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    DIVA01.長女(射手座)02.努力もせず貴方に勝ちたい山羊座03.次女(水瓶座)04.三女(魚座)05.産まれながらに敗者の牡羊座06.四女(牡牛座)07.五女(双子座)08.六女(蟹座)09.七女(獅子座)10.産まれながらの敗者な乙女座11.努力をして貴方になりたい天秤座12.貴方は私の鬼灯な蠍座XX.思い出全てが金継ぎな蛇使い座01.長女(射手座)
     踊りが好きだった。

     仕事終わり。誰も居ない会社。
     新入りなんだからと押し付けられた仕事をこなして23時。
     女だからと特別扱いはしない、と言いながら、特別私へ厳しくする、腹の底から大嫌いで仕方ない上司の机に土足で踏み上がる。

     五歳の頃からの趣味。
     嫌いな奴の机の上で、大音量で流行りの洋楽を流して、流せる機器がなかったら歌って、それに合わせて何も考えず踊る。

     仕事を始めた理由はダンスがしたかったから。
     ダンス教室へ通うため。ダンスを踊る許可を貰うためだった。
     踊りながら思う。踊るのに誰かの許可なんて必要なのかと。

     最近学んだ新たな技をなんとなくで混ぜて踊る。
     誰に見られていようが見られていなかろうが関係ない。
     どうせなら見て貰いたい、けど、これは私が私を好く為の行為であり手段であり、ひとつの呼吸法だった。でしかなかった。

     ヒールで痛むつま先。
     スカートのせいで開きにくい足。
     踊りながら思う。
     私は、女に産まれてよかったな、と。
     こんな時代だけど、私は、女に産まれて良かったな、と。




     二日後、自分のデスクの上に置かれた封筒に気付いた。
     可愛らしい薄いブルーの封筒。
     妙な勘が働いた私が大急ぎでトイレに駆け込み、その封筒の封を開け、中から恐る恐る便箋を取り出し、みっちりと書かれている、恐らく私へのメッセージを読んでみる。


    「一昨日、貴方が部長のデスクで踊っている姿を見ました。
    「新入りなのに何をしているんだ」と注意しようとしたけれど、貴方のダンスが、そして、貴方の笑顔が焼き付いて離れません。
    あなたの踊りに、貴方の存在に感動しました。
    どうか、僕と一度ダンスについてお話ししませんか?
    ダンスの話じゃなくても構いません。
    どんな理由でも構いません。
    一度、貴方と食事するチャンスをください。
    連絡を待っています。」


     そんな文章が書かれている。
     便箋を返すと、便箋の裏には小さく電話番号が書かれている。
     私はそれをビリビリに破きゴミ箱に捨てた。

    「キモすぎるだろ」
     そう呟いてから個室から出て、同じ会社だけど違う部署に居る親友に『キモいやつから手紙貰った…』とメッセージを送った。
     この子が居なかったら今ごろ泣いてるだろうな。
     男だからって女を見下すような奴が大嫌いだ。
     私がこの世でスカートを穿いているからと言って見下して軽く見るやつが大嫌いだ。
     そう思いながら、鏡に映る、携帯を愛おしそうに見つめていた、世界一美人で、多才で、器用で、その上努力家な女を見つめる。
    「おはよ」
     やっぱり、今日もかわいいね。

    02.努力もせず貴方に勝ちたい山羊座

    長女「お酒入って心地よくなってきたね~この際だからなんか打ち明け大会しない?」

    次女「打ち明け大会とは?」

    長女「最近あった嫌なこととか!私はある!もう五女ちゃんに話したけど…」

    五女「聞いた聞いた!あれマジでキモい!!」

    次女「手紙だっけ?」

    長女「そう、もう捨てたから現物ないけどさ」

    四女「聞かせて」

    長女「私の趣味あんじゃん、机で踊るやつ!」

    次女「あるね」

    四女「あんたには悪いけど、正直やめた方がいいと思う」

    長女「だよね、あれで最後にしようって決めた!マジで!」

    七女「なんて書いてあったの?」

    長女「なんか、新入りのくせに何してるのって注意しようとしたけど見とれてたって」

    五女「うん、そこまではいいの」

    長女「良くないよ!普通に注意してよ!それになんか知的ぶって書いてんのキモすぎ」

    五女「続きは?」

    長女「ダンスについて話しませんか?ダンスじゃなくても構いませんだよ?キモすぎん?」

    七女「ダンスの話したいんなら『このステップが』とか『ダンスのスタイルが』とか書きなよね」

    長女「マジそれ!書いてよ見とれたんなら!あ、でもダンスについて分かんないならまだ良いの」

    七女「うん」

    長女「でも『ダンスについて話しませんか?』だよ?分からないんなら『教えてください』くらい言いなよ!ダンスについて知ってるんならもっと『自分はダンス知ってますよ』的な事言うなり何なりあるじゃん…」

