古の砦 夜の幻影に彷徨いて※※ご注意※※
・キャラ崩壊
・FFシリーズとクロノクロスの良いとこ取りでできたようなパロディ
・ユウ呼びあり
・ゲームの中では皆監督生に優しい
・名前だけオリキャラ出ます
・導入がただのクロノクロス
それでも大丈夫という方は、次ページへどうぞ
このお話から最後まで
ゲーム世界のお話→キャラ達の実況
の順でお話が進みます。
まるで地響きのような、腹の底に響く音と振動を感じて、ユウは目を開けた。ごぉん、と古めかしい軋むような鈍い音と共に目の前の扉がゆっくり開く。一体、自分はどこにいるのか。ここに来る前のことを思い出そうとしても、上手くいかない。と、自分の背後、両側から二人の人間が降り、こちらへ振り返った。よく見ると、見覚えのある顔だ。
「どうしたの? ユウちゃん。ぼーっとして。ここから先は危ないかもよ。命のやり取りするんだから」
赤い軍服に身を包んだ細身の男。この男とユウは今まで何回か会ったことがある。確か、幼馴染のエースの上官ケイトだ。その隣にいるのは、赤いとんがり帽子に赤いローブの、仕事着のエース本人がいる。しかし、普段の彼らとは少し違う緊迫した様子に、ユウは状況が上手く飲み込めず、立ち尽くしていた。
「…………え?」
戸惑うユウに今度はエースが言う。
「あ、ユウ。もしかして、怖くなっちゃったとか? 大丈夫だって。ここまでちゃんと来れたし、後はシャドウの奴をぶっ飛ばすだけ。心配することなんて、何も無いって」
「そうだよ。さ、ユウちゃん。大丈夫! オレ達が守ってあげるから!」
「う、うん……」
二人に促されて、戸惑いながらもユウは扉をくぐって降りた。背後で閉まる扉の音を聴きながら、ユウは目の前の道を見る。道は二手に分かれている。ユウは迷いながらも、右の方へ進んでみた。
そこはどこかの部屋の二階に通ずる通路だったようで、石造りの手摺が邪魔でこれ以上、進めない。そこからは下の部屋の様相がよく分かり、三人は一際目立つ祭壇のような物を見た。
「あれ、何だろう?」
「う〜ん……ここからじゃ、遠くてよく分からないね。水晶の柱みたいだけど」
「こっからは降りらんないみたいだし、回り道した方が良さそう」
ケイトの言った通り、祭壇の中央には黒い水晶の柱のような物があり、暗い輝きを放っている。一行は正体を確かめようと、反対側の道へ急いだ。
反対側の道の先は壁の無い迷路になっており、途中襲いかかって来るモンスターを三人で協力して何とか倒しつつ、あの水晶の部屋を目指す。
やっと辿り着いた一行は祭壇に近付き、そこに彫られている文章を読もうとしたが、長年人の手が入っていないそれは風化が激しく、掠れていて全く読めなかった。仕方なく、水晶に触れて調べてみようとしたユウだが、触れた瞬間、水晶は輝きを失い、消えてしまう。
「消えちゃった……」
「マジ? じゃあ、何か変化あったりする?」
「……この部屋じゃないみたい。ちょっと戻ってみようか」
「はい」
訝しみながら部屋を出ると、入る前とは違う点をエースが見付けた。
「何かあそこ、光ってる!」
エースが指したのは、迷路の中心。入る前は変わった床の模様だと思ったその地点が淡く光っている。早速調べてみようと、三人は駆け出した。
調べようと三人が床に乗ると、何かに反応したのか、床が一際強く光ったと思った瞬間、三人は遙か上空へ飛ぶ。しかし、それも瞬きする間の一瞬で衝撃も何も無く、三人はまた地に足を付けられた。
そこは魔法で空に浮かんでいる小部屋のような場所の前だった。目の前には両開きの大きな、所々錆びている鉄扉があり、開けられるのを待っているようにその口を閉じている。ケイトが不思議そうに自分の体を見た。
「ねぇ、今オレ達の体、透けてなかった?」
ここまで飛んでいる最中のことを言っているのだろう。ユウ達は原理はよく分かっていなかったが、「確かに」と同意する。エースが現在地を確認しようと、低い塀から少し身を乗り出して下を見た。
「たっか!? いきなり空中とかどんな魔法技術使ってんのっ!?」
「全く、とんでもない砦だな」と零すエースは、何やら考え込んでいるユウを振り返った。
「な、ユウ」
やはり、何かがおかしい。第一、こんな場所は知らない、と彼女は急に少し怖くなった。何も答えないユウを心配そうにエースが見つめる。
