注意事項・杏×冬弥です
・女装を匂わせるシーンがあります。作中で女装はしません。
「こはね天才!さっすが私の相棒!」
「えへへ……わっ、杏ちゃん、苦しいよ〜」
今日も白石と小豆沢は仲が良い。それ自体は良いことだ。しかし、何故だかモヤモヤしてしまう。白石は俺の恋人だ。白石にとって相棒の小豆沢が大事なのは分かる。俺だって彰人のことは大切に思っている。2人は決して恋愛関係ではない。分かってい
る。分かっているのにどうしてこんなにモヤモヤしてしまうのだろうか……
2人を眺めていると、不意に白石がこちらにやってきた。
「冬弥?どうしたの?」
「いや、なんでもない。」
「なんか視線感じたけど?」
「気のせいじゃないか?」
白石と小豆沢が相棒同士で、仲良くしているのはいつものことだ。距離を置いてくれなんて言う気はない。それなのに、モヤモヤしていたことを伝えてしまったら白石を困らせてしまうだろう。
「本当に?」
「ああ……」
そう言って近付いてくる。気付けば背後は壁だった。
「し、白石、どうした?」
「どうした、はこっちのセリフだよ」
「あの……一旦離れてくれないか?」
「なんで?」
「その、距離が近くないか……?」
「そうだね。でも離れない」
「え……」
「さっき何考えてたか教えてくれるまで離れない」
「ねえ、何か隠してるでしょ」
引き下がる気は一向にないらしい。
どうやら話すしかないようだ。
「……なんだかモヤモヤしていた」
「モヤモヤ?」
「ああ。」
「私とこはねが話してたから?」
「おそらく、そうだな。距離が近いな、とも思った。白石の恋人は俺なのに」
白石は少し驚いたような顔をしている。
話してしまった。困らせてしまうと分かっていたのに話してしまった。
「すまない。白石と小豆沢は相棒で、仲が良いのも当たり前だろう。なのに俺は……忘れてくれ。今の話、はっ!」
不意に抱きつかれ困惑してしまう。
「白石、どうした……?」
「ごめん、冬弥。そんな思いさせてるって気づけなくて」
「え……?」
「冬弥?」
「めんどくさいと、思わなかったのか?」
「思うわけないじゃん!」
即答だった。
ふふ、と少し遠くから声が聞こえた。
俺と白石はは完全に2人の世界に入っていて小豆沢がいたことをすっかり忘れていた。
「あ……えっと、小豆沢、すまない……」
「大丈夫!私のことは気にしなくていいよ」
「俺が大丈夫ではないのだが……」
「冬弥、顔真っ赤じゃん」
「そういえばさっき、杏ちゃんと話してたことなんだけど……」
そう言って小豆沢が「結婚するなら〜」で有名な某結婚情報誌を持ってきた。
「それってゼ……」
「そうだよ!今はまだ出来ないけど、いつかは、って思ってる。私が冬弥を幸せにする。」
白石がそっと俺の手を取る。そして、左手の薬指に口付けをした。
「そのときには、ここに付ける用の指輪を送るから」
そう言って笑う俺の恋人は、誰よりもかっこいいな、と思った。
だがそれも束の間。
白石が雑誌を開き、とあるページを開いてこう言った。
「それで、冬弥にはこんな感じのドレス着てほしい!」
「……は?」
なぜ俺がドレスなんだ。
「白石はドレスよりもタキシードを着たいのか?だったら2人でタキシードを着るのも良いと思うが」
「いや、それも悪くないけどそうじゃなくて……」
「杏ちゃんは青柳くんのドレス姿が見たいんだよね!」
「そういうこと!それで、こはねがこのデザインが冬弥に合いそうだって言ったから、こはね天才!って思ったの!」
「さっきの台詞はそういうことだったのか……」
先程とは違った意味でモヤモヤしてしまいそうだ。