注意事項・彰人×冬弥です
・メインはモブ(腐女子)です
・視点もモブです
・モブが彰冬にチョコを渡していますが、どちらへの恋愛感情もありません(腐った目で見ています)
・公式でBAD DOGSがVividsからチョコをもらっていたことは一旦忘れてください
「よーし、今日は頑張ってチョコ作るぞー!」
そう言って私は立ち上がった。
私は神山高校1年A組の生徒。名前?わざわざ言う必要ないと思うけどな。
さて、明日は2月14日。そう、バレンタインだ。
私は東雲くんと青柳くんにチョコを渡そうと考えている。
決して色恋沙汰などは関係ない。私はこの2人が好きではあるが、それは恋愛的なものではない。
いわゆる腐女子である私は、2人のことをCPとして見ている。私は彰冬推しなのだ。
2人を推すきっかけとなったのはとあるライブの日。白石さんからライブの話を聞き、行ってみることになった。
歌がめちゃくちゃ上手かった。4人のパフォーマンスに圧倒されていたところで、彼らは爆弾を落としていった。
相棒同士の距離感がヤバいのだ。めっちゃ近い。
このとき既に腐女子だった私はそういう妄想をせずにはいられなかった。
それからというものの、Vivid BAD SQUADのライブに通い続けた。
もちろん、VividsやBAD DOGSとして出演しているライブにも行っている。
ライブに通ううちに私と同じ思考を持つBL好きのの友達もできた。
ライブだけではなく、学校生活においても2人の距離は近い。
そのため私達は「この2人は完全に付き合ってる」などと勝手に言い、日々妄想を繰り広げている。
2人が付き合っているというのは、あくまでも妄想であるので、本人たちにはもちろんのこと、そういう趣味を持った人以外に言うのはご法度。
ただ、あまりにも距離感がバグっているのでBL好きではなさそうな人からもお前らラブラブだな、などと言われているが。
話を戻そう。明日はバレンタイン。
東雲くんは甘いものに目がない。
この前も、東雲くんは青柳くんを連れてパンケーキを食べに行ったらしい。現場を友人が目撃していた。
自慢ではないが、私はお菓子作りが得意だ。よく家族や友人に手作りの菓子を振舞っているがいつも好評だ。料理の腕に不安はない。
そして東雲くんはパンケーキとチーズケーキが特に好きという情報を手に入れたので、今年はチョコレートチーズケーキを作る。
2人とも顔が良いので(もちろん顔だけではない)私以外からもたくさんもらうんだろうけど、あの東雲くんのことだ。全部食べ切るだろう。心配はない。
しかし、青柳くんは甘いものがあまり得意ではないという話も聞いている。そのため、青柳くん宛のものにはビターチョコを使うつもりだ。
……だったらなんで一緒にパンケーキ専門店に行ったんだ???
いつでもセットの名は伊達じゃない。まあこの話は一旦置いておこう。
2人とも喜んでくれるといいな。
胸を弾ませ、私は材料を買いに行った。
バレンタイン当日の朝。チーズチョコレートケーキは上出来。これなら安心して2人に渡せる。
オレンジのリボンがついてる方が東雲くん宛。青の方が青柳くん宛。前日に何度も確認したので間違いないはずだ。
2人を発見できたので、さっそく声をかけることにした。
「あ、東雲くんと青柳くん!」
「ん?」
「あの……これ、受け取ってもらえませんか?」
「チョコか?」
「うん!チョコレートチーズケーキなんだけど……」
「彰人、良かったじゃないか。彰人はチーズケーキが好きだろう?」
「……」
「青柳くんにもあるよ!こっちの青の方。青柳くんは甘いものがあまり得意じゃないって聞いたから、ビターチョコを使ってみたの」
「なるほど。ということは手作りなのか?」
「うん。お菓子作りには慣れてるし、試食もしてるから味は大丈夫」
「……そっか」
「あ、恋愛的な意味は無いし、お返し目当てでもないから、特に何も気にせず受け取ってくれれば……」
東雲くんは少し考える素振りをしてから、口を開いた。
「悪いけど、受け取れないな。」
「へ?」
「オレにも冬弥にも、好きな人がいるから」
「そっか、本命じゃないとはいえ、手作りだもんね。受け取りにくいか……」
「うん、ごめんね」
「いやいや、東雲くんが謝ることはないよ!私の方こそ、知らずに渡そうとしちゃってごめんね」
なるほど、2人にはには想い人が……誰だろう?
まあ自分の推しCPとは違う形であっても、推しのことだから全力で応援したい。
というか、東雲くん本人の分はともかく、なんで青柳くんの分まで断ったんだ……?
東雲くんの隣には、頬を真っ赤に染めた青柳くんがそこにいた。なんで???
