父へ送る「ねえ、ソロ!」
「なんだよ、ルーク」
前の秘密基地が帝国軍に壊され。
新しい秘密基地を見つける最中のことだった。
物資を補給するために降り立った星は。
埃臭くて。帝国の支配を受けずに隠れて生きている人たちのように、どよんとした場所だった。
帝国の支配から解放されれば。
きっとこんな星も少なくなるだろう。
はやく、帝国を打ち滅ぼさなければと、ルークは思い直した。
そんな旅の途中、すれ違ったのは小さな子供と、父親だった。
お互いしっかりと、はぐれぬように手をつないで。
今日のご飯は何にしようとか、今日こんなことがあったんだ。などと。
たわいもない会話をしている。
それをみたルークが唐突に言い出した。
「ねえ、おやこってあんなもんなのかな?」
「はあ?」
ソロはわけのわからぬ言語を聞いたように眉を寄せた。
「たわいもない会話をして、こうやって普通に帰っていく。そんなものなのかな」
「なに馬鹿なこと言ってんだ。親子ってのはどこもそんなもんだろ。」
「ふうん。」
「納得いかなさそうだな。」
え、と今度はルークが聞き返す番だった。
「あ、うん…どこもってことは、ソロもお父さんとあんなんだったのかなーって。」
「親父ねえ…まあ、いろいろとあったさ。親子げんかもしたし、一緒に手もつないだっけ。いろいろ紆余曲折あって、親子ってのは、なかよくなるのさ。」
「へえ…、ほら、僕、父さん…いなくてさ。おじさんとおばさんと暮らしてたから。」
へへ、とルークは無邪気に頬を掻いた。
「……。」
「いろいろ衝突しあって、いろいろあって。とうさんとああやって、手をつないで出かけた記憶もないから…。」
「あ、っそ。」
ルークのほうを見ていたハン・ソロは、興味なさげに前に目線を移した。
埃臭い星で見かけた親子。
どこでもよくある光景だが、ルークにとってはひときわ輝いており。
いつか父を見つけたら、ああやってあるいてみたいと、憧れさえ抱かせたのであった。
ぱちぱちと
揺れる揺れる火の中にいる、父を思う。
この手は確かに。
父を最後に抱いた。
親子げんかっぽいものもした。
けれども、手をつないで一緒に帰路に就くことはできなかった。
ルークにとって忘れられないものになるだろう。
あの暗黒のマスクの下に隠された、父の最期の目を。
父が最後にした、息子をいつくしむ目を。
あの目を思い出すたびに、胸がどきりとはねる。
嗚呼。
全部最初で最後だったね。父さん。
その日。
皇帝は死に、ベイダー卿も今は亡き身となった。
宇宙のすべてが歓喜に包まれ。その日は踊り、飲み、騒いだ。
とうさん、
とうさん、
とうさん、
フォースを使って呼び掛けても、父は、もういない。
「とうさん。」
再度、蚊の鳴くような声で、名前を呼んだ。
「ルーク。」
懐かしい声が聞こえ、ふいに後ろを振り向いた。
そこには、師であるヨーダと、オビ=ワン。
そして、
「とうさん…。」
穏やかにほほ笑む父がいた。
「とうさん…!僕!」
ルークの言葉に、父、アナキンは穏やかにほほ笑むだけだった。
穏やかにほほ笑む父を見て、ルークは思った。
もう、父さんは暗黒面にはいない。
解き放たれたんだ。救われたんだ。
アナキンの目は、あの時。
最後にマスクを外した時と同じ、息子をいつくしむ目をしていた。
父さん。
いつしか僕もそっちへ行くと思う。
その時は、
沢山親子喧嘩とか、いっしょに話したりとか。
たくさん、たくさん!
父さんとの時間をつくろうね!
「ルーク…何もいない場所に向かって何ほほ笑んでるのかしら」
「さあね、奴にしか見えないなんかがいるだろ。ほっとけ。」
ルーク
そう呼んだ父の声には、息子をいつくしむ、父の愛の甘さが込められていた。