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    合鍵それはパトロールの最中だった。
    急にスマホから着信音が鳴りレンは反応する。


    「お、レン。スマホ鳴ってるぞ?」


    一緒にパトロールに出たガストがそう言った。


    「うるさい…言われなくても分かってる」


    ガストの言葉に不機嫌そうに眉間に皺を寄せレンはそう答えた。
    そしてポケットからスマホを取り出すと内容を確認した。


    "happy birthdayレン。お祝いしたいから今日の夜9時過ぎに何時もの場所に来てよ"


    祝われる側が向かうと言うのも可笑しな話しだし祝ってもらって別に嬉しくも無かった。


    「大体何で俺の誕生日知ってるんだ…あいつ」


    ぽつりとレンの口から漏れた言葉にガストは


    「ん?なんだ?彼女からか?」


    そう聞く。
    だから


    「お前には関係無い」


    何時も通り素っ気なくそう答えるとスマホをポケットにしまいそのまま何事も無くパトロールを続けた。
    そんなレンの様子にガストは相変わらず苦笑を浮かべ頭を掻く。










    パトロールを終え自室に戻ると今日は特に皆予定が入っていないのか部屋にはマリオンもガストも居る。
    一人が好きなレンにとってこれは苦痛だった。


    (これが嫌だからあいつの申し出は受け入れたけど…)


    それも今となっては正しい判断だったのか分からない。
    ベッドの上、座ったままに壁に掛けてある時計に眼を遣った。
    約束の時間より少し早かったがレンは出掛ける準備を始めた。
    制服では目立つ為私服に着替えるとガストやマリオンに気付かれない様にこっそりと部屋を出た。











    イエローウエストのとあるマンションの一室の前。
    渡された合鍵を鍵穴に差すとカチャリと音が鳴り鍵は開いた。
    その事に安堵の溜息を吐く。


    (まだ来てないみたいだ…)


    少しだけとは言え一人で居られる時間を得られる事にレンはほっとした。
    そのまま部屋の中に上がると壁を探り電気をつけた。
    寒かったから暖房を入れリビングのソファーに腰を下ろす。
    テレビはつけずに持ってきた鞄を隣に置くと中から読みかけの本を取り出した。
    普段は部屋で読書をしようとしても一人の時は良いとして他の人間が居ると煩くて進まない。
    談話室や屋上に行くとやたらとウィルとの遭遇率が高くて聞きたくも無いアキラの話を聞かされるし諦めてトレーニングルームに行き汗を流そうとすると本人であるアキラと遭遇してそのまま喧嘩になってしまう。
    一人になれる場所などほぼ無いに等しかった。
    だからキッカケはどうであれこうして静かな場所を提供してもらえる事は有難かった。
    此処はフェイスのプライベートで借りてるマンションの一室だ。
    以前たまたま共同訓練でノースとウエストのメンバーが一緒に街のパトロールに出た事があった。
    その時にフェイスとレンはペアを組まされた。
    特に組み合わせの理由など無く適当にキースが決めたものだった。
    フェイスとしてもレンみたいに煩く無い相手が都合が良かったしレンはレンで元から相手など関係無く自分一人で仕事をこなすつもりだった。
    その時に他愛も無い話をした事がキッカケだった。


    「共同生活って疲れるよねぇ。特にルームメイトがおチビちゃんみたいに煩いとさぁ」


    任務中の私語など相手にするつもりもなかったレンだったがその言葉だけはやけに共感出来た。
    自分のルームメイトも似た様なものだったから。


    「それで最近一人になれる場所が欲しくなっちゃってイエローウエストに部屋一つ借りたんだよね」


    「それは名案だな…あの場所は余りにも一人で居られる場所が少ないからな」


    そう答えたレンにフェイスは何を思ったのかポケットを探ると鍵を差し出したのだった。


    「?……なんだ、これ」


    不思議そうな表情を浮かべるレンにフェイスは答える。


    「何って…合鍵。レンも一人になれる場所欲しいんでしょ?使っても良いよ」


    「は?」


    「場所はイエローウエストの…あ、詳しい住所は地図の写メと一緒に送るからとりあえずLine交換しよっか」


    「おい、待て!何でそんな事しなければならないんだ?お前の世話になるつもりなんて無いしそもそもお前とは今日初めて話したんだぞ?可笑しいだろ?」


    突然の申し出にレンは怪訝な表情を浮かべた。
    フェイスとは面識などなかったしLoMで見掛けたりはしたかもしれないがこうして面と向かって話した事も無かった。
    ウィルの様な人懐こいタイプの人間なのだろうか?
    もしくはアキラやガストの様な無遠慮に人の懐にズカズカと入り込んでくる単細胞生物なのか?
    レンの中にあるフェイスの情報と言えばメンターリーダーであるブラッドの弟と言う事くらいだった。
    意味が分からずフェイスを睨み付けるレンにフェイスは笑うとポケットからスマホを取り出し一つの写メをレンの目の前に差し出した。


