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    れじの04小話ぷらいべったーまとめ河川敷でおにぎりの思い出話をするカンメリやさぐれた大学時代を送った喫煙者のカントクもしもカントクが赤い石を壊してたらやさぐれを通り越すのでは夢の中でタイムスリップして子供時代の自分と出会うカントクヤットが鼠谷との思い出を振り返る小話河川敷でおにぎりの思い出話をするカンメリ※神の采配によってメリーちゃんは河川敷に行けなくなり、カントクはメリーちゃんと遊べなくなって絶望し、やがて記憶を無理矢理封じ込めて何とか生き長らえてきた説を推す。メリーちゃんと再会して一緒に過ごすことで記憶を取り戻していけばいし、逆にメリーちゃんはカントクだけが希望だったので全部覚えていそう。
    ところでカントクは寿司には醤油よりマヨネーズ派なだけなの?全てにおいてマヨラーなの?私はメリーちゃん宅にカントク専用のマヨネーズすら備えられているマヨラーだと思っています。

     懐かしの河川敷に二人は降り立つ。でこぼことした身長差が目立つ狗凱と羊田の姿である。かつてそこには草むらが茂るばかりか、不法投棄されたゴミだらけだった。しかし時を経てさっぱりと整備され、川面を眺められる木製のベンチが置かれた、静かな休憩所のようになっていた。
     そのベンチに二人は座り込む。それから羊田が手にしていたトートバッグからいくつかのものを取り出した。
    「はい、お弁当。お惣菜の唐揚げと、りんごと、あと、おにぎり。具材は食べてからのお楽しみ」
     子供みたいな言い方をしてラップに包まれた塊を狗凱に差し出す。そのおにぎりは狗凱の手にすっぽりと収まってしまう程度のもので、一つだけでは胃袋が満たされないことは明白だった。
    「おお……サンキュー。いいのかよ、俺の分まで」
    「いいの。ここで食べたいって、私が言い出したことだから」
     明るい声を作ろうとしている羊田の眼差しは、どこか切ない。こうして中途半端な時間帯にピクニックとも呼べない準備で突発的に来たがったのは確かに羊田の方だったが、一人でこの場所へと訪れることを今も躊躇う。狗凱と遊べなくなった子供の頃のように、神の声に遮られたらと思うと不安が過るのだ。だから狗凱を連れていきたがり、あえて用事の為の通り道として使ったり、ぼんやりと川を見つめたりする。羊田なりの、苦しみや恐れを克服したいという考えだった。ここは全ての始まりの場所で、理想郷で、罪の象徴だ。
     狗凱は羊田の荒療治に若干懸念を抱きつつ、強く制することが出来なかった。狗凱にとっても、この河川敷には複雑な想いが入り混じっている。ヒーローの世界に羊田と耽り、そしてすれ違ってしまった場所。神の戯れで削られてしまった十数年以上の時をどうにか取り戻したいと無意識は足掻き、羊田と共に同じようにここを求める。
     寂れた空気を感じ取った狗凱は、それを掻き消す為にがしがしと羊田の黒髪を撫でた。
    「じゃあよ、来週お好み焼きでも食いに行こうぜ。俺の奢りだ」
     そう提案すると、「楽しみ」と今度こそ羊田の声色が弾む。
    「そうだ、阿黒君と豊基君も呼ぼっか」
    「あー、そうだな……」
     しかし、打って変わって狗凱の声の調子が落ちた。二人で食べに行こうというつもりで誘ったのだが、羊田が彼らとも交流したいのならば断れない。以前共に外食した時、出された料理にマヨネーズをぶっかけたら「取り皿の上でやれ!」と全力で阿黒から怒られた。そして、多分片方は呼ばなくても何故か嗅ぎつけてきそうな気がする。何だか腑に落ちない――が、野暮なので言うのは止めておいた。
     そこで、狗凱は今更手に持つおにぎりを見下ろした後、店頭に並ぶようなものではない、明らかに手作りのものであると理解した。
    「お前が作ったのか、これ」
    「うん。上手く三角形に出来なかったけど」
    「そうかぁ? 俺が握ったのと比べりゃ充分だろ」
    「あ……人が作ったおにぎり、食べられないタイプ? なら、ごめんね」
     そう気遣われた時、狗凱は自然と羊田お手製おにぎりを食べる気満々でいた自分に気付く。確かに知らない誰かの素手が密着しまくって出来た料理を思い浮かべると不快だ。しかし羊田が今日の為に用意してくれたのだと思うと、単純に嬉しいと思った。
    「いや、メリーのなら食えるわ。遠慮無く頂く」
     細かい作業には向いていない手袋をつけたまま、じりじりとラップを剥き始める狗凱の姿。ちょっと外せばいいのにと、羊田はこっそり思った。
    「……なあ、メリー」
    「うん」
     長い時間をかけてようやくラップを剥がし、おにぎりに口をつけようとした時、ふと狗凱の脳裏に一つの光景が過った。
    「昔よぉ、ここで遊んでて……ある時さ、今日みたいに、おにぎり持ってきてくれたことあったろ」
     突然切り出されたそれは、思い出と呼べるものだった。何故か懸命にラップを剥く狗凱を見守ってしまっていた為、羊田もおにぎりを食べられずにいたところ、狗凱が語る子供の頃の自分達の話に目をぱちくりさせた。
    「あったね……。覚えてたの?」
    「いや。今、何となく思い出した」
    「そっか」
     小学生時代の記憶が全然無いと狗凱は言った。狗凱のそれが、かつて己の身に宿っていた神が作為的に成した業なのか、羊田には分からない。分からないが、狗凱の記憶の無さは態度からして本物のようだし、その上で時折こんな風に思い出すようだった。内容は、いつも全く些細なものばかりだ。くだらなくて、馬鹿馬鹿しくて、他人が聞けばつまらない話。それなのに、不思議と二人の中では一瞬で通じ合う。
     この思い出も、そんなつまらない話のうちの一つ。
    「色んな形に上手く作れたって、お前が珍しく意気揚々な感じでさ、そんなの俺も気になるし、急かしたらすぐ鞄から出して、そしたら肝心のおにぎり、潰れててよ……。海苔で目とか口とかつけてたのに、変な福笑いみたいになってたから、俺もお前も笑ったよな」
     狗凱は口元を緩め、視線を羊田に向ける。それが悪戯っ子のような表情にしか見えないのに、きっと彼に悪意は無いのだと思えるから、羊田は少し恥ずかしくても受け入れた。
    「うん。でも剣獅君、食べてくれた」
    「ああ。おにぎり美味かった。ガキの頃は……言えなかったんだけどさ、美味かったよ」
     何だか当たり前のように、二人で思い出を振り返っている。普通の人間として、普通の人生を過ごしてきたように、平凡に。子供の頃、誰にも邪魔されず、何にも干渉されず、ただただ遊んでいたみたいに。
     けれど、そうではないことを知っている。時は戻らないとも知っている。
     だから、ずっと閉じ込めていた分の気持ちを込める。
    「その……言うの遅くなって、悪かったな」
    「……ううん。ありがとう」
     ささやかな会話の中に秘められた、お互いの真意を感じ合う。もう、それだけで充分だった。
     ぱくりと口を開けてかぶりつくと、すぐにおにぎりの中身が見えた。
    「……あ、ツナマヨじゃん」
    「どう?」
    「美味い。マヨネーズの分量バッチリだ」
    「良かった」
     口をもごもごさせる狗凱の姿に羊田は微笑み、同じようにおにぎりを食んだ。やはりツナマヨは美味しい。



