当麻とナスティ01 : 今はこれが限界当麻(→ナスティ)
五月の誕生石はエメラルド。又は翡翠。
そういう事には全く無知であったが、誕生月にちなんだ宝石というのは”ラッキーアイテム”で、彼女へのプレゼントには無難なラインだということも知った……ところである。
カウンターの中に立つ女性店員は、心得た様子で石の説明と、当麻の年齢を推察してこの辺りが妥当だろうと思う商品を幾つか並べてくれている。
つまり、彼女の誕生日へのプレゼントを選びに来た学生だろうから、あまり高価なものではなく、手頃な値段のそれなりの品ばかりである。
よって、石は小さめであるし、無駄な装飾もないシンプルな物ばかりだった。
小さなエメラルドの石がトップにあるネックレス。シンプルなピアス。そして、シンプルな指輪。
当麻は困ったように頭を掻きながら、並べられた品を見つめた。
一番無難なものはピアスだ。
ネックレスや指輪を贈っても良いが……なんとなくそれは気恥ずかしい。
それ以前に指輪を贈るような間柄ではない。
誕生日プレゼントに何が欲しいと聞いても良かったのだが、返答が予想できたので敢えて聞かなかった。
外付けハードディスク10TBとか言われても、やるせない気持ちになる。
いっそ新しいノートパソコンでも良いだろうかと思ったが、スペックやCPU速度とかに相当なこだわりを持っているのを知っているだけに、これもかなり高額な買い物になるだろう。そして彼女はそんな高額なものを当麻に贈ってもらう理由は、爪の先ほどもないのだ。
「あのさ、俺…可哀想なことに片思いなんだよね。それでさ、本当は指輪とか買いたいけど、いきなりそんなもの渡したら、引かれちゃうんじゃないかと思うわけ。オネーサン的にさ、男友達から誕生日プレゼントを貰って、困らないものってどういうの? 参考までに聞かせてくれない?」
最近は滅多に見せなくなった真剣な表情で、当麻は店員の顔に目をあてて言った。
店員は一瞬だけ何処か困惑したような表情を浮かべたが、すぐに営業用の笑みを浮かべると、
「片思いとは切ないですわね。では、少し戦略を変えてみましょうか」
と、言って別の陳列棚へ向かった。そして戻ってくると、当麻の前に実にシンプルなブレスレットを数点並べた。
「こちらは18金です。これは少しお値段が高くなりますが、プラチナです。普段にも使って頂けるシンプルなデザインですが、飽きのこないものですから長くお使い頂けるかと思います。……ボーイフレンドからプレゼントされて、それほど困った思いをしなくてもならない品かと思いますが」
店員の言葉に、当麻は顎をつまんで暫く思案する様子で、並べられたブレスレットを見つめた。
あの細い手首に、きっと似合うだろうと思えた。
「それじゃあ、このプラチナのを貰おうかな」
当麻は言いながら、財布からクレジットカードを抜いて店員の前に置いた。
「ありがとうございます」
店員はニッコリ笑って頭を下げると、プラチナのブレスレットとカードを丁寧に手を取ると、奥のカウンターへと向かった。入れ替わるように別の店員が当麻の前へ来て、並べられた品を片づけていった。ガラスケースの上から品が撤去されると、それまで隠れていた指輪の陳列がガラスケースの中に見えた。
ライトが当たっているせいか、宝飾品は無駄にキラキラと輝いている。
ダイヤモンドの指輪の列にそっと目を向ける。
今風の洗練されたデザインのダイヤモンドの指輪を見つめながら、誕生石ではなく、何時かあの指輪を彼女に贈れる日が来るだろうかと思う。
その為には、【弟的】立場から脱して、【彼氏】という立場を得なくてはならないのだが。
それさえも全く予定の目処が立たないのはどうしたものか。
以外とガードが固い。
加えて【死んだ男】の存在がさらにある。
