hookup2 和泉一織は疑っていた。
自分の好きな人のことを、一織は疑わなくてはいけなくなった。
(こんなことになるなら、七瀬さんの部屋に隠しカメラを仕掛けておくべきだったな)
彼にもプライベートがあるのだから、と思い直した過去の自分を殴りたい。
一織の好きな人は七つ上の社会人男性である。彼の名前は七瀬陸。苗字と名前に連続した数字が入っている。出会った頃は何も思わなかったが、縁が結ばれてからは共通項に驚いたものだ。
見た目が若いので、服装によっては大学生にも見える。私服で一織と一緒に居ると、尚更大学生と勘違いされることもあった。
人気アイドルグループのセンターによく似た華やかな顔立ち。表情がわかりにくいと言われる自分とは違い、くるくると表情を映し出す鮮やかな虹彩の瞳が魅力的だ。
明るい性格を表したような赤茶色の髪は、バランス良く跳ねて、一房だけ長い横髪を耳にかけると不思議な色気を醸し出す。
とっくの昔に成人した男に対して、可愛いという褒め言葉は普通であれば合わないだろう。しかし、一織の好きな人はかわいい人と評しても可笑しくない。これが惚れた欲目であれば、まだよかった。その場合、一織だけが恋の病に罹っているのだから。だが七瀬陸の人なりを知る人に、彼の印象を尋ねるも口を揃えて皆こう言う。
かわいい、と。あるいはキュート。しかしそれは同じ意味なので同票とする。
陸と一度しか顔を合わせていないはずなのに、友人の四葉環でさえも「なあ、いおりん。前に俺が王様プリンと引き換えに運んだ人……大人の男の人だけど、なんかカワイイ感じの人、元気になった?」と言ったのだ。
その瞬間、一織は二度と環と陸を会わせないことを決めた。
心が狭い? 知ったことか。
同年代の女子からモテる友人でさえ、二十八歳の成人男性を可愛いと言う。
つまり七瀬陸は愛され体質なのだろう。それは生まれ持った才能だ、とも一織は思う。しかしそれを羨むことはない。ただただ大変であることを、和泉一織は現在進行形で実感していた。
事の始まりは、陸がしばらく会えない、と言ったところから始まる。
普段は一旦ミュートにすべきか、と一度は考えてしまうほどに不要な連絡やスタンプが飛んでくる。鬱陶しいというよりも、陸が送ってくるメッセージのせいで気が散って集中できなくなってしまう。
『オレが好きな一織の仕草、第五位! 手の甲で口元を覆い隠すところ』
これは酔っているであろう陸から送られてきたメッセージのひとつである。ほぼすっからかんの内容であるが、「好き」のワードのせいか、一織の集中力はアプリを開いた瞬間途切れた。意味の分からないランキングの結果を見守り、時間を溶かしたこともある。
理性的であるはずの自分が、だ。
それほどに初恋は一織をダメにした。悪い意味でも良い意味でも。
四六時中相手のことを考える──ほどではないが、頭の中を八割以上を占めているのは、陸のことばかり。また一織自身、素直になれない難儀な性格故に、言い合いから喧嘩まで発展することもある。
閑話休題終わり。
さて、しばらく、という曖昧な期間は一体いつまでなのだろうか。
あまり気の長くない一織は、一ヶ月待った。待って、さすがに焦れてラビチャをひらいた。
『そろそろ会えませんか?』
会いたいです、とは言えない。あなたと行きたいところがある、と言葉を継ぎ足して既読の文字がついた。しばらく待ったが、メッセージもスタンプすらも送られてこない。
しょうもない談笑を好む、あの男が、だ。
『体調、崩されましたか?』
既読後すぐにメッセージが返ってきた。
『超元気。大丈夫』
イラっとした。
待ち続けて、一ヶ月、いやそれ以上待っていたのに、返ってきたのは三文字を続けた素っ気ないメッセージ。しかもほぼ単語だ。
力任せに通話の文字を押した。十七コール目に差し掛かったところで、ようやく電話が繋がった。
『……い、一織?』
「はい一織です。あなたの恋人ではありませんが、他人以上知人以上、以前あなたのセフレを務めた男です」