         完


    やさぐれた大学時代を送った喫煙者のカントク※私の中で誕生したやさぐれカントクの始まり。人を選ぶ話だろうと身構えていたら意外と好評で、困惑しながら嬉しかった思い出。
    空想が止まらず、「やさぐれた大学生活を送り、女遊びというほどではないけど何人かと一時的に寝るだけの関係を築いてきて、映画制作サークルに入ったものの上手くいかず、結局中退を選んだ」という所まで行き着いてしまいました。モブ女性が出てきます。

     煙草。苦そう。渋そう。絵にはなるかもしれないが、不味いに決まってる。でも、映画制作の参考になりそうだしな。海外作品だと登場人物の喫煙シーンも多いじゃん。
     そんな探究心と好奇心で煙草を吸ってみたのは二十歳の誕生日を迎えた翌日で、試してみれば想像通りの味だった。喉に響くぞ、これ。だけど一回きりで音を上げるのはカッコ悪い。変な意地を張って二本目、三本目と吸ってくと、いつの間にか惰性になってしまってる自分に気付いた。別に肌身離さず毎日毎日吸わなきゃやってらんねえってわけでもないが、ちょっとポケットに忍ばせてるみたいな。吸うのは何も上手くいかなくてだりぃ一日だったなって思う日と、アレの後だけだ。
     そんな感じで、アレの後。ベッドの端に座ってライターをカチカチさせる。はあ。あーあ、不味い不味い。未だに銘柄とかよく分かんねえ。でも海外俳優の喫煙シーンってめっちゃカッコイイよな。男も女もさ。羨ましいわ。
     その時、細い足先でべしっと腰の辺りを軽く蹴られた。全然痛くないが、寝起きには丁度良い刺激。布団からはみ出た細い体を改めて見ると、昔観た特撮番組の女幹部を思い出す。いるよな、ああいうの。誰が得するんだろうな。フツーの格好させてやれよ。
    「煙草は換気扇の下で吸ってって言ったじゃん」
    「あー……はいはい」
    「パンツくらい穿いて」
    「はいはい」
     全裸でキッチンに立つのは流石に止めとく。吸ってたそれを早々に灰皿に押しつけて消した。勿体ねえな。
     パンツも穿いて身支度して、ベッドにもたれるように床に座った。体が妙に凝ってる。相変わらず女用のシングルベッドで寝るとこうなるから、床の方が楽だったりする。
     「ねえ」と声をかけられた。軽く視線を向けると、そいつはスマホをいじりながら訊いてきた。
    「狗凱君、ホントに大学辞めちゃうわけ?」
    「ああ」
    「三回生だよ? マジで辞めんの?」
    「ああ」
    「これからどうすんの?」
    「さあ……」
     止めろ止めろ。深く踏み込んでこられると疲れる。だからテキトーに流す。まあ、この女……名前忘れたけど、俺が言うのもなんだが、こいつも冷めてたし、物分りも相性も良かった。それからは「ふーん」で済ませてくれた。
     別に言う義理が無いだけで、一応行き先はある。映画制作サークルの中でそれなりに話が合った先輩が映像関係の仕事に就いて、それに誘われた。そのツテを使えばどうにか仲間も集められそうだし、今度こそ俺の思うヒーロー映画が作れるかもしれない。
     そいつは起き上がることもせず、ずっとスマホをいじってる。俺もだらけてたいが、退学手続きの何やかんやをやんなきゃならねえ。立ち上がろうとしたら、そいつはちょっと面白そうな口調で言ってくる。何なんだよ、最後だからちょっと感傷に浸りたいのか。
    「狗凱君ってさー、夢とか無いの?」
    「……はあ?」
    「なんか、やりたいこと。目標。理想とか」
    「もうガキじゃねえんだから、んな甘ったるいこと言えるか」
    「ヒーロー映画撮りたいくせに」
    「うっせーな」
     図星だよ、全く。映画制作サークルに入ってることが知られてるならまだしも、俺が撮りたい内容まで。こいつというか、人付き合いが嫌いだから誰彼構わずと言ったはずないんだが、何でか知られちまってる。いやまあ自覚はあるんだけどさ。俺、格好とか身長とか目立つし。ピーチクパーチクと、大学中の奴らはすぐに話を広めやがって。
     高校の時、それっぽい部活があって入ったけど、作る内容は青春とかホラーとかそんなんばっかで歯痒かった。一度はヒーロー映画を作れたし、みんなも新鮮そうだったけど、反応はそれだけだった。……ホラーは嫌だ。誰が喜ぶんだ、ああいうジャンル。
     まあ中学の時の方が酷かったな。文化祭の催しにヒーローショーを提案したら笑われたっけ。ありゃあ腹立った。次の日朝一番に学校に来て、学年全部のクラスの黒板にヒーローの絵とか設定とか曲の歌詞とかで埋め尽くしてやった。すげー怒られた。
    (……そんで、小学生の頃は……)
     何でだろうな。もう十年以上前の昔話だ。今の俺とはかけ離れた他人事みたいで、全然記憶に残ってないのに、どっかで引っかかる。まさか。あの頃こそガキ真っ盛りじゃん。いつか自分が大人になることなんか全く想像つかなくて、ただ夢の世界に浸れた時代。その代わり、力も金も無かった。なのに、映画を撮ってた気がする。自分が、自分達が撮りたいだけの映画を、日が暮れるまで。
     そう、誰か――ただ一人、側に誰かいた気がする。普段は物静かで、だけど笑う時は笑うし、疲れるまで一緒に遊んでた気がする。誰よりもヒーローの世界に目を輝かせて……ずっと二人で語り明かしてた気がする。
     ガラクタ。平和で静かな世界。約束。二人だけで、二人の映画を――
     いや、馬鹿馬鹿しい。ガキの頃の記憶なんて曖昧だ。それこそ寝てる時に見た荒唐無稽な夢の中での話か、あるいは願望と妄想がごちゃ混ぜになってるだけじゃねえの。そんな奴がいてくれたら、ずっと一緒にいられたら、どれだけ楽しかっただろう。……真剣に考えれば考えるほど自分が虚しくなる。
     こんなワガママでジコチューでだらだら生きてる俺のことを信じてる奴なんか、いない。ただヒーローごっこしてるだけの、「カントク」でしかない俺を、誰がヒーローと呼んでくれるんだ。
    (そんな奴、いるわけない……)
     街が怪獣に襲われた時、颯爽と出動して人々を救う為に戦うヒーローはいないんだ。いないって、実は分かってんだよ。あれは作り物で、そういう台本。そんな台本に描かれるヒーローだって、どんな困難にもめげず、打ちのめされても立ち上がれるのはスーパーパワーを持ってるから。目からビーム出したり、変身して野性のままに大暴れしたり、不死身で二刀流と二丁拳銃を振り回したり、身軽に宙を飛んで壁や天井を這い回ったり。てか、ヒーローでさえあんだけボロボロになるんだから、フツーの人間じゃ到底敵うもんか。無理。少なくとも俺には出来る気がしねえよ。
     でもさ、駄目なんだ。止められねえんだ。分かんねえし、覚えてねえし、意味不明だし、だけど……赤いマフラーも手袋も、何もかも全部捨てたら、誰かが泣いちまう気がするから。
     もしも本当にその泣いちまう誰かがいるなら、そいつが俺を呼ぶその日まで、待たなきゃいけないのか?

