それ行けUMブラザーズ 巻之参★それ行けUMブラザーズ★
〜雪の日の思い出の巻〜
初雪が降った日。
白皙の肌の少年と炎のような赤髪の童が、館の縁側から降雪を眺めている。
琥珀の眼を大きくして雪を眺めていた赤髪の童がおずおずと舞い散る雪に手を伸ばすが、雪は童の手の暖かさにたちまち溶けて消えてしまう。
しょんぼりしてしまった童を見た白皙の肌の少年は一度館の奥へ引っ込むと、手に黒い天鵞絨を持って帰ってくる。
赤髪の童に天鵞絨の端を持たせ、自分は反対側の端を持ち布を大きく広げると、微風に吹かれた粉雪の欠片がいくつも天鵞絨の上で輝く……
黒い天鵞絨の上で宝石のように輝く雪の欠片に目を輝かせる赤髪の童。そんな童を見て微笑む白皙の肌の少年。
二人が揃って大きなくしゃみをしたのは、その直後だった。
ちなみに少年が持ち出してきた天鵞絨は母上が大切にしていたもので、持ち出しはすぐにバレたけれど童が大泣きして少年を庇ったのでお咎めなしになりましたとさ。
めでたしめでたし。
おしまい。
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〜嵐風兄弟幼少のみぎりの巻〜
(母上から幼児27代のお守りを仰せつかった少年兄上、大いに張り切る)
(どうやって弟に兄らしいところを見せてやろうか、どうやって弟を楽しませてやろうか考えてる最中に幼児27代逃走&失踪)
(大パニックの兄上、館中を捜索)
(半泣きで捜索後、物置の大きな壺の中に入り込んでる幼児27代を発見、保護する)
(今度は目を離さないぞと拳を握りしめた瞬間に幼児再逃走。少年と幼児の本気の追いかけっこが館内で繰り広げられる)
(再び館中を走り回った後に無事幼児確保。仕方がないので自分と弟を紐で結ぶ)
(紐をつけられて観念したのか疲れたのか幼児27代が大人しくなったので、兄上ほっと一息つく)
☆
(弟にかまけて今日の分の勉学をしていないことに気がついた兄上、座学開始。だが開始5分で幼児のお兄ちゃん構って攻撃が始まる)
(だんだんとはげしくなる構って攻撃に兄上今日の座学断念)
(外に行きたいという幼児27代のリクエストに答えて庭を散歩する兄弟。だが散歩開始5分で眠くなった幼児27代がぐずりだす)
(幼児、歩くのも嫌がるほどぐずり始めたのでおんぶしてあげる兄上)
(弟をおんぶしながら、こいつのせいで今日は散々だったと苛立ちを感じる兄上。こっそり涙を拭う)
(そんな兄上の気持ちもわからず、背中で大はしゃぎの幼児27代。ふざけて兄上の髪を引っばったりして遊んでいたらついに兄上ブチ切れ。弟に対して大声で怒鳴ってしまう)
(お前が好き勝手するせいで今日は何もできなかった。僕がどれだけ苦労したと思ってるんだ。お前なんか大嫌いだ……)
(急に怒鳴られ、嫌いだと言われ、みるみるうちに泣き顔になる幼児27代。泣きたいのは僕のほうだと、でもきっと親からは弟を泣かせた悪い兄だと言われるんだろうなと思って涙目で葉を食いしばる兄上)
(背中で大泣きされるんだろうと覚悟を決めていたら、弟がやけに静かなので振り向く兄上)
(目に涙をいっぱいためて鼻をひくひくさせながら、でも嗚咽を我慢している様子の幼児27代)
(兄上の背中にしがみつきながら何か口の中でごにょごにょ言っているので耳をすます兄上)
(あにうえ、きらわないで、ごめんなさい)
(涙をぽろぽろこぼしながらそう繰り返していた幼児27代)
(その言葉を聞いて我慢していた何かが決壊し、弟をおんぶしながら大泣きしてしまう兄上)
(兄上が大泣きしてしまったのでつられて更に大泣きする幼児27代)
(子供二人の泣き声に驚いた一族家臣達が大慌てで集まってくる……)
☆
(二人で泣きながら館に帰り、父上に呆れられ母上に微笑みかけられる兄弟)
(泣きつかれて寝てしまった弟の様子を見たあと、優しく兄上の頭を撫でながら兄上を褒める母上)
(兄上の頬がぱあっと朱に染まり、口元には微笑みが戻ってくる)
(いつも母上に甘えている弟が寝てしまったので久しぶりに思う存分母上に甘える兄上。二人を優しく見守る父上)
(しかし唐突に幼児27代が目を覚ましてするりと布団を抜け出し手洗いに向かおうと移動を開始)
(兄上と幼児27代は紐で繋がったまま)
(二人の間に貼られた紐が父上の背を押す形になり、慌ててバランスを崩した父上が母上と兄上を抱きしめるような形で覆いかぶさる)
(父母兄が団子になっているのを見て顔を輝かせる幼児27代、自分も家族団子にダイブ)
(館には、月家族四人の幸せな笑い声が響きましたとさ)
おしまい。
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〜月次兄弟背比べの巻〜
ちび嵐童「よし風魔、背の丈を計るから動くなよ」
ちび27代「はーい😄」
ちび嵐童「…去年より5センチも伸びたな。良いことだ、たくましい男子となるんだぞ」
ちび27代「わーい😆😆」
