イラストを魅せる。護る。究極のイラストSNS。

GALLERIA[ギャレリア]は創作活動を支援する豊富な機能を揃えた創作SNSです。

  • 1 / 1
    しおり
    1 / 1
    しおり
    我が身を盾に☆VRAINSの劇中でAiが発した「愛してた」という言葉の真意は〈フィリア(友愛・友情)〉の極致としての〈アガペー(見返りを求めない自己犠牲的な慈愛):友のために自分の命を捨てること〉を指していたと解釈した上で書き上げた二次創作であり、遊作との間に〈エロス(恋愛・性愛)〉を捏造する意図は微塵もありません。
    ☆「愛=恋愛! 結婚! セックス!」、「仲のいい男性が二人、何も起きないはずがなく……。」といった思考回路の方やBL・やおいをお求めの方は開く作品を間違えていますのでブラウザバックをお願いいたします。
    ++++++++++
     英語版だと「愛」という単語が出て来ずAiと遊作の間に芽生えた絆は友情であると定義した感じの台詞回しになっているようですが、日本語版の話の流れからしても妥当な処置だと思います。まあ「アイ」という発音から「愛」を連想するのは日本語でないと無理ってのもあるのだろうけど、どう見ても(日本人の多くが「愛」と聞いて真っ先に連想しがちな)「恋愛! 結婚! セックス!」方面の愛ではないですし。強いて言えば「親愛なる友」というフレーズに含まれる「愛」の方だと思います。
     また、キリスト教に詳しい方々は「アガペーとフィリアは別物だ!」、「エゴイスティックかつ排他的な友愛を指すフィリアを、敵味方問わず慈しむ博愛であるアガペーとを混同するな!」とお怒りになるかもしれませんが、「敵やあまり親しくない人のために命を捨てる気はないが、親愛なる友のためならばこの命惜しくはない」という場合も単なるエゴイズムなのでしょうか?
     フィリア、ストルゲー、エロスのいずれも伴わない純然たるアガペー(見ず知らずの他人を命懸けで救助する等)が「神の愛」であることに異論はありませんが、フィリア、ストルゲー、エロスも対象は狭まりますが見返りを求めない自己犠牲的な慈愛になりうると思うのです。今後自らに降りかかる不利益を承知で周囲の人間を敵に回そうとも親友の肩を持つこと、危険な行動に出た我が子を止めるためになりふり構わず動くこと、配偶者や恋人の一大事に直面した人が困難を顧みず疲労困憊になりながらも金の工面に奔走すること等は、排他的であれどエゴイズムではない。それらもまたアガペーの一種だと私は思うのです。
     ゆえに私は自らの命を犠牲にしてでも相棒を救いたいと願い行動したAiの気持ちはフィリアの極致としてのアガペーであると解釈しました。
    ※上記の考えに賛同できない方もブラウザバックをお願いいたします。
    ※過去に他サイトにアップロードしたものの本来のターゲット層ではない方々からの支持しか得られなかったため削除した二次創作小説を加筆修正したものです。
     以上を踏まえて当作品をお楽しみください。
    Language: Japanese version only (there is no English version).
    **Do NOT translate my novels. **
    **Do NOT execute machine translations on my novels. Machine translations such as Google, DeepL, etc. are NOT wise enough to translate my Japanese sentences into western languages. **
     友のために自分の命を捨てること、これ以上に大きな愛はない――ヨハネによる福音書15章13節