     なあ、お前は誰なんだ?
     俺は……お前が望んでる俺ってのは、どんな姿なんだ?

    (ああ駄目だ、二本目行きそう)
     立ち上がる気力を無くして煙草を取り出したら、換気扇の下で吸えと今度こそ力一杯蹴られた。背中が痛い。



         完


    もしもカントクが赤い石を壊してたらやさぐれを通り越すのでは※カントクがメリーちゃんの後を追う、IF世界線の話。「拳銃なんて手に入るルートはいくらでもある」という発言が気になりすぎて。あのエンディングだからこそ情熱を取り戻せたのだろうし、境遇からしてメリーちゃんのいないこれからの人生に耐えられそうに思えないし、成れの果てが残念そう。
    らじでは本物の2人の死を享受出来ました。ありがとうございました。

    「剣獅君――」
     赤い石を掴んだ狗凱と、その手を待ち望んでいた羊田の視線は一瞬交錯した。微笑む羊田の呟き。名を呼ばれた後、「ありがとう」か「ごめんなさい」か、そのどちらかが唇の隙間から漏れた気がするが、狗凱にはそれを聞き取る余裕など無かった。
     神を宿すという大それた石は脆く、地面に叩きつけると簡単に砕けた。そうするとこの怪奇は呆気なく収束した。影も闇も散り、空から地まで光に包まれた。全てが終わり、平和を取り戻す。これは、世界にとってのハッピーエンド。
     溢れ出る涙と血。胸にナイフを突き刺し、倒れ込む猫山を前に、阿黒は怒りとも悲しみともつかない表情で、どうにも出来ずに突っ立っている。阿黒から無理矢理スマホをふんだくり、救急車を呼ぶ豊基だったが猫山は助からず、やがて自殺として処理された。何もかもが遅すぎたのだ。
     解き放されて安らかに眠る羊田の亡骸を抱いたまま、狗凱はその場から動けなかった。軽くて、細くて、冷たかった。この小さな体で、羊田は一人で神を受け止めてきた。延々と呪いの声を聞き、望まない理想郷の為に罪を背負わされ、耐え切れなくなり、死を願うほどの苦しみに苛まれ、今日まで生きてきた。
     そして、贖罪という願いを叶えてやったのは自分自身なのだと、狗凱は改めて思った。あの石を壊せば神は消える。羊田の言う通りだった。あの石には神との繋がりがあったが、きっと羊田の魂の象徴だったのだろう。だから、あんなにも脆かった。
     狗凱は亡骸を抱き締める。羊田を殺した。託されたからだ。ヒーローに止めを刺されたくて生きてきたのか。それだけの為に、生きてきたのか。二人だけの約束を……忘れたのか。

     神の嘲笑いがどこか遠い場所で聞こえる。



     おかしいなぁ、さっきから何となく口ずさんじまう歌がある。あれ、何だっけ。メ、メ、メ……。
    「メリーさん……メリーさん、の……ひつじ、ひつじ、ひつじ……」
     ……とか思ってたら浮かんだ。「ひつじのメリーさん」だ。そうだ。そのまんまだ。そっからあだ名にしたんだよ、あいつの。こう、簡単な曲ほどタイトルが思い出せないってあるじゃん。あるある、あるよな。
     小学生が集団下校する光景をよく見るようになった。俺がガキの頃はみんなばらけて帰るのが当たり前だったけど、今や一人一人で帰らせるわけにはいかねえご時世ってか。寄り道は許されないし、車で送り迎えってのも普通なのかもな。
     つーか、この町は狂ってた。変質者が出没するなんざ甘っちょろいくらい、何もかも狂ってた。このくだらねえ故郷に蔓延ってた驚異は消え去ったっつっても、まだまだ何が起こるか分かんねえってさ。あの意味不明な教団の残党の処分に走り回ってるって、あの刑事が言ってたな。上からの圧ってのがすんなり解かれたかは怪しい所だ。そう何もかも上手く行けるとは思えねえんだが。あー、名前なんだっけ。忘れた。まあ、俺にはもう関係ねえし、いっか。
     ガキの群れの視線ってのは素直だ。口に出してる自覚も無さそうに「でけー」とか言われる。そうだな、見てくれだけはやたらこうなっちまった。中身には何にも詰まってねえくせに。こいつらも昔の俺と同じで何かに夢中なのかね。ゲームか? 漫画か? アニメか? 分かんねえけど。知らねえけど。大人になっても好きなままでいられるといいな。
     ぐだくだ考えてると河川敷の前にいた。えーと、ここにこの看板があるってことは、そうそう、この下ったとこにあったんだよ。砂利道が続いて、草むらがあって、この先に――
    「……なぁーんだ、意外と変わってねえじゃん」
     草むらの中は不法投棄されたガラクタの山だ。マジかよ。ドラム缶も三角コーンも煉瓦も空き缶も鉄パイプも古雑誌も色々。いや、流石に昔と全く同じってわけでもねえけど。俺達が作った街は完全に無い。でも、なーんか安心する。あの頃と同じ匂いがする。やっぱ、懐かしいな。俺達はここでヒーローごっこしてた。学校帰りに、学校帰りだけじゃ物足りなくて休みの日も、二人だけで。馬鹿みたいに武器とか必殺技とか考えて、ここに散らばってるようなガラクタで街を作ってたんだ。笑ってたよな、俺達。いつか大人になるなんて、思わなかったよな。すれ違うなんて、俺は思ってなかった。
     しっかしどうだ、平和で静かな世界になったろ。お前の願い、叶えたぞ。お前の願いは……叶ったんだぞ。
     おい、聞いてんだろ。お前、ここにいるよな。いないわけないよな。俺、今からお前に大量の文句垂れてやる。聞けよ、絶対。
    「……約束しただろうが。平和で静かな世界になったら、二人で映画撮るって。俺はお前との約束守ったんだ。守ったのに、お前は……俺を置いてくのか」
     バカヤローが。あんな石ころ、俺に託しやがって。何がヒーローだ。本物のヒーローなら、きっとお前を助けられた。俺は、ただ必死になって壊しただけじゃねえか。お前が贖罪を背負ってるなら、解放を求めるなら、せめて俺の手で殺してやりたかったから。けど、めちゃくちゃ後悔してる。後悔しまくってんだぞ。クソ。俺の気持ち考えろよ。俺の、理想はさ……。
    「お前を苦しめてた、あの気色悪い神様ってやつに縋った方が良かったのか? お前が俺に託した願いより、あいつを信じれば良かったのか? そしたらお前を助けられたのか?」
     今更どうしようもねえ話だけどよぉ、問いかけたくもなっちまうわ。で、答えは出ない、と。めちゃくちゃ不毛だっての。くだらねえ。でもまあ、正解だの不正解だの、もう要らねえのか。あいつに訊いたって、あいつ自身分かんねえだろうし。
     突っ立ってると疲れるからドラム缶にもたれて座る。ドラム缶はタワーに見立てたっけ。あいつ、センス無かったな。ホント、昔からセンス無かったな。見る目が無いんだよ、お前。俺がどんなに情けないただの人間か、分からせてやる。
    「……ったく、金と時間、随分かかっちまったじゃねえか。手こずらせやがって。お前のせいだぞ」
     懐から取り出して一応確認しておく。ありがちだが、ニューナンブM60。やっぱリボルバーってロマンだよな。つっても、五発も使わねえよ。弾は一発だけ。これで充分だ。狙いはたった一箇所しかねえから。
     拳銃が手に入るルートってのは、やっぱいくらでもあるもんだな。例えば芸能界の闇っつったら真っ先に浮かぶのはクスリだけど、まあ裏社会と繋がってるとクスリ以外のモノも結構出回ってくる。芸能界と映像業界、密接な関係にちょっとでも携わってて良かったよ。ついでに警察から横流しされた可能性大。あーあ、怖い怖い。あぁ? するとあの神様より人間様の方が怖いのか? ありがちだな、それも。
     にしても、ヒーローってのは案外死ぬもんだ。面白いことに、不老不死って設定なわりに死んじまう奴もいる。いや、例えばだ、治癒能力が凄いとか普通の人間よりは頑丈とか、そーゆーので死ぬなら分かるわ。スーパーパワーの持ち主だとしても、無理すりゃやべえってことだから。なら尚更の話でよ、嵐を呼び起こすとかサイコキネシスを操るとかガチ人間離れしてない、ただの人間として人並み外れた技の使い手くらいならあっさり死ぬ。それで不老不死のヒーローも死ぬんだから、おかしいよな。でも俺、そんなヒーローの世界が好きだった。
     好きなだけで、何も持ってない俺がヒーローなんかになれるわけなかったんだ。
    「あー……何つーか、いや……まあ、もう、どうでもいーか。うん。心残り、特にねーな」
     猫山が死んで以来、イッツGの姿は見なくなった。この町から出てったのかもしんねえし、もしかしたらあいつも、馬鹿な道辿ってたりすんのかもな。ヤットは仕事に戻ったきり。それは建前で、もう鼠谷の墓にも顔向け出来なさそうだ。まあ、それはそれであいつらの人生ってわけで。
     そーゆーことだから、俺も好きにさせてもらうわ。
    「んじゃ、そろそろ行くかァ」
     よし。装填完了。そっち行く前に、もう一丁文句垂れといてやる。
    「もう二度と約束破んじゃねえぞ。お前が嫌だっつっても、これから一生二人で映画撮り続けるからな。覚悟しろよ」
     ヒーローは必ず勝つって言うけど、そうでもないし、ヒーローが勝ってばかりの予定調和に飽き飽きしてる奴らもいるんだぜ。
     だから、さ。
    「こういうエンディングも、結構アリじゃね? ……なあ、メリー」
     あ、違うな。「ひつじのメリーさん」じゃねえな。「メリーさんのひつじ」だ。頭から離れねえや。



