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    七海龍水誕生日おめでとうSSS(龍ゆづ/dcst夢)『夕鶴様に招待状をお渡しさせていただきます。……龍水様にとっての一番の誕生日プレゼントは、貴女という姫君とご一緒に過ごすこと。どうか、その日のご予定は龍水様の為に空けていただけますと幸いです』

     遡ること一ヶ月前に、フランソワさんからこっそりと手渡された豪華な招待状。その中身は七海財閥の御曹司である七海龍水の誕生日を祝うパーティーの招待チケットと「参加をお待ちしております」という旨が書かれた手紙が同封されていた。本来ならば、七海財閥との関わりが薄い家柄の生まれの私が手にすることなどないものだが……何の間違いなのか、彼は私にぜひ来てほしいと招待状を用意させたみたいだった。

    「……まったくもう。私、お姫様なんて柄じゃないって……思ってたのにね」

     小さい頃から、お伽噺に出てくるようなお姫様に憧れていた。けれどいつからか、自分はお姫様になんてなれないのだと諦めて、きらびやかなドレスを身に纏うことを考えもしなくなっていたのに。私の目の前に突如として現れたアイツは……龍水は、私に昔の夢を思い出させてきた。私の奥底に眠っていた「誰かのお姫様になりたかった」という願いを見抜いて、「俺が貴様にとっての王子だ!夕鶴!俺の姫となれ!」なーんて言ってきたんだっけ。

     女の子という存在全員に対して、龍水は平等に優しく真摯に接するから……勘違いしてはいけないって思っていたのだけれど。あんなことを言われては、勘違いかもしれないだなんて思えなくなる。彼に相応しいのは私じゃないからって、彼は誰に対しても平等なんだからって逃げようとしても、逃げられなくなる。

     好きになっちゃいけない男を好きになってしまったんだって思い悩んだこともあったけど……まっすぐに、シンプルに。ただただ「貴様が欲しい!夕鶴!俺の側にいてくれ!」と、自分の欲しいを貫いて、私に手を伸ばしてくる龍水を見ていたら……ごちゃごちゃ悩んでいた私が馬鹿らしくなった。自分の欲望に素直で、嘘を吐かない彼の姿が眩しくて……私も、彼のまっすぐな想いに応えたいと思ったから。広げられた龍水の両腕の中に飛び込むことにしたのだ。彼ならきっと……ううん、絶対に、私のことを受け止めてくれるのだろうと信じられるから。

    「……あんただけのお姫様になって祝ってあげるんだから。覚悟しておきなさいよね、龍水!」

     龍水の隣に並び立つ為に用意した、夕陽のように真っ赤な美しいドレスを身に纏う。龍水が待つ城へと向かうために家を飛び出せば、待っていましたと言わんばかりに、リムジンを後ろに控えさせたフランソワさんが待ち構えていた。

    「お待ちしておりました、夕鶴様。……流石です、やはり龍水様のお隣に相応しい姫君ですね、貴女は」
    「しみじみ言わないでください……照れちゃうでしょ」

     第三者から言われるとやっぱりちょっと照れくさい。フランソワさんは照れる私を見て、微笑ましそうに笑っていた。

    ***

    「あちらに龍水様がお待ちしてます。……さあ夕鶴様、どうか二人きりの時間をゆっくりお過ごしください」

     パーティーの喧騒から隔離された、夜空を見渡せる静かなバルコニーへと案内される。そこに龍水は待ち構えているらしい。てっきり人が大勢いるところにいるのかと思っていたからちょっと意外だったけれど……私と過ごすために、二人きりになれるバルコニーを選んでくれたのだと推察する。そんなさり気ない気遣いがたまらなく嬉しい。七海龍水という男は強引な俺様という印象が最初は強かったけれど、それだけじゃないことを私はもう知っている。

    「龍水!」

     バルコニーへと続く扉を開ける。夜空を見渡していたらしい龍水は、私の声を聞くなり嬉しそうに笑って振り返った。月明かりに照らされた彼の金糸の髪は美しく凪ぎ、私を捉える瞳は愛しげに煌めいていた。

    「夕鶴、待っていたぞ!……ハッハー!やはり貴様は美しい!いやはや、俺の持てる言葉では表現しきれぬ程に……俺は、貴様に見惚れたぞ!」
    「うぐっ……! あ、あんたってばほんとに……相変わらずストレートすぎなのよ! でも……ありがと。嬉しいわ」

     龍水の直球すぎる褒め言葉は、正直言って未だに気恥ずかしくて素直に受け止めきれない。でも、彼の言葉に嘘偽りもなく、本心からの言葉だともう分かっているから……私は少しずつ、彼の言葉を受け入れることにする。まだまだ慣れないことも多いけど……これから長い年月、彼と共に人生を歩むのであろうと確信しているから。七海龍水という男の隣に堂々と並び立てる存在になるのだと覚悟を決めるのだ。

    「龍水……お誕生日、おめでと。私のことを見つけてくれて……出逢ってくれて、ありがとう」

     これからもずっと、貴方の誕生日を祝っていきたい。そう言ったら、龍水は驚いたように目を見開いた後……嬉しそうに、まるで太陽の輝きを彷彿とさせる程の眩しい笑顔を浮かべる。

    「夕鶴!俺も……貴様に出逢えてこの上なく幸せだ!これからもずっと……俺と共にこの日を迎えてくれ!愛しているぞ!」
    「きゃーっ?! き、急に抱き締めないでよ! ばか!」
    「ハハハ! すまない、つい嬉しくてな!」

     彼に強く抱き締められて、身体中が熱くなる。すっごく恥ずかしかったけれど……本当は、龍水が喜んでくれたのだと分かって嬉しかった。
     龍水の幸せそうな笑顔が好きだと思う。これから先ずっと……彼のころころと変わる表情を見守っていきたいなって、私は心の底から願っていた。

     七海龍水という男の願いが全て叶うように。私は彼のことをずっと……支えていこうと改めて誓った。

    END.
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    2022/11/11 20:05:35

    七海龍水誕生日おめでとうSSS(龍ゆづ/dcst夢)

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