ライバルが、伸であったとしても政士だったとしても、負けるつもりは毛頭なかったが、死んだ人間には叶わない。
「お待たせいたしました」
先ほどの店員が、綺麗にラッピングされた箱を持って当麻の前に立った。
「こちらにご署名を。カードをお付けしますか?」
「これでいいよ。ども」
クレジットカードの明細に自分の名前を書くと、カードを自分の財布に入れてから、箱と一緒に無造作に鞄の中へ放り込んだ。
「来年のプレゼントには、指輪を贈れると良いですわね。案外直球で来られると、女って弱いものですわよ。余計な一言かと思いますけれど」
「店員さんは、直球好みなんだ」
「いえ。煮え切らない人にイライラしていますので、早く肝心の一言を言ってくれないかとサインを送っている最中でして」
「なるほど。煮え切らないわけじゃないんだけど………そうだな、ストレートに勝負かけてみるのも手だよね」
「ご健闘をお祈りしています」
「サンキュー。店員さんもね」
「本日は誠にありがとうございました。またのご来店をお待ちしております」
頭を深々と下げる店員に背を向けて当麻は店を出た。だいたい、一時間ほど店に居たような気がする。大半を何にするかで悩んでいた。
箱の入った鞄を軽く手で叩くと、来年はもっと特別の意味のある物を贈る事が出来れば良いだろうとは思ったが、今はこのラインが限界だ。特別な意味を含ませたものを贈って逃げられたら洒落にならない。
勝負を決めるのはまだもう少し先の話だ。
そして、その勝負に勝つ為にも、戦略を練って相手を自分のテリトリーに追い込まなくてはならない。
厄介な恋愛だ。
だけど、面倒臭いともっと楽な女の子を好きになるには、遅すぎた。
多分、ナスティじゃなきゃ、駄目なんだ。
02 : Line─ライン─
「あら、素敵じゃない」
大学の同僚が、左手首を飾るプラチナのブレスレットを目ざとく見つけて声をかけてきた。
「ありがとう」
「珍しいわね。ピアス以外はアクセサリーつけないのに」
「誕生日のプレゼントに貰ったの」
ナスティはそう答えると曖昧に微笑んで見せた。これ以上、変な追及はされたくなかったのもある。
「シンプルだけど、趣味が良いわね。それに、色が白いからプラチナが映えて見えるし。うらやましいわね、色白の人って」
彼女は苦笑まじりに言った。
そう言う彼女も、十分に色白だとは思うが、確かに並んで見ればナスティの方が白く見える。尤も、それは人種の違いが少しばかり関わっているせいで、こういう場合に羨ましいと言われると返答に困ってしまうのも事実だ。
「彼氏?」
変に追及されたくなかったのを見抜かれたのか、同僚は好奇心に満ちた目で聞いてきた。
「残念でした。友達…からよ」
「なあんだ。てっきり男かと思ったんだけどな」
「その根拠は何所からくるのかしら…」
苦笑まじりに返すと、ナスティは分厚いファイルを棚の上から取り出した。腕を上げた拍子に、手首から腕にかけてサラリとブレスレットが滑り、そしてまた手首へと戻っていく。
「だって、そんな風に感じたんだもの。根拠はないわ。女の感ってやつよ」
「一番、あてにならない種類のものだわ」
何時だったか、同じような事を言って鼻で笑われた事を思い出して、ナスティは小さく笑った。
誕生日だからと何かを催したのは、秀が宝くじを当てた何年か前の夏の時が最初で、おそらく最後のようなものだった。誕生日だからと何かを贈りあったりするという事はしていない。そういうのは、女性同士なら恒例ともなるのだろうが、男同士の間ではそういうことは、わりとおざなりになるようである。
ふと、思い出したかのように、
「あ、そういや…こないだ誕生日じゃなかったっけ? おめでとう」
と、簡単に終わってしまうようである。
ただ、ナスティにだけは毎年、6人の連名で何かを贈ってくれる。