     彼は自身のこめかみに銃口を添える。そして、平和で静かな世界に、その銃声は躊躇無く鳴り響いた。
     その日、その場所で、彼は彼の理想郷へと旅立った。かつてそこには男の子と女の子がヒーローの物語に耽り、笑い合い、二人だけで築いた街があった。
     きっと、今度こそ彼は彼の理想を貫き通せるのだろう。



         完


    夢の中でタイムスリップして子供時代の自分と出会うカントク※カントクが泣いたのはメリーちゃんと遊べなくなった頃に1度だけ、という空想の前提有り。
    赤いマフラーは子供の頃から巻いていてほしいし(流石に買い替えたはず)、短パンを穿いていてほしいし、自分以外が「メリー」と呼んだら凄く拗ねてほしい。主にイッツGがふざけて「メリーちゃ~ん」とか呼んだらマジギレする図が浮かびます。
    メリーちゃんがタイムスリップする話も考えてはいたものの、らじ後に書くものではない気がして保留中。

     ふと気付いた時、狗凱は生まれ育った愛造町の河川敷を見下ろす道に立っていた。
     夕暮れ時、散歩のついでに眺めに来た覚えは無い。そもそも散歩に出かけた覚えが無い。それに、どこか違和感がある。今ではアスファルトが敷かれているはずなのに、剥き出しの野道が続いている。対岸の向こうには目立つビルが一つも無く、平らな家屋ばかりが並んでいる。何より、昔の匂いがする。明確にこれとは言い表せられない、普遍的な概念でしかない、あの切なくて温かな匂い。
     狗凱の中の無意識が囁く――これは、子供の頃の光景だ。鮮明な夢の中に迷い込んだのだろう、かつての河川敷が目前に広がっている。
     懐古と好奇は必然的にあの場所へと歩みを進めさせる。河川敷へと下り、薄汚れた川面を横目に、砂利道の先で茂る草むらを目指す。当時は小さな自分を飲み込んでしまった草むらも、背丈が伸びた大人の体では半分にも届かない。だから、その開けた場所は――ヒーローと怪獣が戦うガラクタの街は、すぐに視界に入る。大人からは要らないものとして不法投棄されたゴミの山は、子供にとって資材という宝の山だった。その一つ一つが街を構成している。ある意味壮観だった。けれど、どこか物寂しい。賑やかに飾られた街に、賑やかな子供達の声が無いのは、あまりにも似つかわしくない。
     狗凱は小さな人影を見つけた。汚れたドラム缶にもたれて座り込み、ぼんやりと夕空を見上げている姿――そこに、当たり前のような足取りで近付いて行く。あれは、羊田と遊べなくなった頃の自分だ。神の呪いを宿す羊田の苦しみなど露知らず、ただ不貞腐れているだけの男の子。
     羊田と再会してからというものの、無理矢理封じ込めていた小学生時代の記憶は緩やかに溢れてくる。だから狗凱は思い出した。この日、この河川敷で、まるで世界から自分だけが取り残されたようにぽつんといる理由。
    「よお」
     狗凱が低い声をかけると、その男の子は――目元に擦れた痕を残す子供の頃の自分は、びくりとしてこちらを見上げた。
    「誰……?」
    「お前、昨日馬鹿みたいに泣いただろ」
     唐突な指摘に一瞬ぽかんとした男の子は、それから我に返って顔を真っ赤にした。
    「はあ!? な、何で知っ……つーか誰だよ!」
     声変わりする前の、幼い声で反発する男の子の姿はあまりにも滑稽だった。こんな声で得意げにヒーローの物語やガラクタの街について語って聞かせてきたのかと思うと、狗凱は苦笑いを漏らしてしまう。
    「メリーとヒーローごっこ出来なくなっちまったな」
    「『メリー』って呼ぶな! 俺がつけたあだ名だぞ!」
     狗凱は呆気に取られた。そうか、子供の頃の自分はこんなにも無邪気な独占欲を持っていたのか。そうだ、彼女を「メリー」と呼ぶ者は、彼女にそのあだ名を与えた自分だけだった。いつも彼女は独りで、いつも自分達は一緒だったから。冷静に考えてみると、確かに自分以外の誰かが「メリー」と呼んだら何だか不愉快だ。なるほど、気付いていなかっただけで、その意識は昔から変わらないらしい。
     むくれたままの幼い自分に狗凱は笑いを堪え、「あー、わりぃわりぃ」と誠意を伝える気も無く謝った。
    「ま、とにかくよぉ……羊田に避けられて、今まで一緒に遊ぶのが当たり前だったのに怖くて悲しくて、そしたら『女がヒーローなんかに興味あるわけない』って、誰かに言われたよな。頭が真っ白になって、言い返せなくて、後から悔しくて泣いたんだろ」
    「うっせーな! だからあんた誰なんだよ! 何で、何でそんなこと……」
    「俺はー、そうだな。『カントク』って呼ばれてる」
    「……『カントク』?」
     男の子は小首を傾げる。傾げるそこには何も無いことを狗凱は認める。学校に行く時も肌身離さず身に着けていた赤いマフラーーーあれはスターヒーローの証だった。だが、怠くて重い体を何とか起こした今朝、枕元に置いていたそれを……手に取る気になれなかった。
    「マフラー、どうした」
     何故その存在を知っているのか、男の子は目を見開いた。しかし、抗っても無駄な気がしてきた。最初はいきなり話しかけられて驚いたものの、知らない巨体の男に見下ろされながら話を続ける今、どうしてか男の子は恐怖を覚えなかった。けれど居た堪れず、ふいと目を逸らして「捨てた」とだけ言い放った。
     それが大嘘であることを狗凱自身は知っている。
    「違うな。ゴミ箱に放り込んだだけだ」
    「だから、捨てたんだよ!」
    「別にまだ燃やされたわけじゃねえだろうが。お前はやっぱ捨て切れなくて、ゴミ袋に詰め込まれる前に取り戻すんだ。破くことも出来ないし、見る度に悲しくなる。でも、手放せない。手放したら誰かが泣いちまう気がして、絶対捨てられない」
     そこまで言い切られると、圧されてしまった男の子は口答えが出来ない。
     狗凱は幼い自分を見下ろし、話し続ける。彼の無力さや苦しみを誰よりも理解しているから、夢の中だけで良いから、せめて共感してやりたかった。それから、残酷で惨めな予言も。
