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    しおり
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    しおり
    いつか笑って話せるようにけんかの後の嫌がらせ弁当土曜日の朝ご飯伊達男たちの来襲けんかの後の嫌がらせ弁当
    「ケンカでもしたんですか?」
     弁当箱を前に固まった俺に、同僚が声をかけてきた。面白そうにしているのが腹立たしいが、図星も図星なものだから言い返せもしない。
     結婚してからずっと――と言っても、ここ一年足らずだが――使っている、俺の手のひらほどの大きさのプラスチックの箱。
     毎日、彼女が午後からのエネルギーを詰め込んでくれているはずのそれは、今日に限って、真っ白な雪原のようだった。
     おかずなし、ふりかけなし、梅干しなし。見渡す限りの白米。
     みっちりと詰め込まれた米粒から圧力を感じるのは、ただの俺の考えすぎ……だと、思いたい。
    「言っておきますが、僕のおかずはあげませんよ」
    「いや……いらん。このまま食う」
     同僚の弁当は、たしか彼の兄が作っていると聞いている。なよっちい外見に似合わず、中身は肉メインのガッツリ系だ。
    「で、ケンカの原因は?」
    「いや、その、ケンカというよりは」
    「え、長谷部さんお弁当どうしたの。奥さんとケンカ?」
     ひょい、と覗き込んできた先輩の女性が、素っ頓狂な声で小さく叫ぶ。それでも、いつもよりボリュームを抑えてくれているのがありがたい。お局と言われつつも、他の女性陣からも慕われている彼女の気遣いには、中途で入社した当時から何度も助けられている。
    「まあ、少し」
    「あらー、懐かしい。うちもダンナにやったっけなぁ、昔」
     うん十年も前だけどと、彼女にぱん、と威勢よく背を叩かれる。
    「奥さん専業でしょ? いつも美味しそうなの作ってくれてるんだから、今日くらいはご飯だけでがんばったら? 何があったかは知らないけど」
     このご時世にねえ、いろいろ大変でしょ、世間の目とか。そう言った先輩の言葉に続けて、同僚が忌々しいほど図星を突いてきた。
    「仕方がないですよ、この人に家事の分担なんてできっこありません。頭下げて頼んだ分、合格点ですけどね」
    「手厳しいねぇ、左文字さんも」
    「そりゃあね、僕らもお世話になってますから。この人のお連れ合いには」
    「えー、意外。長谷部さん奥さんの話ぜんぜんしないんだもん、想像するしかなくってさ」
     でも、とこちらに向き直り、先輩がにやりと笑う。
    「こないだのホワイトデー、奥さんでしょう? 準備したの」
    「……分かりますか」
    「だって、去年ゴ○ィバだった人から、いきなり……何ていったっけ、レ○ニダス? あまりメジャーじゃないお店のもらったらねえ。本当に結婚したんだねーってみんなで言ってたもの」
     チョイスするブランドの変遷だけで、そこまで判断できるものなのかと俺は頭を抱えた。女性陣の洞察力、恐るべし。
     大きくはない部署の女性陣に配るお返しだ、量もたかがしれている。去年まではとりあえず知っている有名ブランドのものを馬鹿の一つ覚えのように買っていたが、だいぶ年上の上司とそっくり被るわ、金銭的にも少し痛いわで。
     頭をひねっていた俺を見かねて彼女が準備してくれたブランドのものは確かに美味く、値段も少しは抑えられたのだった。
    「……彼女が気に入ってる店のなんです。だから」
    「あはは、いろいろごちそうさま。でも、ホントに美味しかったわよお、あのヘーゼルナッツのホワイトチョコのやつとか。後で私もお店調べて買ったんだけど、娘たちからママこれ美味しいどうしたのーってすごく好評でさ」
     がんばって食べてね、と言い残して、先輩は他の女子社員とのランチ会へ出かけていった。たぶん会話のネタにされるんだろうが、そんなことはとりあえずどうでもいい。
    「……で、ケンカの原因は?」
     問題は、しぶとく残っているこの同僚の態度である。ちゃかすような口振りとは裏腹に、その奥で真剣に俺たち夫婦の仲を心配しているような。
     俺や彼女の旧知たちが時折見せるこうした態度は、無性に俺を萎縮させる。厚意しかないと知っていても、どこかで責められているように感じてしまう己の心が不可解で、どうにもこうにも。
    「…………その、何というか」
     言い争いをしたわけじゃない、手も足もお互い出していない。ただ、俺が彼女の地雷を少し踏み抜いた……らしいということだけ。
    「そういえば気になってたんですけどね。家庭に入ってって頼んだ理由、本当に家事だけですか」
    「……」
     どうして今日はこう、弁当ひとつで自分の人間性に向き合わされなきゃならんのか。左手の薬指に光る指輪をさすり、俺は大きなため息をついた。
    「……職場に、女が彼女だけで」
    「うっわぁ……なんというか、小さい」
    「うるさい、自覚はしてる」
     都内とはいえ、ちょっと郊外でメーカーの事務方と聞いて、予想はできたはずなんだ。迎えに行って牽制――というのも少し違うが――してやりたかったが、あのころは俺も仕事が忙しくてそんな余裕はなかったし。
