あたたかいのは?ー2年前のことだった。
あれは、久々に姉の実験に付き合って一ヶ月も経った頃だった
………気がする。
今回も、意識が朦朧として自分が自分でなくなっていく感覚しかなかった。
姉は私が同じ異能を持ってることをいいことに、回復役を用意してどう言う
能力を発揮出来るか永遠と試していた。
全部は回復させてくれず、適度に回復しては傷つけ、対抗しようとする能力を
永遠と記録し続けた。
そんな中、姉達が席を外した時一人の男の人が入って来た。
「ここから出してあげる」
と言って、私を外へ出してくれた。
彼は幼少期同じような目にあって来たみたい。
「俺はここからは行けない。ごめん。怪我治らなかったらここ行って」
そう言ってメモを渡して寂しそうな目をして戻っていった。
彼がどういう目に合うか想像がつかなかったわけ時な無いけど、
身体が動かなかった。
あの優しかった姉が。
家から追い出されても、勉強も遊びも教えてくれた姉が。
信じられなかった。
何度、同じことされても付いて行ってしまう私にも非があるのだろうか。
*********************************
さーーーーーー…………
雨が降り続いて居る。
足元を淡々と濡らしていく。
今回、街中で姉と会った時も確か雨が降っていた。
一ヶ月前と何も変わらない街中を当てもなく歩く。
歩いて、
歩いて、
歩いて、
疲れ果てて座り込んだ先が何処だったかは覚えていない。
でも。
「どうしたのですか?」
そう、差し出された傘の温かさだけは覚えている。
透き通った水のような目。
心配そうに私をみてる。
私は耐えられなかった。
「ーーーたすけて」
*********************************
「…こんにちは」
あの男の人に渡された紙を元に香奈さんと一緒に尋ねた先は、病院と言うにはおこがましいような治療院だった。
メモを渡すと、彼は眉間にしわを寄せ私の頭を撫でた。
「大変だったね。もう大丈夫だよ」
大変?大変って何?なんて聞いたら、香奈さんも男の人も悲しそうな顔をした。
言ってはいけなかったのかも知れない……。
男の人の撫でる手が、優しくなったような気もする。
それが、香奈さんと千代さんと伊織さんとの出会いだった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
唯子の話でした。
唯子を姉から助け出されたのが千代倉。
唯子に傘を差しだしたのが香奈。
メモの先が伊織。
唯子と千代倉と香奈と伊織は面識がある。
香奈は3人が異能を使うとは知らない知らない。