    六女「書いたやつ誰か目星つけた?」

    長女「分かんない、もし誰か分かったら退職する自信しかないもん」

    次女「お疲れ、もう踊らないように」

    長女「私マジリアルガチにこの対応が一番好き」

    次女「踊るな、俺の前以外ではナ…☆」

    長女「キャーーー!!!ごめん話しすぎた、ほか誰かある?」

    三女「私は今度話すわ!五女ちゃんある?」

    五女「私…あ!あった、元カレとの大喧嘩!」

    三女「聞かせて!」

    六女「まあ嫌なことかどうかは喧嘩の原因にもよるけど」

    五女「元カレの浮気」

    六女「よし、ぶち殺せ」

    五女「あのね、でも私が悪かったのかもって思っちゃう…復縁しようかなって…大人げなかったかなって思っちゃって…」

    七女「なんで!?」

    五女「だって私可愛くない…」

    四女「は?かわいいし」

    三女「鏡見て話してごらん」

    五女「かわいげもないよ……?」

    次女「あって何になる?」

    五女「へへ…ありがと…次女ちゃんに言われると尚更元気でるや……まあ、さ…見下されてるのは分かってたけど落ち込むって話…」

    三女「なんでそんな見下すようなやつと付き合ってたの」

    七女「アレだよ、例のアレ」

    三女「は~何それ!最悪!!」

    次女「デモ起こそ!私マスク用意する!」

    五女「でもさ…私にとってのあの人は傘だったの…」

    七女「傘?なんで?」

    五女「私を雨とか雪とかから守ってくれるから…」

    七女「あー…そうなんだ…」

    次女「なんか素敵、私五女さんのそういう言葉選び好きだな」

    五女「大事で…待って?」

    七女「うん?」

    五女「でも風吹いたらすぐ折れるしやっぱいらないわ、別れてよかった」

    長女「かっ…かっけー…!」

    次女「…よし、みんなこれから予定無いね?美味しいもの食べに行こ」

    五女「うん!!あー!やった!!なんか今やっと吹っ切れた!あいつのためのダイエットやめれる!!焼き肉食べよ!!!!」

    次女「私が奢る」

    七女「かっけー!さすが帝王!」

    次女「長女は明日お仕事だからやめとこっか」

    長女「やーだーおーさーけーのーみーたーいー!!!」

    四女「大人だろ、まともになれ」

    次女「その言い方マジでウケる」

    03.次女(水瓶座)

     怖がりなのを治したかった。


     美人過ぎて怖いと言われた。
     同性の知り合いからの、恐らく、彼女からすれば褒めているつもりの言葉。
     その言葉は、私の胸に鈍く突き刺さった。
     痛くて、悶えて、嫌でも、それを相談した相手は皆、揃って自慢だと思った。

     生まれつきの目付き。
     私は、性格だけでも明るくいようと決意した。

     無理だった。
     皆が思う私は、私のなりたい私と正反対だった。
     皆が思う私は、私だった。
     悔しかった。理想なんて叶わないと、成長してから尚実感して、苦しい思いをした。

     苦しい思いをした、なんて、こんなの言いたくなかった。
     なんで私が弱みを吐かないといけないんだろうか。
     吐くべきは、気にするべきは私ではなく、あの彼女なのに。


     そう思った私は、ナイトクラブに入った。
     やかましい音楽、そしてアルコールの匂い。甘い香水の匂い。汚い匂い。
     鼻をつまみ、人を掻き分けながら奥へ足を踏み入れる。

     私がやっとの思いで到着したそこは、いわゆる、VIP席と呼ばれる、この店が選んだ金持ちが集まる場所だった。
     怪訝な目で見られる私。
     胸元からカードを取り出すと、彼らは揃って顔を見合わせ、私を招き入れた。


    「お姉さん、来るの初めて?」
    「お酒とか飲むの?」

     初めてだった。
     見た目で怖がらず、私を受け入れ、お姉さんとして、一人の女として扱われたのが。

     お酒を一口飲み、踊っている人達を見た。
     彼らは楽しそうだった。
     俗世を忘れ、音楽や、踊りに身を委ねている彼らは、楽しそうだった。

     中にはスーツのまま、足が開きにくいスカートで踊っている人もいた。
     スーツなんていう踊りにくい服でよく踊れるな、なんて思いながら、もう一口お酒を飲んだ。

     よかった。そう思った。

    「お姉さんはここ初めてなの?」
    「はい…客として、来るのは、初めてです」
    「……客として?」

     不思議そうに目を丸くする少女。
     よく見ると可愛い顔だな、なんて思いながら彼女に微笑みかける。
     すると彼女は、私の真似をして微笑んでから二度頷いた。

     彼女とそうしてコミュニケーションをとってから、私は、立ち上がり、所謂お立ち台と呼ばれる場所へ向かった。

     マイクを持ち、フロアに集まる人達にこう宣言した。

    「今日のお代はオーナーの私が持ちます。皆様、俗世を忘れ、心行くまでお楽しみください」

     拍手が起こる。
     私は堂々と、胸を張ってこう言った。
    「私の事はオーナーではなく、帝王とお呼びください」
     舐め腐るなよ人間。私は昔から何一つも変わっていない。
     見下すな人間。
    04.三女(魚座)

     愛したかった。

     彼女の肌は雪のようだ。
     穢れを知らない天使のようだ。
     幼い頃からそうやって思われ、そうやって育てられ、今年でもう25だというのに幼子のようなワンピースを着せられている。
     装飾品のように。崇拝するように、私はいつだってそうやって見つめられていた。