☆★☆
〜そして時は流れ〜
大人嵐童「これより月氏恒例身長測定の儀を執り行う。厚手の上着、履物を脱いだ状態で踏み台に乗れ。次に尺柱に後頭部、背部、臀部、踵部をしっかりとつけ、つま先を30~40度に開いた状態でまっすぐ立て。肩の力を抜いて正面を向き、視線が水平になるよう顎を引け」
大人27代「兄上説明が長うございますそれに測定の儀って一体なn」
大人嵐童「無駄口をたたくな!計るぞ!(測定用横規を勢いよく降ろす)」
大人27代「勢い良すぎる!痛い!」
大人嵐童「無駄口をたたくなと言っている!」
☆
大人嵐童「……去年より0.2センチ伸びているな」
大人27代「細かすぎる」
大人嵐童「僅かでも成長すると言うことは良いことだ。……其方」
大人27代「はい」
大人嵐童「……逞しき当主となるのだぞ」
大人27代「……はい、兄上」
☆
大人27代「今度は兄上の身長を計りましょう!さあさあ測定器へ」
大人嵐童「うむ」
大人27代「はい計りまーす……あれっ兄上、去年より縮んでますよ😊」
大人嵐童「😱😱」
おしまい。
★それ行けUMブラザーズ★
〜さくら、さくらの巻〜
「兄上!桜ですよほぼ満開ですよキレイですよ屋台ですよチョコバナですよお好み焼きですよじゃがバタですよ!」
「秒で花より団子になったな」
「館にも桜はありますが、屋外の陽の下で見る桜並木はまた格別ですな(もぐもぐ)」
「既に全部買ったのか……」
「兄上もお召し上がりになりますか?」
「いらん」
「遠慮なさらず。ほら、チョコバナは二本買いましたからお一つどうぞ」
「……(受け取る)」
「しかし、見事な桜にございますな」
「ああ」
「…またこうして兄上と共に花見ができること、真に嬉しく思います」
「……ああ」
「……」
「……古来より、桜は」
「?」
「古来より桜は、その潔く散る様を武士にたとえられた」
「……兄上」
「散るべきときに散るが、武士の道でありあるべき姿。しかし、私は……」
「……」
「私はこうして生き恥をさらs「ああっ、兄上ご覧くださいあれに見えるは金魚すくい!」
「人の言葉を遮るな馬鹿者!」
「然しながら金魚すくいですぞ兄上!ここは我ら童心に返り、ひと勝負と行きませぬか?」
「ふっ……幼き頃より鍛錬を積みし私が其方に負けると思うか?」
「金魚すくいの鍛錬もしてたんですね兄上まあとにかく参りましょうぞ!」
「望むところ!」
「……兄上」
「なんだ、怖気づいたか」
「違います兄上。先程兄上が言われていた桜の話なのですが…」
「……」
「桜は、散るだけではありませぬ。花が散りし後も桜は生き続け、翌年にはまた美しい花を咲かせます」
「……」
「どうか生きることを恥などと申されますな。命あればこそ、花は幾度でも咲きまする」
「……」
「兄上……」
「……口元に青のりがついた顔で言われても感銘を受けん」
「これはしたり!😆」
「……行くぞ」
「兄上」
「金魚すくい。勝負するのであろう?」
「…………はい、兄上」
「其方には負けはせぬ」
「我とて手加減は致しませぬ!」
「大言を吐いたな、後悔しても遅いぞ」
「兄上こそ!……あ、チョコバナ食べていかないとですね(もぐもぐ)」
「うむ、そうであった(もぐもぐ)」
(食べ終わったあとの棒はちゃんとゴミ袋に捨て、金魚すくい屋台の方に並んで歩いていく兄弟)
(咲き乱れる桜が風に揺れ、静かに花びらを散らしている……)
おしまい。
★それ行け現パロUMブラザーズ★
〜27代当主は大学生!?の巻〜
唐突に思いついた現パロUMブラザーズ。
弟は大学生兼名門剣術道場27代当主。兄も同じく剣術やっていたが惜しくも当主にはなれなかったので別の道を選び、アパートで一人暮らししながらパティシエになるために勉強している←兄上は実は甘いものが好きと言う脈絡の無い想像
当主任命の件で兄弟仲はちょっと微妙になったけど、一時的にお互い距離を置くことで、また、兄に当主の道以外にやりたいことが見つかったため、離れて暮らしているけど兄弟仲はまずまず。
兄はアパートに男一人暮らしだけど部屋はきちんと片付けていて、棚にミニ観葉植物とか飾ったり寝室にアロマポットとか置いたりしている。
大学生の赤髪の弟は、よく兄のアパートを訪ねてはご飯をたかっている(兄は自炊派)。
兄は弟が押しかけてくるたび額に💢が浮かぶのだが、何だかんだ言いつつごいつも馳走している。
弟は実家である本家の屋敷に住んでいるので衣食住に不自由はしていないが、定期的に兄が作ったご飯が食べたくなるらしい。
ご飯を食べながら他愛のないことを話す兄弟。
当主の修行が辛いとかもっと遊びたいとか両立がうまく行かなくて大学単位やばいとか話す弟。
お前が選んだ道だろう弱音を吐くなとか言いながら試作オリジナルスイーツを弟の前に出してあげる兄。
うんこれめちゃ美味いです。当たり前だ。資格試験頑張ってくださいね。……ああ、お前もな。
兄上とまたこうして話せるようになって嬉しいです。
……何?
