【背中】
縁側で 何かをつくってる
黙々と小刀で竹を削いでる
風馬兄ちゃん。
なんでも作れて 何でも直せちゃう
ぼくがうっかりこわしちゃった
水飲みひしゃく。
ごめんね って伝えたくて
春の陽気に当てられる
兄上のせなかに ひっついてみる
ほんとは気を引きたい。
「こらっ」って、別に怒ってないの
ぼくには分かるんだ、
だって 風馬兄ちゃんの背中は いってるんだ。
ひしゃくを直した その横で、
ぼくに竹とんぼ 作ってくれてたの。
【あのね】
冷え込む朝
空気に触れる 息が真っ白い。
粉雪の 散らつく11月の山仕事。
雨の日も、風の日も
雪の日も
風馬兄ちゃんは
休むことなく 働き続ける。
ほんとは お母さん
いないから・・。
ゆうまは一人にできなくて
ぼくが
かわりに 色んなこと
いっぱい、遊んであげるから。
…… なぁに?
ゆうまの知らないこと、
ぼくはお兄ちゃんだから
きっと、
たくさん知ってるよ。
そしたら 帰った兄上に
今日は ぼくたちのお話 聞いてもらえるから。
あのね、あのね・・・
風馬兄ちゃん。
布団のなかに潜り込む。
「うん。」
風馬兄ちゃん どんなに疲れててしまっても、
ゆうまがあんしんして眠るまで
ずっと …ぼくの話を 聞いていてくれる
今日のこと。
“ それでね、兄上っ…… ”
いつの間にか
気持ちよく、
みんな 寝ちゃってしまうんだ。
…………………………………………
父上も 暖を囲む
次の朝、
家族 冬の囲炉裏の
朝ごはん。
これから長く
厳しくなる冬越しに向けて
「 風太、勇真。」
幼いりんごほっぺ達が、
目を丸めて 見上げて見てくる。
「 雪だね ふうま兄ちゃん 」
「 行ってくるな。」
山仕事も
もう時期 終わりに向かうから。
※現代版※
【ともだち】
どようびの午後。
きょうは がっこうの授業も午前中まで
体操服に給食袋。
ランドセルに引っかけて、さぁ帰ろう。
斗夜と遊びにいく約束も、
あしたは ザリガニ取りにいくんだ。
わくわく たくさん 楽しいこと、
しゅくだいの絵日記が描けるように
「 バイバイ約束、またあした。」
あしたは 斗夜とたくさん遊べる にちようび。
……………………………………………
【風馬兄ちゃんのお昼ごはん】
ジュージュー って、音がする。
たまにジャッジャッ、ぷくぷく、
ポコポコ…
ふしぎな音。
ぼくには上から見えないフライパン
ぼくの?
それとも、風兄ぃの??
パチパチ.. ジュッジュッ。
赤くて小さな 好きなもの
あっ わかったよ
「 ゆうの!ゆうのっ!」
ふうま兄ちゃん タコさん いま焼いてるの。
黄色いたまごの丘にタコさん2匹と、
赤いお絵かきしてくれる
ゆうまの黄色いオムライス。
今日はみんなで土曜のおひるごはん。
コトリと隣にならんだ風兄ぃの
大好きなやきそばの上には おっきな、
黄色いめだまやき。
風馬兄ちゃんがエプロンをはずしたら
そろそろなるよ はしらどけい
ボーン、ボーン。
「 ただいまー!!風馬兄ちゃん!」
「 ゆうも、がまんできない!!」
「 たべたいー!!!」
おなかとせなかに引っついちゃうぞ
「 ちょ..っ!? 危ないコラッ!」
♪ ぼくらは 腹ペコ大怪獣
ぐぅぐぅ、ぎゅうぎゅう。
そこのけ そこのけ
おなかの はらむし 大行進だ !