『最初からめちゃくちゃ怒ってるじゃん……』
「怒ってはいません。少し腹を立てているだけです」
『それは、怒っている、と言うんだけど?』
「そんなことどうでもいいです」
『どうでもいいって……言っとくけど、おまえが始めた物語だぞ』
そんなこと知るか。
電話口の向こうから、苦笑めいた言葉が聞こえてくる。久しぶりに耳にした陸の声に、ざわついていた心も次第に落ち着いてきた。
「最近ピタゴラスにも顔を出していないそうですね。何かあったんですか?」
『……何もないよ。ちょっと、健康について考えないとなあと思っていて』
直感的に嘘だ、と気が付いた。
先程の言い合いと打って変わり、声色が乱れている。録音しておきべきだった、と舌打ちしたい気分で一織は話を引き延ばす。
「大してお酒も呑んでいない。喫煙もなし。健康的だと思いますが」
『それがさ、やっぱりこの年になるとだんだんと中性脂肪とか気になってくるんだよね』
中性脂肪ときたか。陸に縁のない単語だ。
自覚はないようだが、陸のスタイルはかなりいい。モデルのように目を惹く、という体躯ではなく、華奢だが、貧相でもない。特に腰回りがきゅっと締まっており、そこからすらりと伸びた足は男性の目から見ても格好良いのだ。
また陸を泊めた時に、自分の着替えを貸したこともある。一織の方が陸よりもワンサイズ大きいため、やや不格好になっていた。
「まあ、激しい運動していますしね」
『激しい運動?』
くすりと笑って、低い声でゆっくりと吹き込む。
「覚えがないんですか? セックスしてるでしょう」
『っ! こ、このエロガキ……っ』
一織と何度も身体を重ねたというのに、この反応だ。初心な少女でもあるまいし、と思う反面この初々しさが可愛いとも思う。
「しかし、最近はご無沙汰ですが」
『もー、やだ……』
と言いつつも、元々恋人を作らずセフレを囲っていた男だ。性欲は人並み以上にあり、快楽主義者なだけあって余計タチが悪い。
一織が相手できない時には、アダルトグッズ──男性器を刺激するほうではなく、後ろの穴を使ってひとり遊びもする。
「もしかして、ひとりで遊んでいるんですか」
『コメントは控えさせていただきます』
少し演技かかった声ではあったが、乱れや震えはない。嘘はついていないようだ。むしろ事実だからこそ、陸は沈黙を選んだのだろう。
「……ひとり寝、寂しくないですか」
迷った末に出た言葉は、自分らしくないものだった。気遣っているのか、それとも不満に思っているのかあやふやな問いかけ。
笑う声が聞こえる。けれども、どことなくから元気のように聞こえた。
『何年ひとりで寝てると思ってるんだよ』
「なるほど」
『うん? 何がなるほど?』
「今のやり取りで、七瀬さんが浮気していないことがわかりました」
『おまえなー……。オレは一途なんだよ』
馬鹿だな、とそれは陸の声に似せた機械音なのに、どことなく甘い。
名残惜しいなと思いつつも、一織は会話を終わらせることにした。思わず話し込んでしまった、という焦りを滲ませながら。
「ああ……もうこんな時間ですね。すみません、お忙しいところ長々と電話してしまって……。明日も仕事ありますよね」
『あっ……うん、そうだな。一織も大学だろ? 長々とごめんな』
またなおやすみ、で通話は終了する。
沸き上がった苛立ちごと吐き出すように、一織は深く息をついた。
陸は何かを隠している。一織や親しいピタゴラスのメンバーにも相談できない、何かを抱えているのだ。つき慣れていない嘘をついてまで。
(頼られないというのが、こうもムカつく感情だとは……)
以前兄である三月が荒れた時は、ただただ心配だった。
憂いを取り除いてやりたい。助けたい気持ちはあった。しかし、三月によって引かれた拒絶という境界線を、飛び越えようとは考えもしなかった。勿論三月に対する怒りや焦燥感すらも抱かなかった。
だが陸は別だ。
恋人でもなく、だいぶ年上の相手ではあるのだが。
(浮気性の甘ったれのくせに……!!)
