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    なんでもない日々のお話5夕食が済みキッチンで片付けをしているアッシュとそれを律儀に手伝うもえをそれぞれ視界に捉えた後で静かに声を発した。

    「アッシュ。」
    「はい?」

    こちらを向くアッシュに次の言葉を投げる。

    「…もう、良いか?」
    「へ…??」

    彼は疑問符を浮かべたような顔をしていた。
    それも無理からぬ事だろう。
    何故なら『主語』が欠落しているからだ。

    その答えは言葉にせず視線に乗せた。

    すると彼は途端にあ、ああ!と閃いた様に表情を明るくする。
    …どうやら誤解を与えたらしいが…
    この際なんでも良いと開き直る。
    了承を得られた様なので問題ない。


    「モエ。」

    今度はアッシュの横で手伝いに精を出す姫君に声をかけた。

    「話がある。此方へ。」
    「え?は、はい。」

    彼女は怪訝そうにそう答えると大人しく付いてきた。



    リビングに移動するとソファーに腰を据える。
    立ち尽くしている彼女はその立ち仕草からも行儀の良さ…もとい品の良さがよく見える。

    「此方へ。」

    自分の隣をぽんぽんと軽く叩いて彼女を促せば、彼女は此方に向かって歩を進める。

    目の前まで来た彼女の手首を掴んで逃がさぬように引き寄せ、膝の上に抱えて乗せた。

    「きゃ…っ…」

    何度もこうして捕まえているが
    彼女の反応はいつも同じだ。
    みるみるうちに顔を赤くする。

    初々しく、愛らしい。

    腕の中に収めてそっと抱き竦めた。

    「あ、あのっ……」

    彼女は些か慌てたように腕の中から問いかける。

    「…お、お話…とは…なんでしょうか?」

    視線を泳がせるその様子は
    まるで悪戯がバレた子供の様だ。

    「…既にお解りの様だが?」

    彼女の手を取り、その手の甲に唇を落としつつ視線を投げる。

    「…っ…」

    彼女は益々居心地が悪そうにしている。

    …この反応はなんとも
    意地悪のし甲斐がある…

    などと口にしたならば
    きっと叱られるであろう。


    「私には隠せぬと、まだご理解頂けぬか?」

    「………。」

    「これでも目を瞑っていたのだが
    流石にこれ以上は看過できぬ。

    …今の今まで二人に悟られなかった事もそうだが…何より倒れなかった事が不思議な程だ。」

    彼女の額に手を当てる。
    抱き締めているその身体から伝わるそれよりも遥かに強い。

    彼女は息を呑み身を縮めて固くした。

    『叱られる』否、『怒られる』と
    思っているのだろう。

    「姫君?
    私は責めている訳でも
    そうしたい訳でもない。

    ……ただ……
    大いに心配を寄せている。
    誤解無きように。」

    彼女の頭を己の胸に押し付けてやれば
    彼女はその華奢な腕を躊躇いがちに腰へ回して縋り付く。

    「そう、それで良い。
    よく頑張った。
    否…度が過ぎたな。
    今まで…辛かっただろうに…」

    努めて労るように髪を撫でてやれば彼女は身を震わせ微かにすすり泣いた。
    やはりずっと身体が辛かったのだと見える。
    そう告げる事もかなわずに、さぞ苦しかったことだろう。

    彼女は今までの境遇から
    己の弱い面を見せたがらない。
    まるで野生の動物の様に弱みを隠し
    なんでもないふりをする癖が身に染み付いている。
    例えどんなに己自身が苦しくとも
    容易く他人に『頼る』事や『甘える』事が出来ずにいる。

    幼気な少女の頃より
    本来ならば正当であるはずのその行動を
    周囲の自分勝手で愚かな大人達によって
    何度も咎められ、責められてきた事による弊害だ。

    咎められる、責められる必要など
    微塵にもなかったと言うのに。


    「…姫君は私に…否、我々にもっと心配をさせてくれても良いのではないか?
    その様に頑張られてしまっては
    我々には立つ瀬がないというものだ。」

    やはりもう少し早く
    声をかけるべきだっただろうか…
    そんな後悔が胸を締め付けるが
    今更もう遅い。


    「……ゆ……ユーリ、さんは……
    …皆さんは…迷惑では無いですか…?
    面倒では、無いのですか?

    わたしは…
    わたしは自分の事ながら
    酷くうんざりします。

    …どうしていつもこうなのか
    どうしてもっと…ちゃんとできないのか

    …どうして…どうして…って…!」


    涙で詰める彼女の言葉には『憤り』の色が濃くがあり、己を責める言葉の数々は大変辛辣で…苦しそうだ。


    「姫君はいつも『ちゃんとしている』では無いか。…何か問題が?」

    「ちゃんとしてないから…!!
    出来てないから
    こんな事になるし
    なっているんです…っ!!」


    その『言葉』が呪いの様に
    いつだって彼女を蝕んで来たのだ。

    愛らしい笑顔の裏側で…
    孤独と辛苦に耐えながら。


    「モエ。
    それは間違った『言葉』であり
    間違った『考え』だ。」

    「…間…違い…?」

    「そうとも。

    体調の乱れなど誰にもどうにも出来ることではない。
    それは己自身にさえも、だ。

    仮に一晩雨風の中にいたとして
    全く平気な者も居れば
    そうでない者も居るだろう?

    もうひとつ仮に、私が体調を崩したとしよう。
    しかし姫君はそれを責めたりなどせぬであろう?
    それがアッシュであっても
    スマイルであっても同じの筈だ。

    その時には寧ろ…その身を粉にして心配を寄せてくれるのであろう?」

    「………。」

    彼女の顔を覗き込み指先で溢れる涙を拭った。

    「理解っているさ。」

    悔しそうな、苦しそうな…そして申し訳なさそうなその表情はいつ見ても胸が痛い。

    「それなのに姫君は
    我々には何一つの心配もさせてくれぬと…
    そう言うのか?
    …それは…なんと寂しい事だろうか。

    …嗚呼、とても哀しい事だ…。」


    堰を切ったように零れ出す泣き声は
    まるで小さな子供のそれの様で…
    普段は大人びている彼女ばかりを目にしているせいか安堵と共に何処か複雑な心境が織り交ざっていた。




    月瀬 櫻姫 Link Message Mute
    2024/02/09 14:18:35

    なんでもない日々のお話5

    オチもなく
    時間軸とか色々無視して
    つらつらとただ気の向くままに書くよ。

    #ポップン
    #ユーリ(ポップン)
    #もえ(ポップン)
    ##ユリもえ

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