Conversation
side-T
俺はさあ、不思議なわけ。
俺はね? 俺はいいの。お前を好きになるのになんの疑問もないの。無理もないの。だってお前は俺の憧れの実体化みたいなもんだから。好きになって当たり前なんだよ。当然の帰結ってやつだよ。
でもね、だからこそ分かんないんだ。お前が、そんなお前が俺を好きって言ってくれることが。いわゆる「パソコンに強いオタク」なだけで、なんの取り柄もない俺の、どこに好きになる要素があんの?
いやだってんじゃないよ、全然。好きの塊みたいなのがこうして俺の上にいてキスくれて俺を見てあまつさえ欲情までしてくれてるんだよ、嬉しくないなんてフリでも言わない。正直めちゃくちゃ嬉しい。泣きそうなくらい。いやだから大袈裟じゃないって。本気で涙出るほど嬉しいんだってば。もー。うん、信じてくれるとこも好き。悪くない悪くない。言い方が嘘っぽかったよな、俺もごめん。
で。そんで。なんで俺? は? うっそだあ、それは、それこそ大げさだよ、だって、そんな、……違う、違わない、ホント。お前は嘘つかない。…だって、だってさ、そんなん、怖くない!こわく…やっぱ怖い。お前だから言うけど、怖い。それを信じて、浮かれて、はしゃいで、それ見て引かれて、距離置かれるとか、離れてくのが、怖い。お前にだけは、嫌われたくない。だからごめん、予防線でガードした。だってそんな、おまえが、その、一目惚れ、だなんて。ん、聞く。………………。たんま、待って、マジちょっと、ストップ。わーっ! やめろ、やめて!……やだ。やめんな、ばか。
side-S
名前を呼んで、好きだよと伝える。
坊主頭を抱き寄せて、唇を押しつける。
照れたのか、急に話し始めた。なあ、今から俺たち……まあいい。ちゃんと聞こう。
お前に好かれていやなはずないだろ。でも涙が出るは大げさじゃないか? 例え方が上手いなあ。うん、本気で伝えてくれているのに否定して悪かった。そんなに好きでいてくれるなんて、嬉しい。
なんで好きって、そりゃあ、その、一目惚れ…………だよ。信じられないか? 嘘みたい? 俺の気持ちは間違ってる? 俺に好かれるのは怖いか?落ち着け、俺の気持ちも聞いてくれ、いいか?
初顔合わせで見た瞬間に、かっと自分の中の何かが瞬間的に上がった。爆発したとか、噴火したとか、そんな感覚。自分で驚くくらいに鼓動が早くなって、お前に釘付けになったよ。後から冷静にそうなった理由を挙げてみたけど、それは分析にはならないよな、好きになった相手のどこがいいかって、全部に決まってんだから。お前の全部が好きだ。
で、今俺は、キスをしたいし、その先もしたい。やめる?本当にいやならもちろんやめる。…続けても?
「一目惚れの、理由を、んむ、知りたい」
「まだ気にしてんのか」
唇を食んでやれば必死に応える。腕は広い背中に回されて、スマイリーはなんとも気分が高揚する。自分も両腕でソーンを抱きしめて、ゆっくりと体重をかける。
「んんっ」
なるべくたくさん、触れ合わせて、重なって。思考が速いかわいい恋人の頭の中を、今のことだけでいっぱいにしてやらなくては。
「覚悟しとけ」