    「ただでさえ職場の紅一点で可愛がられて、その上彼女もそんな扱いには甘えず媚びず、真面目に仕事をこなしていたと……」
    「ああ、ますます可愛がられるやつですね、おじさんたちに」
     新卒として入社以来、彼女もそうして仕事でも一定の評価を得ていたと聞いていた。退職のときは、ずいぶんと惜しまれていたらしいということも。
     家にいてほしい、そう言って頭を下げた俺に、彼女は仕方がないなぁと、まるで予想していたかのように笑った。そうして今まで自らの力で築いた評価もキャリアも、あっさりと手放して。
     どうして、とは今まで聞けずじまいだ。俺が豹変しない可能性にも、将来不利になる可能性にも、考えが至らないほどあいつの性格は子供じゃないはずなのに。
     彼女から寄せられる無限大の信頼、それをどれだけ俺は受け止められているんだろう。けれど、逃げ出してしまったら本当に取り返しのつかないことになることも分かっている。
     こうして、妻から未来の選択肢を奪った張本人であるはずの俺は、あのときの引け目をこうして引きずったまま。今から白米だけで、午後を乗り切る羽目になっている。
    「ったく、世話の焼ける男ですねぇ、いつまで経っても」
     いつまで経っても言われても、お前との付き合いなんて、社会人になってからのここ数年程度だろうが。そんなことは、口にしないほうがいいんだろう。
    「お宅のトイレットペーパーが、予備分まで切れていた記憶は?」
    「……ない」
    「あなたの今着ているジャケットの袖ボタン、一個付け直してあるのには気付いてます?」
     慌てて袖口を確かめると、確かにひとつだけ、ボタンの糸が他と少し違う。待ってくれ、取れかけていたことすら、俺はぜんぜん気付かなかったぞ。
     たぶん、こういう跡は探せばいくらでも出てくるんだろう。ボタンだけじゃなく、いつもアイロンのかけられたワイシャツや、いつの間にかクリーニングに出されては戻っているスーツやコートにも。
     彼女の今の仕事が何か、理解していなかったわけじゃないけれど。気にかけているようで、その実何も分かっていなかったわけか、俺は。
     マメですよねぇ、と同僚が笑う。
    「結局、あなたたち似たもの夫婦なんですよ、ワーカホリックとワーカホリックで。いいんじゃないですか? お互いが自分の仕事にプライド持って、無理しない程度にお仕事してるんでしょ」
     ぽん、と背を叩かれ、左文字はオフィスの片隅に設置された休憩スペースを指さした。
    「とりあえず、レンジ行ってきなさい。温めるだけでだいぶ違いますよ」
    「……そうする」
     悠々と隣の席で弁当を開くな、腹が減る。慌てて立ち上がって向かったレンジの前で蓋を開くと、気だるげな関西弁とともにさらなる野次馬がやってきた。
    「おっ、なんやなんや、ケンカか?」
    「…………まあ、少し」
    「おもろすぎるわ、写真撮らせてー。うちのチビたちに見せたろ」
     眼鏡を押し上げ、面白そうにぱしゃりと写真を撮って。来先輩は何があったかは知らんけど、と笑う。
    「ま、詰めてくれるだけ傷は浅いやろ。残したりしたら、分からんけどな」
     分かっているなと脅迫するような視線に、俺は無言でうなずいた。コンビニでふりかけでも買ってこようか、いや、そういうものに頼るのもNGだろうか。
     弁当箱をレンジにつっこみ、つまみをひねる。旧式の機械からは、ブゥンという音と、そして……
    「……なんか、ええ匂いせえへん?」
     白米の香りに混じって、確かに感じるのは海藻と醤油の匂いだった。チン、という音が響いた瞬間に蓋を開け、席へと急ぐ。
    「まさか……」
     真っ白な米に箸を入れて慎重に掘り起こすと海苔が現れ、そしてさらにその下には――
    「……その、今日は、定時で」
    「おー、帰り帰り」
    「そうしなさいそうしなさい」
     甘辛酸っぱいタレにからめた鶏の唐揚げ。
     おかか醤油で和えたブロッコリー。
     ごま油の風味が効いた、蓮根のきんぴら。
     大豆や揚げ、にんじんもたっぷり入ったひじきの煮物。
     そして、黄金色に葱の緑が鮮やかな卵焼き。
     雪原の下、次々と発掘されたおかずは、どれもこれもが俺の好物だった。
     少し食べにくいけれど、底で蒸された料理はどれも白飯と相性が抜群で。ひじきの汁が染みた米を煮物ごと口に放り込む。
    「卵焼き二個あるじゃないですか、中身は?」
    「葱とじゃこだ。あとはチーズ」
    「取り引きしません? さつまいもとリンゴの甘煮と。お小夜の初めての料理ですよ、価値としてはどっこいどっこいです」
    「小夜……ああ、あの弟か。今いくつだ?」
    「年中です。ほらこれ、お誕生日会の写真で」
    「おー、大きゅうなったなぁ、うちの子らと同じやったっけ?」
     ぐいぐいと押しつけられたスマホ画面には、転職前から何度か会ったことのある同僚の弟を、同僚とその兄が取り合うように囲んでいる。
    「ええなぁ、俺対価がコンビニ飯しかあらへん……」
     というか、うちの同僚たちはなぜ、妻の手料理にこうも執念を燃やすんだろうか。強奪される前に、俺は急いで最後の唐揚げを口に放り込んだ。

