紅茶(嫌い=好き?②)紅茶 (嫌い=好き②)
第七階層守護者「デミウルゴス」
彼の管轄である「牧場」内、デミウルゴスの自室。
ベッドからゆっくりと起き上がり、ベッドサイドから愛用する丸眼鏡をとる。
かるく背伸びをし、ベッドから降りた。
お気に入りのティーカップに先日アルベドから頂いた茶葉で紅茶を淹れる。
ふわりと鼻に香る茶葉の匂いが何とも言えない。
爽やかでいて少し甘い香りが精神を安定してくれるようだ…。
アルベドから貰い受けた茶葉は、元はセバスから分けて貰った物らしい。
自分で淹れてみたいと頼んだようだ。
そして、それを今度はデミウルゴスが同じくアルベドに自分で淹れてみたいと無理を言ってほんの少し譲ってもらう。
実はこの茶葉、セバスが好んで飲んでいるのをデミウルゴスは知っていたのだ。
時折香るこの匂いはセバスの身体からのもの…。
セバスの香りだ。
すんと鼻から香を吸い込むと、目を閉じ暫しの幸福感を味わう。
紅茶を口に含むと旨みが拡がり更に幸福感が増したようだ…。
まるで、此所にセバスが居るような錯覚をおこす。
「ふふっ。朝から私は何をやっているんでしょうね。」
数日前、デミウルゴスはセバスに「私のモノになれ。」と宣言し、あの喧嘩ばかりしていた男を自分のモノにしたのだ。
まだ、あれからセバスに指一本触れてはいない…。
お互い忙しいと言うのもあるが、やはり自分がナザリックに帰って来れなかったのが一番大きいのだろう。
アインズ様のヤルダバオトの計画、遂行の為にはどうしてもやらなければならない事が多い…。
アインズ様の為に働くのは至極光栄な事。
セバスも同じ想いだろう。
彼は彼でナザリック内や外での情報収集など大変な毎日を過ごしている。
たかが数日会わないだけで、こんなにも寂しく思えるのだから自分自身少し変わったと思う。
会えなくて寂しいと素直に伝えられたらどんなに良いか。
廊下で接吻をしたあの日からセバスは妙に大人しい…いや、此方の顔色を窺っているのが正解か?
「これは…もしや、期待されているのでは?」
何て事だ。
私とした事が気付いてあげられないとは…。
「セバスを愛する者として失格ではありませんか!あれからもう一週間、接吻もしていない。ましてや性行為などまだ一度も…。
優雅にセバスを想いながら紅茶など飲んでる暇はありません。」
デミウルゴスは一気に紅茶を飲み干すと急いで身仕度をする。
愛するセバスの元へ急がねば!
オークの皮剥ぎなどは配下の者に任せておきましょう。
今日は朝からナザリックにセバスは居るはずだ。
昨夜遅くには王国からソリュシャンと共に帰還している。
タイミングとしては申し分無い。
「セバス、待っていて下さい。直ぐに貴方の元へ帰りますよ。」
end