     穢れを知ってはいけない。菌に触れてはいけない。有害な何かに近付いてはいけない。
     そんな事を言われ、そんな風に生きさせられていた。

     変なやつから言われる。
    「愛されてるから良いじゃん」なんて。
     ふざけるな。私は自由に生きたいのに。

     25の誕生日に、私の美しさのせいで、私を神の子として崇める団体が現れた。
     そいつらのおかげで、私は尚更生き辛くなってしまった。
     風呂や排泄に至るまでを監視される日々。
     そんな日々を「愛されてるから良いじゃん」なんて言いやがったあの馬鹿の顔をひっぱたいてやりたかった。
     今すぐにでもひっぱたいてやりたい。
     金を払えば許されると思ったか?
     謝れば許されるか?
     そんなわけがないだろ。何をしたって許せるわけがないだろ。

     ある時、もう我慢できないと腹が立った私は、自分の筆箱からボールペンを取り出した。
     それで、自分の腕へ何度も線を引き、めちゃくちゃな絵を描いた。
     みみず腫のように腫れ上がる腕、バランスの悪い薔薇。
     それを見て私は、気分が高揚した。
     とても綺麗だ。そう思った。
     冷やされ、怒鳴られ、蔑まれた。
     それでも私は、綺麗だと思った。思っていた。


     25の最後の夜、家から抜け出した私が向かった先は、タトゥーショップだった。
     あの時のアンバランスな薔薇を忘れられなかった。
     タトゥーショップにいた虎のタトゥーが入った二人の女の子が、私の体を見てこう言った。
    「綺麗なキャンバスだね」

     ああ。

     なんだ、バレないんだ。
     じゃあ、いくらいれたって、何も変わらないじゃないか。
     みんな、私の表面しか見ていないじゃないか。
     服の下に何があっても、腹の底に何があっても、みんな気付かないんだ。

     排泄だって隠そうと思えば隠せたんだよ。
     セックスだろうがオナニーだろうが隠そうと思えば隠せんだよ。バカみたいだな。
     変わらず純と呼ばれる私。

     一夜を共にした相手。顔が好みで口が固そうな信者のうちの一人。そいつにタトゥーがバレた。
     少し怖かった。もし、こいつが私の事を慕う馬鹿共にチクったらどうしよう、と。


     彼は私の頭を撫でた。
    「嫌だったね」
     驚いた。
    「言ってくれてありがとう」
     抱き締めてくる彼。
    「あ……」
    「…あのね、いくら、どんな人に慕われようが」
    「うん」
    「君が嫌なら嫌って言っても良いんだよ」
    「……うん」
    「君の事を救えはしないかもしれないけど、理解者にならなれるから」
    「理解者にもなれるわけないだろ、救う気無いなら離せや気持ち悪い」


     見下すな。同情もするな。
     私は私として生きる。
     崇拝されながらも、馬鹿共の裏で綺麗なキャンバスにタトゥー入れまくってやる。
     好き勝手に絵を書いてやる。
     色んなものを吸収して好き勝手に生きて死んでやるんだよ。
     私の物語は悲劇じゃない。
     何が悲劇だ、ぶち殺すぞ。