    「お前はな、これから独りぼっちでヒーローごっこするんだ。それから……ここでの思い出を閉じ込める。そのうちあいつのことも無理矢理忘れる。お前があいつにつけてやった、あだ名も」
     そう告げた途端、男の子は硬直した。自分の震える声に狗凱は気付いている。
    「楽しかったよな。ずっと一緒にヒーローごっこして、映画撮ってたかったよな。信じてたよな、約束。だからあいつがここに来なくなって、避けられるようになって、全部裏切られたと思った。記憶を曖昧にして、この町から出た。そうじゃなきゃやってけねえくらい、辛くて辛くて……」
     予言は、自分が進んできた道を振り返ることと同じだ。狗凱の脳裏に色んな光景が浮かんでは消える。
    「辛いけど、こんなのまだまだ序の口だぜ。だらしなくて情けない人生が待ってんぞ。いつまでもヒーローごっこに耽って、映画撮る真似事して、『カントク』って馬鹿にされる。周りのこと考えねえからどんどん嫌われるし、中途半端なものしか作れねえし、何もかもやる気無くす。憧れてたヒーローにすら希望も持てなくなって、くだらねえって思いたいのに諦め切れなくて、引きずって、ぼさっと生きてくんだ。SSAも発症しちまうしよぉ……改めて言うとマジで最悪だな」
     自嘲なんて言葉では済ませられないくらいに、吐けば吐くほど馬鹿らしい人生だと狗凱は思う。それなのに、やはり否定したくはなかった。否定したくない理由と、やっと再会出来たから。
    「でも、あいつだけはお前を信じてる。とんでもねえ再会が待ってるぜ。んで、託されるんだ。だけどお前は最後の最後まで迷って、怯えて、頭がいっぱいいっぱいで、それでも……ジコチューを貫き通す」
     あの二人の理想も、二人にとっては正しいものだった。それなのに、自分の為に押し退けた。自分の為だけだった。何度も問いかけたのも、本心を確かめたかったことが一番だが、自分が望む答えを返してくれるまで諦めたくなかった気持ちもある。あれは理想で、全て我欲だ。
     男の子は眉をひそめる。まだ幼い顔ならば、醜い我欲も無邪気さと言い換えて収められそうだ。そう遠くないうちに許されなくなるだろうけれど。
    「それ……どういうことだよ? あいつって誰だ? 託されるって何を? 俺の、理想って……」
    「ネタバレなんか野暮だろ」
     確かにネタバレは嫌いだ。わざと曖昧な言い回しをしているのも、そういう配慮らしいとは伝わった。だとしても掴み所が無さ過ぎる。男の子は益々首を傾げ、疲れたと言わんばかりに溜め息を吐いた。
    「あんた、訳分かんねー」
    「だろうな」
     一方的に言いたいことだけ言いまくり、それを聞かされ続ける側になったら、こんな風に困惑するのが当たり前のはずだ。なのに、あの女の子はいつも楽しそうだった。目をきらきらと輝かせ、語を継ぐ間に相槌を打ち、一緒に笑っていた。
     この男の子は、これから彼女の笑顔を忘れてしまうほどの長い月日を独りで過ごす羽目になる。その孤独を思うと、自分達が辿る結末を晒してやりたくもなる。けれど耐え忍んで、打ちのめされても立ち上がり、自ら勝ち取ってみろと心の中で叱咤するに留めておく。
     腑に落ちない様子を放置するのも何となく決まりが悪いので、自分であるならばこそという話題を挙げてみる。
    「じゃあ、例えばの話なんだけどよ……ヒーロー映画の話な。二人で組んでるヒーローがいたんだ。二人でいるならいつだって無敵だった。でも、ある日大切な相棒のヒーローは自分の側から姿を消しちまった。数年後に相棒と再会したら、そいつはめちゃくちゃ悪いことしてきたってさ。だけど実はラスボスに操られてただけで、本当はそんなことしたくなかった。相棒はな、世界を壊すくらいの悪いことしてきた償いとして、死にたいって言うわけよ。ずっと苦しんできた、もう耐えられないって。だからヒーローは相棒を殺す。殺してやれば、そいつは救われる。大切な相棒を喪いながらも、世界に平和を取り戻したヒーローの物語。……どうよ、これ」
     語り終えた途端、男の子は思い切り顰めっ面になった。
    「そんなのヒーローじゃねーし、つまんねーエンド! それ、あんたが考えた話か?」
    「ああ」
    「センスねーぜ。ヒーローなら相棒を死なせねーよ、絶対に!」
    「ヒーローが相棒を死なせないっつーことはだ、死んで救われたいって相棒の気持ちよりも、死なせて堪るかってヒーロー自身の気持ちを優先するんだぜ。それでもか?」
    「当たり前だろ。そんなに大切な相棒なら、これからも一緒に生きていけばいーじゃんか。苦しい時も楽しい時も戦う時も。そしたら相棒だって、生きていけるに決まってる!」
    「……だよな」
     狗凱は自然と笑ってしまった。何一つ変わらない。そうだ、昔からこうだった。自分を曲げたくない。この上なく自分のことしか考えていない。これから相棒が――羊田が、償えないままの贖罪を背負って生きていくのだとしても、その最中で罪の意識に押し潰されそうになるとしても、死なせるわけにはいかなかった。今も昔も変わらず、自分以上にヒーローを愛している羊田が、小賢しいヴィランなんかに屈服するなんて許せなかったから。
     お互いにお互いが側にいれば、生きていける。そう信じていなければ、もう自分が生きていけないと、狗凱は自覚していた。そして、きっと彼女も。
     何だか喋り切ってすっきりした。どうやら、ここいらで潮時のようだ。夢の時間は終わりを迎えるのだと、無意識が教えてくれる。そこで狗凱は軽く溜め息を吐き、「あーあ。どうせ夢だからなぁ、これ。アドバイスにもならねえか」と独りごちる。ただの夢。語りかけても夢は夢。無意味な時間だったとは思わないけれど。
    「ま、とにかく……そのままジコチューに生きていけよ。それ以外の生き方なんか、どうせ分かんねえしさ」
    「そんな生き方、やだ」
    「嫌でもなっちまうんだよ」
     嫌だ嫌だと言ったところで、どうせ変われないのが自分だ。そして、その生き方を貫いた先にあるものが、彼女が信じて待っていてくれたヒーローの姿なのだから。

