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    漢明「ピアスホール」ぼくがピアスをはじめて見た時、心の奥で懐かしさを覚えた。それは今でも理由がわからない不思議な感情だった。
    「なんだ?欲しいのか?」ぼくがあまりにも長い間そのピアスを見ていたから、漢三も気が付いた。
    「ピアスあけたいっていったら、漢三はどう思う?」漢三というのは、ぼくの幼馴染の男の子で今は恋人だ。
    「別に…」そういいながらも心から賛成ではないという雰囲気を漢三は出している。やっぱり。
    「そういう、身体を傷つけるようなことは、ダメかな…?」ぼくは先回りして漢三にいった。
    「ダメじゃねぇけど…」漢三が本心をことばにするより早くぼくはいった「ピアス…あけたいな」

    ぼくが漢三に告白したのは高校二年生の一学期の終わり。長い夏休みがはじまるちょっと前。
    漢三はとまどいながらも、ぼくの気持ちを受け入れてくれた。男同士という部分で引っかかっていたけど、ぼくが気にしないといったら、覚悟を決めたようだった。

    告白して三日目、ぼくは漢三にピアスと“ピアッサー”つまり、ピアスホールをあける機械をおねだりして買ってもらった。ピアスホールは最初、自分であけるつもりだったけど、どうしても怖くてできなくて、漢三に手伝ってもらおうと思って彼の家に押し掛けた。

    「じっとしてろよ…」そういったまま漢三もかたまっている。かたまったまま耳を凝視している。凝視するばかりか顔を近づける。漢三の息がぼくの耳にかかる…。
    「(あ…なんだか…くすぐったいよぉ…)」
    ぼくはきゅっと唇をかんでくすぐったさに耐えようとした。
    漢三の指がそっとぼくの耳をさわる。柔らかさを確認するみたいにそこをつまむ。
    「(あ…)」ぼくがぎゅっと目をつぶると「どうした?」と漢三の声がした。
    「なんでもない!」とぼくは目を開けていった。漢三の息が耳にかかり止まった指が動き出す。
    「(あ…あ…)」「(なんで?ぼく…こんな)」「大丈夫か?」再度、漢三の声が耳にかかる。
    びくっと身体が震えた。「大丈夫だよ…!」むりに笑顔を作りながらぼくは顔が熱くなるのを感じていた。
    「怖いのか?怖いよな…」「今日は…やめて…」そういう漢三にぼくはあわてて「大丈夫だよ!…やって?」といった。深呼吸して気持ちを落ち着ける。このくらいで火照ってくる自分の身体が憎い。

    漢三が身体をすり寄せてぼくの真横に座る。指が耳を触り、息が耳にかかる。くすぐったい。くすぐったくて身体が熱い…。その瞬間…。
    「あっ…ひゃん!!!」ぼくは大きく身体がはねるのを感じた。漢三が驚いている。ぼくの顔は真っ赤になった。いまの声を…聞かれた…。ぼくは恥ずかしくて顔を手でおおった。
    「大丈夫か…?さっきからどうしたんだ?」漢三がぼくの顔をのぞきこむ。いやだ見ないでぇ…。

    「その…くすぐったくて…漢三の息が…」
    「ふふ…」と漢三が笑う。そしてふっふっと短い息を耳にかけてきた。
    「ひゃん!ひゃん!」ぼくはぶるぶると身体をふるわせた。
    「本当だ…」涙目になったぼくを漢三が抱き寄せる。
    「味見…!」ぱくり。ぼくの耳を漢三がくわえる。「えっ…だめ…!」あわてて逃げようとしたけどぼくの肩を漢三がしっかり抱きしめている。そして耳をはむ。
    「漢三…!だめ!だめだって…!」
    いつの間にか漢三はぼくを押し倒して耳を舌でねぶっていた。
    そうしておいて「気持ちいいか?」と耳元でささやく。ぼくの頭の中はぐちゃぐちゃだ。
    夜寝るときに考える漢三との甘い幻想…それが今現実になろうとしている。それが嬉しい反面とても怖い。

    「漢三…」ぼくの声が涙声になっている。「キス…して…」
    「…おう」
    唇がふれるかふれないかの優しいタッチからだんだんと密着していくキス。
    ぼくが無我夢中で求めるのをたくみに制しながら漢三のリードでキスをする。
    どのくらいの時間がたったのかわからない。漢三の身体の重さや熱が全身に伝わる。
    これが幸せなのかなってぼくは思った。


    「もう一度消毒からだな」そう笑いながら漢三が起き上がったのは永遠に思えるような時間が続いてからだった。

    「どうする?ピアスホール」ぼんやりして寝転んでるぼくに漢三が声をかける。キスだけなのにとろけたぼくは「ん…」とあいまいな返事しかできない。
    「今日はやめておかないか?」漢三は目をあわさずそういって片付けようとする。
    「まって…あけたい!」ぼくがそういうと漢三はしぶしぶと耳を消毒してくれた。

    「いくぞ…」
    カシャンという機械の音とともにぷつ…という音が聞こえた気がする。痛みはあまりない。氷で耳を冷やしたから、そんなに痛くない。「どうだ…?」と漢三。「あいたの?」とぼくが聞くと「ああ」と答える。「痛くはないか?」そういって漢三は心配そうにぼくを見た。

    ぼくが大丈夫だと告げると「ふーっ」と大きくため息をついた。
    「次は反対側だな…」そういって反対側にまわる漢三。耳を冷やして、ピアッサーをセッティングしてカシャン…さっきと同じように穴をあけた。その瞬間…。
    「ハッ…!」びくっとぼくの身体がはねた。なんで?という思いが頭をめぐる。今まで感じたことのない衝撃にとまどいながら、ぼくは両腕で自分の肩を抱いた。
    驚いた漢三が「痛かったか?」といったのが聞こえる。「違う…大丈夫…」といいながらぼくはじんわり痛みが出てきた耳を想った。じんわりした痛みは薄れながら消えていく。

    …漢三があけてくれたピアスホールをぼくはずっと大事にしようとおもった。

    おわり。
    2020年9月23日
    ととり Link Message Mute
    2020/09/25 10:48:43

    漢明「ピアスホール」

    野狐と大正妖奇譚という創作シリーズのファンアート小説書きました。
    #やこたい
    #漢明  #現代  #ファンアート #ととりわ

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    野狐と大正妖奇譚
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