    05.産まれながらに敗者の牡羊座

    次女「やっべ」

    六女「なんかあった?」

    次女「ここに置いてた名刺入れがない…」

    六女「え?名刺入れってあの…開きにくいからもう素手で持ち歩くわ言うてたやつ?」

    次女「そう…無くなっちゃった…」

    六女「なくていいじゃん」

    次女「ダメ…名刺捨てて中に飴とガム入れてたの…あれがバレたらアホだと思われる…」

    六女「私お前のそういうとこマジで好き、探したげる」

    長女「次女おばかちゃん!見つかった?」

    次女「ない…」

    六女「?なあ次女次女、なにこれ」

    次女「?生爪落ちてる」

    長女「わ、今の時期にぴったりなピンク生爪」

    次女「可愛い、誰の生爪?」

    六女「私ネイルしないから私のじゃない」

    長女「…あ!なんかアレじゃない?アレかも!爪無い人が犯人的なやつかも!」

    六女「それウケる」

    次女「爪が無い子…」

    六女「もし窃盗だったらどうする?」

    長女「その時は…このネイルチップが自作なのか買ったやつなのかが問題」

    次女「そこ?私がアホだと思われるより?」

    長女「うん、みんな分かってるもん」

    六女「ウケる」

    次女「あ、待って、今思い出した」

    六女「行方?」

    次女「爪無い子、五女ちゃんだ」

    六女「あーそういえば無かったっけ」

    次女「(笑)知らないでしょ」

    六女「うん(笑)知ったかぶりしたわ」

    長女「六女ちゃんってたまにそういうとこあるよね」

    五女「やっほー今終わった!ただいま~」

    次女「!爪がない!!逮捕ー!!!!」

    五女「なになになに!!びっくりした!!」

    長女「名刺入れどこやった!」

    七女「なになに」

    六女「窃盗容疑でお前のお姉さん逮捕された」

    七女「あー名刺入れね?」

    五女「あー…その、前次女ちゃんがその中の飴くれたから…なんか返したいなと思ったらなんか床に落ちてて」

    六女「アホ」

    次女「流石にアホすぎたかも」

    五女「中に何個か入れて…返そうと思って持ち上げたらその瞬間気付いたの」

    次女「何に」

    五女「あ、今日出勤日だって」

    次女「私よりもアホいた」

    三女「お疲れ、あ、次女ちん、その中の飴貰ったよ」

    次女「窃盗犯もう一人おった」

    四女「私も貰った」

    次女「もう一人増えよった」

    三女「中にグミ入れといた」

    四女「私500円玉入れといた」

    次女「神になった」

    四女「てか今日の爪かわい、どこでしてもらったの?」

    五女「これね~一応自作のネイルチップ!かわいいでしょ?」

    四女「え!すご!」

    六女「!?マジ!?え、このパールどこの!?」

    五女「地下の安いとこ…」

    三女「このデザインも自分で!?めっちゃかわいい!」

    五女「ほんと!?ありがとー!!かわいいよね!!」

    次女「この…桜?超かわいい…書いたの?」

    五女「書いた書いた!」

    長女「え、待って、金払うから作って欲しい…」

    五女「え、むしろもらって欲しい、作るのが趣味だから…」

    長女「嘘ー!」

    四女「私自爪でやる派なんだけど…」

    次女「そうなの?わ!かわいい!!」

    五女「わーキラキラだーかわいい!!」

    七女「ねね!カップルネイルしよー!」

    五女「うん!しよしよ!したい!」

    06.四女(牡牛座)

     虎のタトゥー

     泣き叫ぶほど、狂うほど痛いと聞いていた。
     実際体験してみるとそこまでだった。
     ちょっとなんか「おー、痛い痛い」くらい。
     痛みに強いという自覚はあったし、なんとなく泣きはしないと思っていたが、本当にそこまでだった。
     生きていく上で必ず味わう痛みではないけれども、味わうのなら味わっておきたい痛みで、私はそれを味わえて満足していた。

     じくじくと広がる痛みか、突き刺すような痛みか。
     ネットで痛みについて調べれば調べるほど、私は本当は痛みを感じないんじゃないか、なんて思った。
     でも臍にあけたピアスは痛かったからなんでか分からなかった。
     前世で味わっていたからどの程度か分かっていたのではないか、なんて思った。

     路上で踊ってみた。
     いつものように踊ってみた。
     脇腹のタトゥーを見せながら。
     みんなタトゥーを褒めてくれた。
     踊りながら思った。もしこれを私の生徒が見ていたら、と。

     生徒。生徒な。
     本で殴ってた子。
     成人しているのになんであんなとこに通っているんだろう。
     なんでこの時代にスカートを穿いているんだろう。
     不思議で可愛い私の生徒。
     真似して穿いた中古のスカート。

     鏡でタトゥーを見た。
     この子の為なら辞められると思った。
     全てを投げ出してこのタトゥーと生きていきたいと思った。

     真っ白なキャンバスの女の子。
     私のタトゥーを見て喜んでいた女の子。
     元生徒と私に入った虎のタトゥー。
     貴方は私の虎のタトゥー。
     私は貴方の薔薇のタトゥー。
     背伸びしたわけじゃない。
     自己主張したかったわけでもない。
     ただ表したかった。
     私の中に眠る何かを。
     私の中に生きる激情を。
     虎と共に生きたかった。
     貴方は私の虎のタトゥー。
     私は貴方の薔薇のタトゥー。
     私なら救える。
     私なら助けられる。
     私なら表せる。
     貴方の美しさを。
     貴方本来のかわいさを。
     貴方本来の格好良さを。
     元々生きていた。
     それが具現化しただけ。
     だから痛くなかったんだね。
     ずっといてくれたんだね。
     私だけの虎のタトゥー。

     だいすきだよ。
    07.五女(双子座)

     甘いものが食べたい。

     最近とてもとてもとてつもなくしんどい。
     友達と会って沢山お話ししてのんびりカフェでまったりするのが私の癒しなのに、最近はみんな仕事だとか人付き合いだとかが忙しいって言ってたから誘うに誘えなくて。

     職場にいる同年代の女の子達が唯一のお話し相手。

    「最近はこういう系統もあるんだ」
    「ゆったりした服最近流行ってるよね?[隕九k縺ェ]ちゃん確かこういう服着てる人好きじゃなかった?」
    「うん…好き!」

     ねえーーあのさーーーー!!私それ嫌いって昨日言ったじゃないですかー!!!元彼思い出すから嫌って言ったのにー!馬鹿ー!!!

     クソ元カレ。クソ男。ぶちのめしてやりたい。
     でもぶちのめしたら捕まるのは私。
     浮気したあいつじゃなくて私。
     考えるだけでも罪になりそうで最悪。


     男と女は違う生き物。
     男は敬われるべき。
     そう学校で学んだ。
     クラスに居る数人の男の子達。
     みんな特別って扱われて、私達の存在は無視されて、その他大勢として扱われた。

     甘いものが食べたい。
     食べたくて仕方がない。

     少し前に、男として生きたいとも思った。
     でもY染色体を持たない私には無理だった。
     え、待って?何がY染色体?なんで私こんなに悩んで甘いもの食べたいって荒れてるんだろ??
     そう思い健康管理用アプリを開いてみる。

     …あ、なんだ、生理前だからか!
     それなら納得納得!コンビニスイーツ買い漁って帰ろっと!