     「じゃあな」と短く別れを告げ、がさがさと草むらを掻き分けることもなく、さっさと消えていく広い背中。その後ろ姿を最後まで見送るのも疲れ、男の子は砂だけの地面へと視線を向けた。
    「……何なんだよ、あの人。めちゃくちゃでっかいし、えすえすえーって意味不明だし……」
     何故か羊田と遊べなくなったことを知っている上で、傷口に塩を塗るような内容を延々とぶつけられた。馬鹿にされるだの、嫌われるだの、やる気を無くすだの、せめて大人なら慰めの言葉くらいかけてくれもいいのに。それに、こちらを追い詰めるような言い方をするくせに、何故か男自身が辛くて泣き出しそうな顔だった。
     ただ――最後に彼が考えたというヒーロー映画の内容に反論した時だけは、やたら嬉しそうだった。自分が言うのもおかしい気がするが、何だか無邪気な同年代の男の子に見えた。もしかしたら、もっとヒーローについて語り合えたのかもしれない。自分が大人になっても……あんな風に、ヒーローの夢に浸っていられるのだろうか?
    「俺にだって……相棒が……」
     ――自分にも相棒がいた。平和で静かな世界になったら、一緒にヒーロー映画を作ろうと約束した。この世でただ一人の大切な相棒で、ここは二人だけの街だった。けれど、相棒は自分の側から離れてしまった。理由も分からず、だからこうして自分は独りになった。いつか、敵として再会するのだろうか。もしもそうなったら、相棒の本心を知ることが出来るのだろうか。すれ違っていた分の二人の時間を、取り戻せるのだろうか。
     膝を抱え、顔を埋めた。あの男の言う通り、もう涙は流し切ったから、ただ目を閉じて呟く。
    「……メリー……」
     このガラクタの街でヒーローの世界に夢見て笑う女の子の姿は、いない。あだ名を呼んでも振り向いてくれない。きっとヒーローごっこに飽きたのだ。約束なんか、無かったことにされる。全部、全部、忘れていく。赤いマフラーを首に巻き、黒いコートを羽織って白い手袋を着ける、あの不思議な男との出会いも。

     いつしか夕暮れは夜へと変わり始める。男の子は怠い体で立ち上がり、家路に就く。
     ――きっと、ゴミ箱から自分の赤いマフラーを取り戻し、これからも身に着けて生きていくのだろうと思いながら。



     ふわりと柔らかな感触が広い背中を覆った。その僅かな振動に狗凱の瞼は開き始め、段々と意識を目覚めさせていく。スタッフの呼びかけ、足音、忙しない空気が漂う。馴染んだスタジオの匂い。照明や音響の機材がいじられる通りに賑やかしい。今は自主映画制作という仕事の真っ最中だ。これからの為に構想を練っていたのだが、いつの間にかノートや資料集が散らばる作業机に顔を突っ伏し、うたた寝をしていたらしい。そして、背中にはタオルケットがかけられている。
     狗凱の背後から立ち去ろうとしていた存在が、その身動ぎする気配に気付いて足を止める。
    「剣獅君」
     と、静かに名前を呼ぶ羊田の声。寝起きに聞くにはあまりにも心地良い。立つと明らかな身長差で狗凱が羊田を見下ろすのが常でも、こうして座りながら眠りこけていると、羊田の視線は見上げる形になるから何となく新鮮だ。
    「起こしちゃったね」
    「いや……」
     ぼんやりと返答にもならない返答を漏らしつつ、狗凱は頭を搔いた。他人に無防備な寝起きを見られるのは弱さを晒すみたいで嫌だが、羊田に見られるのは単純に小っ恥ずかしい。とりあえず背中からずれ落ちそうなタオルケットを掴み、膝の上に置く。そのタオルケットをかけてくれたのは目の前にいる羊田以外に考えられないのに、感謝の言葉を投げかける前に「なんか、夢……」と続けて呟いてしまった。
     唐突な独り言に、羊田は不思議そうな目付きを狗凱へと向ける。
    「夢、見てたの?」
    「ああ、あんまり覚えてねえけど……。ガキの頃の、河川敷だった。お前とヒーローごっこしてたのかもな。多分……」
     目覚めた瞬間までは鮮明だったはずなのだが、話し始めた途端に霞んでしまった。この歯痒い感じが鬱陶しいと同時に、別に思い出す必要も無いことのような気がする。夢は夢、それだけの話。
     ただ、それと引き換えのように狗凱の中で何かが湧いてくる。得意げな気分になって誰よりも真っ先に伝えたい、聞かせたい。
    「なあ、メリー」
    「何?」
    「次のシナリオ、浮かんだ」
    「どんな?」
     羊田の黒い目がきらきらと輝き始めた。狗凱もつられて胸の高鳴りが激しくなっていく。二人は、この瞬間が堪らなく好きだった。
    「二人のヒーローがバディ組んでて、怪獣や悪者を簡単にやっつけて、最強だと思ってた。でも、ある日相棒がいなくなった途端に弱くなっちまう。弱いけど、相棒と再会する為に戦い続けて、ぼろぼろになった果てに相棒は敵になってて、敵になってた相棒と戦わなきゃいけなくて、向こうも独りぼっちだから実は弱くなってぼろぼろで……」
    「二人は、どうなるの」
    「決まってんだろ。お互いぼろぼろのままラスボスに立ち向かうんだ。でさ、倒してからようやく気付くわけよ。自分達は別に最強じゃないって」
     きっとそれはヒーローの物語で、ただの人間の物語。
    「だけど二人でいる限り、これからも一緒に戦おうって誓い合う。まあ……そんな話だ」
     彼はシナリオを語りながら、その奥底に秘めたものがあるのだと羊田には理解出来た。深く言及しない優しさに甘え、シナリオに応える為だけのように、子供の頃と同じように、ささやかに告げる。
    「面白そう」
    「だろ?」
     そうやって夢を語る男の子だった眼差しが、声色が、大人になった今でも変わらない。その事実が、彼と共に築くヒーローの世界で、これからも生きていこうという希望となる。羊田は頬を緩め、小さく強く頷いた。



         完


    ヤットが鼠谷との思い出を振り返る小話※ヤットが強くなりたかったのは「サブローと鼠谷を守りたかったから」ではなくて「サブローを守ろうとする鼠谷に憧れたから」だったら素敵。あの探索者3人の中でならヤットと鼠谷が比較的穏やかな別れ方をしたように思えるから、余計にヤットの無力感が切ない。直情的で状況が見えなくなるし、SPも適職じゃなさそう。実力診断検査で「戦闘能力に申し分は無いが情によって左右される傾向有り」とか言われたのが不服だったけど今回の事件で自覚した的なことがあってほしい。
    らじ後、探索者3人の中で最も子供時代を引きずっていたのはヤットだったんだなあと思いました。