    「な…っ?!!!」


    それを見てレンは狼狽る。
    珍しく頰を染めると焦った様子でフェイスのスマホへ手を伸ばした。


    「おっと♪」


    だがその手はフェイスによって阻まれる。


    「それ…いつ撮った?消せ!今すぐ」


    普段とは比べ物にならない程に取り乱すレンにフェイスは楽しそうに笑った。


    「そんなに恥ずかしがる事じゃ無いと思うけどな。けど良く撮れてるでしょ?ブルーノースのレンのファンの子達に写真焼いて売ったらお金稼ぎとか出来そうな感じ?」


    「お前…ッ」


    「じゃあLine教えてよ?そしたらこの写メ消してあげるから」


    結局逆らえる事が出来ずそのまま連絡先を教える事になってそれからはまんまとフェイスのペースにはめられる事になってしまったのだ。


    (あんなのは脅迫だ。犯罪だ…)


    そもそもあの写真も本当に消したのかどうかも怪しい。
    丁度良い機会だ。
    今日あいつが来たら聞いてみよう。
    本を読みながらそんな事を考えるから全然本の内容が頭に入ってこない。
    レンはイラッとした。
    悔しかったから結局この部屋は借りている。
    オフの日に此処で一日本を読んで過ごす事もある。
    本来の部屋の主人であるフェイスは滅多に此処は使っていないらしくフェイスと二人きりになる事も滅多に無かった。


    ガチャッー


    不意にそんな音が玄関から聞こえてきてレンは反応した。
    どうやら呼び出した本人が現れた様だ。


    「あれ?早かったね」


    レンの姿を確認するとフェイスは壁の時計へ目を向けた。


    「悪かったな……部屋が煩かったから来た」


    レンは素っ気なくそう答えると直ぐに読み掛けの本へ視線を戻した。


    「へぇ。あ、それよりさ。今日誕生日なんだっけ?おめでとう、レン」


    フェイスはそう言うと買ってきたものをリビングの机の上に置いた。


    「…何で俺の誕生日を知ってるんだ?」


    不思議だった。
    フェイスにはそんな事一言も教えた事は無い。


    「情報通の友達が居るからねぇ」


    「?」


    誰の事を言っているのかは分からなかった。
    けれどやはりレンはフェイスの行動全てが不可解だった。


    「何で俺に関わる?お前とは特に親しかった訳でも無い。それにあれ…あの写真本当に消したんだろうな?」


    レンの言葉にフェイスは笑った。


    「あはっ、消したよ。なんなら確認してみる?」


    そう言いながらレンに自分のスマホを差し出す。
    予想もしてなかったフェイスの態度にレンは一瞬驚いた。
    けれどそのまま差し出されたスマホに手を伸ばした。
    だがその瞬間フェイスは手を引っ込めると口を開いた。


    「おっと。その前にお祝いだね。なるべく甘く無いケーキ選んでみたんだけどさ」


    そう言いながらフェイスは机の上の箱を開け始めた。


    「おいっ…」


    (何で俺が甘い物が苦手な事を…)


    「シャンパンも俺が好きな店の選んだんだ。まぁ美味しいと思うよ」


    そう言いながらフェイスはキッチンへ行きグラスを取りに行った。


    (なんなんだ…一体)


    なんだか今日もフェイスに振り回されている気がする。
    そう思うと悔しい。
    結局写真もはぐらかされてしまった。
    二人分のグラスを手にしながらリビングに戻るフェイスをただレンは目で追った。
    気持ち良い音がしてシャンパンの蓋が開くとフェイスは中身をグラスへ注ぐ。


    「ほら、乾杯♪」


    そう言いながら無理矢理レンにもグラスを握らせるとチリンと音が鳴る。
    不満はあるもののレンはグラスに口を付けた。


    「どう?あ、ケーキもどうぞ」


    「シャンパンだけで良い…甘いものは苦手なんだ」


    「うん、知ってる。けど捨てるのも勿体無いからな」


    「お前が買ってきたんだろ?食べたら良い」


    「あはっ。俺も別に甘いのは好きじゃないんだけど。おチビちゃんに持って帰ったら喜ぶかな」


    そんな事を言うフェイスはなんだか機嫌が良さそうに見えた。


    (変な奴…)


