野暮なんて言わずに教えろよ「そんな野暮なことを聞きたいのかね?」
ロナルドくんに捕まり腕を強く握られそこだけ砂になってしまう。反動でジョンを落とさないようにそっと離したが彼は今にも泣き出しそうのんじゃないかって表情で叫ぶ。
「野暮なんて言わず教えろよ!」
大声に殺されながら私はそうなった原因を思い出した。
「ぷーん、恋が成熟する願掛けねぇ?」
それはいつも通り楽しくクソゲー配信をしてる畏怖い吸血鬼ドラドラちゃんがたまたまロナ戦の締切を促すフクマさんに渡されたオータム社のおまじないコラムを見てたんだっけ。
ふむふむ、好きな相手の髪の毛を自分の髪の毛と結んで伸ばすと叶う?ハッハーン?としてると背後から音もなくフクマさんが這い寄ってきた。
「この国ではよくあるポピュラーなおまじないんですよ」
「ヒェッ」
背後からフクマさんが項目の説明をしてくれたが私は砂になって死んだ。
「ヌーーー!」
…そう言えば、ロナルドくん髪伸ばしてたな。
「ロナルドさん、原稿できましたか?」
「アバッポギョウホーーー!」
「ボツですね、メイデンへどうぞ」
銀色の少し伸びた髪に黒い糸が混ざって見えるなんてきっと、疲れてるのだな。
頭に乗せたジョンの小さなお手手が優しく撫でてくれた。
「大丈夫だよジョン」
「ヌン、ヌーヌー?」
若造が片思いしてるのは誰かなんて気になってしょうがない。ヒナイチくんは赤毛だしフクマさんは長すぎる、半田くん?いや彼の髪は青みがかってるしな。
ギルドの誰かだろうか。コユキくんか?
結局ロナルドくんは誰が好きなのか分からず彼の髪を伸ばし続け一ヶ月が経過してしまった。
今日は遅めに帰ってくると事前に連絡を貰ったので味の染み込んだハンバーグシチューを用意して待っていると事務所の入口がが何やら騒がしい、彼が帰ってきたようだ。
「ジョン、一緒にロナルドくんを迎えようか」
「ヌンヌン
「ただいまードラ公ーめしー」
「ロナルドくんおかえぶぇっ臭い!」
「ヌェー!」
「ジョンただいまぁーきょうもかわいいでちゅねぇ」
「待たないかこのクサルド君!」
強烈なニンニク臭とタバコとアルコールでデロンデロンに溶けたような顔でジョンにすり寄っていた。
「私の可愛いジョンに何してくれてんだ酒乱ゴリラ!!!」
急いでジョン抱っこして救助した。
「ご、ごめんなジョン!!」
「ヌンヌンヌ!」
謝りながら器用にソファーベッドに寝てしまったロナルドくんの頭を見るとまだ髪の毛に黒い髪は結ばれたままだった。そんなにその人が好きなのかね?
このワーカーホリックゴリルドは風邪を引かないとはいえさすがに冬至真っ只中に何もしないのは気が滅入るのでフワフワ暖かい重たい毛布をジョンと共同作業で掛けた。
ジョンは疲れたのか寝床に戻ると言ってこの場から離れてしまいこの場には私とロナルドくんだけになったんだよ。落ち着かないモヤモヤを埃を叩くように落とせたらいいのだが…そうもいかないのだ。
実は、君のしてるおまじないとやらはこれだけではないのを知ってるんだよね。…それはそうとロナルドくん手を離してくれないか?痛いんだけど。え、全部話すまでいやだ?ファーー!?