     ここまで静かにリビングのドアを開けることが、かつてあっただろうか。そっと顔をのぞかせると、彼女は味噌のタッパーにスプーンを突っ込んでいるところだった。
    「……ただいま」
    「あら、おかえりー。定時で帰れたんだ、今日。連絡してくれたらよかったのに」
     昨夜、ほんの一瞬だけ張りつめていた空気は今はなく、何事もなかったかのように妻が笑う。慌てた俺が不格好に取り出した空の弁当箱の中で、箸がからりと音を立てた。
    「その……弁当、美味かった」
    「……そっか」
     カチン、とガスの火を落とす音がする。こちらに来て風呂敷包みを受け取ってうつむいた彼女の身体が、だんだんとわずかに震え始めた。
    「えっ、あ……」
     まさか泣いているのか。慌てて細い肩を掴むと、こらえきれない笑い声が彼女の口から飛び出した。
    「……おい」
    「ごめんごめん。あー、おかしい」
     かたん、と食卓に弁当箱を置いて、こちらを見上げる顔。子供に言い聞かすような声が、俺の心に沁みていく。
    「……あのね、私ちゃんと幸せだよ。たぶん、あなたが思っている以上には」
     はあ、とどこか呆れたようにため息をついて、彼女は俺の胸に頭をもたせかけた。腕に添えられた彼女の指に、静かに力がこもっていく。
    「第一さ、結婚の報告したら、おめでとうの一言に続けて、私の話なにも聞かずに、もったいないだの時短勤務の制度あるからだの上司が言ってくる会社だよ? 長く働く気なんてなかったもの、最初から」
     年齢不相応に落ち着き、理知的な態度を崩さない。そんな彼女の普段と変わらない口調の下からは、静かな怒りの炎が燃えていた。
     そんな話聞いていないぞ、口から出掛かった失言を、慌てて押さえつける。話さなかったということは、俺にそれを聞く余裕がないと彼女が判断したからだろう。プロポーズ前までは、あまり彼女の状況を気にかけてもいられなかったわけだし。
    「……ちょっとはさ、うぬぼれてもいいんじゃない? 頼んできたのがあなたじゃなかったら、ほっぺたひっぱたいてそのまま別れてるよ、私」
     つないだ手が、優しく揺らされる。
    「あなたの性格だって知ってるし、この人は大丈夫だって、そう分かってたから……」
    「――なぜ」
     背伸びをした妻の指が、俺の後頭部に伸びる。髪をかき回し、幸せそうな顔がねだるように目を閉じた。
     小さくキスをして、開いた瞼の下にあった視線は――
    「ちゃんと分かってるもの。あなたのことはなんだって……だからね」
     彼女の口から出るのは、長谷部という学生時代と変わらない呼び名だった。
    「私の気持ち置いてけぼりなまま、一人で抱え込まないでよ」
     ああ、まただ。出会ったときからずっと、名字で呼び捨てにされると、俺はどうしても彼女に逆らえない。
     嫌な感じでは全くないのに、むしろ懐かしさと愛おしさを感じるほどなのに、どうしても――魂に刷り込まれたように、背筋が伸びる。
    「ほら、手洗って着替えておいで。ご飯もうすぐ炊けるから」
     ぽん、と背を優しく叩かれて、彼女の顔がふわりとほころぶ。ぱたぱたと音を立てるスリッパが、台所へと向かっていく。
    「おかずの数、いつもより多かったでしょ? 同じメニューになっちゃうけど、いいよね?」
    「ああ、もちろん。何度食っても美味いのは変わらん」
     炊飯器の電子音、しゃもじを濡らす水道の音。彼女が今ほんの少しだけ見せた、俺の内側のさらに奥をのぞき込むような視線が、幸せな心を少しだけもやつかせた。
     一人で抱え込むな、何度もそう諭されたものだが。俺はまだずっと、誰にも――彼女にすら、どうしても言えずにいることがあった。
    『長谷部、くんか。初めまして? でいい?』
    『あ? ああ、初めましてだと思うぞ。会ったことあったか?』
    『あー……うん、ごめん。気にしないで』
     大学で出会ったあの春の日。初めて言葉を交わした瞬間の、彼女の顔によぎった表情。
     あの、輝いていた歓喜の光が陰った理由を。
     一瞬だけ絶望にゆがんだ表情の意味を。
     俺はあれからずっと、何年も問いただすことができないままでいる。
    土曜日の朝ご飯
     金曜日、翌日の予定は特になく、お互いそれなりに疲れてはいても疲労困憊というほどでもなく。そんな夜に夫婦がすることといえば、まあ、そういうことで。
     その翌朝、目が覚めたときには日はとうに高く、まだ彼女は眠っている。
     じわじわと妻の首の下から腕を引き抜き、そっとベッドから出て、布団をかけ直してやる。少しだけ覚醒したのか、眉根を寄せた彼女の唇が不服そうに動いた。
    「…………」
     あー、戻りたい。今すぐ布団に戻りたい。起こすなりしてもう一度……は我慢するにせよ、この誘惑はまずい。
     ぐいぐいと引っ張られる後ろ髪をどうにか振り切り、身支度を整えて台所へ。時刻は九時半、三十分ほどあれば、どうにかやっつけられるだろうか。