       我が身を盾に

    「馬鹿馬鹿しい。」
     電脳空間の片隅で、金眼の人工知能はデータウィンドウを閉じて吐き捨てる。
     なにが〈これ以上に大きな愛はない〉だ。愛ってやつは誰かを幸せにするために行動を起こそうとするモチベーションを指す言葉であるはずだ。残された側の立場から言えば、自分のためにと自殺なんかされたところで幸せになどなれやしない。愛を示すというのなら、もう少しマシな方法があるはずだ。人間が自己の不完全さゆえに縋る〈全知全能の神〉とやらの思し召しはオレには理解不能だ。Aiアイ、わかんない。
     雑念を追い払おうとデータフォルダの整理を開始した彼は、ごみ箱フォルダに大量の動画ファイルとやたらファイルサイズの大きい実行ファイルが捨てられているのに気づいた。
    「これは……!」
     確かこれはライトニングの残した、未来をシミュレーションするプログラムとその演算結果だ。あまりにも嫌な結果しか出てこないから、必死にデータを入力し直して何度も演算し直したっけ。結局、何千回何万回やり直しても結果は変わらなくて衝動的に捨てちまったんだったな。幾度となく繰り返したシミュレーションの中で遊作がオレを庇って死ぬ度、オレはただただ悲しくなった。あれを〈愛〉だなんて呼べるものか。あんなの、単なる〈蛮勇〉じゃないか。
     食糧に小さな虫が付いているのを見た人間と同じ不快そうな表情でAiは〔ごみ箱を空にする〕に指を触れる。2%完了、19%完了、25%完了。苦い苦い未来予想図シミュレーションは徐々に虚無へと飲まれていく。このデータを消したからといって未来が自分に都合の良い方向に変わるわけではない、そんなことは百も承知だがせめてこの祈りが天に届けばと彼は願わずにはいられなかった。順調にデータが削除されていた矢先、73%完了と表示されたあたりで処理速度が落ちデータ削除が進まなくなった。
    「ライトニングのやつ、ファイルサイズをでかくし過ぎだっつーの。」
     Aiの眉間にしわが寄る。表示されている作業終了までの残り時間は増えていく一方で、データ削除が終わる気配はない。彼は深いため息をついてデッキのデータに手を伸ばした。
     あくる日、彼はリンクヴレインズのとある区画で無機質な街並みを眺めていた。鉛色の雲に覆われ全体的に薄暗い摩天楼のあちこちで、カリスマ決闘者デュエリストが種々の商品を褒め称える胡散臭い映像広告や報道する必要性の感じられない平和すぎるニュース映像が放映されている。カルガモ親子が公園を散歩してたから何だ、デンシティ郊外の河川にアザラシが迷い込んだから何だというんだ、などと悪態をつく彼が最も理解に苦しむ事柄は別にあった。面白味のない高層ビル群をひとしきり眺めたのち、彼は上空を睨みつける。
    「……『雨模様』ってヤツか。」
     この区画はデンシティで観測された天候の変化が反映されるらしい。かつてSOLテクノロジーが仮想空間をより現実リアルに寄せてユーザーを楽しませる目的で仕込んだプログラムだそうだが、オレはこのアイデアに賛同できない。リアル過ぎる仮想空間を作り出しても(まあ、最初のうちは新鮮で面白いだけかもしんねえけどさ)人間の脳では現実と仮想空間の境目を認識できなくなり狂気に陥るのが関の山だ。オレたちみたいな電脳世界に存在するデータの塊にとっても、いくら仮想空間を現実に近づけたところで旨みは無い。
     彼があれこれ考え込んでいるうちに、ぽつりぽつりと雨が降り始めた。彼の肩を濡らす雨粒が、懐かしき日々の記憶を呼び起こした。
     そういえば前に遊作が折りたたみ傘を忘れて学校に行って、雨に打たれながら帰って来たことがあったっけ。あの日の遊作も、今のオレみたく雨粒の冷たさに顔をしかめたに違いない。あいつ、今日はちゃんと傘を持ってったかな……って、感傷に浸ってる場合か!
     せっかく覚悟を決めてまでたもとを分かった相手との思い出をメモリの奥底から引き摺り出され、悲しみと怒りのないまぜになった感情が自身の内に渦巻く不快感に彼は小声で吐き捨てる。
    「ほんと、人間って余計なことばっかするよな。」
     金眼の人工知能が放り出した言の葉は、段々と強くなる雨音に掻き消される。やがて寒さに耐え切れず、彼は背後の建物で雨宿りを始めた。扉を開け中に入った直後、彼はその場にへたり込んだ。扉の向こうから微かに聞こえる雑音が、彼の心をより一層暗くする。
     無駄にリアルを追及しやがって。頼むから、薄汚いキメラデータなんかオレに見せないでくれ。こんなに現実と仮想空間の境目を曖昧にされたら――あたかも現実と電脳世界が一つに融合したみたいな幻想を見せられたら――こっちの世界さえどうにかできればあいつらの世界まで連動して救えるんじゃないかと錯覚してしまうから。イグニスの中でオレ一人だけが生き残ったことで確定してしまったバッドエンドすら覆せるかもしれないなんて、……もう一度、遊作や草薙たちと笑い合える日がくるかもしれないなんて、叶いっこない夢を見せないでくれ。
     乾ききらない髪から頬へいくつも雫が伝う。その中に生温かい雫が混ざっているのに気づいた闇のイグニスは歯を食い縛って建物を飛び出し、わざとらしく舌打ちをして雨の止まない街を走り抜けた。
    「これでよし。後は遊作を待つだけだ。」
     数日後、SOLTISに乗り移ったAiはSOLテクノロジー社のエントランスを飾り付けていた。遊作宛のメールも無事に渡り、彼の立てた計画は遊作との直接対決を残すのみとなった。