今年は玄関マットだった。
古くなったから新しいのを買おうかと思っていたところなので助かったくらいだ。
最初は自分だけとプレゼントを固辞していたのだが、彼らは結局プレゼントという名目で、宿泊料を払っているのだと言ってくれたので、ナスティは素直に頂く事にした。
だから────。
本当の事を言うと、このブレスレットには少し困惑していた。
彼はたまにとても突拍子もないことをする。それは、時には楽しかったりもするし、時には呆れたりする事もあるのだけれど、今回の事はどちらでもなかった。
ただ、どういうわけかとても困惑していた。
何故と聞かれても上手く答えられない。
セミナー参加で上京した時、貸してくれと頼まれていた本があったので時間を作って会った。別に珍しい事でも特別な事でもない。誰であっても会ってお茶を飲んだり、時には食事も一緒にする。一対一の時もあればそうでないときもある。
それは、もう何年も続いてきた当たり前な事の一つでしかなかった。
そして、帰り間際に、
「これ、誕生日プレゼント」
と、まるでついでのように──かなりぞんざいに──、ポンと放り投げてきた。
慌てて両手で受け止めて、前のめりになってしまい、転倒しなかったことに安堵しながら顔を上げた時には、もう彼の姿は人ごみの中に消えてしまって見えなくなっていた。
「と、当麻?」
やや呆然と彼が消えた人ごみを眺めつつ、ナスティは両手の中の小さな箱を握りしめた。
別にどうって事はないはずだった。
誕生日プレゼントを貰っただけの事で、素敵なものをありがとうと言って、彼の誕生日にプレゼントを贈れば良い。極普通のやりとりで終わるはずなのだが、少なくともナスティと彼らの間でそういうやりとりは行われなかった。
日本では当たり前の行事であるバレンタインも、一人一人にチョコレートを贈るという事もなかったので、もちろんホワイトデーというものも存在しない。
そういう煩わしい行事は、職場の人間関係を少し円滑にするためのアイテムとして利用するくらいだ。
困惑の理由は、多分──その”暗黙の了解”だったものを、何時もの気まぐれで簡単に打ち破ってしまった事に対してなのかもしれない。
そんな大袈裟なものではないのだが、何となくラインが引かれてあって、そのラインは守られなくてはならないと思い込んでしまっていたのだろう。
「気まぐれ…でくれるものじゃないわよね………」
ファイルをめくる手を止めて、左手首を飾るプラチナを見て独語する。
それほど高価なものではないだろうが、学生が買うにしては高価な物になるだろう。彼が趣味と実益を兼ねたアルバイトで稼ぐ金額が、実はナスティの一か月の給料よりも倍近くある事を知っていたとしてもだ。
そして、この件に対してナスティが困惑するのも、彼の計算のうちに入っているのだろうと判るので、何だか腹立たしくもあるのだ。
「むかつく」
思わず声が大きくなってしまったのに、向いの席の女性職員が驚いたようにモニターの影から顔を覗かせた。
「どうしたの?」
「あ、いえ、何でも。ちょっとエラーが出てしまって。気にしないで」
「なら良いけど。珍しいわね」
職員は笑いまじりに言うと、モニターの影に隠れた。
ナスティは嘆息すると、キーボードを叩き始めた。
困ったわね…。
何がどう困っているのかも判らないのだが、なんだかとても困っている。
そして、この原因である当麻に対して意味もなく腹が立ってきていた。
03 : 君の隣に腰掛けて
「自分の存在意義について考えたことある?」
コーヒーショップで買ってきたカフェモカのホイップクリームを、プラスティックスプーンで掬いながら、ナスティ・柳生嬢は至極真面目な顔で俺に向かって言った。
「は?」
「そうね――例えば、なぜ此処に居るのかとか」
何故、此処にいるのか?
