究極超人あーるの鳥坂司と西園寺まりいの小話「あいも変わらず、生徒会のお守りか?西園寺」
宿敵である眼鏡の男が、私に声をかけた。
「苗場くんも島崎くんも頑張ってはいるのよ。でもアドバイス出来る人間がいた方が為になるでしょ?」
「そろそろ独り立ちさせたらどうだ?」
「私から見たら、彼らはまだまだだわ」
「まるで、子離れ出来てない親のようだな」
「そのセリフそのままお返しするわ、鳥坂司さん」
「図星かな?まさか大学で友達がいないとか」
「いるわよっ、友達ぐらい」
あの時の生徒会を超える友達もいない、大学では胸を躍らせるような物事は何もない。失望を希望にかえて、私は卒業したはずの春高の生徒会の扉を叩いているのだ。
「現役生が歓迎してくれてると思いたいのは私も同じだ。どうせ暇だろ?私の後ろに乗っていかないか?そろそろ我々も旅立つ時期のようだな」
眼鏡の男は私にヘルメットを渡した。彼がバイク乗りなのは、私も知っている。宿敵同士であり、春高の有名人という栄光を忘れられないのは、私だけではないし、ついつい居心地の良さに甘えて、今いる場所の良さに目を向けられないのは、彼も同じだろう。
そして、わかっているのだ。ここはもう、自分の居場所では、なくなっているのだと。
「旅立つなんて、オーバーね。家まで送ってくれるなら、喜んで、あなたのお馬さんに跨るわ」
「なかなかいい性格になったな、西園寺。いざ行かん!」
人生初のタンデムは宿敵だった男になってしまった。別にこれは恋ではない。春高の卒業生という肩書きが無くなったら、私たちはたちまち、赤の他人だ。この間柄をなんていうか、私たちは知らない。