    「……わ、最悪、もう売り切れてる」
     やっぱりな。
     期間限定品ほど美味しくて、期間限定品ほど気に入って、期間限定品ほどすぐになくなるし、期間限定品ほど高い。
     私はいつだってそうだ。
     彼女いる人ばっか好きになるし。
     居ないと思ったら派遣の人だし。
     繁盛期終われば会えなくなるし、仕事帰りにたまに行ってるコンビニのイケメン店員もこの前店長らしきおばさんと「店長とは付き合い長かったですよね」「今までお世話になりました」って話してたし私はいつだってそうだ。
     お?ナイーブになってるな。
     仕方ない、今日は特別な日用のバスソルトで癒されるしかないなわーー!3月の新商品いちごスイーツだーー!!色合いかわいいーーー!!!
     最高。生きててよかった。世界に感謝。

     さ、帰ってドラマでも観よ。



    08.六女(蟹座)



     鱗を剥がすことに決めた。

     鱗ってなんだよ。私は魚かアホ。

     全ては人が作り出した哀れで悲しくて辛くてしょうもない何もかもで

    「なおちゃん学食食べに行こ~」
    「あ、うん」

     くたばれ全人類。
     死ね全人類。


     髪に絡まる期待と言う名の埃っぽい何か。
     気持ち悪い。

     ウィッグを脱いだ まるで何かをお祝いするかのように
    死ね

     気付くな。私の言葉に。


     流し込んだアルコールのように、私はずっとこうして生きたかった。
     学生服がコスプレに  きっと来世でも着れる

     今度はズボンを?通気性悪
    スカートでそのまま  男じゃなかったとしても

      女じゃなくても

         マスクを被れ 暴動を起こせ
     何もかもをぶち壊せ
       人間として 一人の   生物として


    私達はただずっと生きていた 私達として

         薔薇の花言葉
     本数で変わる
       誰が決めた?
        なら私達も作ろう 新しく作っちゃお!
    赤い薔薇七本で「人生」だと
    虎七匹で「暴動」だと
    赤い薔薇七本と虎七匹でDIVAだクソ食らえ
    女王になれ
     王になれ
    王になりたいんだよ

     たかだか意思ごときでふざけるな
        クソ食らえ全人類
     何が能力だ 何が体質だ クソ食らえ
     全人類にとっての能力は 強かな人間が生き残るための道具
     弱い人間は滅びるだけ
       ↑何言うてんの?アホすぎん?


    「IQが20違うと会話成り立たないって話あるよね」
    「それを聞いて「確かに」って言う人って大体」
    「自分が20高い方だと思い込んでるよね」
    「人と会話を成り立たせようとしない時点で」
    「成り立たないって諦めてる時点で」
    「IQなんてたかが知れてる」


     ばーか あほまぬけ あほ
    生き直せ あほ 自己啓発本読め
     本買って経済回せ 飯食って経済回せ

    こんなん読んでイライラしてる時点で時間の無駄
    揚力の無駄
    帰れ 帰って寝ろ

     えんもたけなわですけれども
     そろそろおひらきといたしましょう
     ではさようなら  またどこかでおあいしましょう

     ばいばい
     れいぎただしくおはなしいたしましょう

     さようなら さようなら さようなら



    09.七女(獅子座)


     うるさかった。

     山のように積んだ本。
     旅をしているような気分。
     私だけのために図書館を開けてくれた優しい先生。
     顔に見覚えがあったけど、何も言わずにお礼だけ言って入っていった。

     自分を偽って生きていた少女の話。
     偽らなければいけなかった少女の話。
     女で居ろと強要されていた、少年の話だった。

     骨格を矯正するきついコルセット。
     それを読み、どれくらいきついのか気になった。
     なんとなく自分のお腹を押さえてみる。
    「ぅわ……」
     胃の内容物が揺らいだような感覚。少年はいつもこれを味わっていたのか。
     いや、吐かせないために…少年の先生は彼に何も食べさせなかったのか。

     風で靡く長い髪。
     きっと綺麗だったんだろう。
     どうしても切りたかったんだろう。
     いいんだよ。
     誰に羨まれようが、君が嫌なら嫌でいいんだよ。

     最後は愛し合う二人の少年が駆け落ちをして終わる。
     裏話には、二人で劇場を開いたと書いてある。
     それは今も残っていると。
     沢山の、色とりどりな格好をした人達で賑わっていると、書いてある。

     二人の少年が、どうか、いつまでも幸せで居れたらと願った瞬間、ふと頭に過った。前読んだ小説にも劇場が出てきたな、と。

     皆を騙して皆で逃げた、あの、何もかもを力業で解決した爽快な小説。確か作者が同じだったな。だから読んだのか。忘れてた。もしかしたら繋がっているのかもしれない。
     そう思い、その本を山から探し、見つからなかったから立ち上がった瞬間、私の平穏を壊す、がらがらと、扉が開く音がした。

     私に気付かず、明かりがついているからと入ってきた二人組。
     カップルだろう。
     男と女のカップルだ。
     わ、多分難しい本を読んでふざけて笑ってる。
     ガキみたいだ。
     字が小さいだの漢字が読めないだの言って騒いでる。

