堂足わんどろ_200201_お題:贈り物誕生日で思い当たることと言えば。
パーティを計画して、そこに集まる馬鹿な奴ら。
そして主役のやつに「おめでとう」という言葉送る。
最終的には、「贈り物」を渡して、機嫌を取る。
そんな一日。
…まさに傷の舐めあいの延長。
非常に気持ち悪い。
ヘドが出る。
僕にとっての誕生日は、普段と変わらない。
ただ歳をとるだけの日。
それ以上も、それ以下でもない。
家族に祝われた記憶なんてものも、まったくない。
ただの1日に過ぎないのだ。
よっぽど、あの時の経験の日の方が印象的で、
僕にとっても大切な日になっている。
…さて、なぜこの話を上げたのか。
それは僕の誕生日である2月1日が出所日となったからだ。
看守からは、めでたい日になるな、と言われたが、
僕にとってはどうでもいい日だった。
実は出所日に堂島さんが迎えに来ることになっているのだが、、
堂島さんと会うのも、それが最期になるのだろうか、と思うと、
少しだけ心臓辺りがちくりとするのを感じた。
そうして迎えた出所日。
雪が深々と降っている日。
僕は再び外の空気を深く吸い、一歩踏み出した。
「足立、お帰り。」
堂島さんは出てすぐのベンチに座って待っており、
片手をあげて手招きをした。
足早に近づき、堂島さんの座るベンチの方へと寄ると、
突然片腕で抱き寄せられた。
咄嗟の動作に対応できなかった僕は、堂島さんの胸に身体を預ける状態となり、
ベンチに倒れこむようになだれ込んだ。
「ちょ、ど、堂島さん…?」
驚きのあまり、少し上ずり加減の声で尋ねると、
堂島さんは声を震えさせながらこう言った。
「…本当に、お帰り、足立…。」
トクトク、と優しい鼓動の音が聞こえる。
それに加えて、鼻をすする堂島さんの音が聞こえる。
「堂島さん…泣いてるんですか…?」
「うるせぇよ。」
ポカっと軽い拳骨を落とされ、抱きしめる腕の力を強められたので、
大人しくそのままの状態で待機することにした。
少し経った後、堂島さんの音が静かになってきたので、
顔を上げると、堂島さんが優しい目線で僕を見ていた。
「なぁ、足立。今日、お前、誕生日だろう。」
「え、あ、はい…。」
「贈り物、考えたんだが、受け取ってもらいたいんだ。」
「いや、僕なんかのために贈り物なんて…いいですよ…!」
「…そういうのは、興味ない、って顔だな?」
「!!!」
堂島さんがすぐさま僕の思考を読み取ってきたので、
ドクンと心臓が強く脈打った。
「だが…できれば…受け取ってもらえねぇか。……俺を。」
「えっ…!」
「俺をもらってくれねぇか、足立。」
真剣な目で何を言うかと思えば、
堂島さんは自身を贈り物として僕に渡してきたのだ。
「な、…なんで…堂島さんを、もらうなんて…僕には…。」
「なぁ、足立。こうやって人と関わるのは、
お前にとっては『認めたくない』部分だとは思う。
だが、そんな部分も含めて俺はお前を受け止めたいと思っている。
『認めたくない』部分も、俺がいつか良いものだって…
そう思えるようにしてやりたい。」
「僕が『認めたくない』部分も、良いものに?…あなたにそれができるんですか?」
「あぁ。だから俺を隣においてくれよ、足立。受け取ってくれ。」
堂島さんは今も真剣な目つきで僕を見つめている。
…そこまで言うなら。
堂島さんがいうことなら。
「わかりました。じゃあ今回は受け取ってあげますかね?
…この贈り物、紐解くにはどうしたらいいんですか。」
少し悪い顔をしながら尋ねると、
堂島さんもまた、いたずらっ子のような顔をしてきた。
「紐解く合図は、口づけだ。」
「…!」
そう言って、堂島さんから触れるだけのキスが送られる。
「贈り物が動いてどうするんですか…!!」
慌てて言うと、堂島さんは嬉しそうな顔をして僕の頭をかき混ぜる。
「受け取ってくれるんだろう?早く紐解いてもらいたくてな?」
「もう…。強引だなぁ。」
きっとこうやって
強引なところも
優しいところも
叱ってくれるところも
全てが愛おしくなっていって
色んな日々が特別な、大切な日になっていって
今日という日もそうなるのだろうかと
そんなふうに思えたのだった