まさかとは思うが、この2人やっぱガチで……!?
「すまない。そういうことだから……俺も彰人も、受け取れない」
あ~~~やっぱり?東雲くんが好きなんだもんな?
「わかった。これは私の方でテキトーに処分しておくから、気にしないで。」
これ以上2人の時間を邪魔するのは良くない。私はすぐにその場を去った。
にしてもあの2人……あれで付き合ってないとか言わせないぞ。
「んー、我ながら上出来!」
昼休み、昼食を食べ終えた私は自分で作ったチョコレートチーズケーキを食べていた。
朝に2人に渡そうとして丁寧にお断りされてしまったものだ。
こういうときは、甘いはずなのになぜかしょっぱくて苦い……なんていうのがお決まりの表現ではあるが、私はガチ恋勢ではないためそんなことはない。
むしろ、濃密な絡みを見せつけられたことを思い出したせいで非常に甘く感じる。
「お、いいなー。チョコケーキ?」
「うん、チーズケーキだよ。もう一つあるけど食べる?そっちはビターだけど」
「いいの?やったー!」
話しかけてきたのは腐ったB組の友人。私と同じく彰冬推しだ。青柳くんと同じクラスなのが羨ましい。
そうだ、今朝の出来事を話してやろう。
「そうそう、このチーズケーキのことなんだけど、実はね……」
2人に渡そうとしたら東雲くんに断られたこと。
青柳くんがなぜか顔を真っ赤に染めていたこと。
そして青柳くんからもきっちり断られたこと。
「うわ……やっぱ彰冬ガチじゃん」
「でしょ?」
「実はわたしもネタ持って来たんだけどさ、その話の続きっぽい」
「え、どういうこと?」
その友人曰く、教室でもイチャついていたらしい。
その会話の一部を録音してくれていた。有能すぎる。
『……彰人、本当によかったのか?』
『チーズケーキのことか?』
『ああ。彰人はチーズケーキが好きだろう?受け取ってもよかったのに』
『いや、お前以外からもらってもあんま嬉しくねえし。それに、冬弥はオレが他の奴からもらったの食べるの嫌じゃねえのかよ』
『あまりいい気はしないが……俺にそれを止める権利はない』
『そこはもっとワガママ言えよ。オレは冬弥以外からは受け取らないぞ』
『そうか、分かった』
『お前、ホントに分かってんの?』
『え?』
「ガチで付き合ってるじゃん……」
「だよね……わたしもびっくりしちゃった」
「というか、これ教室での会話だよね?東雲くんさらっとB組来ちゃってるじゃん」
「東雲くんがB組にいるのはいつものことだよ。わたしはもう慣れた」
「ひえ……」
それから色々と話しているうちに、私も友人もケーキを食べ終えた。
「チョコチーズケーキご馳走様~」
「お粗末様です。食べっぷりからして、口には合ってたみたいだね」
「うん!すごく美味しかった!それにしても、東雲くんは勿体ないことしたね。こんな美味しいケーキを逃すなんて」
「何言ってんの。青柳くんには誰も勝てないよ」
「あはは。そうだね、相棒からのが一番ってことか!」
チョコレートは受け取ってもらえなかったのに、逆に私たちは色々なものを受け取ってしまった。
今年は、最高のバレンタインになった。
おまけ 朝の彰冬(side 彰人)朝、いつもの場所で冬弥と待ち合わせ。
今日はバレンタインだ。
正直、好きでもない奴から本命をもらうと面倒くさい。
オレには冬弥という心に決めた相手がいるので丁寧にお断りしなければならない。
「彰人、待たせたな」
「いや、そんなに時間経ってねえよ」
「あ、そうだ……」
そう言って冬弥はさっそくチョコレートらしき箱を取り出した。
「これ、受け取ってくれるか?」
「受け取らないって選択肢があると思ってんの?」
「彰人なら、受け取ると思っていた。今年は手作りにしてみたのだが……口に合わなかったら捨ててもらっても構わない」
「お前の手作りならダークマターでも完食してやるから安心しろ」
「流石にそこまでは酷くないぞ」
「にしても、今年は渡すのが早いな。去年は結構遅くに渡してきたのに」
「ああ……一番最初が良かったから、だな」
「ほう?」
「彰人はたくさんの人からチョコレートをもらうだろう。だから、一番最初になりたかった。彰人に一番だって思ってほしかったからな」
「そうかよ……ありがとな。お返し、楽しみにしとけよ」
「ああ、期待している」
全く。冬弥のせいでもう他の奴からは受け取れなくなっちまったじゃねえか。
お前のが最初で最後で最高だよ、なんて台詞はハズくて言えなかったが、そのつもりだ。