デミセバ(*´艸`*)♡さぁ、ナザリックへ帰ろう (デミセバ)
アインズ・ウール・ゴウン魔導国。
アインズ・ウール・ゴウンが支配する多種多様な種族が集まる異色の国。
人間は勿論、アンデッドやゴブリン、ドワーフなどが一緒に暮らしている。
恐怖で支配するでもなく、平和的支配を行うアインズに守られたこの世で一番安全な国だ。
街は人々が行きかい商店も賑わっている。
デスナイトが街の警備を行い、ソウルイーターが馬車馬のごとく荷車を牽いている有り様は他国では考えられないだろう。
他国から来た商人や旅人も最初は驚くものだ。
街の商店街をふらりと歩く男が1人。
ナザリックの執事、「セバス・チャン」である。
アインズへの情報収集の報告を終え、ついでにツアレが欲しがっていた香辛料を見に来たのだ。
本来なら当人を連れてきた方が良いのだろうが、わざわざナザリックまで戻り連れて来るのも面倒な事。
たまにはゆっくりとこの街、人々を観察するのも悪くはない。
所々で商人達から声がかかる。
「セバス様、良かったら見てって下さい!」
「今日は良い物が入りましたよ。」
「このパン試食なんで持ってって下さいよ!旦那!」
ツアレを連れて商店街を行き来しているうちに何時の間にか顔馴染みになってしまったようだ。
あちら此方からサービスだからと色々貰い受ける。
「悪いですから。」と断りを入れるが笑顔で何度も「良いから、良いから。気に入ったら今度買ってちょうだい。」と言われれば断るのも悪い気がしてくるものだ。
香辛料を数点買うだけが短期間の間で荷物が大きめの紙袋一つ分になってしまった。
「有り難う御座います。」と御礼を伝えると店主達はこぞって嬉しそうな顔をする。
「明るく、優しい良い民達です。」とセバスは深く思う。
だが、これ以上に荷物が増えるのも考えものとしてセバスは少し遠回りになるが横道にそれ、路地裏へ入る。
あまり人気の無い路地裏は静かなもので歩いている者の姿は見えない。
ホッと一息つくとセバスは荷物を抱え歩き出した。
ほんの数分歩いていると何やら先程から後をつけられている事を察知する。
殺気の様なものは感じないが、この魔導国において他国のスパイなど考えられない…。
「良い気分は…しないですね。」ぼそりと小さく呟くと、ほんの僅かな殺気を辺りに放つ。
ぶわりと空気が一瞬で凍ってしまったかの如く辺りは豹変する。
「私に、用があるなら命があるうちに顔を見せなさい。事の次第では容赦はしませんよ。」
セバスは声色を低くしながら言い放ち、自分が歩いて来た後ろをゆっくりとした動作で振り返る。
そこに現れるであろう人物を見据えた。
「やぁ、セバス。気付いていたのかね?」
屋根の上からふわりと優雅に地面に降りたった。
丸眼鏡をくいっと指で上げ、人を小馬鹿にしたような厭らしい笑顔を振り撒く。
尾行など端から見破られて、見破って当然だと言わんばかりの態度である。
「デミウルゴス。」
セバスは苦虫を噛み潰したような顔をし、溜息をついた。
まさかこの男が此所にいるとは…。
改めてセバスはデミウルゴスに形式上の御辞儀をし彼に問うた。
「デミウルゴス様。何用でこの私の後をおつけに?」
「敬称は二人の時には無用だよセバス。」
「そうですか…では、デミウルゴス。何故、私の後を?」
「君は早急すぎるね。もっと会話と言うものが楽しめないのかい?」
「…。」
「まぁ、良いよ。ただ、街で君の姿を見かけたから観察していただけだよ。君は随分と商人達との仲が良好な様だ…素晴らしい事だね!」
デミウルゴスは大袈裟なくらいに両腕をひろげ、その事を喜んでいるかの如く振る舞う。
セバスは片眉を上げ嫌悪を表す。
普段からナザリック以外の者など下等生物としか思ってない男だ。
きっと嫌みの一つなのだろう。
だからあえてその言葉を甘んじて受け取る事にする。
「はい。この街の民、商人達はとても良い方ばかり、流石はアインズ様が御作りになられた国だと思います。」
「っ…そうですね。流石はアインズ様が御作りになった国ですね。」
「それで、デミウルゴス。わざわざ其れだけを言いに此処まで来られたのですか?」
アインズ様の御名前を出せば、いかにデミウルゴスとて民の暴言は言えないだろう。
実際、言葉を詰まらせセバスへの嫌がらせは失敗に終わったようだ。
セバスはにやりと心の中で笑う。
今度は此方からさせて頂きましょうか?