     当時の愛造小学校の卒業式は、桜の蕾が開き始める頃に行われていた。
     卒業証書が収められた黒い筒を手にする二人の男の子は、青空の下で日に照らされる薄紅を眺めながら、旅立つ為の言葉を交わし合う。
    「ヤット君。僕達、お別れだね」
    「うん……」
     阿黒と鼠谷は別々の中学に進学することとなった。生まれ育った故郷であるこの町を超えた先に所在する中学は、二人が目指す夢に等しく、はっきりと方向も方針も分かれていた。阿黒は武道系の部活動に取り組むことを特色とする中高一貫校へ。鼠谷はH県の中でも指折りの名門進学校へ。
     阿黒が視線を移すと、未だに空の方を向く鼠谷の横顔があった。どこか遠い所を見ている気がした。自分には手の届かない、夢の奥にある影を見ている気がした。阿黒は、それが不安になった。「鼠谷君」と呼びかけると、それにつられて鼠谷も阿黒と目を合わせた。そこでいつも通りの、弱々しいけれど穏やかな表情を見せてくれる。
    「サブローは、これからも鼠谷君の知り合いの人が預かってくれるんだよね」
    「うん。優しいおじさんとおばさんだから、サブローも懐いてるよ。大丈夫」
    「良かった」
     ほっと胸を撫で下ろす阿黒に鼠谷は微笑んだ。この唯一の友が自分とサブローを守り、可愛がってくれた日々は、何よりも大切なものだった。
     橋の下で密かに世話をしていた子犬のサブローは、小型犬の雑種と思わしき血の為に予想より大きくはならなかった。だが、野良犬としてそのままにしておけば、きっと悲しい運命を辿ることになるだろうということは、小学校を卒業する年となった子供なら想像に難くない。阿黒家でも鼠谷家でも、半端な気持ちで生き物と関わってはいけないという理由で、サブローを飼うことは許されなかった。いや――それよりも、大人達の目を盗んで友人と秘密を共有する、そんな幼い楽しみを見出していたのかもしれない。
     とは言え、悲しい運命を避けたい気持ちは事実で、ついに鼠谷は両親に頼み込み、以前にも犬を飼っていたという知人の家にサブローの居は移された。それはいつのことだったか――阿黒は鮮明に思い出せない。ただ、小学四年生から五年生へと進級した頃だったような気がする。今となっては真相の全ては分からないが、例の「朗読会」が起点だったのではないだろうか。
     何となく湿っぽい空気になったことを阿黒は察した。虐められっ子で内気な鼠谷が、離れ離れになる自分達のこれからをどう思っているのはか分からない。けれど黒自身が物寂しくなって口を開く。
    「お別れなんて言ったって、僕達また会えるよ。鼠谷君と遊びたいし、サブローの様子も見に行きたいから」
    「……そうだよね。ありがとう。時間が出来たら一緒にサブローと遊ぼうね!」
    「うん!」
     慰めではなく、本心からの言葉を紡ぐ純粋な子供達は知らなかった。子供の頃からの夢を追い、大人へと進むにつれて薄れてしまう縁もあるということを。時間はあまりにも有限で、その最中に自分が目指す先へと進むだけで精一杯だった。
     結局阿黒が中学に通いながら鼠谷の知人の家へと行けたのは数える程しかなく、サブローの様子もほとんど見てやれなかった。



     天気予報は嘘吐きだ。沈みゆく太陽は陰雲に隠れ、冷たい雨が降り始める。阿黒の手に傘は無かった。それでも国々を飛び回る多忙な職に就いた身として、貴重な帰郷には必ず訪れると決めている場所がある。
     サブローが眠るペット霊園は、あの全ての始まりの河川敷から、そう遠く離れていない所にあった。墓石の前には二つの――二人分の花瓶が置かれていた。

     鼠谷家に立ち寄り、改めて友の父親と話をする機会を得られた葬儀以来の日。阿黒は通された客間の座卓に就き、湯気の立つほうじ茶を出され、ゆっくりと時間をかけながら、父親が息子の追想を聞かせてくれたのだ。
    「あの子、サブローのお墓に顔を出す時は、君の分の花も飾っていたんだよ。お互いに忙しいし、会えなくなったからね」
     阿黒は出されたお茶に手をつけられないまま、穏やかで寂しい父親の声色に目頭が熱くなっていくのを堪えた。
    「あの子はね、よく言っていたんだ。『立派な大人になって、夢を叶えて、再会したヤット君を驚かせるんだ』、なんて。親の私が言うのもなんだが、あの子は無邪気で可愛かった。まあ、いつまで経っても子供っぽい所があって心配だったんだけど、阿黒君と過ごした日々を糧に上り詰めたんだろうと見守っていたんだ」
     何も言えなかった。それは、自分達が巻き込まれた荒唐無稽な怪事件の詳細も含めてのことだ。信じるには難しい、これ以上の心労を周りに与えたくないという総意で、犬飼刑事だけが大まかな内容を知っている。味方をしてくれた刑事ですら今でも困惑する部分があるのだから、残された両親に息子の死には神だの生贄だの、非現実的な話が関わっていると説明したところで負担でしかないだろう。
     父親は、ただただ息子の語りに耽った。阿黒との思い出を大事にしていたこと。河川敷で息抜きをしに行っていたこと。ゴーグル社で働く様は楽しそうで、一生懸命だったこと。知人が亡くなってからはサブローを引き取り、最期まで鼠谷家で暮らしていたこと。「理想」という言葉をよく口にしていたこと。阿黒を驚かせたいからと、「理想」を叶えるまで連絡は取らないと決めていたこと。
     阿黒は決して俯かず、聞き入った。鼠谷の笑顔や暴力で傷だらけになった体、サブローを可愛がる声が脳裏に過る。そして、どれだけ腕力を身に着けても、結局無力だった自分の情けなさを思い知らされる。
     全てを語り終えた時、ふと父親は窓の方を見た。小学校の卒業式後、蕾の桜を見上げる鼠谷の横顔を思い出す。親子だからか、とても似ていた。
    「あの子の理想は、報われたんだろうか」
     父親は答えを求めるような声色でもなく、ぽつりと呟いた。



     鼠谷が眠る墓前にも、サブローが眠るペット霊園にも、阿黒は慎ましい墓花を供える。だが、阿黒の意識が強く向けられるのは、そのどちらでもなかった。不謹慎と言われようとも、それは阿黒にとって正しいものだった。
     視界がぼやけるほどに顔は濡れ、仕事着のスーツに本降りの雨水が染み込んでいき、ずっしりと重苦しい。それでも軽くはない足取りに迷いは無く、ゆっくりとだが進む。
     ――雨粒が川面を叩くばかりの、誰もいない河川敷。その末に、向こう岸に繋がっている一本の鉄橋の下まで辿り着く。まっさらに整えられた地面が広がっていた。だが、阿黒は覚えている。かつて、ここには小さな茂みがいくつかあった。そのうちの一つに潜めた段ボール箱がサブローの住処だった。穴の空いた傘を屋根にし、床にはタオルを敷いた粗末な家。給食で出されて残しておいたパンや、家からこっそり持ってきたソーセージなどを餌として与えていた。子供に渡されるお小遣いだけでは、ドッグフードは高くて買えなかったから。本当に無責任だった。それでも……精一杯の正義で、サブローを愛した。
     ずぶ濡れの阿黒は壁に寄りかかり、ずるずると崩れ落ちる。降雨が届かない砂だけの地面だったのに、じわりと水気が染み込んだ。閉鎖された空間ではないので雨の匂いは辺りに漂い続け、雨の音は耳の奥に響き続け、気怠さが圧しかかる。
     ふと、阿黒は呟いた。
    「ああ……そうか」
     どうしてか、その時になって、ようやく気付いた。
     虐められる鼠谷やサブローを守りたくて強くなりたいと思っていた。だが、本当は違うのだと。
     鼠谷はいつも虐められていた。蹴られたり、叩かれたり、サブローを守ろうと地に伏すだけで抵抗も出来なかった。そして、その鼠谷を助けようとする自分も、まだ幼くて腕力に自信が無く、同じように痛めつけられた。それなのに……鼠谷はめげなかった。傷だらけになった手で、サブローを優しく撫でた。唯一の友に向かって「助けてくれてありがとう」と笑った。
    (あいつの姿に憧れて、俺も強くなりたいと思ったんだ)
     彼は、誰よりも強かったのだ。