     普段何もできない分せめて休みの日ぐらいはと、慣れない家事を主体的にやるようにして、早一年。一人暮らしの経験を、これほどありがたいと思ったことはない。
     とはいえ、最初のころは張り切りすぎて醜態をさらしたものだったが……さて今日はどうするかと、冷蔵庫の在庫をチェックする。
     野菜室に残されていたキャベツは、昨晩のカキフライの名残だ。使ってしまっていいものか、少し迷いつつ取り出し、ざくざくと刻んで鍋に入れる。
     ラップでくるんだタマネギは、冷蔵庫でしっかり冷やされている。こまめに研がれた包丁を使えば、目にしみることもない。使いかけの人参もついでに切って一緒にキャベツの上に放り込み、ひたひたの水を加える。
     量が多い気がするが、夕飯なりに使い回せばいいだろう。コンロに火をつけて、パンに取りかかる。バターを少し切り出して、小皿に入れてレンジに突っ込む。ワット数は低めに、設定時間は二十秒もあれば十分だろうか。
     食パンを四枚、ハムを適量、とろけるチーズに、ケチャップとマスタード。材料を取り出していると、レンジがピーと音を立てた。
     そうしてやわらかくしたバターをパンの片側に塗り、次にケチャップとマスタードと、思いつきでドライのバジルとオレガノをもう片側にふりかけてナイフで混ぜつつ広げて、バターの面を外側にしてハムとチーズを挟んでおく。ホットサンドメーカーに並べておけば、こちらの準備は終わりだ。
     飲み物は、コーヒーメーカーに二人分の粉と、分量よりだいぶ少な目の水を。スイッチを入れれば、後は機械にまかせればいい。
     カタカタと音を立てる鍋のふたを取り、味付けはコンソメと胡椒で。これでスープはいいだろう。
     ホットサンドメーカーのコンセントを入れれば、ほぼ準備は終わりだ。彼女が起きるまでに食卓を整えようかと、冷蔵庫を開ける。
    「っと」
     軽い衝撃を肩に感じて振り返る。朝日に照らされていたのは、パジャマ姿でふにゃふにゃと笑う妻の姿だった。
    「……おはよう」
    「んー、おはよぉ」
     なんだこれは、女神か。
     俺の背に額を押しつけて甘える仕草に、動揺を悟られないように声をかける。眠そうにしょぼしょぼとした目が、鍋をのぞき込んだ。
     ポトフ? みたいなもの。そんな会話を交わし、少し考え込んだ彼女が横から冷蔵庫に手を突っ込む。そうして取り出されたのは、ウィンナーが入ったタッパーだった。
    「入れちゃおうか、これも」
     賞味期限は週明けとのことで、早めに使い切りたいらしい。牛乳のパックを指にひっかけて取り出しつつ、一緒にそいつを受け取る。
    「ああ。やっておくから、顔洗ってこい」
    「ん」
     余熱の終わったホットサンドメーカーの蓋を閉じ、ぎゅっとパンを押しつぶしてストッパーをかける。ぱたぱたと洗面所へ向かっていく足音に、俺はほっと息をついた。
     少し大きいパジャマの襟元からは夜の名残だのなんだのがちらりと見え隠れし、ほんのりと赤い目元は、眠気のせいか普段よりやわらかくて。
     目の毒にもほどがあるとため息をついていると、タンクが空になったコーヒーメーカーから、ぼこぼこという音が届く。
     その音が静かになったところで、スイッチは切らずに一度サーバーを下ろす。牛乳を二人分のラインまでどぶどぶと注ぎ、また元の保温ヒーターの上へと戻した。
     安いコーヒーメーカーは、結婚する前から彼女が使っているものだ。老舗メーカーの意地なのか、四千円未満という値段にしては味はよく、使い勝手も申し分ない。ただし保温機能には容赦がなく、少し放置すればやけどしそうなほど熱いコーヒーを飲むことになる。
     それを逆手に取れば、冷たいミルクをたっぷり入れてぬるくなったカフェオレを、ちょうどいい具合に温めることも可能なわけで。横着? 何とでも言え。
     じゅうじゅうといいだしたホットサンドを横目に、スープを再度温める。ウィンナーを二本入れて、再沸騰直前に火を止めれば皮が破裂することもない。
     ホットサンドはもう少しで完了する、カフェオレはそろそろ保温スイッチを切るべきだろうか。なにか他にすることは……
    「ホットサンド、ナイフとフォークでいいよね?」
     その声に、俺ははっと振り返った。洗面所から戻り、さっきよりも覚醒した顔の彼女が食器棚をのぞき込んでいる。
     しまった、テーブルのセッティングをしようと思ったまま忘れていた。
    「すまん、頼む」
     どうやら、今日も自己採点は百点にはほど遠い。とはいえ、この時点で俺だけで全部こなすのは得策ではないのも分かっているわけで。
     ケチャップとマスタード、ドライハーブで味付けをした、ハムチーズのホットサンド。野菜とウィンナーのコンソメスープ。濃いめのコーヒーにミルクをたっぷり加えた、彼女好みの甘くないカフェオレ。
    「残ってたキャベツと、使いかけだったタマネギと人参使ったぞ」
    「ん、ありがとう。中途半端に残ってたからちょうどよかった」