「どうかしましたか?デミウルゴス。私にわざわざ会いに来て下さったと言うのですか?」
「…そんな訳。」
「もしくは…私と良民との関係に嫉妬でもしているのでしょうか?」
「…。」
「私の行動がいちいち気になりますか?デミウルゴス?」
セバスは綺麗に整えた白い顎髭を擦りながらデミウルゴスに近付いて行く。
デミウルゴスは先程の傲慢とも言える態度は何処へやら、じっとその場でたたずみセバスから視線をそらす。
どうやら今回の嫌がらせの軍配はセバスにあるようだ。
セバスはにやりと笑う。
「どうかしましたか?貴方が黙るとは珍しい事ですね。」
「…。」
「デミウルゴス?」
「…そうですね。」
「…?」
デミウルゴスは一度大きく溜息を吐くと顔を上げセバスの顔を見る。
「セバスの言うとおりですね…これは嫉妬です。」
「?」
「この私が下等生物にまで嫉妬するなど認めたくない事なのですが、仕方ありません。
実際あの者達と楽しそうな貴方を見ているだけで街を破壊してやろうかと思いましたよ。アインズ様の国でなければ…ですが。」
「デミウルゴス?」
「まったく貴方は何処から私に気が付いていたのですか?やれやれ、私に嫉妬させようと
わざとあの様な行動を?意地の悪い人ですね…流石はセバスと言うところでしょうか?」
「そ、そんな嫉妬させようなどする訳が…。」
「なるほど、無自覚とは恐ろしいものですね。先程、私を試す様な発言をしたじゃありませんか?「私の行動が気になるか?」と…。」
「それは…違っ。」
「大丈夫。解ってますとも。」
「?」
「私が…欲しいのですね。」
「は?」
まずい…。
セバスは背中に冷たい汗が流れ落ちるのを感じた。
少し調子にノリ過ぎたようだ。
いったい私の何が解ったと言うのだ?
デミウルゴスを欲しいなど…どう言う意味ですか?
デミウルゴスはにやりと顔を歪ませセバスに近付く。
何とも言えない雰囲気がセバスを後退させるには充分すぎた。
「これは邪魔ですね。私が持っていて差し上げましょう。」
デミウルゴスはセバスが抱えている紙袋を片手で取り上げる。
「あ。」と声を上げるだけで簡単に取られてしまった事がセバスは悔しい…。
「ふふっ…そんな残念そうな顔しないで下さい。すぐにして差し上げると思いましたか?」
「何を言って…。」
「今はこれで我慢して下さい。」
ぐいっと片手でセバスの顎を掴み唇を塞いだ。
まるで噛み付く様なデミウルゴスの接吻に
セバスは目を見開き、言葉にならぬ声を上げる。
言葉にしようと口を開けた隙にデミウルゴスの長い舌が口の中に入り込んできた。
セバスの舌を絡めとり、強く吸い上げる。
くちゅりとお互いの唾液が混ざりあい卑猥な音をたててゆく…。
セバスの唾液を味わう様にじっくり、ねっとりと動く舌はとても激しく熱い。
セバスの頭は熱に浮かされ、されるがまま。
必死にデミウルゴスの背広を掴むので精一杯だった。
ひっきりなしに鳴る心臓…。
熱くなるこの身体…。
何時の間にやら伸ばされたデミウルゴスの片腕はセバスの腰からお尻のラインを確かめる様な動きへと変わっていた。
セバスの口内を犯し、身体をまさぐると身体を微かに震わし鼻に抜ける甘い声を僅かにあげる。
「あぁ、何と官能的な…私の接吻でこの様に乱れて。」デミウルゴスは心の中で歓喜する。
セバスに愛されているのだと。
「接吻だけでは自分がおさまりそうも無い。」と改めて思う。
やはり最初からそう言うつもりで行動すれば良かった。
セバスもきっとそちらを最初に望んでいたに違いない。
あれだけ私を煽り、わざと嫉妬させたのだ…。
デミウルゴスはよりいっそうセバスを抱きしめ心で呟く。
「よし、ナザリックへ帰ろう。」
長く激しい接吻を終えたセバスは意識は朦朧、疲労困憊。
ただ熱くなった身体が堪らなかった。
デミウルゴスの嫉妬を煽った訳では無い。
何を勘違いしているのか?
でも、デミウルゴスが自分の事を好いているのは知っている。
自分も…デミウルゴスを好いているのは解ってる。
このまま流されても構わないのでは?
そう思ったら自然と身体の力が抜けていった…。
「セバス…貴方をもっと感じさせて下さい。貴方が私だけのモノだと…。」
セバスは静かに首を縦に振る。
顔は赤面しながら下を向いてしまったせいでよく見えなかったが、デミウルゴスには充分過ぎる幸せな返答だ。
「さぁ、私の手をとり帰りましょう。」
end