     腹が立つな。

     よく見たらそれは四人組が逃げる、あの、私の、大切な、大好きで、電子書籍でも、本でも、買った、あの、本で

     ごつん

     とりあえずいつも持ち歩いている辞典で女を殴った
     目を見開く男、頭を押さえる女
     なんとなく男も殴っておいた
     私を怒鳴る女、私を怒鳴る男
     とりあえず角でも二人を二回ずつ殴っておいた
     怯えたのか黙り込む二人
     眼鏡がずり落ち、途端に二人の顔がぼやけて見えた
     とりあえずもう一回殴っておいた

     私を止めたのは図書館を開いてくれた先生だった
     私の顔を見て、よくわからない表情をしてから、二人へ何かを話し、二人を帰らせた

    「人を殴るのはダメだね」
     私を注意する優しい言葉
    「腹が立ったので」
     私がそう言うと、彼女はけらけらと笑ってから、小さな声でこう言った。

    「本が落ちてきたことにしてあげる」
    「悪い人」
     私の言葉に、彼女は微笑み、何故か、着ているシャツの裾を捲り、私へお腹を見せてきた。

    「私の弱みを教えるから、私の悪事は見逃して」
     彼女のおへそには綺麗なピアス、そして、彼女から見て左の脇腹に入った、虎の全身が描かれたダイナミックなタトゥー。

     同級生を思い出した。
    「気が合いそうな子を知ってる」
     私の言葉を聞き、嬉しそうに頷く彼女。
    「会いたい、私の事は虎と呼んで」
    「わかった」
    「君のことはなんて呼べばいい?」
    「私は」



    「私のことは、メタファーと呼んで」

     あとから気付いた。
     彼女は私の顔を見て微笑んでいたんだ、と。


    10.産まれながらの敗者な乙女座


    「ねえ、これ七女の好きな本?読んでいい?」
     六女が机の上に置かれた本を手に取った。
    「うん!読んで読んで!」
     それを聞いた六女は頷き、お礼を言ってからゆっくりと読み始めた。
    「その本私も読んだよ!本当に面白かった!」
    「なんか現代社会へのアンチテーゼ的なイメージを抱いたんだけど分かる?」
     三女と四女が本を指しそう言った。
     七女は嬉しそうに頷く。
    「そう!ネットに上がってる考察とかもあって…」
     七女が話そうとした瞬間、六女が手でそれを制止した。
    「私今読んでるから…ネタバレ禁止」
     四女は声を出して笑った。
    「あっは、かわい」
    「笑うな」
    「六女ちんちょい読むの遅ない?」
    「三女黙れ」


    「読み終わったわ、面白かった」
     六女が本を机に置きながらそう言うと、七女は嬉しそうに立ち上がった。
    「面白いよね!」
     頷く六女。
    「ヒップホップで終わりってのがカオスでよかった」
     笑う七女。
    「あはは!だよね!あらすじを人に紹介すると毎回笑いが起きる系の小説ランキング一位!」
     微笑む六女。
    「前読んだあの…誘拐された…六人のやつ!あったじゃん?あれと繋がってるんだよな」

     立ち上がる五女。
    「そうなの、私アホほど考察読み漁るオタクでさ?」
    「自分で考察してみろよ」
    「聞いて!あの、考察があるんだけど、この4人のメイン登場人物ね、人間じゃないんじゃね?って」
     七女も同じく立ち上がった。
    「確かに!川のシーンでも水で濯ぎ落とすのは炭とか埃の汚れだもんね!」

     四女は七女の言葉を聞きながら本をペラペラとめくった。
    「思った、丸一晩走ったら汗かかない?いくら寒くても暑くなるだろ?汗流さないとかおかしくね」
    「うん、それに、ご飯のシーンも一個も出てこないし、排泄だとかお風呂とかのシーンもないの」
     五女の言葉に、四女はあるページを開いてそれを指した。
    「?汚れ気にするシーンあるけど?」
    「…服が…だ…」
    「……うわ、ほんとだ」

     次女は本を覗き込み、七女に対してこう尋ねる。
    「同じ作者の小説ではお風呂とかご飯とか出てくるの?」
    「前編では出てくるよ!」
    「……マジで人間じゃないんじゃね?」
     首を傾げる六女。
    「だよね!!」
     同調する五女。
     しかし、長女は、四女が開いているページを読み、数ページ捲りながらこう言った。
    「でもさ、悲しかったら泣くし、面白かったら笑うし、嫌なら怒るし…もちろん…傷付くし、傷付いたら血が流れて…その血は赤なんだよね?」

