絆されたのはどっち?「そういえばさー、監督生ってケイト先輩のどこに惚れたワケ?」
「ぶっ!?」
唐突なエースの問いに監督生は飲みかけていた水を吹き出し、ごほごほと咳き込む。
「何で今更そんなことを聞くんだゾ」
「確かに今更と言えば今更だな」
「いやほら、こいつと先輩っていつの間にか付き合ってたからその前段階で何があったのかふと気になってさ」
「そういうことって他人にホイホイ話すようなものでもないと思うんだけどな……」
「安心しろ監督生、僕も同意見だ」
「何だよノリ悪いなー」
つまらなそうな顔をするエースに監督生とデュースはほぼ同時に肩を竦める。
「……頼りになる先輩だってのと、前髪下ろした状態」
「ん?」
「ぱっと浮かぶのはそれくらいだよ」
「……ふーん、結構フツーじゃん」
「寧ろエースは何を期待していたの」
心底呆れた顔をしながら監督生は溜め息を吐いた。
「……何だい、その顔は」
「いやーリドルくんがそういうこと聞いてくるの意外だなーってビックリしちゃってさー」
「ボクだって浮わついた話に興味を持ったりするさ」
心外だと言わんばかりにリドルは肩を竦める。
「──で、何が決め手だったんだい?」
「んー……ユウちゃんがオレにメロメロなのはリドルくんも知ってるよね?」
「それは勿論。あの子は顔に出やすいタイプだからね」
「じゃあどうしてメロメロになったかは知ってる?」
「……いや、それは知らないね」
口元に指を当てながら思案するリドルの姿にケイトはにんまりと笑う。
「ユウちゃんはねー、オレのすっぴんに見とれちゃったの」
「すっぴん?」
「いやーあの時はビックリしたなー、まさかあんな顔されるとは思ってなかったもん」
ケイトの惚気に辟易しつつもリドルは静聴の姿勢を維持する。
「あのかわいい顔と視線を独り占めしたくなった、ってのが決め手かなー」
「……へぇ、それはまた随分とシンプルだね」
「えー?リドルくんどんなの予想してたのー?」
「聞きたいのかい?」
「……遠慮しときまーす」
やけに気弱なケイトの返答にリドルは少しつまらなそうな顔をした。
「──絆される、という言葉には情にひかれて心や行動の自由を縛られる、という意味があるそうだ」
本のページを捲りながらリドルが呟いた言葉にトレイは首を傾げる。
「どうしたんだ急に?」
「ふと気になって調べただけだよ」
「……もしかしてケイトと監督生のことか?」
「察しが良いね」
栞を挟んで本を閉じ、リドルはトレイの方に向き直る。
「トレイ、キミから見て絆されているのはどちらだと思う?」
「どっちも、だな」
トレイの即答にリドルは目を丸くする。
「ケイトは監督生に、監督生はケイトに絆されている。そのお陰で良い感じにバランスが取れていると思うぞ」
「……本当にそう思うかい?ボクには監督生がケイトに振り回されているようにしか見えないけど……」
「それはあいつが監督生にご執心だから、だろうな」
失笑と共に述べられたトレイの見解にリドルはああ、と感嘆の声を上げた。