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    いまさらうれしくない長年。エオルゼアに転がっていた蛮神と狂信者という2つの問題は、なんともあっさりと解決してしまった。
    狂信者の治療。誰もが1度は模索して辿り着けなかったたった1つの解決法。
    そう。全てを犠牲なく救い上げ、給う。
    世界も、人も、絆も、命も。何一つなくすことなく。
    汚染された命は。戻らない。
    覆水盆に返らず。崩れた牙城は、全く同じ姿で復元できるか。答えは否。それが星の出した規定であり、理であり。覆さない一種の倫理であった。
    しかし、ある日を境に、どうしようもない倫理は、どうしようもない理由で全てひっくり返ることになる。

    狂信者の治療化の確立。
    無理だ。それは倫理への叛逆だとされてきたそれに、暁がついに結論を出した。
    答えは、是。

    変質化したエーテルを元に戻す。
    できない、ありえない、できるはずがないと首を横に振ってきたことを、暁はやり遂げた。

    戻らない。
    故にないことにするしかない。

    そうやって己共の努力のなさを仕方がないという理論で歩みを止め、見て見ぬふりをしてきたことは、許されざる、許してはならぬエオルゼアの罪だと突きつけるように。

    あり得なかった狂信者の治療方法が確立されたことは、蛮神と狂信者という二重苦を抱える都市国家にとっては、両手を手放すくらいに素直に喜べることだった。

    もっと早く確立していれば。
    そうやって後からその遅さを愚痴るのは人の拭えないサガのようなものであり、不滅隊式敬礼をしてさる部下を見送ったダンシングウルフ大闘士は、密かに苦い顔をした。

    先程簡単な報告を済ませた部下は、アマルジャ族に諮られイフリートの狂信者となっていた1人だった。

    暁により持ち帰られた治療の技術
    彼はその治療法を受け、今確実に1歩1歩と、かつての生活へと戻っている。

    遅すぎる。
    今更。と、密かに口にされたその言葉を今まで何度聞いただろうか。

    嗚呼、そうだ。
    遅すぎる。

    そこに至るために一体、今までいくつの人類が、同じ種に殺された。

    家族。
    知り合い。
    親友。
    婚約者。

    兄弟。

    狂信者となったからには、殺すしか道はなかった。
    そういう方法をとってきたものにとっては、暁が持ち帰った技術はもっと早くに伝えられるべきだったのだ。

    選べなかった道は考えないで。

    以前、何かを汲み取ったヤ・ミトラにそう言われたものの、あの時。という気持ちがよぎる。

    泣きながら兄を殺す弟。

    もし、もっと早く。
    知っていれば。

    まだ。
    思い出せる。

    自分はそこにいたのだから。


    殺せと部隊長が叫ぶ。

    誰ができるだろうか。
    一瞬前まで隣にいた仲間を殺せだなんて。


    人はあまりに脆弱すぎる。

    イフリートの炎波に呑まれた人は。
    もう人ではない。

    1歩。
    狂信者にされた軍人が踏み出す。

    言葉も届かず。
    感情も届かず。

    人は、焼き払われた。

    殺せ!
    怒号が飛ぶ中、誰一人剣を向けない。
    向けれない。
    誰が仲間殺しの罪を被りたがるのか。

    嫌だ!
    俺はやりたくない!
    誰が仲間殺しなんてできるか!

    叫び、逃げ出す集団に、不滅隊の男は剣を振り上げた。

    まずい。

    自分だって、仲間殺しの罪を被りたくない。
    そうする以外に方法はあったか?

    どうにもすることができないから。やるしかないじゃないか。

    なかったことに。

    逃げ出す集団を斬りつけようとする男に走り、立ち向かう。
    やりたくない。

    やらねば。

    瞬間、横から突き飛ばされて地面に転がる。

    まさか、他にも狂信者が。

    乾いた地面を滑る剣を、誰かが取り上げた。

    ルガディン族であるダンシングウルフを突き飛ばしたのは、ルガディン族から見れば、とても小さいヒューラン族だった。

    取り上げた剣を引き摺るようにして歩く。

    「…!」


    男が何かを叫び、狂信者となった男の背中を斬りつけ、倒れ込んだ背中を、刺した。

    何度も、何度も、何度も。

    翳る日に照らされた顔は、わからない。

    人は、弱い。
    あまりにも脆弱すぎる。

    だからこそ。
    この弱さを、誰かが忘れようとも、覚えていなくてはならない。

    憎しみあってもない兄弟が。
    命を奪うなど。

    イフリートの狂信者になった兄を殺した弟は、不滅隊からお咎めなどなかった。
    被害拡大を食い止めたこと。それが功績となった。

    このような胸の痛むことは、2度と経験させたくはないのだが。とラウバーン局長はつぶやいていたが。
    今としての現状は、それをどうにかすることはできない。

    やがて兄を殺した弟は自分の意思で、ある日不滅隊をさることとなる。
    それに対して不満を漏らす奴は1人もいなかった。

    「なんていうかな、その、まあ、あんまり考えるなよ。」

    グランドカンパニーの入り口で、たまたま見かけたからという理由で声をかけた。

    気休めにもならない。
    それは誰だってそうだろう。

    けれども黙って見送るのは、なんとなく、後悔が残る気がした。

    「あなたは」

    弟が言葉を濁すようにつぶやいた。

    「きっと、あなたは、とても出世する」
    「なんだそりゃ」
    「あなた、は、ただしかった。」

    うつむき、上げた顔は、泣きながらも笑っていた。
    強がりだったのか。若かった自分には、きっと、わからない。

    さようなら。お世話になりました。


    報告書を書く手がいつの間にか止まっていた。
    部屋には狂信者治療を受けたリハビリ者が出たり入ったりと、変わらぬ光景をくりかえしてる。

    ふと、本棚から分厚い書物が落ちる音がしたので拾いに行く。
    不滅隊の歴代の隊員名簿。
    たまたま開かれたページの名前が、それを忘れるなと伝えてくる。

    ずらりと並んだ名前に、焼け付く2人分の名前。

    今ではなく、あの時、治療法があったのならば。

    まだきっと、ここにいたんだろうな。お前たちは。
    馬鹿な話をして。馬鹿な計画を2人で立てて騒いで。

    隠されたように押し込まれた隊員名簿。
    忘れてはならぬ。隠してはならぬ。

    そこに至る為。
    己共が積み上げてきたものを。
    panic_pink Link Message Mute
    2022/10/10 4:52:27

    いまさらうれしくない

    #FF14 #トリスタン

    またマイナー界隈の話書いてる…。みたいな目で見てください。
    救われたかもしれない過去の話。

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