篝と縣「かーがりちゃん」
煩い奴と出会ってしまった。この後はただ帰るだけなのに。この男のことだから狙ったのかもしれない。
本当にやめてほしい。
「‥‥‥‥」
無視してしまいたい。これで終わる訳がない。
「かーがりちゃん。何で無視するの?大切な大切な友人が話しかけてるんだよ?酷くない?」
「酷くないです」
いや、本当に酷くない。この後の会話が目に見えている。
「で?あの彼とはどうなってるの?今日はいないんだね?つまんなーい」
「‥‥どうもなってないです。あと、つまんなくないです」
「えーつまんないでしょう?」
にやにやした顔をぶっ叩いてしまいたい。そんな度胸も…ない。
それこそ先輩の大切な友人だ。それを解ってて煽ってくる。本当に酷い。
「ねぇねぇ、年下の子から慕われてどう?やっぱり絆されちゃう?弥の事なんて忘れちゃう?一生の恋にしようとか思ってたはずなのにね」
「なんで、そんなことあなたが知ってるんですか!?」
「あは。篝ちゃん気を付けないと駄目だよー悪いお兄さんに騙されちゃうよ?」
「…カマかけたんですか?」
「さぁ?どうでもいいじゃない?」
ニヤニヤした顔を変えることなく彼は言い捨てる。
真正面から私の目をそらすことなく、
「本当に面白いね。楽しくて、嫌いだよ」
何かを言い放った。めったに見せない笑みを消した顔で。
何を言ったのか聞こうとしたら、既に彼はいなかった。
いつも、いつも私の心をかき乱したいだけでかき乱して去って行く。
なんて酷い人なんだろう。