お巡りさんトリップしちゃうアテンション!!
オリジナル夢主
男主人公がでしゃばります。
子供達に愛され注意
寄りは新人、星つき
夢主
暁やしお
26歳
顔は怖いが心は優しく子供好き
甘いものが大好きで嫌いなものは辛いものと苦いもの
警察官の暁やしおは迷い猫の捜索をしていた。
彼の所属する部署は刑事事件を管轄する所なのだが人手が足りないと言うことで彼は相方が共に駆り出された。
しばらく捜索の末に発見する。
猫は脆そうな木の枝の上でぷるぷると震えていた。その木のあるところは見晴らしの良い高台で崖っぷちにあるような場所だった。
やしおは足場に気をつけながら登る。
猫は突然現れたやしおを見て毛を逆撫でて威嚇する。その猫は黒猫で毛を逆撫でていた。毛が濃いのか顔が見当たらない。
「おいおい、大丈夫だって怪しいものじゃないよ〜」
猫を落ち着かせようとテノールボイスから無理やり出したソプラノボイスで話しかける。足場に気をつけながらゆっくり猫に近づく。
「やしお!早くしなさいよ!」
相方の女性警官がイライラした様子で囃し立てた。その口調にイラっとしたやしおは気色に乱した顔をして女性警官に言った。
「うるせぇ!!騒ぐなアホ!猫ちゃんが怖がるだろうが!」と捲し立てたせいで力が入ってしまったのだろう。バキッと鈍い音が響く。その瞬間にやしおと猫の体は宙に浮いた。
「んな?!」
やしおは瞬時に猫を抱き抱えてぎゅっと抱きしめる。その瞬間の目の前の猫が急に形を変えた。
黒いクラゲのような触手をなくして、子供の落書きのように適当に足を生やしたそんな存在になった。やしおは驚く暇もなく臓物が全て上に行くような感覚に襲われる。
「やしお!!!!」
女性警官の悲鳴のような声が響きわたる。
「猫を頼んだ!」
とにかく、血の気が引いた顔をした相方に猫をぶん投げて自分は真っ逆さまに崖の下に消えていく。
(オレ死んだな)
やしおはとても冷静だった。職業柄何回も死にそうな目に遭っていたので慣れていた。
ただ、今度こそ、高低差のある場所から落ちたので自分は助からないだろうと目を瞑る。突然眩い光がやしおを包み、某たぬきが未来へ時空を超えるような時計模様が現れる。
やしおの景色は暗転した。
…………………………………
そして、あれから一ヶ月が過ぎた。
暁やしおは運良く生きている。それはおめでたいことで神様に感謝するべきなのだが、彼は今、木で作られた日の光も一切入ってこない牢屋の中にいる。
(サツがアカの中とは…)はやしおは簡素なベットに座りため息をついた。(アカとは牢屋のこと)
やしおは確かに枝が割れて、猫?と共に高台から落っこちた。下は鋭利な屋根が目立つ住宅街、高さ的にも落ちたら助からない。そのはずだった。
やしおは生きていた。なぜか、山村の畑の上で寝ていた。
その様子を農具を持った農民たちが訝しげな顔をして覗いていた。
ゆっくり体を起こすと、阿鼻叫喚の嵐、鎌やら鍬やら斧やらで襲ってきた。
やしおは避けつつ心苦しかったが正当防衛のために農民達を倒していた。
凶悪犯達を日々相手にしてるので農具を持った一般市民なんて敵ではなかったが、いかせん数が多過ぎたため捕まってしまい現在に至る。
そして彼はとある貴族に引き渡された。
やしおは今、シャドーと呼ばれる貴族の屋敷の牢屋の中にいる。
もちろん、持っていた銃や手錠や警察手帳、警察帽子、そしてスマホ、無線は全て没収された。
(ここの奴ら話通じねぇ……)とやしおは頭を抱える。偉い人という奴らに引き合わされて色々と尋問を受けた。
その偉い奴ら四人。どうやらシャドー家の長の重鎮のようだった。
色黒の黒神ミステリアスな美女に、クマが目立つアフロヘアの男、蝶々のような羽を背中につけた女性、葉巻を吸う中年の男。
やしおを高圧的な目が四つヤシオを見つめてる。その四人から尋問を受けたのだが話が通じない