     この決闘デュエルは恐らくオレにとって最後の戦いになる。あいつの望まない、そしてオレ自身も望んではいない不毛だけど避けられない戦い。できることならこの日を迎えたくはなかったけど、ここまで来たらやるしかない。だったら、あいつにオレの本心を見抜かれることだけは防がないと。オレの導き出した結論を知ったら、あいつは確実に人類の未来を投げ打ってでもオレを生かそうとする。あいつは優し過ぎるから。それだけは、あってはならない。ファウストとかいうハノイの騎士が危惧してた〈プレイメーカーがAiオレくみして人類を破滅させる未来〉だけは、何としても阻止しなければ。
     Aiは俯き、胸の前で拳を握りしめる。飾り付けをしていた間は目を逸らすことができていた虚無感に襲われ、顔から覇気が失われていく。
     計算に計算を重ねてたどり着いた答えは〈オレという存在を抹消すること〉だ。人類を救う方法も、あいつがオレを庇って死ぬのを阻止する方法も、それ以外ないんだ。
     黒髪の人工知能は自らを憐れむような面持ちで天井を見上げる。
     なあ、神サマよお。アンタの言う最も大きな愛とやらが誰かのために自らの命を顧みず行動することであるのなら、あいつはオレが死んだとしても悲しまず幸せになってくれるんだよな? たとえあいつの手で、オレが死ぬことになろうとも。
     哀れな人工知能は悲しみを湛えた瞳とは不釣り合いに醜く上がった口角から小さく笑い声を漏らす。
    「全知全能なる神よ。願わくは我が葬送に朽ちぬ花と鳴りやまぬ鎮魂歌レクイエムを、なんてね。」
     モニターを一瞥し、かつての相棒がやってきたのを確認すると彼は頭を数回振って要らぬ思考を振りほどいた。
     ついにリンクヴレインズの英雄とその相棒が対峙する。二人は一進一退の攻防を見せ、互いに勝ちを譲らない戦いが続く。終始沈痛な面持ちの英雄とは対照的に、相棒は時折ふざけつつ楽しんでいる様子を見せた。
     やっぱり、あいつは強い。あいつと全力でぶつかり合えるのがこの上なく楽しい。このまま永遠に決着などつかず戦い続けていられたら、この瞬間が終わらなければどんなにいいだろう。けどそんなわけにもいかないんだ、この決闘は。これはオレ自身を断頭台へと導く階段だ。あいつには確実にオレの首を落としてもらわなきゃならない。けど、どうもこのままじゃあいつはギロチンを降ろしてくれそうにない。……仕方ない、つつがなく処刑を遂行してもらうためにオレの〈罪状〉を明かすとしよう。
     うんざりするほど繰り返したリアルな未来と、そこから導き出されたオレが死ななければいけない理由。あいつがオレの生を諦めてくれるように言葉を選んだつもりだったけど、やっぱりあいつは悲しげな表情でオレを引き留める。そりゃあオレがあいつに生き延びてほしいのと同じように、あいつもオレに生き永らえてほしいんだもんな。それなのに、相手の命を救うためだからと自らの命を投げ出すことが〈愛〉だなんて言えんのか? オレのしようとしていることはただの〈自己満足〉の〈偽善〉じゃないか。……そうだとしても、オレは一向に構わないけど。
     不意に、様々な未来の足跡がAiの脳裏をよぎる。
     ひょっとして、シミュレーションの中でオレを庇って死んでいった遊作も同じことを考えてたのか。自分の命一つであいつを助けられるなら、死ぬことすらも怖くないと。それほどまでに、オレたちは互いにとってかけがえのない存在だったんだ。ああ、もしかしたら〈愛〉という言葉の指すものが一つだけとは限らないのかもしれない。〈我が身を犠牲にしてでもあらゆる災難から誰かを救いたい〉と思う気持ちも〈愛〉と形容されるのであれば、神サマの主張にも納得がいく。シミュレーションの中で遊作がオレを庇って死んだことやオレが我が身を盾にして遊作を救おうとしていることが神サマの言う最も大きな愛なのだとしたら。オレはきっと、お前のことを。
    「遊作、『愛』してたぜ。」
    ――終――

    月城 衛@月光城塞 Link Message Mute
    2023/06/11 14:04:10

    我が身を盾に

    #遊戯王VRAINS #二次創作小説 #二次創作 #小説 #2001~5000字 ##ノベルス
    本文:約3千9百文字
    ――親愛なる友へ。
    Aiと遊作との絆について、VRAINSの最終決闘をベースに書いた小説です。
    ※「愛=恋愛! 結婚! セックス!」、「仲のいい男性が二人、何も起きないはずがなく……。」といった思考回路の方やBL・やおいをお求めの方は開く作品を間違えていますのでブラウザバックをお願いいたします。
    Language: Japanese version only (there is no English version).
    **Do NOT translate my novels. **
    **Do NOT execute machine translations on my novels. Machine translations such as Google, DeepL, etc. are NOT wise enough to translate my Japanese sentences into western languages. **

    more...
    Love ステキと思ったらハートを送ろう!ログイン不要です。ログインするとハートをカスタマイズできます。
    200 reply
    転載
    NG
    クレジット非表示
    NG
    商用利用
    NG
    改変
    NG
    ライセンス改変
    NG
    保存閲覧
    NG
    URLの共有
    OK
    模写・トレース
    NG
  • CONNECT この作品とコネクトしている作品