と。確かに傍目から見れば、正反対なふたりだろう。不釣り合いなふたりだろう。
     でも、それがどうした。
     私は、ちゃんとわかってる。
     だって、多分。通形の次くらいに、私は二人を見守っていた。数少ない人間のうちのひとりだから。
    「お似合いだよ。ふたりは」
     前に座る。彼女に聞こえぬように独り言つ。。
     そっと目蓋を閉ざせば、楽しげに笑い合うふたりの姿が浮かんで、自然と綻ぶ頬はしっかりと手のひらで覆い隠した。
    藍音凛 Link Message Mute
    2023/05/16 15:07:58

    第三者いわく

    ##ヒロアカ夢 ##環操

    more...
    作者が共有を許可していません Love ステキと思ったらハートを送ろう!ログイン不要です。ログインするとハートをカスタマイズできます。
    200 reply
    転載
    NG
    クレジット非表示
    NG
    商用利用
    NG
    改変
    NG
    ライセンス改変
    NG
    保存閲覧
    NG
    URLの共有
    NG
    模写・トレース
    NG
  • CONNECT この作品とコネクトしている作品