「お前、大丈夫か? さっきから何か変だけど。この先に何があるのか、分かんないんだから、気、引き締めていかないと、な?」
肩を軽くぽん、と叩かれて疑問に思うもユウは「うん」と返す。気を引き締めて。エースの言葉を頭の中でもう一度言ったユウは扉へ向き直った。心臓が跳ねる。嫌な汗が頬を伝う。この先に、行ってはならない。そう本能で感じ取っていた。
高い場所にいるせいか、何だか目眩がしているような気がして、ユウは扉に押されたように倒れた。瞬間、目の前には倒れているエース、意識は無い。それを冷たい目で見下ろしている自分。その手には血に塗れたダガーが握りしめられていた。自分がエースを刺した? そう認識したことが合図であるかのように、ユウは小さく、笑うように息を吐いた。
そこで彼女の意識は途絶えた。真っ白になる視界の中で、遠くから誰かの呼び声が聞こえる。それは段々近付いてきて――
「ユウ! 起きなさいって言ってるでしょ!」
「わあっ!?」
いきなりの大声に、飛び上がったユウは被っていた布団を跳ね除ける。その様に呆れた溜息を吐くのは、腰に両手を当てた母親だ。朝、カーテンが開けられた窓からは暖かな日光が差し込んでくる。
「全く……あんた、昨日エース君とデュース君にお弁当作るとか言ってた癖にいつまで寝てるの? 夜更かしはダメっていつも言ってるでしょ」
「あっ、そうだった! お弁当!」
ずい、と鼻の先にピンクの布で包まれたお弁当が差し出される。「お母さんがもう作っちゃったわよ」と言われては、平身低頭謝罪と感謝を述べるしかない。
「ほら、早く着替えて持って行ってあげなさい。折角のお祝いなんだから」
「うん。ありがとう、お母さん」
お弁当を受け取ってベッド脇のチェストに置いたユウは急いで身支度を整える。もう少し起きるのが早かったら、自分が弁当を作る筈だった。今日は二人が晴れて出世してから初出勤の日だ。エースには下級魔導士、デュースには騎士の称号が与えられ、先日「おめでとう」と言ったばかりだった。だから、今日は二人の為に祝いの弁当を作る予定だったのだ。あの変な夢さえ、見なければ。
「何だったんだろ、あの夢……」
髪を梳きつつ考えるも、あまり余裕は無い。時計を見ると、二人の出勤時間までもう間も無いと知ると、ユウは慌てて母の弁当を手に家を出た。
「よっ、寝ぼすけ」
「おはよう、ユウ」
「ごめぇん、待った?」
いつもの待ち合わせ場所――街の中央広場に行くと、既に二人は新しい制服に身を包み、ユウの姿を捉えると、手を振ってくれる。エースの顔を見た瞬間、さっきの夢を思い出したユウは、振り払うように頭を振って手を振り返す。合流したユウは、持っていた弁当をエースに渡した。
「ごめん。お弁当持って来たよ」
「いつも済まないな、ユウ。ありがとう」
「お、サンキュー。――お前が作ったの?」
「…………ごめん。寝過ごしちゃって、お母さんが作ったの」
「じゃあ、当たりだな。ラッキー」
「ちょっとエース、それどういう意味!?」
エースの失礼な発言に怒るユウを宥めるデュース。いつもと同じ日常にユウは段々、昨日見た夢のことなど忘れていった。
「そういや、お前さ。相棒決まったの?」
「オレらは晴れて出世したけどね」と笑うエースにユウは「う……」と言葉を詰まらせる。先日、ユウも調教士の正式な資格を取り、後は相棒を決めて仕事を始めるだけなのだが、その相棒がなかなか決まらず、悶々とした日々を送っていた。今まで何度か相棒候補のペット達とは会ったことはあるが、どの子も悪い子ではないが、それ故にこの子だと思う相棒に巡り会えていなかった。
「ユウはお前と違って、慎重なタイプなんだよ」
「それ、どういう意味だよ!? オレだって、慎重ですぅ~」
エースが抗議の為にぶんぶんと振る手に握られた弁当が揺れる。それに注意を促してユウは、二人を見送った。
「はいはい、お弁当落とさないでね。そろそろ行こうよ。遅刻しちゃう」
「そうだな。遅れたら、また王子に首をはねられる」
「げっ。それは勘弁。んじゃ、今日もそこそこ頑張りますか」
「一生懸命に頑張れよ」
他愛もない会話をして、三人はまず、何故か武器屋に入った。カランカラン、と入店ベルの軽やかな音が響く。商品を見ようとしたユウにエースは不満そうに言った。