まず、いまは令和ではない、警察官という職業がない、スマホ、無線を知らない、そして皮肉なことに警察官の命とも言える拳銃と手錠を持っていたことをきっかけにかえって怪しまれて、終いにはここに投獄されてしまった。
しかも、命はないと言われた。
(あんの、葉巻ジジイと、エロいドレス女と、蝶々夫人とマッドサイエンティストもじゃもじゃサイコパス野郎)
やしおはアフロ頭につけられた顔のアザを痛そうに撫でた。
威圧尋問をしてきた4名を心の中で罵倒し、状況と入ってきた情報をまとめる。
(まず、ここは令和ではない中世あたりか?あたり服装からするにヨーロッパあたりの貴族のドレスとチェッニック…)と唯一とられなかったメモ帳とボールペンで色々とまとめていく。
それでも深まるのは謎ばかり、どうにか無線だけでも返してくれて仲間に連絡取れないものか。
やしおの気持ちは混迷していく。
そして、はっとそういえばと思い出す。
(あいつら、(いだいなるおじいさま)の命がどうたらこうたら言ってたな)
威圧尋問をされている最中にたくさん出てきた言葉が「偉大なるおじいさま」
ここの屋敷の長的立場なのは安易に理解できた。
(そいつもあいつらと同じだろうなー)
側近達があれなら、上はもっとやばいやつ。
社会では良くある話だ。
やしおは半ば諦めるかのように木の板に毛布一枚のベットに横になる。
すぐ横では黒子のような格好をした看守が自分が逃げ出さないように見張っていた
自分を牢屋に入れたのもこの黒子達である。
黒子たちは長い黒いドレスに、黒頭巾。男なのかも女なのかもわからない。
(こいつらが執事やメイド代わりのようだけど、なんでこんな姿で働いてるんだ?)
やしおは益々この屋敷に不信感を抱き情けなくも恐怖を抱いた。そして
(逃げ出せるわけがない)とやしおは思う。
ここは知らない英国の地、連絡手段も没収され、周りは敵だらけ。完全孤立の状態の身一つで逃げ果せたとしてもそこにあるのは死。
(なんなら、ここで拷問死すらぁ)
やしおは諦めたように目を瞑った。
キイっと重たい金属音を擦る音が耳に響く。
お迎えが来たか?と思いやしおは死を待つ死刑因の気持ちでゆっくり目を開けた。
そこにいたのは看守のような黒子達ではなく立っていたのはド派手なスーツを着た30代くらいの男だった。
やしおは三階の連中の仲間だと瞬時に悟り身構える。
「そう警戒するな、私はお前の味方だ」
派手スーツな男はやしおに伝える。やしおは男を見据えたまま
「はん、信用できるか!どうせ俺の処遇が決まったんだろ!いいぜ!煮るなり焼くなり好きにしろ」
やしおは五体投地をするかのように吐き捨てる。
やけを起こしてるやしおに派手スーツの男は後ろに従えていた黒子たちに命令をして牢屋の外に連れ出す。
「アイアンメイデンか?!!ギロチンか?!ファラリスの雄牛か?!ユダのゆりかごか?!!」
「少し落ち着きたまえ」
「お前らの上司がな!!!!反乱分子だとかやれ密告者とか!!詰問しやがって!!!挙げ句の果てにあのもじゃもじゃサイコパスクマやろう、暴力振るってきやがった!!訴えられるぞ!お前ら!」
まるで、怒りたつ犬のようにやしおは派手スーツに突っかかる。
「アイアンメイデンにもかけないし、ギロチンは生憎ここの屋敷にはない、ファラリスの雄牛とユダのゆりかごは違う国の拷問器具だ」
「んじゃあ、スカフィズ…」
「そんな下劣なもの私たちはしない」
派手スーツの男は落ち着いた声でやしおを宥める。そしてやしおの顔の傷を見て「あとで手当てさせよう」といい、歩みを進める。
この男は胡散臭いがこの土地で助けてくれると言うのであればたとえ悪魔の手であろうと掴むしかない。
(そうだ、俺は警察官だった…情けない)
自分の取り乱しようを思い出し反省し、咳払いをする。
「信用していいんだな!」
「あぁ」