     どれほどの時間が経ったのか、阿黒には分からない。俯いたまま立ち上がり、よろよろと鉄橋の陰から一歩踏み出す。中途半端に乾き始め、湿り気を帯びた髪に、顔に、体に、再び雨が容赦無く降り注ぐ。見失いそうな帰り道、ただ足を進めるだけ。
     ――そのはずが、ふいと頭上に何かが過り、その部分だけ雨を避けた。雨粒が弾ける重い音だけは聞こえるが、阿黒を濡らすことはなくなった。背後に経つ人の気配。
     雨なのか涙なのか、見分けもつかない濡れた顔で振り返ると、そこにはビニール傘を差しつつ、阿黒にも傘をかざす人影があった。
    「風邪引くぞ」
     と、背の高い男は一言だけ投げかけ、片手に持っていたその傘を阿黒へと差し出す。阿黒は逡巡したが、男の温情を素直に受け取ることにした。
    「……お前こそ、こんな所で何やってんだ」
    「ま、散歩ってとこかなぁ」
    「嘘吐け」
     あまりにも見え透いたことを言うので、阿黒は鼻で笑った。この男も、どうせ自分と同じような理由でここに来ていたのだろう。野暮だから、お互いに一々追及はしないが。
     傘を差しながら、夜に近い雨の町を行く二人。くだらないことを喋り合ううちに、阿黒の頬は乾いていった。
     一人の大切な友を喪った現実は変わらない、変えられなかった。それでも――自分は生き残り、そして、新しくも懐かしい友人達と生きていく。胸の内に確かに存在する、自分達の理想の為に戦った友との思い出。これも、変わらないものなのだから。

     二人きりの帰り道、強く冷たい雨は次第に勢いを弱め、緩やかに流れていく雲の隙間から一筋の仄かな光を覗かせる。一番星に照らされた川面は透き通って見えた。
     きっと、明日は晴天だ。



         完
    猛者 Link Message Mute
    2022/09/15 19:06:47

    れじの04小話ぷらいべったーまとめ

    #きてどち #れじの04 #カンメリ
    カンメリだったりカンメリじゃなかったりする内容が全部で5本。本文前には長ったらしい注釈や所感が記述。

    ピクシブから再掲。

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    • 2「理想郷ではないけれど」タイトル無し表紙と挿絵 #きてどち #らじの04 #カンメリ

      ガチ絵描きに描いて頂いた「理想郷ではないけれど」の表紙と挿絵。
      何度見ても胸がぎゅわぎゅわする美しい絵です。
      描いて下さって本当にありがとうございました。

      無断転載は絶対に許さんぞ。
      猛者
    • 美味しい時間 #きてどち #れじの04 #カンメリ
      メリーちゃんの作るホットケーキが食べたい一心で書いた話。
      カントクが面倒臭い男になってしまった。甘い物が苦手そうなのはJBから引っ張ってきた。

      ピクシブから再掲。
      猛者
    • 二人でなら生きていける #きてどち #れじの04 #カンメリ
      きてどちのセッションで初めて泣いてカンメリに堪らず書いた第1作目。事件後、カンメリが河川敷を眺めて物思いに耽る話です。
      JBがカントクとして、メリーちゃんを同じ立場に並べてくれて本当に良かった。

      シナリオブックが届く前に書いたことも一因ですが、やはり月日が経つと自分の中で自分と解釈違いを起こして何だかなあという描写もしています。ただ、らじの04後だとタイトルについては説得力があります。

      ピクシブから再掲。
      猛者
    • 太陽と月とスターヒーロー #きてどち #れじの04 #カンメリ

      学校でお泊り会を過ごす子供時代カンメリの話。
      メリーちゃんを月の女神として仕立て上げると対にするなら太陽神なのに、カントクはスターヒーローを名乗ってるから面白いなあみたいな。

      らじ前の締めに書いたれじカンメリでした。素敵な結末を迎える予感があったので、その通りになったので良かったです。

      ピクシブから再掲。
      猛者
    • 愛憎の町で求めた理想郷 #きてどち #れじの04 #イツ猫 #カンメリ
      男性愛者の猫山がイッツGと笑い合える理想郷を望んだ話。猫山の行動原理は案外単純だからこそ複雑に追い詰められてしまったのではなかろうか。
      話の題材上、セクシュアリティ関係の差別表現を取り入れています。読んで辛くなったらすぐ閉じて下さい。書いた私も辛いです。

      猫山はメリーちゃんに同族嫌悪してミソジニーを拗らせて、メリーちゃんは猫山を哀れんでいたイメージ。この2人がどんな不毛なやり取りをしてきたのか、考え出したら止まらない。
      イッツGはシナリオの言動からして女性愛者だし、恋愛関係として猫山を受け入れるのは難しいにしても、学ぶ意思くらいは持つと思います。

      ピクシブから再掲。
      猛者
    • 偽りとの戯れ #きてどち #れじの04 #カンメリ
      鼠谷の死=探索者3人を帰郷させたのはメリーちゃん説。神がカントクの姿で降り立つ夢を見ては苦しめられていたら可愛い。
      メリーちゃんと鼠谷と馬場の関係性は未だに考察の余地がありすぎる。

      ピクシブから再掲。
      猛者
    • 理想郷ではないけれど #きてどち #らじの04 #カンメリ
      らじカンメリ1作目。セッション直後の興奮だけで書いたのでシナリオブックと噛み合わない部分が多々あります。特に工場内の描写が。でも最高でした、本当に最高でした。
      らじ前にメリーちゃん自殺説を前提としている為、カントクのメリーちゃんに対する想いがそれを匂わせている感じです。

      手塚治虫の「火の鳥 復活編」と18禁純愛肉塊ゲーに影響されまくっています。

      ご厚意により、ガチ絵描きに表紙と挿絵を描いて頂きました。本当にありがとうございます。

      ピクシブから再掲。
      猛者
    • 夢と影 #きてどち #れじの04 #カンメリ
      カントクがやさぐれているだけの話。通夜ぶるまいでの「羊田?羊田?」と、カントクが夢を見た後にどんな心境になったのかが気になりすぎて書きました。
      イッツGと違ってカントクは月日をかけてメリーちゃんのことを無理矢理封じたイメージ。

      ピクシブから再掲。
      猛者
    • 呼んで、呼ぶな #きてどち #れじの04 #カンメリ
      自分のあだ名が好きじゃないと言ったカントクの真意を考察したくて書いた第2作目のカンメリ。
      メリーちゃんは「メリー」という幼きカントクにつけられた変哲も無いあだ名に救われたことでしょう。

      カンメリは同じ中学に入り、しかし神の采配と思春期によってすれ違いが始まったのではと今は思います。流石に小4だけの交流であんな大層な執着と依存を抱き合うのはヤバい気がします。

      ピクシブから再掲。
      猛者
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