気付き傍らに置いておいたスマホがメロディを奏でた。
私は遊んでいたゲームをポーズしてスマホを手に取る。
『今から行く』
簡潔に綴られたメッセージに苦笑する。
まだ攻略の途中ではあったが、私は立ち上がる。
知らず鼻唄を歌いながら足取り軽くキッチンに向かった。
一通りの料理を作り終え、専用になったカトラリーを準備する。
その最中、ふとダイニングを見回した。
専用の皿。専用のコップ。専用のクッション。定位置の席。
ここだけではない。城のあちこちに専用になった物や持ち込まれた品々がある。
その事に気付き私は何だか胸がポカポカと熱くなった。
嬉しいという気持ちが溢れてくる。
(ああ…そうか、私は彼の事が…)
その時、扉がノックされる音が聞こえてきた。
驚きに耳の端を砂にしながら、私はエントランスに駆け出す。
そこで待つ、退治人くんを出迎える為に。