李ぐだ♀・雪原の再会獣のふとい断末魔が、凍る空気を切り裂いた。
派手に吹きあがった血しぶきは、極寒の風に一瞬で凍りつき、赤黒い粒となって雪原に散らばった。
カルデアから退去して、次に見たのは、真っ白に凍てついた世界と見知らぬ巨獣。初めて見る獲物だったが、己のすべきことは心得ている。やり慣れた仕事だ。いつもどおり、息の根が止まるまで壊せばいい。
敵の完全な沈黙を確認すると同時に、背後で叫びが上がった。
「……せんせい!」
ふりかえって、声のもとを見た。
よく知っている少女が、見おぼえのない黒い服をまとって、雪原に立ちすくんでいた。まっすぐにこちらを見つめる顔が、くしゃくしゃと歪んだ。一目散に走ってくる。
握った槍を消し、大きく両腕をひろげた。毛皮の外套が肩から抜けて風に吹きさらわれ、いずこかへ飛んでいった。
矢のように駆けて胸に飛びこんできた少女をしっかりと抱きとめる。
FGO・李ぐだ♀Logぱいみん
──すこし痩せたか。
髪に顔をうずめ、なつかしい香りを肺いっぱいに吸い込んだ。
この召喚は安定していないらしい。エーテルで編まれた身体が、急速に分解していく。どうやら今の自分は、わずかな時間しか現界できないようだ。今は何もわからないが、時間がないことだけは察せられた。消える前に早く。彼の主の耳にささやく。
「いつでも儂を喚べ」
背に回された細い腕に、ぐっと力がこもった。
その応えを受けて、片頬で笑った。そして、光の粒にほどけて消えた。
あの娘がまた己を喚んだ。そのことだけが重要なのだ。
屠るべき敵があり、守るべき主がいるなら、それで充分だ。