「ちょっとユウ、早く行かないとマズイんじゃない? 王子に怒られるって! 早く行こうぜ?」
「武器が見たいのか? 悪いが、仕事を終えてからにした方が良いと思うぞ」
「それもそっか。ごめん、今行く」
碌に商品を見ること無く、ユウは店を出る。それからも度々寄り道をしようとするユウを二人は止めて、やっと城へ辿り着いた。ここロザリアの中心都市王都ローザに城を構えているのは、ユウ達の国を治める女王陛下と第一王子リドル・ローズハートが生活しており、エースとデュースは兵として、ユウは使用人として働いている。城の前でエース達と別れたユウは、いつも通りに使用人達が使う出入口へ向かった。
一方、エースとデュースは訓練場へ急ぐ。人に見付からないように物陰から覗くと、訓練場には兵士達だけで、リドル王子も団長もいなかった。エースの合図で急いで隊列に並ぶと、二人は安堵の息を吐く。
「ふぅ……ギリギリセーフ」
「何とか間に合って良かった」
それからすぐに、城の方からリドル王子と二人の団長がやって来る。走って少し乱れた呼吸を整える間も無く、エースとデュースは背筋を伸ばした。
リドルが兵士達の前に来ると、リドル直属の近衛騎士団赤薔薇の団長トレイ・クローバー、同じくリドル直属の近衛魔術師団白薔薇の団長ケイト・ダイヤモンドはリドルの左右を守るようにして立ち、王子の言葉を待った。リドルは一度、兵士達を眺め、少し眉間に皺を寄せると、つかつかとエースの前へ近付いた。
「エース・トラッポラ!」
「はい!」
リドルはエースの服の裾に付いていた葉を取って勝ち誇ったように笑む。
「これは何だい?」
「あ……う……そ、それは……ど、どこかで付いちゃったのかな~、と」
リドルは笑みを消して、手に持っていた葉をぽい、と捨てて言った。
「次は無いよ。今度からは余裕を持って隊列に加わるように。デュース・スペードもだ」
「は、はいっ……!」
怒られるまではいかなかったが、注意はされた二人は、心中で少しがっかりした。リドルは元の位置に戻ると、「こういった日頃の気の緩みが油断に繋がる。他の兵士も無関係ではないよ。では、本日の訓練を始める!」という切り口で本日の訓練が始まった。
美麗なグラフィックと民族音楽で彩られたオープニングムービーが終わり、これまた賛美歌のような美しい歌と海中の映像が流れるタイトル画面から『New Game』を選ぶと、きらきらをそのまま音にしたような決定音の後、まず主人公の名前入力欄が出てきた。上の方に『デフォルト名にすると、名前も呼ばれます』という文章があり、二人は「どうする?」と顔を見合わせた。
「オレはどっちでもいいけど?」
「僕もだ」
少し考えて、「めんどくさいからいっか」という理由で二人は名前を変えずに決定ボタンを押した。最初に出てきたのは、六匹の龍の像が円形状に等間隔に並んだ古城の映像。そこからフェードインしてきたゲーム画面に二人は「おお……」と感嘆の息を漏らす。
「ムービー綺麗だな……」
「うん。流石イデア先輩って感じ」
緊迫した戦闘風の民族音楽BGMを背景に最初に出てきた魔術師姿の自分とケイトの姿を見て、エースは思わず「へぇぁあっ!?」と素っ頓狂な声を上げ、その声にデュースが噴き出した。エースが隣のデュースを肘で小突いている間に、ケイトがセリフを喋る。事前に自分達の声はある程度サンプリングしたが、数種類しか無かった筈だ。新しく録った覚えも無い。なのに、滑らかにセリフを話す淀みない声にまた感心の声を上げる。
「そういや、今回殆どのセリフは自動音声使ってるみたいだけど、自然過ぎない?」
「引っ掛かる感じとか、全然無いな」
イグニハイド寮の製作技術に気を取られている間に話が進み、エースは主人公のユウを操作して砦の中を進む。その間にも二人は自分の声でセリフを読み上げられることに「自分が喋ってると思うと、ちょっと恥ずかしい」と話し合う。迷路に入った辺りで、デュースが不思議そうに言った。
「でも、これ、エース達はなんでここに来たんだ?」
「さあ。全然脈絡無いから、夢とかじゃね?」
迷路の中に配置されている敵のシンボルを避けようとしたエースは、様子を伺おうと立ち止まる。しかし、何となく敵の動きを予測したデュースは、もう少し下がった方が良いと助言しようとした。
