待ち遠しい宴会 密造酒という概念が生まれたのは、明治政府が酒税法を施行した時からのことだ。つまりそれより前の時代であれば、当たり前に行われてきたことで、なんの差し障りもない。
そう主張する干支たちと共に、とうとう時代を逆行する機会を手にいれてしまった。
「ねぇ、今は平安だから……いいよね?」
「そうだね、止めないよ」
ニコニコといい笑顔で未が確認のように言う。現代で散々私に密造を指摘されていた──完全に止めることはきっとできていなかっただろうけど──皆は、私がそれを肯定するのを聞いて歓声をあげた。
「出来上がった暁には皆で祝杯をあげようぞ。つまみはすでに日持ちのする高級品を用意しておる」
「お酒呑まない皆にも良いものがあるよ」
亥と辰で士気を高め、全員お酒づくりを開始した。酒の密造などしたこともない……という体で生きていた──あくまで「そういう体で」だ──の男たちが慣れた手つきでどぶろくを作っていく様を、現代に生まれ現代で育った私は複雑な思いで見守る。もちろん来るはずのない警察官を恐れているわけではない。来たところで酒より宴会の騒音に苦言を呈するくらいなものだろう。
辰、それに卯と巳が復活した時点で、酒好きの干支は一人を除いて揃った。そう、この中に尊がいたら、きっとこんな思いはしなくてすんだのだ。三人が早く復活するように祈りながら動いてはいるけれど、だからといってやはり恋しい人に早く会いたいという気持ちはおさえられるものではない。
「ねぇ、早く皆で酒盛りしたいね」
「酒はもうすぐ出来る。待っていろ」
私が酒盛りに肯定的だなんて珍しいなどという違和感に気づいてもいなさそうな返事をする戌。それを見て、少しは寂しさを隠せているのだと自分の演技力に少し安心した。