派手スーツの男は骨格を上にあげて微笑をする。
その笑顔でさらに信用できなくなったやしおはどうにか逃げられないものかと考えて頭を悩ませた。
(胡散臭い、おっさんだなぁ、どこに連れて行く気だよまったく)
心の中で罵倒しながら黒子たちと派手スーツに連れて行かれてジメジメとした暗い地下通路を出てレッドカーペットが引かれ、金と銀の装飾に飾られた廊下に出る。
(高級ホテルみたいだなぁ)
関心しながら屋敷の中をキョロキョロと見回す。金の甲冑に、高そうな絵、全てが物珍しい。
そして長い廊下を抜けてやしおは派手スーツの男に連れられてたくさんある部屋の中の一室に通された。やしおが言う残酷な拷問器具なんぞなかった。
2ldkくらいの広さで、天蓋付きのベットと億は超えてそうなグランドピアノ、そして座り心地良さそうなソファ。
派手スーツの男にやしおは座るように指示されてゆっくりとソファに腰を下ろす。
ずっと固い粗末なベットに腰を下ろしていたやしおにとってはそれだけで眠りに落ちそうな心地だった。黒子たちはせっせと二人分のコーヒーを用意してる。そして、傍には熟したイチゴが乗っていた。やしおはケーキをチラ見する。
「申し遅れたな、私の名前はエドワード・シャドー。シャドー家の貴族で、おじいさまと共にある塔の二階に住むものだ」と派手スーツの男はエドワードと名乗る。
「俺はやしお・暁。警察官だ」
「数十人と襲ってきたものたちを武器を使わずに
一人で倒したそうじゃないか」
「まぁ、凶悪犯とかを日々相手してるので……」
やしおはエドワードが他のものたちとは違う反応に心底驚いた。
「お前は俺をおかしいと思わないのか?」
「世の中には色んなものたちがいる、私はお前の腕っ節の強さを評価してる、あとその厳しい顔もな」
「それはどうも…」
しばらく二人に沈黙が流れた。
やしおはエドワードを信用してはいけない危険なやつだと瞬時に認識し裏があるとすぐに察知する。警察官をやってると詐欺師やらなにやらと関わることが多いので目が肥えていた。
(しかし、ここでポイッと弾き出されても)
やしおには帰る場所がない。
やるべきことはただひとつ潜入捜査だと思ってここに置いてもらうことだ。
「そんなやしおくんに偉大なるお爺様からの辞令だ」
「辞令ってお前たちの上司は俺に命はないって言ってたぞ」
「話し合いと末、ここに置いておく価値があるということになったのだよ」
エドワードはやしおに招待状が入ってるかのような豪勢な便箋を渡す。
やしおは男らしい手とは裏腹に丁寧な手つきで便箋を開けて中を見る。
『やしお・あかつき殿
子供たちの塔の監視員に命じる』
やしおはエドワードをじっと見た。
「疑っておいて辞令って何か裏がありそうだな」
「私とお爺さまはお前の腕っ節の強さを買っているんだ。君なら子供たちを監視し、邪魔するものがいたら排除するのが可能だろう。子供たちは子供たちで生活してるんだ。大人は関与しないが今の子供たちの塔のトップの星つきと呼ばれるものたちだけじゃいかせん不安なものでな」
「まぁな、子供だけって言うのもな」
(こいつらネグレクトしてやがる、普通守れって言うだろうが、なんだよ監視って)
やしおにとっては、中世の子育ての仕方が疑問でしかなかった。やしおの両親は亡くなってるが必ず教育は両親や他の大人たちが行ってるのだから子供たちだけで生活するのは異質だった。
「どんな子供たちなんだ?」
やしおはエドワードに質問を投げかける。
「彼らは我々と同じシャドー家の貴族だ。ただ一つ違う点は子供はみんな生き人形を一人ずつ、ついてる」
「生き人形」と言う単語にやしおは首を傾げるが後にその意味を深く理解しこの屋敷の脅威を徐々に感じていくことになるのである。
「まぁ、その説明は明日、管理者に聞くように。
それよりもこの辞令受けてくれるか?」
