あなたの誕生日誕生日から幾日か過ぎた日の夜、アナは机の前でエルサの誕生日の計画を立てていた。
十三年ぶりのエルサと一緒の誕生日は素晴らしい一日になった。小さなたくさんの雪だるまが現れたのは予想外だったが、驚きに満ち溢れていた。
アナは腕につけたブレスレットを眺めては笑みを浮かべる。
誕生日プレゼントの中で特にこのブレスレットは四六時中身につけるほど気に入っている。
「何を贈ろうかしら?」
アナは腕を組む。エルサからはたくさんの贈り物を貰った。こっちもたくさんの贈り物をしたほうがいいだろうか。
エルサに聞いたほうがいいだろうか。しかしエルサが遠慮して答えてくるような気がした。「何でも構わないわ」と笑いながら言ってくる姿が浮かんでくる。
「んー、『何でも構わない』が一番困るなぁ」
アナは自分の頭の中のエルサのイメージに文句を言った。自分のエルサに対するイメージが貧困に思えて仕方ない。十三年離れていたとはいえ、さすがにもう少し想像力が豊かになってもいい頃だろう。アナは気を引き締めるため座り直して姿勢を戻した。彼女はため息まじりにブレスレットの太陽のチャームを見つめる。しばらくして彼女は羊皮紙にインクを載せ始めた。
ブレスレット......エルサのイメージ......アナはエルサのイメージを書き出していく。書き出していくと案外どんどんイメージが浮かんでいく。
「エルサは...…夜が似合うわね」
エルサの姿を思い浮かべる。白く輝く肌、プラチナブロンドの髪、オーロラに雪の結晶をつけたようなきらめく柔らかなドレス......。
月が空高くエルサの姿を照らす。その姿を思い浮かべた瞬間、アナはさっきまで書いてきたエルサのイメージの単語を次々と線で消していく。新しく書き出した「雪の結晶」や「オーロラ」などの単語も消されていった。
アナは太陽のブレスレットを製作した店を調べることにした。
今ならエルサも寝ている。書類の保管庫の鍵をこっそり拝借して発注先を確認できるだろう。保管庫の鍵が城のどこにあるかなんて城を十三年間遊び尽くせば把握できるものだ。
羊皮紙を置いて、アナは部屋の外を出た。
机の上に置かれた羊皮紙には「月」の単語を除く全ての単語に線が引かれていた。