一途な性格で、人の懐に入るのがとても上手い。甘やかされるのが好きで、大事にしてくれる人に懐く。
無理矢理身体から始めて──しかも、当時一織は女装していた──セフレ関係を結んだ。つまり同意のある強姦からのセックスフレンド。一般的なお友達よりも、情が薄いのである。さらに言うならば、セフレも今は解消している。
好き合いながら健全に遊び、セックスもしている関係。そしてイコール恋人、にはならない。
最高の関係じゃないか、と言われるだろう。一織の感想としては、最悪である。恋人ではないだけに、今も恋焦がれ続けているのだ。半分だけ手に入った陸を抱きながら、幸せだと思う反面不安でたまらなくなる。
(明日、七瀬さんに会おう。女装して待ち伏せすれば世間体が悪いと感じて、部屋にあげてくれるだろ)
手段を選ばない。それが和泉一織の長所でもあった。
真面目な大学生らしく前の席で講義を受けて、絡んでくる友人を躱した一織は帰路に着く。シャワーを浴びて、クローゼットから女物の服を取り出す。
照明を落としたピタゴラスに行くのであれば、まだ選択肢は多い。しかし、今から向かう先は陸のマンションだ。念入りに化けた方がいい。
しばらく悩んだ一織が選んだのは、フード付きドルマン袖のドッキングワンピースだった。トップスは黒色で全体的にゆったりとしており、スカート部分は赤混じりのオレンジ色だ。これなら靴はスニーカーでも問題ないだろう。
ワンピースに着替えて、ウィッグを被る前に化粧をほどこす。
ナンパ目的ではないので、きつく見えるようにアイラインを跳ね上げさせる。マスカラを塗った後、さらに眦側の睫毛にマスカラを重ねた。
目を眇めると、普段よりも冷ややかさが増した。ひと睨みでもすれば、気の弱いナンパ男は去っていくだろう。
ウィッグを被り、姿見でくまなくチェックする。正直な感想、女装した自分はそこそこいける容姿だと思っている。にこりと微笑めば、男の鼻の下が伸びることを経験で学んできた。
小さめのハンドバッグには、貴重品の三つ折り財布とウェットティッシュ、それから定期券。
スマートフォンは深めのポケットに仕舞った。
陸の部屋に着替えは置いてある。それだけではない。メイク道具、化粧落とし、一織のサイズのコンドームすらも。セフレの女性は連れ込めないだろう。陸の部屋には一織の痕跡がしっかりと残っている。
勿論その逆として一織の部屋にも彼の私物や着替え、彼専用の枕も置いてある。いつでも泊まれるように。
愛用しているSHIROの香水を軽めにつけ、マスクをつけた一織は部屋を出た。
自分の部屋から陸が住むマンションまでは、乗り換えなしで行くことができる。帰宅ラッシュにも負けないほど、混雑した駅の中を進み、改札を通る。階段を上がり始めたタイミングで、電車が発車した。
しかし数分待てば、すぐにも次の電車がくる。それほどに首都圏の交通網は利便性が高い。
中学の修学旅行で京都へ行ったことがある。班に分かれての自由行動で、京都駅から金閣寺へと向かうのに電車だけではたどり着かないことに驚いた。電車に乗り、それからバスで移動が最も早く、アクセスが悪いなと一織は思った。苦労してたどり着いた金閣寺だが、建造物だな、くらいの感想しか抱かなかった。我ながら情緒もないな、とも。
到着した電車に乗り込む。車両と車両の間側、端へと移動して、顔を俯かせた。一七四センチの一織の身長は、男性としては平均的だが、女性として高くなってしまう。