「受けるけど条件がある。俺の持ち物全て返してくれ、お前たち逆らう気もない。あれがないと困るんだ」
やしおはダメ元で頼んでみる。拳銃や手錠は兎も角、スマホや無線を返してもらえないと仲間との連絡がつかない。
今や警察署内はパニックになってるだろう
「あいわかった」
エドワードは手を叩き黒子に命令する。
意外にもあっさり、持ち物を返してもらった。
やしおはすぐさまスマホの電源をつけて仲間との連絡を図ろうとするが画面を見て絶句する。
(げ…圏外…)
スマホが圏外なら無線なんて尚更だ。
やしおは肩を落とした。でもまあ、警察署の備品全て返って来たのだから良しとしようと思うが何かが足りない
「おい!帽子は?!!」
「帽子?これのことか?」
黒子が丁寧に持っていた警官帽をエドワードは指を差した
「金の装飾品がついているからお爺さまに献上しようと…」
「返してくれ!!それは俺の大事なものなんだよ!!それがないとダメなの!」
やしおはエドワードの言葉を被せるように言った。剣幕に少しエドワードが引く。
その帽子は警察官にとって命のようなもの、なくなってしまったらその名を名乗ることができない
やしおの剣幕にエドワードは黒子に帽子を返すように言った。
返してもらうとやしおは徐に頭に帽子を被る。
「よし」
やしおの雰囲気が変わった。げっそりとしていて覇気がなかった顔に厳しさとそして正義と優しさが兼ね備えたヒーローらしい顔になる。
エドワードはその顔を見て背筋が何故か総毛だった。
「その辞令受けるよ」
やしおはエドワードの前で敬礼をしてみせる。
「暁やしお巡査、責任を持って子供達を育成し、見守ります」
「お、おぉ」
別に育成は星付きに任せておけば良いのにとエドワードは思ったがやる気になってくれたのであればよかったと思うことにした。
「牢獄生活で疲れただろう、今日のところは部屋を用意してあるからそこで休め」
「おう」
やしおは黒子たちに連れてかれて、エドワードの部屋を出る。
(あーやっぱり信用ならねぇな、コーヒー口につけなくってよかった、ケーキはうまそうだったけど)
とにかく持ち物を返してもらえた。
スマホも無線も圏外だから子供たちの塔の管理者とやらをやるしかないだろうと考える。
やしおはまだ知らないここの屋敷の秘密を本当の闇を。
生き人形の正体を。
やしおが部屋を後にした後、エドワードは一人取り残される。やしおが一切口をつけなかったコーヒーを見つめる。
「いいの?エド?持ち物全部返しちゃって」
部屋に入って来たのはを白髪の美女と黒髪の美青年。
「アイリーン、ジェラルド。勝手に入ってくるなノックしろ」
エドワードが眉を顰めて文句をいう
「したわよ、誰かさんがぼんやりして聞こえなかったんじゃないの?」とアイリーンと呼ばれた女性は首をすくめてみせる。
「それよりも…やしおという男はどうでした?」ジェラルドはエドワードに聞く
「利用しやすそうな男だよ、持ち物を返せば承諾した…ただ」
エドワードはやしおの評価を言う。
「「ただ?」」
「油断ならない男かも知れん。牢獄生活中質素な食事と水はあまり与えられてないのに何一つ口にしなかった。知らない土地ということもあるかもしれんが…空腹と喉の渇きがひどいはずなら食らいつくはずだと私は思う」
エドワードもやしおを警戒していた。
警官帽子を被ったやしおを見た時に感じた言いようもない気持ちは今のエドワードたちにはわかるはずもなかった。
「危険因子だったら即刻殺しましょう」
アイリーンは大きくてキラキラした目を曇らせて言った。
ジェラルドもそれに賛同してうなづく。
「あいつは俺たちが三階に上がるためのコマだ」
やしおに荷物を返したことが後に仇になることは3人は知らない。
当のやしおは久しぶりのやわらかい寝床に一ヶ月分の疲れを癒していた。
(ケーキ食べておけばよかったな)と思いながら眠りにつく。
続く