分かるまで一生かけて殺してやる翌日というか数週間私達はぎくしゃくとした、主にロナルドくんが。
「…ん」
「カンタくんか君は、手だけ出してどうした」
ドラルクに対して喋ることができずに「んっ」ばかりしか言わずにオウオウ?と周りに威嚇したりそれは愉快になのだが・・・。
外で歩いてるときに突然恋人繋ぎをされたり恥ずか死して更に熱の籠もった晴天を閉じ込めた視線に焼き殺され死んだのをきっかけにこうやってカンタくんよろしく無言ながら合図をするようになったが君は人間だよね?語彙力を捨ててゴリラ語に退行するな。
私より大きな手が震えながら触れてくる。壊さないように慎重に繊細な力加減で握ろうとするがやっぱり強すぎて砂になると君は下唇を噛んだ。
今宵の夜は月光が明るく照らされて綺麗で整った造形のが歪む姿まで名画のようにくっきりと切り取った。君の全部が欲しい、人の子ってすぐ死ぬし復活もしないだろ?こんなに綺麗だから拐われそうだ。あの日、告げあってから何度もぐるぐると考えた気持ちも吐き出せずついに私はぽろりと言葉を落としてしまった。
「君を私だけのものにしてしまいたいぐらいに好きなんだけど眷族ならない?なんちゃって」
コツンとロナルドくんの肩へ頭で小突くと鼻声混じりの汚い声がウホッた。
「ンァアア!?ふざけんなよクソ砂!?」
「うぁああドラミングするな!?スナァ」
え、そんなに嫌か!と復活して口を挟むより早く彼の口が開くのが早かった。その間も砂に向かって殴り砂が宙を舞う。フローリングの床に落ちる前に彼の手がギュッと容赦なく潰す、おいやめろ痛い痛い!!やめんかバカ!!
「ウェエエエエン!可愛いことすんじゃねぇよ!嫌じゃねぇのが嫌だぁ!!」
彼は泣いているのか見えないので分からないがそれはもう声色の響きで嫌でもわかる。五歳児とかゴリラでなく一人の男として目覚めたばかりのその感情は己が好かれることなど全く信じてなかった。なけなしのオータム出版の恋のおまじない本(絶対這い寄る何かのいわくつき)にすがりつくレベルでヤベー執着心。それを本人が思うよりもっとずっと甘くなく、優しくもない執着になってたのだろう。私にとっては小手先程の言葉はもはや劇物だったのだと後になって理解する。
「てめぇはとっくに俺の物だし死ぬまでずっと一緒にいるのに何心配してんだよ!?」
ようやく復活できたが彼の腕の中に閉じ込められ身動きが取れない。間近で綺麗なサファイアの瞳から溶けて流れる大粒真珠の涙がぽたぽたと彫刻で彫られた石像の様に洗礼された美しい肌を伝い私の肩を濡らした。
「ロ、ロナルドくん?ちょ、ちょっとおちつ」
「分かるまで一生かけて殺してやる。じっくりと時間を掛けて何回でもお前が分かるまで言うぞ!忘れんじゃねぇぞ!」
それって最高の殺し文句で、でもそれって君が死ぬまでって精々140歳まで生きてくれないと困る。なんて言葉を言うより早く私も大分焼きが回ってるようだ。
「もう、結婚しよルドくん」
「え」
「言わないでおこうと思ったけど君の一生どころか全てが欲しいのだよ。少なくとも140歳まで長生きしてくれよ」
その聖なる銀を彷彿する髪は命が削れようが触れたくなるし、一生見るとこが叶わい晴天を押し込めたサファイアの瞳はこの身を焼き殺してでも見つめていたい、狩人服に散りばめられた私たち吸血鬼を寄り付かせないように施されたそれも君が君であるためで愛おしくて他の誰でもない私だけの物にしていたい。そう全部言う前に彼はまた泣いちゃった。今度は困ったような顔で。
「う、うるせぇ…」
「やっと冷静になった?」
「婚姻届出すぞぉ、ぐず」
歩みを再開して泣き顔のまま市役所に行くな、せめてハンカチで拭ってマシな顔にしないと駄目だ。
やはり黙っているとイケメンだな君、だが喋らないとやはり面白くないと少し雑に拭き終えると精悍な顔立ちに戻った。
「え、まて若造、おいちょ、殺すな、ひっぱるな!?」
手を握られ、汗ばんでいるのかスルりと抜け出せそうなのに馬鹿力で抑え込まれるし、
「師匠たち今日も元気っすね!」
「早くいけぇ」
死のゲームとデメキンに見送られ、なんか生暖かい目線だった死にたい。
しかも市役所と逆方向だし、どこに向かうんだ!?
「うるせぇ!!!バーカ!!さっきも言っただろうが!それにショットたちに頼んで証人してもらったりしたからまずはギルドのみんなに挨拶が先なんだよ!!」
「ファー!?な、おま、私が言わなかったらどうしてたんだ!?」
「殺して脅す、了承得るまで殺す!」
「ヒッ!?発想がヤンデレルドやめろ!?ジョン!助けて!」
「ヌー!」
最強の私の騎士がロナルドくんの足にしがみつく、よしこれで動けないぞ!
「な!?ずりぃぞ!メビヤツも協力してくれ!」
「ビビビ!」
さっき見送りに居なかったと思ったら着いてきたのか!?間一髪で避けたソレは勢いよく発射され近くの標識を丸焦げに。
おいやめろ!?本気で殺すな!?
「街中で打つなバカ!?ああーーもう!行けばいいんだろ!?」
結局二人でギルドの面々に挨拶したりカメ谷に突撃されたりフクマさんも原稿を取りに来たついでに特別企画をしたりなんやかんやして翌日の新聞の一面に乗るのだが、ドラルクはロナルドの宣言通り忘れられず本当に一生かけて140歳まで気合いで生きながらえ理解らせられたのであった。
ヌン完