窓を見つめると、ちょうど日が沈みかけていた。空は三層に分かれ、藍と橙と赤のグラデーションが色鮮やかだ。対角側の壁に貼ってある紅葉のポスターが、うっすらと窓に映り込んでいた。文字を目で追う。十一月の初旬から中旬の期間に開催されるらしい。連想ゲームのように、ある地名が浮かび上がる。
陸は京都に行ったことがあるのだろうか。そんなことを思った。
彼ならどこへ行っても目を輝かせて、楽しそうに笑うのだろう。東京でも買えるのに「ここまで来たんだから」と一時間かけて土産を厳選しては、気が付いたら姿を消してしまい、こちらの心臓をひやひやとさせそうだ。
彼と会って、隠していることを白状させて一緒に考えた後、聞いてみよう。
修学旅行先はどこだったのか。楽しかったか、と。圧倒的に不足しているのは、そういった会話なのかもしれない。表面上のことしか知らないのだ。
そうして提案してみようと思った。今年のクリスマスに、ふたりでどこかに出かけないか、と。男同士が目立つなら、こんなふうに女装してもいい。もしくは知人に会わない場所へ出かけるのもありだろう。
各駅で停車するたびに、降車して人口密度が低下したかと思えば、また一気に上昇する。満員電車に慣れてはいるものの、知らない人の身体に触れるのは不快である。
目的の駅を知らせるアナウンスが聞こえた。流れる人の波に上手く乗り、西口改札へと向かう。
駅から出ると日は沈んでおり、その代わり藍色の空を照らすように、いくつもの街路灯とビルの灯りが街全体を包み込んでいた。
陸のマンションまでは徒歩五分ほどだ。そして陸が定時に上がり、まっすぐ帰路に着けば今から三十分後には会えるだろう。
できればエントランスで鉢合わせするのが一番ベストな方法だ。
一織は歩き出した。
今日は金曜日。明日は休みだ。もしかしたら、陸は誰かに誘われてどこかに飲みに行っている可能性もあった。
しかし一織も同じように明日は休みで、実家の手伝いも入っていないので何時間でも待ち続けられる。
これが非効率な行動であることは、重々承知のうえだ。またストーカーのようだとも思った。やや狂気じみているのだ。けれども自分は理性的だ。時間をかけてでも、彼の身の潔白を証明できるのならば────。
「……そうか。私はあの人のことを疑っているのか」
口に出して、ようやくあやふやだった自分の感情の、何に苛立っていたのかを知った。
すべては不安から生じている。
七瀬陸は、和泉一織の恋人ではないから。
長期戦は覚悟していた。だが、その間に自分の感情がどんな風に下落し、あるいは上昇するのか。まだ恋愛において初心者である一織はわかっていなかった。
人と関わることが苦手で、人付き合いもろくにしなかった一織は、同年代の恋愛話も知らない。恋愛の身勝手さや理不尽も。焦燥を抱き、猜疑心に苛まれることを。
「やっかいだな……」
恋がこんなにも人を駄目にするとは思いもよらなかった。
迷わず進み続けた結果、タイムロスもなく陸のマンションに到着した。ただし、気持ちはドン底だ。深海を潜っているかのようだった。
エントランスへと入り、オートロックを操作する。部屋番を打ち込み、呼び出しをしてみたが反応はない。
やはりまだ戻ってきていないようだ。住人の邪魔にならない隅の方へと移動した一織は、スマートフォンを取り出した。陸にメッセージを送る。
『お疲れ様です。今日か明日、会えませんか?』
既読がついて、すぐにぽすっと音とともにメッセージが飛んでくる。
『お疲れ一織。残念だけど、ちょっと体調を崩していて』
『そうですか。またの機会に。お大事になさってください』
