ドラ公だってしてたじゃねぇか君が恋を叶えるために幼稚な行動を隠れてコソコソしていたことなんてバレバレだったし、それに最初はドン引きするはずだったがそれも今となってはジワジワと大波となっていた。
「知ってるとも!君が私を好きなことなんて!」
驚いた顔をした若造に向かって私はどうしようかと考えて考えて、無視しよかと思った。知らないフリして変なおまじないをするのを飽きるまで見てやろうと思っていたとも。
でも、そんなワンパターンじゃ面白くないじゃないか。
私は押してはいけないスイッチを押したくなるような男だぞ?
「君が私を好きになったと知った理由その一」
「その一ってなに!?」
「フクマさんに貰ったこのオータム書店の恋のおまじないの本の内容通り実行しただろ君、私の髪を勝手に使ってしかも無断で棺桶を漁ったとジョンが明言してたぞ」
「ジョン!?って違うフクマさんに貰ったのかお前も!」
棺桶に落ちてたドラルクの髪を勝手に拝借してた所をジョンがバッチリ見てたことをちゃんと報告してたのだ。
「その二、度々熱視線で見つめてくるくせに視線を交わらせない。」
慌てふためくロナルドくんの顔にズイッと近付いた、鼻と鼻が触れ合いキスが出来そうだなコレ。
「ききききき気の所為じゃねぇの?」
「ゴリラじゃなくて猿の生まれ変わりなんじゃないのかロナルくッスナア!?」
肩が砂になるほど力で捕まれ口を噤んだドラルクにロナルドは装填した銀の弾丸を発射させるような視線でさらに黙らせながら早口で捲し立てた。
「なら最後まで言う前に俺から全部言わせろドラ公!」
スゥーッ、ハァー、と浅くも深い深呼吸で空気が変わる合図がした。
「ここじゃ話にならねぇから場所変えるぞ!」
「え、ちょ、ロナルドくん離してスナァ!?ってあれ?ジョンがいない!?」
普段の馬鹿力が嘘のようにロナルドはドラルクを米俵抱きをして走り始めた。ジョンは空気を読んで先に事務所に帰っていた。ロナルドの話が長くなると分かったからだ。
「ジョンなら先に帰った!俺達も帰るぞ」
騒ぐ私と彼は何度も互いにキレながら殺されながらシンヨコの夜が終わらないうちに帰宅した。
何故か土下座してる彼にこう言われた。
「告白するからやり直しさせてください!!」
「ファー!馬鹿正直過ぎないか君!?」
「そもそもお前も同罪だろうがクソ砂!」
土下座をやめて彼の大きな手が私の細い腕を壊さない程度の力で拘束しそのまま歩き始めた。
「てめぇも呪いしてだろうが!?」
ドラルクは目をまん丸に開いた。
「まって、それは記憶にないぞ」
ズンズン、その足は事務所から備品室へ向かってる気がする。
「ひとつ目!料理作る時に手でハートマーク作って美味しくなーれ♡って隠れてやってるとこ見てんだよ!?」
先程の私の真似をしながら彼は恥ずかしそうに私が日頃隠れてやってるソレを指摘したし恥ずか死した。
「す、スナァ!?」
それは恋のおまじないじゃないぞボケルドくん!?しかもバレたら恥ずかしいやつを見てたのか!?
「ふたつめ!俺の毛布隠れて使ってんのも知ってるぞ!!マーキングしてんじゃねぇ!」
ロナルドくんの匂いがついた毛布は安心するからたまに彼が居ない時に使ってることとバレてたのか。
「寒かったから勝手に使わせてもらった!」
「1ヶ月も防虫剤とシャンプーの匂いずっとつくわけないだろ!?可愛いな!?」
「か、可愛いのはあ、当たり前だ!私なのだからね!?」
あれ?これおまじないじゃないとかそんなものじゃなくて。
「みっつめ、ドラ公は俺の事だいすきなんだろ!?」
「ひぇ」
私の秘密の行動の公開処刑じゃないか!?
そんな言葉も言えないぐらい、ロナルドくんの真っ赤になって泣きそうな顔が物語る。
「おれがお前のことが好きになる前から好きなんだろ?」
そうして気が付いたら備品室まで連れていかれ、追い詰められていた。
「…あぁ、ロナルドくんのことが好きで好きでたまらないよ」
抵抗しても無駄に殺されるだけだと白状するとポタポタと何かが落ちてくる。緊張しすぎて汗でも出てきたのかと濡れたそれを拭うと赤い血が滴っていた。
「やべぇ、くそ鼻血出てきた」
「ファー!?」
「はぁはぁ、ドラルク」
「バカヤロウ!?一旦落ち着け!」
「バーカバカ!好きってわかって止まるわけないだろうが!童貞舐めないで下さい!」
ロナルドは荒く鼻血を拭い、そのままドラルクの皮膚の薄く低温の唇を奪った。
「ンッ、や、め…ぁ」
体温の高く分厚く柔いロナルドの唇と重なり合い熱を与えられていくドラルクは所々砂になりかけながらも目を潤ませて赤い狩人服の袖を弱々しく掴んだ。
「まって…ロナ、くん」
チュッ、チュッと触れ合うだけのキスのはずなのに、止まらなくなる。
なし崩しでぐずぐず崩れていく。
「なん、だ…よ」
キスをやめさせて、ドラルクは息を乱しながら告げた。
「三つ目、空白の原稿にハートマークで囲った私の名前をでかでかと書いてたよね?しかも分かりやすく事務所の机の上に…なんで?」
「…察しろ、くそ吸血鬼。」
お前に気付いてもらう為だ、バーカ。
そんな言葉を囁かれたら私は死ぬことを忘れて笑ってしまった。