いいからそれ食べてろドラルクが起きしな、いつもの様に突然現れたフクマに拉致されたにっぴきは異空間に引き摺りこまれた。
「撮影です。こちらに着替えて下さい」
そう言ってフクマから着替えを渡され、それぞれの控室に押し込まれる。
渡された衣装を見てドラルクは溜め息をついた。
「これって中華服だよね。今度は何をさせられるのやら」
「ヌー」
それでもフクマに逆らえないドラルクはまずジョンを着替えさせる。
先に行っているというジョンを送り出し、改めて自分に用意された衣装を眺めた。
「露出がないのはいいけど、生地が薄ーい。首のファーも大丈夫かな?ってこれ靴下ないの!?うわっ、絶対落ち着かない。無限死の予感!」
一人ぎゃーぎゃー騒ぎながら、衣装に袖を通すドラルク。
途中いつもと違う肌触りに死にながらも何とか着替え終わり控室を後にした。
スタジオに入ると、そこには先に撮影を始めていたロナルドが居た。
自分と似たような衣装ながら体格の違いから受ける印象にドラルクは吐息をこぼす。
(似合ってるなぁ格好いい。五歳児の癖に無駄にイケメン面しおってからに)
内心そんな事を考えながらポーカーフェイスを保ちつつ近付いていくドラルクは、ロナルドがその手に何かを持っている事に気が付いた。
カメラマンに何事か指示され口元に持っていくのを見て、それが肉饅だと分かる。
が、食べ物だというのに全く喜んでいないロナルドに同時にその肉饅が偽物だという事にも気が付いた。
(あらまあ不満そうなお顔。今夜は中華にでもしますかね)
そうこうしている内にロナルドの撮影が終わった様だ。
一息ついているロナルドにドラルクはそっと近付く。
「お疲れルドくん」
「!お、おう」
驚きに肩を震わせるロナルドにドラルクは笑いながら自分の衣装を見せつけた。
「どうかな?中々に畏怖くない、私」
「薄くて不安になる」
「おい」
真顔で答えるロナルドにドラルクは眉を吊り上げる。
「ヌーーー!!」
そこにジョンの鳴き声が聞こえてきた。
慌てた様子の声に驚いた二人が声が聞こえてきた方を振り返ると眩しい光に目を焼かれた。
砂になり即座に復活したドラルクはその先に思いがけない人物を見咎める。
「うわ!Y談おじさん!」
「こんばんは。今夜もいい夜だねぇ」
光線を放ちながら呑気に挨拶を返してくるY談おじさんにドラルクは口元を引くつかせた。
そこに眩みから立ち直ったロナルドが割って入る。
「ふわっふわなファーと首の間に顔を埋めたい!(訳:何でここに居る!)」
「モデルのバイトでね」
「細い腰に巻かれた俺の色の紐エッチ過ぎない!?(訳:だからって何で光線放った!?)」
「面白くなりそうだったから」
「剥き出しの踝を舐めしゃぶりたい!!(訳:いいから催眠解けやコラ!!)」
「やっだピョーン☆」
逃げるY談おじさんを叫びながら追いかけるロナルド。
自分の衣装をスケベな目で見ている事をバラしているロナルドにドラルクは堪えきれず砂になる。
「ムグムグムグ!」
そこにジョンが泣きながら駆け寄るが、光線を浴びていた為、用意されていた桃饅で口を塞ぎながらドラルクの名を呼んでいる。
気遣いの出来る使い魔にドラルクは感動しながら復活した。
そして未だY談で怒鳴るロナルドに耳の先を砂らせながら絶叫する。
「いいからもう黙れや若造!!」
その日の夕食は野菜炒めになったし、ロナルドの分は肉無しになった。
完