幼馴染伊織が千代倉に再会する話。
「千代倉」
今回は彼の話をしてみようかと思う。
「千代倉」確実にして偽名。
「千代倉」最近目覚めた異能者。
「千代倉」一応過激派に所属する。
「千代倉」俺の幼馴染。
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時は遡る事20数年彼と出会ったのは小学校の時だった。
彼はお調子者でクラスの人気者で要領が良くて俺なんかと話すような奴ではなかった。
「ねぇ、何読んでるの?」
無邪気に彼は俺に話しかけてきた。
「伝記による医学史」
「それ面白いの?」
「面白いよ」
俺は小学生の時の人付き合いは全部付かず離れず、適当にやっていた。
そんな中、人と関わる事、遊ぶ事全部楽しい事だと教えてくれたのは彼だった。
そうして、彼と俺は二人でつるむことが多くなっていった。
順調に俺達は中学へと入学する。
それが、幻想だったと悟った時にはもう手遅れになっていた。
彼の陽気さは表面上は変わらなかったが、空元気だったと俺は直ぐに気付いた。
全てが空回っているようにしか見えない。
「なぁ、何かあったのか?」
「んーーーー、親ぶっ壊れた」
詳しく聞いてみると小学生の時から親に無視され続けてたらしい。
お金だけは渡されていたけど、ついにそれも途切れたみたいだ。
更にエスカレートして、手を上げるようにもなったらしい。
「仕事に息詰まって、家でも息詰まってのうのうと生きている俺に八つ当たりするのは仕方ないよなー」
「・・・・・・・・」
仕方なくない。
全くもって仕方なくない。
けど・・・・彼の諦めて生気を無くした顔を見てしまったら何も言えなくなってしまった。
そんな膠着した日常が続いていた。
空元気と疲れた表情を見せながら日々は続いていた。
そんな不安定な日常は長くは続かなかった。
ピンポーンと夜には似つかわしくない音が家に響いた。
何事かと思ったら、彼の訪問だった。
「よう。親において行かれた」
そう言って笑った顔は、殴られて歪になっていた。
「何!?その顔!?」
「殴られたー」
へらっと笑った表情に、なんとも言えない怒りを感じた。
手当てをしながら彼の話を聞いてみると、ギャンブル、借金、不倫、そのんなような事で現実を逃避するうちに彼の面倒を見るのを忘れていたようだ。
ついに首が回らなくなって、夜逃げを決行したらしい。
「お前なんて連れて行けるかよ!」
それでも追いすがる彼を引き離すために殴ったという訳らしい。
「これから、どうすんだよ」
「どうするかなー・・・・・」
その時に見た、彼の遠くを見る表情を忘れる事は一生出来ない。
悔やんでも悔やみきれない。
翌朝、一枚の紙が勉強机の上に乗っていた。
『さーんきゅ』
「……これで終わりかよ。俺ってなんだったんだよ」
ぐしゃっと紙を握りつぶした。
彼は姿を消してしまった。
中学2年生の冬のことだった。
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彼の事を気にしながらも高校大学と進んでいった。
研修医までたどり着いた時に異能が覚醒してしまって、色々な派閥から狙われるようになり病院にはいられなくなった。
幸いと言うべきか、授かった異能が回復系だったので得た知識と異能を使って闇医者のようなものをやり始めた。
そんな時―――――――
「こんにちはーー。ここで傷治してくれるってーーー……」
「……千振、旭……?」
「伊織…………」
くるっと回れ右をしてドアから出て行こうとする旭を呼び止める。
「旭!!!!!!」
「……もう、その名前じゃないんだなー。今は千代倉」
「何それ…」
「ま、色々あった訳で……。伊織には……伊織には……会いたくなかった。」
「俺は、会いたかった」
くしゃっと旭ーーいや、千代倉は顔を歪め、
「…俺だって―――――」
その先は聞くことが出来なかったけど、それが俺と千代倉の再会だった。
千代倉が伊織に再会する話。
千代倉目線で、女狐が侑子、医者が伊織幼。
きのこさんには「いっそ消えてしまえばよかった」で始まり、「さようならは言わなかった」で終わる物語を書いて欲しいです。できれば14ツイート以内でお願いします。 https://shindanmaker.com/801664