おかえりとおやすみ「ベリアンさん、おかえり」
部屋に戻ったベリアンに声を掛けるのは同室のバスティン。
「おや、バスティン君。こんな時間なのにまだ起きていたんですか?」
何時もならバスティンが寝ている筈の時間。
「ああ…なかなか戻ってこないから心配していた」
バスティンの言葉を聞きベリアンは苦笑を浮かべた。
心配させた事に対して悪いなと思った。
「そうだったんですね…すいません、バスティン君」
素直に謝罪するベリアンの言葉を聞いてバスティンは首を振った。
「いや、別に謝らなくても良い。ベリアンさんが多忙なのは分かっている事だ。俺が勝手に起きて待っていただけだから気にしないでくれ」
バスティンはそう言うとベリアンの手を掴んだ。
それを見てベリアンは一瞬キョトンとしたもののもう慣れてしまったそれに苦笑を漏らしてバスティンの望むまま手を上げる。
そのままバスティンの頭に乗せると優しく撫でた。
それに対してバスティンは満足そうな表情を浮かべていた。
「私の帰りを待っててくれて有難うございます、バスティン君。けれどそろそろ寝ないと明日の執事の仕事に支障が出てしまうかもしれません。ですからこれからは私の帰りが遅くなってもちゃんと寝ていて下さいね。お願いします」
頭を撫でながらベリアンはそう口にした。
その言葉にバスティンは渋々頷くと
「…分かった。ベリアンさんもほどほどにしてくれ」
そうベリアンに釘を刺す。
「はい、分かりました。肝に銘じておきますね」
その返事を聞いてバスティンは納得したのか
「ならいい。おやすみ、ベリアンさん」
そう言い寝室へと姿を消した。
一人取り残されたベリアン。
先程までバスティンの頭を撫でていた自分の手へ視線を落とすと口元を綻ばせた。
「キッカケは自分の所為とは言え…悪くないと思ってしまうのはいけない事なのでしょうか…?」
ぽつりとそう独り言を呟いた。
終わり