「あ、エース、そこにいたら……」
「え? なに?」
デュースの声に一瞬、気を取られたエースの指は無意識に方向キーを押してしまい、敵にぶつかってしまった。
「あっ、ちょっ――デュース!」
「あ、済まない。あそこにいたら、ぶつかると思ったんだ」
「もぉー!」
所々罅が入り、苔まで生えている石造りのアーチを背景に、広い場所でモンスターと戦闘となったユウ達は三人横一列に並び、それぞれの待機モーションでプレイヤーの指示を待っている。どうやらバトルはターン制のようで、プレイヤーの指示が無い内はゲーム内の時間は止まっているという扱いのようだ。最初にターンが回ってきたのは、ケイト。取り敢えず、エースは三人の攻撃力を測る為に通常攻撃を選んだ。ケイトが一歩前に出て、敵に銃を構える。他のゲームではまず出てこない殺傷能力の高い武器に、二人は「ケイト先輩、銃使うのっ!?」と驚いた。その声に呼ばれるようにして入って来たリドル、トレイ、ケイトは二人の姿を見付けると、嬉しそうに声を上げて近付いて来た。
「あ、ゲーム届いたんだね! エースちゃん、デュースちゃん」
「あ、寮長達、おかえりなさーい。凄いですよ、このゲーム。ケイト先輩が銃使うの」
エースの言葉に「銃っ!?」と先程の二人のように驚きの声を上げる先輩達。始まったばかりだとデュースが言うと、皆に見えるようにとトレイが三人分の椅子を持って来た。
ゲーム画面ではケイトが敵に銃弾の代わりに白い光を撃ち出す。弱、中、強と細かく設定された攻撃毎にモーションも派手になる様に、ケイトが上機嫌に「けーくん、かっこいいじゃん」と喜んだ。
「え? これ、今始まったばかりなのか?」
「はい。多分、ユウの夢の中なんじゃないかって言ってたとこです」
「なるほど。僕はこういったゲームはやったことが無いけど、変わった始まり方だね」
戦闘が進むと、エースがあることに気付いた。
「ちょっと、ユウ、攻撃できねーんだけど!?」
彼の言う通り、ユウのコマンドは攻撃コマンドが灰色に染まっており、選択できない。よく見ると、彼女は武器らしい物を何も持っていなかった。こんなこと、今までやってきたゲームには一切無かった演出にエースは戸惑いっぱなしだ。仕方なく防御をさせて、今度は自分で攻撃する。攻撃する度に上がる「はっ!」「やぁっ!」等の声が自分の声で再生される為、やはりまだ慣れないエースは気恥ずかしそうにそっぽを向く。その様子に訝しげに訊くリドルに、デュースがしたり顔で答えた。
「自分の声でセリフを言われるのが恥ずかしいみたいッス」
「ああ、そういうことか。……ふふ」
「言っとくけど、ここにいる全員、後でいくらでも喋るんで! 覚悟しとけよ! デュース」
「分かった分かった」
魔法を使うこと無く敵を倒し、どんどん先に進んだエースは、遂にダンジョンの最奥へ辿り着く。ユウが扉の前で倒れるムービーを皮切りに、ナイフで刺されたであろうエースの映像を見せられ、ハーツラビュルの面々は皆閉口した。
「…………え? エース、なんで?」
「………………エース、監督生に何をしたんだい?」
「オレが知りたいっ!!」
半泣きでゲームを進めるしかなくなったエースは震える体を抑えつつ、画面に向き直った。物語はエースとデュースに称号が与えられたという話が出てきて、リドルは密かに自慢気に微笑む。自分のトランプ兵がゲームの中でも評価されたことが嬉しいのだろう。しかし、ユウと三人で遅刻しそうだという時にやたら寄り道をしようとするエースには、しっかり怒っておいた。
エースとデュースが隊列に入ってからのムービーで初めて登場したリドルとトレイの姿に、エース、デュース、ケイトはまた感心の声を上げる。厳しく凛々しい王子のリドルと皺一つ無い制服に身を包んだトレイに、デュースは興奮気味に「かっこいいです! カシラ! クローバー先輩!」とはしゃいだ。
「これはオレだけど、オレじゃないんだが……。何だか照れるな」
「このオレ達、凄いかっこいい……! 今度、イデア君と監督生ちゃんにお礼言っとこ!」
後日、教室に現れたイデアに物凄く怯えられることとは露知らず、ケイトはパシャパシャとスマホでゲーム画面を写真に収めた。