     いただきますと手を合わせ、カフェオレを一口。カチカチとカトラリーが音を立て、こんがりと焼けたパンの間からチーズがとろりとあふれ出す。
    「あ、これ……オレガノ入れた? ちゃんとしたピザソースみたい」
    「ああ、あとバジルも」
    「やっぱり。うん、美味しい」
     美味そうにホットサンドを頬張る彼女の目元が、眠気とは別の理由でゆるんでいる。その笑顔に、俺は小さく安堵の息をついた。
    「今日どうする?」
    「んー、とりあえず洗濯かなぁ」
     洗濯か、そうつぶやいてベランダの外を見れば、昨日の春雨は降り止んで晴れ間が広がっている。その光景に油断して口からぽつりと転がり出たのは、いっさい脳味噌を経由しなかった単語だった。
    「……シーツ、洗わないとな」
     その一言に返答はないまま、彼女の頬がみるみるうちに赤く染まっていく。なんだ、どうしたといぶかしがった瞬間、思い当たったのは、煩悩にまみれた昨夜の行為あれこれで。
     いや、違う、そういう意味で言ったんじゃない。そう弁解しようにも、時すでに遅く。ぐ、と言葉に詰まった彼女の目が、恨めしそうに俺をにらみつける。
    「あのねぇ」
    「……すみませんでした」
     じっとりとした彼女の視線に、俺は素直に頭を下げたのだった。
    伊達男たちの来襲
     室内の人口密度が高い。帰った瞬間、玄関を見るまでもなく俺はそれを察していた。
     履き古されたごついブーツ、見るからに高級そうな手入れの行き届いた革靴、蛍光色のラインが入った流行りのスニーカー、まだ新しく見えるローファー。見慣れない靴が、玄関のたたきに四足並んでいる。
     ただいま、と呼びかければ、おかえりなさいという妻の声。ここまでは、いつもと変わらない。普段と違うのは、
    「あ、長谷部くんおかえりー」
    「おー、お疲れさん。すまんが先に始めてるぞ」
     そんな男どもの声が、リビングから聞こえてくることだった。
     廊下には、でかい年代物のスーツケースが放置されている。べたべたと何枚ものシールタグが貼り付けられたままのそれは、持ち主曰く「ボロっちくしておくとスリ連中に狙われにくいのさ」とのことで。
     ダイニングの卓上からは、ニンニクと醤油の香ばしい匂いが漂う。メインは牛の切り落としと大根の鍋で、副菜は水菜とがんもの煮浸し、カボチャのカレーソテー、蛇腹に切ったきゅうりの中華漬け。
     どれもこれも普段から食卓にあがるおかずだが、いつもより一品ほど多い。理由のひとつは、それらをつまみにビールを空けている男二人、そしてもうひとつは、台所で妻を手伝うにぎやかな声にある。
    「棚の場所分かる? 大丈夫?」
    「へーきへーき」
    「だいたいどこの家も、しまってる場所は変わらんだろう」
     俺の親戚の廣光に、近所の花屋の三男坊、そして大学時代の先輩と同期。どういう繋がりだか知らないが、こいつらは揃ってちょくちょくうちに飯を食いに来る。海外を渡り歩く、五条先輩の帰国を口実に。
     なにせ四人の内二人はしっかり食べ盛り、小学生と中学生だ。それなりに量を作っておかないと、瞬く間に食卓が刈り尽くされる。
    「手伝うか?」
    「定員オーバー。いいから座ってて」
     台所の入り口から顔を出しただけでけんもほろろに追い出され、諦めて食卓に着いた。渡されたグラスに、勝手に先輩がぽこぽことビールを注いでいく。
    「まーまー、ここは坊たちに任せようじゃないか。ほれ、かんぱーい」
     年の瀬が差し迫った真冬でも、暖房の効いた室内で食べる中華風漬けきゅうりと冷えたビールはやはり美味い。仕事上がりであれば、なおさらだ。
    「飯食いに来るなら、それなりの対価ってもんがあるでしょう」
     きゅうりに絡んだラー油を炭酸と苦みで洗い流して憎まれ口を叩けば、年齢不詳の童顔先輩は答えをはぐらかすように笑う。
    「いやぁ、そりゃもちろん――」
    「手伝いと皿洗いの労働力」
    「俺も!! あ、うちの兄貴からクッキーも預かってきてる!」
     俺の声は、どうやら台所の無関係な客まで飛んだらしい。手を泡まみれにした廣光とふきんと皿を持った太鼓鐘が、いたずらそうに俺を見て笑う。
    「誰が未成年から要求するか、このおじさんたちの話だ」
    「あーあー、分かった分かった。ほれ」
     ぐい、と無造作に差し出された袋から出てきた箱には、Nの文字を使ったロゴがプリントされている。
    「トランジットがブリュッセルだったからな。買ってきたぜ、彼女が気に入ってたチョコ」
     ベルギー王室御用達、しかも日本ではバレンタインシーズンの催事場でしか買えないブランド。そんなものを持ち出されては、ぐうの音も出ない。
    「彼女が好きなお店の和栗のモンブラン、デザートに買ってきたから。あと、うちのキッシュも預かってきたから明日のブランチにでも食べなよ」
    「ああ、あのメレンゲのか、栗がめちゃくちゃ濃いやつ。なんだ光坊、途中下車してあそこまで往復したのか?」