少し考えて丁寧な言葉を送り返すと、不満げな顔のスタンプが送られてきた。
何故。
何故そのスタンプを、と指をスライドさせたところで影が落ちる。顔を上げるとスーツ姿の男性が目の前にいた。上背が高く、端整な顔立ちも相まって迫力がある。
「こんばんは」
「こんばんは。すみません、郵便受けに投函したいのですが」
「ああ、すみません」
一織は郵便受けの正面ではなく側面にいたが、どうやら邪魔になっているらしい。避けると、手に持っていたA4サイズの茶封筒をどこかの部屋の郵便受けに差し込んだ。ここからでは部屋番がはっきりとわからない。
帰り際、会釈して去っていく。遠ざかる背を眺め、視界から完全に消え去ってから郵便受けへと近づいた。
(ポスティングにしては、一通だけだったな)
茶封筒に企業名やロゴも見当たらなかったように思う。投函したであろう郵便受けには、陸の部屋も含まれている。
スマートフォンの画面に視線を戻せば、陸からメッセージが届いていた。
『間違いだから』
「間違い?」
一瞬、疑問符が浮かんだが、中途半端に送ってしまったメッセージに対しての返信のようだ。アプリを閉じてスマートフォンをポケットへと仕舞う。オートロックが視界に入る位置へと戻って、一織は陸の帰りを待った。
このマンションに住む住人たちが出入りし始める。見慣れない一織の姿に驚く女性も何人かはいたが、会釈しては目の前を通り過ぎていく。
(女装して正解だったな……)
男性であれば、警戒されて不審者扱いされたかもしれない。一度外に出るか、と出入り口へと足先を向けた一織は、帰宅した陸の姿を見つけた。
こちらへと向かってくる彼の表情はどことなくかたい。
「七瀬さん」
「っ! い、一織……?」
ホッと表情を緩め、しかしすぐに強張らせる陸を一織は見逃さなかった。
「何でここに」
「お見舞いに来ました。顔色が悪いですね」
他意はなかった。自然に出た労わりの言葉の後、青白い頬に触れようと手を伸ばしたと同時に鋭い痛みが走った。叩き落とされた手へ、そして弾いた陸へと視線を向ける。
「っ、あ……ご、めん」
傷ついた顔をした陸に、一織はそっと笑いかけた。
「気にしていません」
「けど……。ごめん」
この場は引いた方が良さそうだろうか。どうしたものか、と様子を伺っていれば、陸は郵便受けを開け始めた。ダイヤル式ロックを解除後、手紙やチラシを取り出す。その中に例の茶封筒もあった。
(七瀬さん宛てだったのか。しかし、底側がやけに膨れているような)
何も書かれていない茶封筒を陸は最初訝しげに眺めていたが、表情を変えた。
それは怯えだった。
「一織!」
すかさず陸の手から茶封筒を奪い取る。糊で封をしているのだろう。端に指を差し込み、引き裂くように開封する。やめて、と悲鳴混じりの静止の声が聞こえたが、構わず中身を取り出した。
「……何ですか、これは」
それは写真だった。薄暗い場所で陸が笑っている。だが目線はこちらを向いていない。
どう見ても隠し撮りされた写真だった。さらに写真の端には何かこびりついている。そして鼻につく、特有のにおいに覚えがあった。
正体に気が付き、愕然とした。封筒の中身を取り出すとどの写真にも笑う陸が映っている。目線はひとつも合っていない。
「……こういうのも、ストーカーっていうのかな」
疲れた顔で笑おうとする陸の手を掴み、マンションを出る。
どこへ行くの、と不安げな陸に一織は答えた。
「私の部屋です」
大通りへと出てタクシーをつかまえる。乗り込み、行先を告げる間も、走り出しても、繋いだ手は震えていた。