一時期仲悪くなっちゃって、もう昔みたいに戻れないのかなって思ってたから。
……そうか。
兄上に嫌われてるかと思っちゃいました!
……弟を嫌うはずは無かろう。
……そうですか、本当によかった。
この間嫌な夢を見たんです。兄上と殺し合う夢。
物騒な夢を見るな。
夢なんだから仕方ないでしょう。
……夢の中でも兄上と仲違いしていて、今みたいに仲直りもできなくて、お互い譲れなくて……ついに兄上と斬り合いにまでなっちゃうんです。
時代劇か。
そう、時代劇みたいな感じでしたよ。
てか、兄上の話し方もかなり時代劇ですよね(笑)
お前の「兄上」だって、相当時代劇だ💢
あはは、確かに。
……でも本当に、夢でよかった。
……。
兄上と斬り合いたくないですよ。
弟とも斬り合いたくないものだな。
兄弟ですものね。
ああ……。
兄上、このケーキおかわり下さい。
遠慮と言うものを知らんのか💢
嫌な夢見たから甘いもの食べたいんです。
訳がわからないな……。もう一つだけだぞ。
ありがとうございます、兄上🥰🥰
弟が食べているのはストロベリーソースがたっぷりかかったケーキで、弟は、ストロベリーソースの赤を見ているうちに何かを思い出しそうになる。
兄と赤。
兄の身体にまとわりつく紅い何か。
全身を朱に染め、地に倒れる兄の姿……
急に血の気が失せた弟を心配する兄。
兄の声で正気に戻る弟。
夢なんだ、あれは悪い夢なんだ。
自分に言い聞かせるように心の中で呟き、兄作のケーキを頬張る弟。
その姿を見て微かに口元に微笑みを浮かべる兄。
……そして自分の分のケーキまで弟に食べさせてしまったことに気がつきショックを受ける兄。
お小言を喰らう前に早々に寝室に飛び込む弟。
………平和な光景。
★☆★☆
おまけ。
おいこら泊まるなんて聞いてないぞ!そこは私の寝床だ!💢
終電出ちゃったんです始発で帰りますからおやすみなさ〜い。ぐう。
私の寝床だと言っとるだろうが💢
兄上との同衾は遠慮させてくださいぐうぐう。
するか!!!!💢💢
……ベッドを弟に占領されたので、自分は部屋の隅で寝る優しい兄上なのでした。
おしまい。
★それ行けUMブラザーズ★
〜無名の墓 の巻〜
とこしえに桜舞い散る月氏の館、代々の当主にしか行けぬその場所に、常に美しく清潔に掃き清められた無名の墓が在るという。
一体誰の墓なのか、何をした人物の墓なのかは詳しく伝えられていない。だが、その墓を人目につかぬように護り清めるのは代々の当主の役目と定められていた。
それを制定したのは、勇猛果敢で知られる月氏第27代当主であると言う。
長きに渡る月氏一族の責務を果たし一族の英雄として語り継がれる彼は、世界に安寧をもたらした後、無名の墓標の前でただ一人座して盃を傾けることを好んだ。
27代当主である彼が墓の主と何を語り合っていたのか、その墓が誰の、何という名の者の墓なのか、今となっては知る術はない。
今もその墓は永遠に散らぬ桜の下で、静寂に包まれ佇んでいる。
誰が植えたのか、墓の周りに咲くリンドウの花が風にそよぎ、揺れた。
リンドウの花言葉
「あなたの悲しみに寄り添う」
「誠実」
強き想いを胸に秘め、ただ独り己の信ずる道を進んだあの人に。
記せぬその名を蒼き花に託して。
おわり。