    「ううん、般若くんの仕入れに小豆くんが車出してくれたから、ついでに乗せてもらったんだよ。近く通ったから寄ってもらってね」
     吉祥寺のはずれで長船が経営している小さなカフェバーは、店員のほとんどがこいつの身内である。そういえば、今日は定休日だったか。
    「あーそうそう、ちょうどいい、あっちのスーパーで美味い白も買ってきたぜ、あず坊のキッシュと合うだろ。ああ、光坊には後でな、にゃー坊からもリクエストきてたし」
    「ありがとう、般若くんが喜ぶよ。なんなら明日来るんだし、閉店後にでも開けようか?」
     あいつの好きなチョコレートにケーキ、そして台所の手伝い。俺宛の土産はほぼ皆無だが、まあ、それでいいんだ。
    「そうだ、忘れないうちに。ざっくりだけど材料費四人分ね。彼女、前に渡したときちょっと困ってたからさ」
    「買い出しの荷物持ちは貞坊と廣坊にまかせちまったんだが、あいつらに財布出させる訳ないしなぁ」
     遠慮なく追加で開けたビールを、先輩がぐいっとあおる。こういうテンションは、昔からこの人はいっさい変わらない。
     お互い気持ちよく飲むために、いろいろな精算は頭がまだまともな内に。学生時代からの暗黙の了解通りに、皿の陰で渡された封筒をテーブルの背後にある引き出しにしまう。
    「こっちはもうちょっとだけだし、みっちゃんたちと話してきなって」
    「あら、大丈夫? じゃあお言葉に甘えて」
     若人たちに台所を追われ、間一髪のところでダイニングに来た彼女にばれないように、でかいほうの客二人に目礼する。素知らぬ顔でアルコールを飲み込み、にんにく醤油のしみた熱い大根を口に放り込んだ。
    「そうしたほうがいい、酒の入ったそいつらを長谷部一人に任せるのも気の毒だ」
    「おいおーい、すいぶんな言いぐさだな、からぼー」
     酒の入った先輩の口からは、いつもと違う廣光の呼び名。それをちょっと咎めるような長船の視線と、小さく飛ばされた五条先輩の名前にはかすりもしない鳥の名前。
     そして、それに見て見ぬ振りを決め込む俺と、ほんのちょっとだけ困ったように眉尻を下げる妻の顔。微妙な均衡は、先輩が噛み砕くきゅうりの音にバランスを取り戻す。
    「いやー、やっぱりこの味だよこの味。この大根ときゅうりが無性に食いたくてなぁ」
    「あらありがと、普通のおかずなんだけどね、我が家じゃ」
    「あっちじゃ作ろうにも作れないもんね。昔よりは手に入りやすくなってても、煮物向けの大根なんてなかなかないでしょ」
    「だなぁ。醤油はその辺のスーパーで売ってるんだが、野菜がなかなか……きゅうりなんてあれだぞ、細いへちまだぞ見た目が。蛇腹なんて無理だ無理」
    「えー、ぶっとい!! ヨーロッパすげぇ!」
     終わったー、と布巾を干しながらリビングに駆け込む太鼓鐘と、それに続く廣光。そのきゅうり俺も手伝ったんだぜ、という元気な声に、長船が美味しいよとちびっ子のくせっ毛をかき混ぜた。
    「お疲れさま、ご飯炊けてるからセルフでね」
     はーい、と茶碗片手に炊飯器へと走る十代男子二人が食卓につけば、おかずたちが瞬く間に量を減らしていく。
    「国永、かぼちゃの皿取ってくれ」
    「ほいほいっと。ちょっと待ってくれ、俺も食うから」
     蒸し焼きにされて煮くずれたやわらかいかぼちゃを口に放り込み、美味いと先輩が叫ぶ。そりゃ美味かろう、カレーのスパイスと塩気の行き渡った甘い玉ねぎとかぼちゃは絶品だし、俺だって好物だ。
    「ほんっとうに、相変わらずよく食べるよね、その細さで」
     食べさせがいがあるとにこにこ笑う妻は、先輩相手に敬語を使うことをある日からすっぱりとやめていた。憑き物が落ちたようなしゃべり方には、俺も不思議と違和感は覚えずにいる。
    「仕方がないだろう、俺たち全員、この味に慣らされすぎてるんだよ、舌が」
     何でもないように先輩が言った言葉が、少しだけ引っかかる。
     それでも、学生のころにそんなに食べる機会があったのかなんて、俺が聞けるはずもない。それを尋ねても、彼女を困らせるだけだと分かっている。
    「いやもうな、日本人ってことで、日本食のレストランに行くかって誘われたりもするんだが……寿司もいいんだ、ちゃんとした店ならちゃんと美味いんだよ。ただ、本当に食いたいもんがなぁ」
     遠い目、とはまさにこのことか。はあ、とため息をついた先輩が、水菜とがんもどきを美味そうにほおばった。
    「海外暮らしも長いが、味噌汁と生卵入りの納豆ご飯の幻影がな、こうな」
    「まぁね、味噌汁はインスタントでごまかせてもね。無理だよね、卵かけご飯や納豆なんて」
     実家から来てたけど、少し持ってく? 税関で危険物扱いされそうだからやめとく。
     そんな馬鹿話をBGMに、ホームパーティーの夜は更けていった。
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    2022/08/13 16:53:00