     それを聞いた三女がこう呟く。
    「……なら人間じゃん」


     四女から本を手渡される七女。

    「…この4人はさ、ノンバイナリーとかそういうアレなんじゃない?」
    「ノンバイナリー?」
    「ほら、少し前に本で読んだじゃん!あの~!昔は普通に居たっていう…少数派とかいうやつ!」
    「あ、男性として産まれたけど、心は女性の人の話?」
    「そうそう」
    「ノンバイナリーはそれとはまた違うんじゃない?」
    「そっか」
    「でもさ、なんか…トイレ問題とかあったよね、その女の子が男の子のトイレで出来るかって話」
    「それもだし、男が女のトイレでトイレする事にもなるよね」
    「じゃあ、悪魔が、身体が男の子の、心が女の子…天才な少女が、身体が女の子で、心は男の子?」
    「あ、トランスジェンダーだ、思い出した、メモしてたんだあたし」
    「トランスジェンダー…だからトイレの話出さなかったのかな?」
    「それでなんで出さないの?」
    「ちょっと前に本で読んだの、あの…20年代に結構…それで議論になってたというか…女子トイレを使わせるかどうかとかで…」
    「あー…そういう…確かにちょっと気になるのは気になるかもな」
    「だからあえてお風呂シーンも食事シーンもトイレシーンも書かなかったってこと?」
    「その頃は普通に文句言えたんだね」
    「…ねえ、この子達の時代的に性転換手術とかは出来なかったのかな」
    「性転換手術…今は違法になっちゃったよね」
    「トランスジェンダーは居ないっていう風な風潮になってるし、普通に私達がスカート履くのも不自由になったし…」
    「今も隠して生きてる子って居るのかな」
    「……」
    「……いるだろうな」
    「……」
    「…ねえ、これ書かれたのはいつ?」
    「あ……えっと…2024年だって」
    「わ、大昔」
    「40年くらい前?」
    「じゃあ出来たじゃん」
    「劇場…待って?この天才の子いるじゃん?」
    「うん」
    「この子は「クラシック」って単語を聞いてヒップホップのジャンルだと思ったって書いてあるよね?なら、その子がそう思うくらい…クラシックが廃れてたんじゃない?だからこの24年より未来の話なんじゃないかな?」
    「24年ってクラシックって聞いたらどっちが浮かんでた時代だろ…」
    「私はヒップホップの方だけど…」
    「私も!」
    「…クラシック…そんな中でクラシックをやって、劇場で…舞台、とかなんか、めっちゃ古きよき何かを大切にしてる感じだね」
    「言い方を変えると?」
    「時代遅れ」
    「そんな場所だったらさ…その子生き辛いだろうね」
    「比喩なのかな?考えが遅れてる、みたいな…アンチテーゼ的な」
    「あー…そんな中から抜け出せた系か!」
    「合ってるんじゃない?ほら、許嫁のお兄さんもさ、最初はその世界に則って生きてたけど、後半になるにつれて「マジで」とか言ってるから…」
    「変わってってるってこと?」
    「うん…だとしたら男の子達の話がめちゃくちゃにキモくなるね」
    「ね…マジキモい…」
    「自分より年下の子が自分の親代わりしてるってどういう世界…?」
    「精神年齢とか…」
    「従順かどうかで年齢が決められてたとか?年齢というよりかは階級の方が重要になってる、的な」
    「えぇ…」
    「だとしたらさ、あの…男の子達のアレで出てくる許嫁ってのが本当は兄よりも上かもしれないってこと?」
    「そういうことだね…血が繋がってない可能性もあるし…」
    「…どうする?同い年だったら…」
    「このメタくんのお父さんとネイくんが似てるってのも気になる」
    「メタくんの何番目のお父さんかは書いてない」
    「じゃあ、メタくんのお父さん達の中に、ネイくんの本当のお父さんがいたかもってこと…?」
    「ねえねえ、待って?これ気になる、年の話ね?」
    「うん」
    「…メタくんはさ?従順じゃん?ネイくんよりも上だったし…ほら、彼は四つ下って…」
    「いや、メタは従順じゃないと思う」
    「え?」
    「だから先生に……じゃない?」
    「うっわキッモ、合ってそうでキモい」
    「もしも私らの考察が全部合ってたらさ」
    「うん」
    「この小説以上にしんどい人がこの世の中にもいるかもしれんな」
    「……」
    「…どうする?」
    「…出来ることあるかな」

    11.努力をして貴方になりたい天秤座


    「こんな時代で子供を産みたいと思う方がおかしい」
     本を読んでからずっとそんなことを考えていた
     本を読んでからというか、ずっと見ないようにしていたような
     ずっと確認しないようにしていたことのような

     貴方は私の虎のタトゥー
     愛していると伝えたくて
     ああ、私は、あの6人を愛したのだと



     甘いものが喉を通らなくなった
     大して暑くもないのに暑く感じて
     今までの恋愛遍歴を思い出した
     全て「私が女だから」の結果
     その結果のなれの果て

     もし私が男だったら
     私の心が男だったら

     彼らは変わらず私を抱けたのか
     私は彼らを抱いたのか

     慣れない哲学的思考
     楽しかった



     バカのふりをして生きていた気がした
     テレ ビに映った仲良し夫婦
     今までは嫉妬の対象 冗談での嫉妬
    本当は羨ましかった?

