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    宝石の話



    「人間と言うものは、あっさり死んでいくんですね」
    「どうした急に」
    「いえ…その。確かに僕は貴方に忠誠を誓いました。後悔なんていままでもこれからもしていません。ですが、やはり友人が死んでいく姿は見てていい気分はしませんね」
    「だから過干渉になるなと言っているのに…お人好しだなお前は」
    「すいません…」
    「だが、可愛い可愛い私のモノがそういうのなら、お前が生きやすい世界に作り替えてやろう」
    「え?」
    「簡単なことだ」

    「お前のような『生き物』を増やせばいい」


    「まぁ少々時間はかかると思うがな」





    「ここ数十年で突然出現した『能力者』…とは名ばかりの害獣共は、我々人間の面をぶら下げて気づけば隣で生きている」
    「いくら駆除しようとも、ネズミのように溝に地下に逃げていく。我々はもっと危機感を覚えるべきだ。外見は人間そっくりの化け物がいつか我々を食おうとヨダレを垂らしていることに」

    「我らは殲滅すべきなのだ。『能力者』達を」





    「人間っていうのは昔から自己中心的な奴らだ」
    「俺らが何をした?人間に害を与えたことなんて1度もない。ただ見た目が可笑しいだけで、話が通じないと判断して殺す。殺す。殺す。俺達は人間になりたかっただけなのに、何故こんな目にあう。何故差別にあう?」

    「傷つけられた同胞達よ。革命だ。我らは革命を起こすのだ!!!」




    焼け野原の上にぽつんと1人男性が立っていた。丸焦げの人間を抱き抱え呆然としているようだった。
    一件ただの人間と思しき男性の頭には、黒い鬼のような無骨な角が2本生えていた。
    「おや。生き残りがいたとは」
    その男、クロは後ろからの声に反応し振り向く。
    そこには、上半身は若い女性の体、下半身が蜘蛛の様な体の所謂『能力者』がいた。強靭な6つの足。そして2つの手には人間の体の一部が握られており、彼女の口周りは赤く染っていた。
    「大きな音、強い光に驚き森の奥底から出てきました。久しぶりに陽のあたる場所に出ましたが、まさかここまで何も無くなっているとは」
    「…大きな、爆弾が降ってきた」
    「ほう」
    「人間も能力者も全て『溶けた』。あまりにも強すぎる何かにみんな溶かされてしまった」
    「なんと。恐ろしい話…確かにここ一体の空気は妙な匂いがしますね。落ちていた人間の死体も科学臭がするのはそのせいですか」
    「…人間はそこまで進歩したのか」
    クロは重く沈んだ顔でぽつりとそう呟いた。
    「そういえば貴方。その角を見る限り人間ではないのですね」
    「今気づいたのか」
    「てっきり大きな枝が刺さってるのかと」
    「蜘蛛のくせに目が悪いと見える」
    「仕方が無いでしょう。強い光…その爆弾とやらのせいですね、それで目がやられているのです」
    「…名前は?」
    「イダ。と申します。120歳。能力者大量発生よりは少し前に生まれました」
    「俺はクロ。君よりはるかに年上だ」
    「…そんな方は初めて見ました。それに貴方、能力者の匂いではありませんね」
    「…」
    「人間でもない。変わった匂い…



    まるで死体の匂いだ」
    そのあとの話

    能力者が目に見える程度に増えてきて、能力者VS人間の戦争が勃発してた時期の話。クロは数人の能力者と一緒に逃げていた。能力者のほとんどは差別され録に物も買えず痩せ細ったやつばかり(別に仲がいいと言う訳ではなく、たまたまいた地域にいて、一緒に逃げようと誘っただけの関係)。能力者といえど餓死や過労死するのは時間の問題。
    そこでクロは発想を変える。「能力者と人間が平等に暮らせる空想上の未来」を考えるのではなく、「人間が能力者を利用する現実的な未来」を作ろうとした。もちろん付いてきた多くの能力者は反論した。だけどクロは「自分の命以上に大切なものなんてない。プライド売って稼げたら儲けもんだ」と。
    だからと言って奴隷として能力者を売る訳では無い。ちゃんと人権が働く召使いとして売る。召使いを雇えるほど金持ちで、尚且つまだ能力者差別が浸透していない、『北の国』に目をつけた。
    クロは自分が隠し持っていた金を全部はたいて、オンボロのサーカスのようなテントと能力者数人分の執事服&メイド服を買った。小さな小屋を買ってコソコソやるようでは意味が無い。大衆の目を引くために安い賃金で大々的に能力者をお披露目した。芸や見世物ではない。能力者がいかに便利かを面白おかしくプレゼンした。
    「能力者は人間より寿命が長い、体力もあるし名の通り特別な能力を持っている。だが "それだけ"。思考も感情も全て人間と同じ。人間とは愚かだ。見た目と能力が大多数と違うだけで我々を弾きものにする。弾糾する。我々は決して人間をそういう目で見ない。差別しない。今巷で騒がれているのは『戦争』ではない。『弱いものいじめ』だ。
    さぁ、貴方達は?礼儀正しい、賢く聡明な貴方達も彼らと同じように差別をするか?我らに武器を向けるか?それで人間はいいのか?違う。私たちがするべきことは、『共生』だ」
    クロの演説は北の国の住民達の心を強く揺さぶった。もちろんクロは綺麗事を並べたわけでなく、彼らのプライドを守った。北の国の住民はほかの国よりも自分たちが上だと少なからず、無意識に思っている(実際そう。識字率も国内生産も全てが上回ってる)。
    なので『自分たちは他の国と違う。能力者と共生できる。平等に扱える。大切に思える』と考えた。実際能力者達は多くの貴族達の召使いとなった。なんせ普通に召使いを雇うよりも安く(クロがそう設定した)、扱いやすい(能力者達は生きることに必死になっているからなんでもやる精神)。
    こうしたクロの行動により、北の国のみんなは能力者を暖かく迎えてくれた。