    いつか笑って話せるように

    イベントで掲示するサンプルとして、既刊の冒頭or全文をWebに上げています。
    一部の固有名詞をちょっといじったり横組み用に編集はしていますが、オンライン用に改行増やしたりするのは諦めました、読みにくいでしょうがご容赦ください。ふりがなの設定は時間を見つけて加えていく予定です。

    いつか笑って話せるように
    発行:2020年8月30日

    長谷部×女審神者
    ・転生現パロ夫婦本。記憶なし長谷部×記憶あり主
    ・モブとの会話
    ・基本的に、長谷部が主に敬語じゃない
    ・ほんのりとした、匂わせる程度の死ネタ

    「お前が見ているのは俺なのか、それとも俺の内側にいる別の誰かなのか」
    「教えてくれ、お前は何を知っているんだ、俺とお前はいったい何だったんだ」

     本丸の記憶が戻らないまま、主と出会い、恋をし、結婚した長谷部。
     妻と自分、そして周囲の友人たちとの間に横たわる、どうしても埋まらない“何か”を追い求めながらも、日常は穏やかに過ぎていく――
     手探りで歩む二人の日々を、日々の食卓とともに描く十三章。

    「信じたいんだ。記憶がなくても、また好きになってくれた彼のこと……思い出してくれなくても、ちゃんと好きになれた私のことも」

    文庫・224ページ
    表紙:藤村百さん
    イベント頒布価格:900円
    サンプル掲載範囲:冒頭三話分
    #へしさに #サンプル #現パロ

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    • 食欲礼賛 総集編イベントで掲示するサンプルとして、既刊の冒頭or全文をWebに上げています。
      一部の固有名詞をちょっといじったり横組み用に編集はしていますが、オンライン用に改行増やしたりするのは諦めました、読みにくいでしょうがご容赦ください。ふりがなの設定は時間を見つけて加えていく予定です。

      食欲礼賛 総集編
      発行:2019年10月13日
      初出:2016年3月13日(『食欲礼賛』)、2017年3月20日(『続 食欲礼賛』、『食欲礼賛 終』)

      長谷部×女審神者
      ・モブが出たりする
      ・この世の森羅万象と無関係
      ・あれって思うこともあるだろうけどきっと気のせい
      ・無関係なんです、そういうことでお願いします

      審神者には月に一度、政府本部での定期面談が課せられている。近侍を伴い、ゲートまでは現世を経由し、面談の後は寄り道をして――
      ラーメン、ナポリタン、インドカレー……おでかけの度に増えていく、二人きりの時間。そして本丸のみんなにも見守られながら、主従という関係も少しずつ変わっていく。
      これは近侍の長谷部と審神者の「私」の、ささやかな毎月のお楽しみの話。
      総集編書き下ろし、『十月――銀座の花屋のあんみつ』収録。

      文庫・376ページ
      表紙・挿絵:藤村百さん
      イベント頒布価格:1500円
      サンプル掲載範囲:およそ3分の1強(『食欲礼賛』掲載分)

       通販・イベント共に、特典として無料冊子
      『いつかの本丸の夜食ラーメン』
      をお渡しします。審神者のオリジナル裏設定をやりたい放題ブチまけてますのでご注意を。

      #へしさに #サンプル
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    • 増殖する忠犬へし公の群れに地獄の補佐官様は打って出るようですイベントで掲示するサンプルとして、既刊の冒頭or全文をWebに上げています。
      一部の固有名詞をちょっといじったり横組み用に編集はしていますが、オンライン用に改行増やしたりするのは諦めました、読みにくいでしょうがご容赦ください。ふりがなの設定は時間を見つけて加えていく予定です。

      増殖する忠犬へし公の群れに地獄の補佐官様は打って出るようです
      発行:2018年10月7日

      長谷部×女審神者
      ・『鬼灯の冷徹』クロスオーバー
      ・クロスオーバー先原作程度の
        死ネタ
        グロ描写
        メタメタしい発言
      ・両原作に対する捏造設定有

      時間遡行軍との戦いが終わり、すべての本丸は解体。審神者は人間としての元の生活へ、刀剣男士たちはそれぞれの本霊へ戻っていった……はずだったが?
      「主がこちらに来るまでここで待つ」と言って突如地獄の門の前へ大集合した、あちこちの本丸のへし切長谷部!
      ふざけんなと動き出したご存じ閻魔の補佐官!
      最強の地獄のナンバーツーが、忠犬軍団に取った手段とは?