決まっている。皆と、この公園で待ち合わせをしているからだ。
他に理由なんてない。
純の剣道の試合に、俺たちは保護者面して応援しに行くのだ。勿論、純には内緒である。応援席から声援を送ってびっくりさせるのが目的だ。
試合前に動揺させて良いものかと伸は案じていたのだが、驚いたことに征士が反対しなかった。むしろ、思いっきりやるべきだと言い出した。
純が中学に入ってから剣道を始めて、一番喜んでいるのは征士だ。
傍から見ていると、あの二人で時代劇の稽古シーンを再現しているかのようだった。たぶん、今回の応援案に反対しなかったのは、純のメンタルを鍛える為なのだろう。
ガンバレ、純。
お兄ちゃんたちは、けっして面白がっているわけではない。お前の成長の為に見守っているのだ。
秀や遼たちの待ち合わせより、30分だけ早く待ち合わせたのは、彼女からの指示だった。
何となく理由は判っていた。そして、その予想は見事に当たった。
彼女は、ハンドバッグの中から小さな箱を取り出すと、
「皆が気をつかうと困るから、先に渡しておこうかと思って。その、こないだ貰ったプレゼントのお礼よ」
と、淡々とした口調で言った。
妙に”お礼”が強調されているような気がしたが、気付かないふりをして、俺は短い礼を言ってその箱を受け取った。
箱は大きさによらず以外と重みがあった。
「開けていい?」
「帰ってからでもいいじゃない。パリのお店で見つけたのよ。たぶん、それなら貴方の好みかと思ったから」
バツの悪そうな表情をしながらナスティは言った。
直ぐに中身を確かめてみたかったところだけど、まぁ後でも良いかと思い、俺はありがとうと言ってから、鞄の中へ入れた。
どういうわけか、このところナスティは俺に対して、何か得体の知れないものを見るような目で見る。
今もそうだ。
まだ何もしていないのに、そういう態度に出られるのは正直傷つく。
直球ストレートで勝負をかけようにも、これじゃあ無理なような気がしてきた。
「何故って言われても、待ち合わせしたからだろ」
少しの間を置いて、俺はそう言った。
「違うわ」
「は?」
「そういう意味じゃないの。もっとこう哲学的に返答してほしかったの」
「俺の専攻、工学だし…。哲学ってわけわかんないし」
「哲学は難しいのよ」
「うん。難しいな」
「でも、今貴方に聞いているのは、まさにその哲学なのよ」
ナスティはキっと目に力を入れて俺を見て、先ほどとは変わって力強く言った。
なんか変なもんが、クリームの中に入ってたんか?
そう思わずにはいられない。
「意味わかんないし」
「そう? 頭の良い貴方が?」
「関係ないと思うけど」
俺がそう言うと、ナスティは軽く小首を傾げたが、
「そうね、関係ないわよね。…だって、私にだって判らないもの」
と、言ってのけた。なんじゃそりゃぁぁ、と叫びたいところだったが、当の本人はカフェモカに付いていたチョコレートスティックを口に入れてモグモグしている。
「私はどうして、此処にいるのかしら? って考えたの」
チョコレートを食べ終えたナスティはおもむろに口を開く。
「おじいさまが、私は縁に呼ばれたんだろうって言ったのよ。きっと、私がするべき事があるんだろうって」
「へぇ」
「でも、それが何か判るなんて、随分と後になってからだし…。私が此処に今存在していて、じゃあ十年後は何処にいるのだろうと」
「哲学的ですな」
「哲学って何かしら」
「古代ギリシャの偉い人に聞いてみたら」
「そうね」
「うん。それでその、どうしてまた、そういう考えに辿り着いたのか聞いていい?」
俺はビルの谷間に見え隠れする青空に視線を馳せながら、本当に深い意味もなく聞いた。───直後、眼前にナスティの左手が突き出された。その左手首には、プラチナのブレスレットが揺れていた。
ああ、使ってくれてるんだと、俺は嬉しくなった。今まで、薄手のカーディガンの袖に隠れていたので判らなかったのだが。
「貴方が、これをくれたからよ。普段とは違うことをするから、何か意味があるのかどうかあれこれ考えてしまったの」
少し怒ったようにナスティは言った。
俺は目をしばたかせて、彼女の左手首に揺れるブレスレットを見てから、そして彼女の顔へと目を移した。
ちょっとまて。
もしかして、もしかしなくても、”得体の知れないモノを見るような目”の原因はこれ?