      初恋の人を思い出してやめた
         あの感情が愛なのなら
    どうして隠さなければいけないのかと

     なんでなん



     本で殴った感触を思い出す
     糞分厚い辞典
     本には載っていないような経験を
     本に載せられるような経験をしたかったのかな

     この私達の思考を夏の魔物だとかいうアホな言葉で例えられるのなら
     例えて貰えるのなら
     覚えててくれるのなら
     私が本に載れるとしたら
     メイクしなきゃな



     例のナンパ手紙キモ男から話しかけられた。

    「手紙でしか伝えられなくてごめん」
    「最初からこうすればよかった」

     よく見たら顔がタイプだった。
     単純脳な私は彼とデートしようかと思ったけどやめた。
     踊れなくなったから。

    「寒いから風邪に気をつけてね」
     私はこう答えた。
    「貴方も風邪に気をつけて」

     今これを読んでいる貴方も。
     ここまで読んでくれてありがとう。
     もう春が近いけど、まだ冷えるから風邪に気をつけて。
     愛してるよ。さようなら。



     見栄を張るのはやめた。
     帝王と名乗るのもやめた。
     一人の人間として生きるために。

     資金のために売った。
     何もかも。
     私を形成するもの何もかも売った。
     残ったのは私の身。
     コンプレックスだらけのこの身だけだった。

     私が出した資金。みんなはそれを大切にしてくれた。
     まるで私のように。
     恐れずに扱ってくれた。
     子供のように甘やかしてくれた。

     私ずっと甘やかされたかったのかな。



     家に帰った。
     みんなビビり散らかしてアホおもろくて。
     私がやること言うたらみんなビビって止めて。
     アホおもろかったけど、全部話したら認めてくれて。
     最初から話しゃよかったんかね思て。
     何年無駄にした?とか考えたら笑えてきたけど、それも運命なんか思て。
     やったら別にええか、思て。


    12.貴方は私の鬼灯な蠍座



     手を繋いだ。

    「明日やるよ」
     考えてることはひとつだった。
    「私達が先頭に立つのか」
    「不満持ってる人が思ってたよりも居た」
    「怖い」
    「怪我したくない」
     みんな考えてることは一緒だった。

    「40年前の小説が今更ベストセラーだよ」
    「作者さんはおじいちゃんかおばあちゃんになってるのかな」
    「喜んでくれるかな」
    「もし考察が間違ってたらどうする?」
    「そのおかげでどれだけの人間が不満持ってるか分かったんだよ」
    「作者さんはどう思ってるのかな」
    「作者さんがご存命かも分からないじゃん」

     狭くて薄暗いコンクリートの廃墟。

     色んな人間が集まってくれた。

    「長女、最後に言いたいことはある?」
     次女の言葉。

     立ち上がった。
     彼女はどこからかラジカセを取り出した。
     古くて、音が鳴るのが奇跡レベルのラジカセ。

    ──────────

     2060年代にラジカセやで?やばない?どっから見つけてきたんって感じよな。
     まあ流れても音ガビガビらしいけど(笑)

     長女さんは踊ったんやってさ!やばない?
     ガッビガビの音やで?踊ってんの!
     みんなドン引きよ!でもなんかみんな感動しちゃったらしくて!それでみんなで一緒に踊ったんやってさ!
     四女さんってダンス上手いらしいやん?もうみんな感動レベルよ!知らんけど(笑)
     虎のタトゥーが生きてるみたいって言うてる人もおったって。
     まあ言うたん六女なんやけど。あの子意外と感受性豊かよな~。

     そんで、そうやって明日への決起みたいなん高めて、朝になったらみんなで出てデモ活動したんやって!
     この時代ってまあデモめっちゃ起きてたらしくてさ…えぐない?
     まあ言うて25年頃に比べたらマシなんやけど(笑)

     まあ話せんのはここまでよ。
     続きはちゃんと書いてあるからそれも読んで!



    なあ!ヘイ!!これで良かったか!?
    「任せるから好きに書いて」言われたけどうちにどう書け言うんよ!!(笑)
    中途半端なとこで投げ出しよって!!
    小説もよう分からんし!設定も意味不明やし!
    なんやねんヒップホップって!
    まあそんなん置いといて…(笑)

    今もあんたに会いたいよ。
    今あんたが居る場所が、あんたと私が居たこの世界よりも穏やかで平穏であれば良いなって思ってる。

    今も昔も、誰よりも愛してるよ。
    おやすみ。
    お疲れさま。


    XX.思い出全てが金継ぎな蛇使い座




    「大昔に書かれた小説に影響されるなんて馬鹿だと思われるかな」
     自嘲するような声の三女。
    「馬鹿にされてもいいよ」
     立ち上がる長女。
    「差別が悪化するかな」
     怯える五女。
    「私達だけがやったことにしよう」
     立ち上がる四女。
    「恐れられて、敬われて、何もかもを持ってる者が男なのなら、私達は今誰よりも男だよ」
     長女はフードを深く被った。
    「顔を隠しても体格で女だってバレるよ」
     七女はマスクをしながらそう言った。
    「女があえて顔を隠すかを考えさせなきゃいけない」
     爪を整える六女。
    「大人には響かなくていい」
     胸を張る次女。
    「私達が未来を作らなきゃいけないんだよ、7個の脳を使って」

     7人は歩いた。あの4人のように。
     7人は愛した。あの6人のように。

    「ぶち殺してやろう」


     見所なんてなくて良い。不幸になんてならなくて良い。
     伏線なんて気にするな。
     私達の人生は小説じゃない。

    「…カット!オッケーです!お疲れさまでした!!」
     ほざいてろ全人類。
     勝手に見下してな全人類。
    正ちゃん Link Message Mute
    2024/03/08 20:00:00

    DIVA

    宝石より輝くのは私達。

    #オリジナル #創作 #オリキャラ #女の子 #VaD

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