にっぴきは一緒 ヌンの名前はジョン。偉大な竜の一族の末子・高等吸血鬼のドラルク様の使い魔マジロなのである。
ヌンの御主人様はそれはそれは素晴らしいお方ヌ。
ヌンは格好よくって可愛くて、優しくてお料理が上手で可愛くて、家事が得意で素敵で畏怖くて可愛くって、そんな素晴らしい御主人様を持てて世界で一番幸せなマジロだヌン!
そんな御主人様には最近恋人が出来て、今まで以上に可愛くて幸せそうでヌンも一緒に嬉しいのだけれど、ちょっぴり目のやり場に困る事もしばしばヌ。
例えばそう、
「ふっふ~ん♪そーら美味しく出来たよー、お食べ」
「ん」
「あらー五歳児は自分で食べられないんでちゅか仕方ないでちゅねーはい、アーン」
「あーん」
「美味しいでちゅか?」
「んまい。ドラ公が食べさせてくれたから更に旨い」
「やだもうっ」
散歩から帰ってくるなり、キッチンでイチャイチャしている二人の姿にヌンは一瞬目が遠くなるはしょうがないと思うヌよ。
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む。ロナルド君その手は何かヌ。これから食事なのに腰やらお尻やらを撫で回すんじゃありません。
ドラルク様も。何満更でもなさそうに頬を染めてるんですか。とっても可愛いけどそこは拒否して!
え? 付き合いたてなら無理もないだろう?
ちなみにこの二人、お付き合いを始めてからもう十年は経っていると言えばヌンの気持ちも分かってくれると思うヌ。
吸血鬼的感覚で最近といっただけで人間的感覚なら結構長いと考えるのは間違ってるヌ?
という様な事をつらつらと考えつつ、あどけない声を出して二人にアピールすると二人は途端に慌て出すヌ。
大丈夫です、ドラルク様。ロナルド君。二人が所構わずイチャつくバカップルなのはこのシンヨコでは一般常識ですから。周りの人(特にポンチョを着たムダ毛フェチなハンター)からは『一生やってろ』ってよく言われてますから。
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まあそれはそれとしてロナルド君だけ味見するのは許せないヌよ。
という訳で、
「ヌーン」
「ふふっジョンも味見してくれるんだね。じゃあジョンの分はこっちの大きいのでお願いしちゃおうかな」
「えぇっ! …いいなぁ、ジョン」
羨ましそうにこちらを見てくるロナルド君にヌンの心が満たされる。
ドラルク様が一番に贔屓するのはヌンなので、ロナルド君はそこら辺を弁えてくれれば御主人様の隣に立つ事を許してあげるヌよ。
そんな事を考えつつヌンはもう一つ貰う為にドラルク様を見上げた。
「ニューン♥️」
完