誕生日プレゼントを贈って、俺は株を上げるどころか、エイリアンにされてしまったわけ?
「プレゼントして、どうしてそうなるんだよっ」
「毎年、そういうことはしなかったでしょ。私だけじゃなくて、皆にもっ」
当たり前だ。
野郎どもの誕生日なんていちいち祝ってられるか。
「そりゃそうだけど」
「靴下を毎日右足から履くのに、その日に限って左足から履くことと同じなのよ。なぜ、その日に限って左足だったのか」
「靴下の履き順なんて意識しないだろ」
「じゃあ、何時もは必ずお米から食べるのに、その日に限ってデザートから先に食べた。とにかく、そういうことよ」
何がどう”そういう事”なのかさっぱり判らない。
だが、ナスティはそこまで言うと、それはもう大きな溜め息を吐き出した。が、その直後に実に晴れやかな笑顔を浮かべた。
「でも、もう良いわ。お返しのプレゼントも渡したし、スッキリしたわ。気を使うから、来年からはこういう事はしないでね。私だって皆にはこれといって大した事していないんだし。まぁ、たまにはお米より先にデザート食べるわよね」
カクンと、顎が落ちる音を…………俺は聞いたような気がする。
予想の斜め上とは、まさにこういう事を言うんじゃないだろうか。
つまりだ、俺は大きなミスをしてしまったわけだ。彼女がアレコレとモヤモヤしているうちに、直球勝負をかけていれば、まさにど真ん中ストライクでツーアウト満塁におけるバッター三振の如く、勝負を綺麗に決めていたのかも知れないのだ。
「それでね、話は元に戻るのだけれど、何故今この場所に自分という存在があるのか。そして、十年後はどうなのかと。これは将来のビジョンを考えるようなものね。私はもしかしてまた何か別の縁(えにし)に呼ばれてるかもしれないし、貴方だってそうかも知れないわ。十年後の自分って考えたことある?」
俺はその問いに答える気力もなく、だらしなくベンチの背もたれにもたれた。夏の青々とした空が目に痛い。ってか、俺ってもしかして哀れかもしれない。可哀そうとか気の毒とかそういうの通り越して”哀れ”だ。これも予想の斜め上、いや斜め下ってところだな。
「当麻、どうかして?」
「別にぃ」
半ば不貞腐れたように言う俺の頬に、細い指が触れた。かと思うと、軽くつねられた。
「別にじゃないわよ。急に機嫌が悪くならないでくれる。気難しくて小難しいんだから」
と、小難しくて不思議系発想の人に言われるのも釈然としない。
「俺の十年後、一つだけそうだったら良いなあってことはあるよ」
「そう。良かったわ。何もヴィジョンが無いなんてことは、良くないわ。若者は大志を抱かないとね」
妙に年上ぶった事を言う。けれど、それ以上は何も聞いてこなかった。
十年後の今も、君の隣に腰掛けて、こうやって疲れたように空を見る事。
俺のビジョンは何てささやかなんだろう。
だけど、その”ささやか”なヴィジョンを現実にすることの何て難しいことか。
数分後、漸く合流した秀と遼に、ナスティは同じ質問を繰り返していた。
秀は俺と同じ答えを出していたが、さすが遼は違う。
「俺達、きっと強い絆で結ばれているんだと思うんだ。一緒に戦った仲間とかそういうこともあるんだと思うけど。たぶんさ、何年も会わない事があっても、会えば何年も会ってないなんて嘘みたいに普通に会話できるんだと思う。そういう絆が皆を繋げていて、ナスティの言う縁(えにし)ってやつなんじゃないかな」
とかなんとか生真面目に言ってくれたので、俄か哲学者のナスティは大層喜んだ。
古代ギリシャの偉い人、どうか俺にも助言を与えて下さい。