オンボロ寮の寮服「授業中に落書きとは感心しないな、仔犬」
「すいませんでしたぁ!」
謝罪の言葉を叫ぶのと同時に監督生は勢いよく頭を下げる。
「で、お前何を描いていたんだ?」
「……い、言わなきゃダメですか?」
「内容次第では課題の量を減らしてやらんでもない」
クルーウェルの提案に暫し悩んだ後、監督生はブレザーの裾を弄りながら口をもごつかせる。
「お、オンボロ寮の寮服を考えてまして……」
「理由は?」
「えっとあの……色んな寮の人たちと関わるようになって、寮服を見る機会が増えたからか羨ましいなぁって、思うようになりまして……」
「それでオンボロ寮の寮服、か」
「はい……」
「──良いだろう。課題は免除してやる」
「えっ!?」
予想外の言葉に監督生は目を見開く。
「その代わり、だ」
教鞭で監督生の顎を持ち上げながらクルーウェルはにやりと笑う。
「オンボロ寮の寮服制作に俺も一枚噛ませろ」
「……へ?」
「安心しろ、他の寮に引けを取らないものを仕立ててやる」
「あっこれ絶対断れない流れだ」
小さい声で呟きながら監督生は心の中で白旗を振った。
創作監督生nadohosi64
「──で、クルーウェル先生に仕立ててもらったオンボロ寮の寮服がそれってワケね」
「は、はい」
「オレ様のもあるんだゾ!」
「うんうん、どっちもすっごいイケててマジカメ映えしそう!ということで早速一枚!」
「……今明らかに連写の音がしたんですけど」
「細かいことは気にしちゃダーメ」
呆れる監督生をよそにケイトは写真撮影を継続し、ヴィルは視線をゆっくりと上下させる。
「えっと……ヴィル先輩?」
「……さすがはクルーウェル先生ね。アタシが手を加える余地が無いわ」
「いやホント、出る幕無しって感じだよねー」
二人が何を悔しがっているのか理解出来ず、監督生とグリムは首を傾げた。