    その活動からざっと200年、いつしか北の国では「能力者を召使いとして大事にすると利益が向上する」などの伝統が生まれつつあった。需要と供給のバランスもよく、平穏な日々が続いてた。でもクロは能力者も人間ほど早くはないがいずれ歳をとり、そして死んでいくのを実感してた。古参メンバーも今や1人しかいなくなり、それももう数年もつか持たないか状態。
    クロが能力者を集め、慈善活動紛いの事をしていた本当の理由は「自分と同等の寿命を持つもの」を探していた。不死じゃなくてもいい。ただ数百年ぽっちで死ななければ、幾分心が軽くなると思っていた。
    そんなある日ある家の頭首が顔を見せる。北の国で1番の財閥で多くの能力者を雇ってる。
    「話があるんだ」
    一種のショーを終わらせたクロに頭首が話しかける。
    「数年前、私は子供を授かった」
    「えぇ知ってますよ。大層自慢していたでしょう」
    「あぁ。目に入れても痛くない。私はそれほど愛している。だが…」
    「だが?」

    「可愛い子供が私の愛する妻を宝石に変えてしまったのだ」

    「……どういう事でしょう?」
    「私にもわからない。だけどひとつわかるとしたら…私の子供は能力持ちだ」
    クロはそれを聞いて驚愕する。この時代で人間と人間の間に生まれた子が突然変異で能力を持つなんて聞いた事がなかったから。それに彼の言い方によるとなんと後天性の能力者だそう。
    「妻はそのまま宝石になったのではなく、数百の宝石でできていてバラバラに崩れた。見たところアメジストの宝石で、子供の目と同じ色だった」
    「…坊ちゃんのご様子は」
    「かなりショックだったようで、それからずっと部屋に篭もっている。『また誰かを宝石にしてしまうかもしれない』と飯も食わずにずっと部屋に。いや、きっと…数週間飲み食いしなくても生きていけるのだろう」
    「…」
    いつも元気な顔を見せる彼がここまで弱っているのは見たことがなかった。クロは同情する。
    「それで、話というのはこれだけではないのでしょう」
    「…あぁ。そうだ。君に頼みがある」
    「なんでしょう」

    「彼の召使いになってほしい」

    「君は不死だ。たとえ宝石になっても死なない。私の息子を救ってくれ」
    「私は召使いには…」
    「わかっている。君が誰にもつかないのは、君以外が直ぐに死んでしまうから。だけど息子は能力者だ。多少は長く生きる…だろう」
    「…」
    クロは彼が自分の本当の気持ちに気づいていることに密かに驚いていた。
    「息子には、自由で楽しい人生を歩んで欲しいんだ。君が大勢の能力者を救ったように、私の息子…」

    「キサラギを救ってくれ」

    「…分かりました。でもひとつだけ条件があります」
    「…なんだ」
    「貴方がそこまで言うのなら責任もって彼に仕えましょう。ですが貴方はこの国随一の財閥。給料はあなたに任せるが、キサラギ様の生涯まで仕えさせてもらう。それが条件です」
    「…はは。君のせいで金がなくなりそうだな」
    「ふふ。では、よろしくお願いします」
    「あぁ、頼む」
    こうしてクロはキサラギの元で働くことになった
    白椿 Link Message Mute
    2019/08/26 22:06:33

    2-0

    かなり昔に書いたものを少し修正。メモ書き程度 #オリジナル #創作

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