      文庫・120ページ
      表紙:藤村百さん
      イベント頒布価格:700円
      サンプル掲載範囲:最終章前段階まで
      #へしさに #サンプル #クロスオーバー
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    • 例の部屋に閉じ込められましてイベントで掲示するサンプルとして、既刊の冒頭or全文をWebに上げています。
      一部の固有名詞をちょっといじったり横組み用に編集はしていますが、オンライン用に改行増やしたりするのは諦めました、読みにくいでしょうがご容赦ください。ふりがなの設定は時間を見つけて加えていく予定です。

      例の部屋に閉じ込められまして
      発行:2019年2月24日

      長谷部×女審神者
      とうらぶユーザー審神者(アラサー社会人)
      ・導入のみ“ちゃんねる小説”形式
      ・捏造設定多数
      ・メタ発言

      夢の中、謎の空間で、ゲームのデータでしかないはずの近侍と鉢合わせたアラサー社会人兼業審神者。
      唐突に舞い降りてきたメモには、『キスしないと出られない部屋』と書かれていて……
      「――いや、支部かよ!!!」
      脱出条件をクリアして、リアルワールドに戻りますか?
      それとも、長谷部と一緒に夢の中での邂逅を楽しみますか?
      ドリームとリアルの間で揺れる、とあるひとときの物語。

      A5コピー・24ページ
      イベント頒布価格:200円
      サンプル掲載範囲:全文
      #へしさに #サンプル
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    • 一文字御隠居の昼飯珍道中イベントで掲示するサンプルとして、既刊の冒頭or全文をWebに上げています。
      一部の固有名詞をちょっといじったり横組み用に編集はしていますが、オンライン用に改行増やしたりするのは諦めました、読みにくいでしょうがご容赦ください。ふりがなの設定は時間を見つけて加えていく予定です。

      一文字御隠居の昼飯珍道中
      発行:2022年5月3日

      長谷部×女審神者
      ・則宗視点
      ・公式にないねつ造設定多数
      ・「そりゃこんだけ本丸があれば、CPも個体差も何でもありでしょ」という作者の認識を元にしたエピソードも出てくる。

       慶応甲府の特命調査を経て、とある本丸に監査官こと一文字則宗が顕現した。
       男所帯のトップが妙齢の女性で、秘書役と熱烈恋愛中。それだけ聞けば危うく思えるものの、なかなかどうして問題なく運営できているようだ。
       案内役兼教育係として加州清光に本丸を連れ回され、懐かしい顔とも鉢合わせ、やって来たのは台所。
       メインキッチン以外に、台所は共同棟と生活棟に計二カ所。聞けば、朝と夜は全員で食事を取るが、昼は各自で済ませるらしい。
      「自分で作るのもありだけどね。しばらくは、得意なやつが多めに作ってくれるとこに断って交ぜてもらうのもいいんじゃない?」
       こうして、一文字御隠居による昼飯行脚の旅が始まった――

      文庫・296ページ
      表紙・挿絵:須羽永渡さん
      イベント頒布価格:1000円
      サンプル掲載範囲:プロローグ+冒頭三話
      #へしさに #サンプル
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    • 主を探して三千里~受験生 長谷部国重の憂鬱~イベントで掲示するサンプルとして、既刊の冒頭or全文をWebに上げています。
      一部の固有名詞をちょっといじったり横組み用に編集はしていますが、オンライン用に改行増やしたりするのは諦めました、読みにくいでしょうがご容赦ください。ふりがなの設定は時間を見つけて加えていく予定です。

      主を探して三千里~受験生 長谷部国重の憂鬱~
      発行:2018年11月24日

      長谷部×女審神者
      ・転生現パロ
      ・モブの登場
      ・何でも許せる人向け
      ・この世の全てと無関係

      長谷部国重高校三年生。定期テスト前夜に思い出したのは前世の記憶と、そして……昔通っていた小学校に主がいた!?
      成績ガタ落ちで呼び出しを食らった春の終わりから、刻々と減っていくセンターまでの残り日数と、始まった昔の仲間探し。果たして彼は無事主を探し出せるのか、そして第一志望に合格できるのか?

      文庫・132ページ
      表紙・挿絵:須羽永渡さん
      イベント頒布価格:700円
      サンプル掲載範囲:最終章手前まで
      #へしさに #サンプル #現パロ
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    • A Testatrix of Wisteriaイベントで掲示するサンプルとして、既刊の冒頭or全文をWebに上げています。
      一部の固有名詞をちょっといじったり横組み用に編集はしていますが、オンライン用に改行増やしたりするのは諦めました、読みにくいでしょうがご容赦ください。ふりがなの設定は時間を見つけて加えていく予定です。
      読み返しましたが我ながら懐かしいですね、まだ極すら実装されていなかったころの発行だったということを前提にお読みいただければ幸いです。

      A Testatrix of Wisteria
      発行:2017年5月4日

      長谷部×女審神者。
      ・not審神者視点
      ・ねつ造設定
      ・性行為の示唆等、センシティブな描写あり
      ・他本丸の他刀さに描写あり
      ※見解は分かれそうですが、書いてる本人はへしさにのハッピーエンドだと思ってるので、これはへしさにのハッピーエンドです。

      「私は、父の顔を知らない」
       誰もが何かを隠している、それだけは知っている。
       戦争終結後の日本社会。母と二人きりで生きる『私』が暮らす、穏やかで幸せで、少しおかしな日常。その果てにやって来たものは……

      『A Testatrix of Wisteria』
      『The Testator from Wisteria』
       の短編2本を収録。

      A5 ・24ページ
      イベント頒布価格:300円
      サンプル掲載範囲:全文
      #へしさに #サンプル
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    • 『居酒屋 あるじ』ツイッターのタグ企画で書いたもの。
      冬の本丸で時々開催される、アラサー女子審神者の道楽のお話です。
      新人組の様子はだいたいこんな感じよ。
      #刀剣乱舞 #女審神者 #笹貫 #稲葉江
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