    「あ、そうだ」


    不意にフェイスはそう言うとレンを見る。


    「なんだ?」


    「俺の渡した合鍵。ちょっと見せて?」


    その言葉にレンはポケットを探り素直にフェイスに鍵を差し出す。
    元々自分の物では無いし返せと言われたらいつでも返すつもりだった。
    何か都合の悪い事が起きて今後自分に部屋を貸す事が出来なくなったのだろうか?
    今日の呼び出しもそれを詫びる意味で誕生日を理由にしてケーキなどを用意したのか?
    そんな考えが頭の中を過ぎる。
    だからフェイスの予想外の行動にレンは驚いた。
    フェイスはポケットから猫のマスコットの付いたキーホルダーを取り出すとそれを渡された鍵に付けたのだ。


    「はい。俺からの誕生日プレゼント♪可愛いでしょ?」


    そう言い笑うとレンの手へ再び鍵を渡す。


    「は?どう言うつもりだ」


    「レンって猫好きでしょ?猫の前ではあんな顔するんだからさ」


    そう言いながらスマホをポケットから取り出すと操作して一枚の写メを画面に出した。


    「ッ…!やっぱり消して無いんじゃないか!今すぐ消せ!」


    それを見てレンの頰はうっすらと染まると暴れ出した。


    「落ち着いてよ。消すからさ」


    レンの態度に可笑しそうにフェイスは笑うと画像を削除して見せた。
    それを見てレンはとりあえず安堵の溜息をついた。


    (まぁ消してもゴミ箱の中にはまだ入ってるんだけどねぇ)


    安心するレンを見てフェイスはそう思いながら内心ほくそ笑む。
    猫と戯れるレンをたまたまブルーノースに居る彼女の一人と待ち合わせの最中に見掛けた。
    基本的に他人に興味が無いフェイスだったがレンの事は何度か見掛けていて覚えていた。
    自分と同じ今期のルーキーの中でアキラと同様日系の容姿や名前だったのもあり印象に残っていた。
    それにアカデミー時代同室だったウィルからもレンの話しは何度か聞いた事があった。
    エリオス内で見掛ける気難しい表情を浮かべる他人を寄せ付けないレンとは全く別人のレンがそこには居た。
    それを見てフェイスは


    (へぇ。レンって猫の前だとあんな表情するんだ)


    そう思った。
    それがなんだか可笑しくて本人にバレ無い様にこっそり隠し撮りをして結果的に弱味を握ったのだった。
    その時からだったのかもしれない。
    如月レンに興味がわいたのは。
    レンの情報はビリーから仕入れていた。
    それもありレンがどう言う人物なのかは大体把握していた。
    読書が趣味な事や一人が好きな事。
    全くそれとは知らず偶然にも以前からフェイスは部屋を一つ借りていた。
    丁度良いと思い脅迫じみたやり方ではあるがレンに部屋提供する事に成功したのだ。
    なんだかんだでレンもこの部屋を利用しているらしいし丁度良かったのかもしれない。
    そのお陰で今日もこうして息抜きする事が出来た。
    DJのライブハウスに来たフェイスの彼女と彼女が派手に口論を始めてフェイスは疲れていた。
    部屋に帰って更にジュニアの煩い説教が始まったら更に疲れてしまう。
    そんな時は一人で静かな空間に居たい。
    相手が静かなら別にレンみたいな人物と一緒でも構わないのだ。


    「その猫のキーホルダー俺だと思って大事にしてよ。なくしちゃだめだよ?」


    グラスを片手にフェイスは揶揄う様な口調でレンにそう言った。


    「お前だとは思わない…けれど…持っててはやる」


    レンはぼそっとそう言うと乱暴に合鍵をカバンの中にしまった。
    そして本もしまうと鞄を持って立ち上がった。


    「また使わせてもらう…じゃあな」


    それだけ言うと足早に部屋から出て行った。
    部屋の中に一気に静寂が広がる。


    「やっぱレンって難しいなぁ…まぁその方が面白いかもね」


    そんな事を口にしてフェイスは笑った。

    終わり
    ꒰๑͒•௰•๑͒꒱ℒℴѵℯ❤ Link Message Mute
    2023/02/26 15:54:26

    合鍵

    特殊設定としてフェがマンションの一室借りてます。
    サービス開始から初めてのレンバ記念に書いたお話。

    #エリオ腐R #フェイレン #腐向け #二次創作

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